奥田民生と
SPARKS GO GOのロック熱が注がれた
『THE BAND HAS NO NAME』

ロックバンドらしさを強調

M4「Blue Boy」はポップなロックチューン。1980年代後半、まだJ-ROCKなどという呼称がなかった頃の日本のロック、そののちにバンドブームと呼ばれるものの、その前期の匂いがする。ニューロマの影響を感じさせるギターの音色と、いわゆるJ-POP的な歌の展開にそれを強く感じる。彼らはまさにブームの渦中に身を投じていくわけだが(本作制作時にはすでにその中心に居たとも言える)、今となってはその軌跡にも納得する一曲ではなかろうか。また、この歌詞にも最注目したい。

《このままじゃ 自分自身で/いつまでも後ろ指さして/こんなもんさと冷めたフリして/負けを認めていくのがオチか…/あいつらに粉れてく前に/探し続ける凍った手口を/刻まれる時間を数える Blue Boy/秘めた心をひたかくして》(M4「Blue Boy」)。

これもまたパキッとクリアーな完全前向きと言える代物ではないけれども、ロック的な反骨心の強さは遺憾なく発揮されている。ちなみに同曲はアルバム『SPARKS GO GO』(1990年)にも収録されており、清々しいまでにアレンジはまったくと言っていいほど変わっていない。その辺にも何か清々しさを感じるところである。

M5「All Through The Night」はシャッフルビートのロックンロールだ。ベースラインはロカビリーに近い印象もあるが、これはモッズと呼んでいいのではないかと思う。歌詞はわりとストレートなラブソングで、“八熊カラー”と言ったものもそれなりに感じられるものの、サビで楽曲タイトルがリフレインされるというのは如何にもロックバンドらしいし、個人的には好感を持ったところではある。

ラストのM6「Automatic Generation」は、リムショットとタンバリンの音色から始まり、そこにベースが重なって、ハスキーな歌声が聴こえてくるという、頭からスリリングな印象。サビ以降はギターサウンドもラウドに展開していき、不良の匂いがする。これもまさしくロックだろう。《だまされるか だましてやるか》《ウラが出るか 表が出るか》という、ギャンブラー的というかハスラー的というか…な世界観もいい。サウンドに合っている。この楽曲の最注目は、中盤以降、楽曲がフリーキーに展開していくところだろう。ベースだけが淡々と鳴らされていく中、ギターもドラムもカオティックに鳴らされている。途中まではメロディーを奏でるわけでもテンポを合わせるわけでもなく、インプロビゼーションと言えばそうだろうが、どちらかと言えば、楽器の音響効果を試しているかのような感じで、それを経てまたサビへ辿り着くという構成になっている。プログレを意識したのかもしれない。シンセやストリングスなどを配することなく、メンバー4人でそれをやっているところに、バンドであることを強調している感はある。

OKMusic編集部

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