(C)2021「ドライブ・マイ・カー」製作委員会

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【コラム】栄冠はどの作品に? 『ド
ライブ・マイ・カー』はどうなる? 
授賞式直前! 第94回アカデミー賞主
要6部門の行方を占う

 日本時間3月28日、世界が注目する映画の祭典、第94回アカデミー賞が米ロサンゼルスのハリウッドで開催される。コロナ禍の影響を受け、日程や開催方式が大幅に変更された昨年から状況は改善。会場も恒例のドルビー・シアターとなっており、華やかさが戻ってきそうだ。日本映画『ドライブ・マイ・カー』が4部門にノミネートされた話題性もあり、例年以上に注目している人も多いに違いない。そこでここでは、主要6部門の行方を予想してみたい。
 まず、今年のノミネート状況を簡単に説明しておきたい。作品賞を含む最多12部門で候補となったのが、ベネディクト・カンバーバッチ主演の西部劇『パワー・オブ・ザ・ドッグ』。続いて、10部門候補のSF大作『DUNE/デューン 砂の惑星』、7部門候補の『ウエスト・サイド・ストーリー』と『ベルファスト』、6部門候補の『ドリームプラン』、4部門候補の『ドント・ルック・アップ』、『ドライブ・マイ・カー』、『ナイトメア・アリー』などがしのぎを削る。配信を含めて日本公開中や公開済みの作品が多く、見ていれば、より授賞式を楽しめるに違いない。それでは、各部門の予想に移りたい。
【助演男優賞&助演女優賞】
 助演男優賞は『パワー・オブ・ザ・ドッグ』からジェシー・プレモンスとコディ・スミット・マクフィーの2人に加え、キアラン・ハインズ(『ベルファスト』)、J・K・シモンズ(『愛すべき夫妻の秘密』)らの名優が候補に挙がる中、最有力は『コーダ あいのうた』のトロイ・コッツァー。自身も聴覚に障害を持つ俳優で、主人公の耳の聞こえない父親役を人間味たっぷりに演じている。
 一方、助演女優賞は、8度目の候補となる大ベテラン、ジュディ・デンチ(『ベルファスト』)を除く4人が初ノミネートというフレッシュな顔ぶれがそろった。いずれも甲乙つけがたい名演を見せているが、本命は『ウエスト・サイド・ストーリー』のアリアナ・デボーズだろう。ゴールデン・グローブ賞、全米俳優組合賞、英国アカデミー賞などの前哨戦を制しており、絶対的優位は動かない。
【監督賞】
 『ドライブ・マイ・カー』の濱口竜介が名を連ねる注目の監督賞には、8度目の候補となる巨匠スティーブン・スピルバーグ(『ウエスト・サイド・ストーリー』)、個人で通算7部門ノミネートの記録を作った才人ケネス・ブラナー(『ベルファスト』)、アカデミー賞の常連ポール・トーマス・アンダーソン(『リコリス・ピザ』(7/1公開))など、そうそうたる面々が集結。
 実力伯仲だが、本命は全米監督組合賞、英国アカデミー賞などを制した『パワー・オブ・ザ・ドッグ』のベテラン、ジェーン・カンピオン。脚本賞に輝いた1993年の『ピアノ・レッスン』以来二つ目のオスカーを狙うが、もし受賞すれば、昨年のクロエ・ジャオ(『ノマドランド』)に続き、2年連続で女性監督が栄冠を手にすることになる。
【主演男優賞】
 オスカー受賞経験者のデンゼル・ワシントン(『マクベス』)、ハビエル・バルデム(『愛すべき夫妻の秘密』)のほか、ノミネート経験のあるカンバーバッチ、(『パワー・オブ・ザ・ドッグ』)、アンドリュー・ガーフィールド(『tick, tick... BOOM!:チック、チック...ブーン!』)ら実力者がそろった主演男優賞。
 中でも本命は、テニスの世界チャンピオン、ビーナス&セリーナのウィリアムズ姉妹を育て上げた型破りな父親を熱演した『ドリームプラン』のウィル・スミス。前哨戦でもリードしている上、「実在の人物」というアカデミー賞好みの条件もクリア。『ALI アリ』(01)、『幸せのちから』(06)以来、久々の候補で「三度目の正直」となる初受賞を目指す。
【主演女優賞】
 演技4部門で最も予想が難しいのが、主演女優賞だ。候補5人の出演作が、一つも作品賞にノミネートされない珍しいケースとなった。とはいえ候補者には、オリビア・コールマン(『ロスト・ドーター』)、ペネロペ・クルス(『PARALLEL MOTHERS(原題)』)、ニコール・キッドマン(『愛すべき夫妻の秘密』)らのオスカー受賞経験者に加え、『スペンサー ダイアナの決意』(2022年秋公開予定)で元英国皇太子妃ダイアナを熱演したクリステン・スチュワートといったスターがそろう華やかさ。
 その中で本命を1人に絞るなら、アカデミー賞との一致率も高い全米俳優組合賞を制した『タミー・フェイの瞳』のジェシカ・チャステインだ。宗教に目覚めた大学生が人気テレビ伝道師へと変貌していく30年以上の人生を、圧倒的な存在感で演じ切っている。
 われわれが見慣れたチャステインの顔を生かした若い頃から、名を成すにつれて別人のように変貌していくメイクアップの効果も絶大で、メイクアップ&ヘアスタイリング賞とのダブル受賞が濃厚と見る。
【作品賞】
 10作品がノミネートされた最注目の作品賞は混戦模様。有力なのは、英国アカデミー賞などを制し、監督賞も本命の『パワー・オブ・ザ・ドッグ』と、全米俳優組合賞や全米製作者組合賞などを受賞した『コーダ あいのうた』。もし『パワー・オブ・ザ・ドッグ』が受賞すれば、NETFLIX作品としては初の栄冠となり、時代の転換点となりそうだ。
 ただし、いずれも決め手に欠けるところがあり、技術部門を中心に多数の受賞が予想される『DUNE/デューン 砂の惑星』や全米映画批評家協会賞ほかを制した『ドライブ・マイ・カー』などが後を追う。
 さらに注目したいのが、7部門にノミネートされている『ベルファスト』だ。紛争によって離れざるを得なかった故郷への思いをつづった物語は、現在のウクライナ情勢に重なるものがあり、アカデミー賞の投票権を持つ世界中のアカデミー会員たちの心をつかむ可能性もある。
  混戦が予想される中、1本に絞るのは難しいところだが、ここは世相も考慮し、聴覚障害のハンデを乗り越えていく家族愛を描いた温かなドラマ『コーダ あいのうた』としておきたい。
 以上、主要6部門の予想を整理すると、以下の通り。
助演男優賞:トロイ・コッツァー『コーダ あいのうた』
助演女優賞:アリアナ・デボーズ『ウエスト・サイド・ストーリー』
監督賞:ジェーン・カンピオン『パワー・オブ・ザ・ドッグ』
主演男優賞:ウィル・スミス『ドリームプラン』
主演女優賞:ジェシカ・チャステイン『タミー・フェイの瞳』
作品賞:『コーダ あいのうた』
 なお、作品賞、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞の4部門で候補になっている『ドライブ・マイ・カー』は、作品賞と監督賞は難しいかもしれないが、脚色賞と国際長編映画賞は有力な候補の一つ。
 その行方を左右しそうなのが、『ドライブ・マイ・カー』と同じ国際長編映画賞に加え、ドキュメンタリー長編賞、アニメーション賞の3部門で候補になっている『FLEE フリー』(6/10公開予定)だ。
 祖国アフガニスタンを離れ、難民となった青年の半生をアニメーションで表現した異色作で、紛争や難民、人種差別、LGBTQ+といった現代社会のさまざまな問題を内包し、高い評価を受けている。加えて、迫害を逃れるためにロシアを離れたユダヤ系移民というヨナス・ポヘール・ラスムセン監督の経歴も、現在のウクライナ情勢を連想させることから、いずれかの部門を受賞するかもしれない。
 『ドライブ・マイ・カー』はどうなるのか? 作品賞の行方は? 興味は尽きないが、その結果が判明するのはもう間もなく。世界が注目する年に一度の映画の祭典を、期待に胸を膨らませつつ、楽しみに待ちたい。
(井上健一)

エンタメOVO

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