神山羊

神山羊

【神山羊 インタビュー】
クローゼットの中から音楽を通じて
いろんな人に会いに行く

神山羊が1stフルアルバム『CLOSET』を完成させた。ボカロPの有機酸から名義を変え、自分自身の声で歌い始めてから3年半。“クローゼット”は当初からずっと大事にしていたコンセプトだという。ポップスを作る覚悟、そして自分自身の変わらない居場所についても語ってもらった。

自分の中心には
絶対にポップスがある

初のフルアルバムですがどんな作品に仕上がった実感がありますか?

このアルバムに入っている楽曲にはアニメの主題歌のように届ける先がお題としてあるものが多くあって、そうでない曲も含めて、曲ごとに“どうやったら人に届くか?”“どういう言語で話せばその場所の人と仲良くなっていけるか?”ということを意識して作った楽曲が並んでいて、それを一本の柱として結びつけているのが“クローゼット”というテーマなんです。

“クローゼット”というテーマはアルバムを作ろうとなってから思い浮かんだもの?

「YELLOW」(2019年4月発表のミニアルバム『しあわせなおとな』収録)という曲を作った2018年の時から決めていました。

「YELLOW」の歌詞にも“クローゼット”という言葉がありますよね。その時から思い描いていたイメージはどういうものだったんでしょうか?

僕が上京して最初に住んでいた部屋が本当に狭い部屋で。当時はボカロで曲を作っていたんですけれど、そんな狭いところで作った楽曲がインターネットを介して人に届いていく感覚、作品を通じて人とつながっていく実感を得ることで、自分の生活にある孤独感を埋めていたみたいなところがあったんです。その頃から自分の軸として、クローゼットの中から音楽を通じていろんな人に会いに行く…作品ごと、楽曲ごとに扉を開けて、その場所に行くというスタイルがあって。今もリアルにクローゼットの中で曲を作っているので、自分の現在地であり続けている感じです。

クローゼットの中で曲を作っているというのは、実際のところどういう制作環境なんですか?

制作する部屋があるんですけれど、そこのクローゼットの中には服を置いてないんですよ。小さい机と椅子とアコギを置いて、そこで最初のアイディアを作る作業をしています。

そこが神山羊にとっての聖域というか、他者が入ってこない場所であると。

そうですね。聖域かもしれないです。そこがないと逆にうまく自分の言葉で伝えられなくなる気がする。クローゼットの中の自分は、自分らしさというものに素直な気持ちを持って制作に向き合っている。一歩そこから出ると、多くの人に届くという方向のことを考えているので、一番自分のことだけを考えていられるのが、クローゼットの中なんです。

2020年にシングル「群青」でメジャーデビューしてからの約2年は振り返ってどんな期間でしたか?

クローゼットにはずっといながら、新しいドアを毎回用意してもらう感じでした。例えば「群青」は『空挺ドラゴンズ』というTVアニメのオープニングテーマというお題があって、そのアニメや原作を好きな人たちに自分のことを知ってもらって、音楽として楽しんでもらうためにどうしたらいいのかを考えて。そういうふうに曲を出すたびに毎回扉を開けて考えるんです。そこで遊んで、自分の部屋にまた帰ってくる。それを繰り返している感じでした。

アルバムの曲調は非常に幅広いですが、これまでのルーツも含めて神山さんの方向性のど真ん中にあるものはどういうものでしょうか?

自分が本当に好きで没頭していたのは、ロックやシューゲイザー、ノイズミュージックだったんですけれど、その一方で歌謡曲やポップスも大好きで。2018年に神山羊として活動を始めるまでは、それをアウトプットするイメージはなかったんです。でも、意図してポップミュージックをやりたいと思ってからは、自分の中心には絶対にポップスがあるという確信を持ちながらやっています。

ポップスは時代とともにあるもので、流行やトレンドの影響もあると思うんですが、そういう意識もありますか?

そうですね。時代の写し鏡がポップスだと思うので。それに、ポップスはジャンルが曖昧なものであるとも思っていて。“このサウンドだとポップスだ”というのがない。それが面白いと思うし、だからこそ国境が越えられるというところもある。そこが魅力的だと思います。

そういう意味でサウンドや曲調に関してどんなことを考えましたか?

ここ2、3年はトレンドの移り変わりもすごかったですよね。音楽の聴かれ方が一気に変わったので、その時々のポップスとしての在り方も変わってきた。なので、その時々で自分がやれる要素をチョイスしてやってきたという感じはあります。例えば「色香水」は80'sサウンドの手触りが良くなっている空気があったから、“じゃあ、自分が80'sに取り組むとしたらどうするか? 自分の今までやってきた音楽とミックスさせたらどうなるか?”とか、そういうトライの仕方をしている感じです。

「群青」はどうでしょうか?

この曲はロックとテクノの融合でもあるので、言ってしまえばサカナクション的なアプローチでもありますね。ベースを草刈愛美さんが弾いているというのも、そういうアプローチをしたいと思ってお願いしました。

いろんなトレンドを吸収しつつ、根っこの部分にUnderworldやThe Chemical Brothersのようなエレクトロとロックを融合させたダンスミュージックの影響もあるのかなと思いましたが。

確かにおっしゃるとおりエレクトロとロックの融合が自分のサウンドメイクの中では根幹のひとつにありますね。UnderworldもThe Chemical Brothersも大好きですし。もともとバンドマンだけどラップトップで曲を作り始めたというのが大きいのかもしれないです。「YELLOW」にしても当時のハウスミュージックのトレンドがあったし、海外の人が聴いてもキャッチーなものにしようと。そういうポップスとしての強度みたいなことも、それぞれのタイミングで考えていました。
神山羊
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OKMusic編集部

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