ラジオ愛を持つ、吉田悟郎×山川あり
そに公演への思いを訊く オールナイ
トニッポン55周年記念公演『あの夜を
覚えてる』

2022年3月20日(日)・27日(日)に上演される、オールナイトニッポン55周年記念公演『あの夜を覚えてる』。
本作は、配信型の演劇作品で、ニッポン放送の館内を舞台に役者が演じ、その様子を生配信でおくる。出演者は、W主演の千葉雄大と髙橋ひかる、吉田悟郎、山口森広、工藤遥、入江甚儀、鳴海唯、山川ありそ、相田周二(三四郎)。総合演出を佐久間宣行、プロデューサーをニッポン放送エンターテインメント開発部の石井玄、脚本・演出をノーミーツの小御門優一郎が担当。主題歌を、Creepy NutsYOASOBIのコンポーザーとしても活動するAyase、ボーカルikuraとしても活動する幾田りらがコラボして手掛ける。
この度、オーディションで約1500人のラジオ好き・演劇好きの中からメインキャストとして選ばれた、吉田悟郎・山川ありそにラジオの魅力や公演への思いを訊いた。
ーー今回お二人ともオーディションで参加する事になりましたが、このオーディションに応募した経緯やきっかけを教えてください。
吉田:中学生くらいからラジオを聞いていて、ダイヤルは常にAM1242でしたし、当たり前のようにオールナイトニッポンがそばにありました。最近、この舞台俳優という仕事が皆さんの何の役に立っているのだろうかという事を考えるようになっていて、そんなときにラジオに救われることが多くて、この舞台は、ラジオへの、オールナイトニッポンへの恩返しのチャンスだなと。そんな思いでした。
吉田悟郎
山川:どのタイミングでこのオーディションを知りました?
吉田:結構ギリでした。最初『あの夜を覚えてる』の話が出たときに、千葉さんの舞台なのかなって。
山川:僕が知ったのは、昨年の11月末くらいの佐久間さんのオールナイトニッポン0(ZERO)内での宣伝でしたね。その時、仕事上手くいかないなーと思っていて、で、たまたまリアルタイムで佐久間さんの番組を聞いていたときに、佐久間さんがニッポン放送の社屋全部使ってやるんだと。しかもオーディションは一般公募だと。「は?」と思いましたね(笑)。その後HPで調べて11月20何日の番組宣伝なのに、締切が12月1日で。これはもう配役は決まってるなと(笑)。
ただ、今思えば本当にラジオ好きな人で、「やるぞ」と瞬発的に思った人が欲しかったのかと。ただバタバタしていただけという説もありますけど。これを聞いた時に、もう直感で応募しなきゃダメだと。これを聞いて、門は開かれているわけだし、このチャンスはモノにしないとだめでしょと思って、とりあえずすぐ応募しました。事務所通さずに、個人でメールを送って、というのがきっかけです。もう直感です。
ーーそれだけお二人は根底にラジオ愛があるということですね。
吉田・山川:そうだと思います。
山川:でも僕は吉田さんほど生粋ではないんですよ。学生時代はそんな聞いてなくて、この10年くらいしか聞いてないですね。
山川ありそ
ーー原体験は?
山川:ちょろちょろは聞いてましたけども、支えになってました、とかいうタイプではないかな。僕20代後半になって運転免許取って、そのカーラジオから入っているんです。AMよりFM寄りですね。だんだんそこからタイムフリーとか知ってバラエティを聞くようになって……という形ですかね。
ーー吉田さんの原体験はどうですか。
吉田:受験生のときに、同級生が福山(雅治)さんの「魂のラジオ」を聞いていて、それを勧められたんですよ。で聞いてみたらあの福山さんが結構なことしゃべってるなー、と中学生からしたらドキドキするわけですよ。それが最初でした。でその同級生が番組にメールを送っていて、番組グッズを持っていたんですね、メモ帳みたいなものを。そこに色々受験生に対するメッセージが書いてあって。ちょうど受験の時の福山さんのラジオが最初の体験ですね。
で、その番組の中でナインティナインさんの話が出て、じゃあ木曜日のナイナイも聞いてみようと。そこからどっぷりとはまっちゃいましたね。オールナイトニッポンの中ではダントツで歴が長いですよね。94年からやってるからもう28年ですか。山川さんは運転中にすっと入ってきた感じですか?
山川:そうですね。敢えて聞こうというよりは、寄り添って流れてくるものという感じなんですよね。定食屋とかタクシーの中で自然と流れてくるような。だからこれがきっかけというよりかは、気が付いたら毎週聞くようになっていた、という。なのでオールナイトニッポンを聞き始めたのは皆さんより遅いかなと。
(左から)吉田悟郎、山川ありそ
ーーそんな毎週聞くようになってしまうラジオの魅力とは何でしょう。
吉田:パーソナリティの方の弱みだったり、オードリー若林(正恭)さんの言葉を借りるとその人の“足りない部分”だったりを聞かせてもらっている、リスナー側からも近くなるような感じです。パーソナリティが寄り添ってくれるというのも好きなんですけど、どちらかというと弱みを話してくれることで、リスナー側も、それで? と近寄って行っちゃう感じですかね。想像力を掻き立てられるというか。音声だけですごい情報量を伝えているというのは、受け取り側が一歩踏み出さないと意図をくみ取れないし、送る側もそれにゆだねているというか、「ちょっと受け取ってみて」という感じで弱みを発信しているような気がします。その想像力でお互い歩み寄るというのがラジオの魅力なんだろうなと。受け取り側は、声は出してないけど、想像力で声を出して歩み寄っている、そんなところが魅力だと思います。
この演劇も、同じで観客の方に想像力で色々補填していただいて、そのシンパシーで、「一つのリンゴが見えるようになってくる」というところが共通している所だろうなと。
ーーお二人は今回作り手側の役で、番組見学もされていると聞いたのですが、見学されて、何かおもしろい気づきや、得たもの、演技に活きそうな発見はありますか。
山川:リスナー側からすると普段スタッフさんはパーソナリティからいじられているイメージがありますけど、でもしゃべっていない裏の所で、しっかりと決まりごとの声掛けがあるんですよ。CM明け30秒前というADさんの声に対して、必ず皆さんが応えるとか、曲を掛ける前にミキサーさんにADさんが曲の頭出しで確認するとか、そういう小さなやり取りが俺的には一番収穫だったかなと。絶対に普段だったら見れない裏側なので。仕事としてのチームワークというか、そういうマニュアル面を知ることができたのが良かったかなと。
吉田:僕はディレクターの役なので、ディレクターの動きを見せてもらってましたけど、ディレクターさんってずっと全体の流れを見ていて、その中でパーソナリティの話を聞いて、そろそろ曲行かないと、とかネタの数を数えてとか、ジングルをミキサーに伝えて流したりとか、次このコーナーだからこの小道具もっていってあげてとか、いろんなことを常にタイムスケジュールを感じながらやるという、意識を張り巡らしている感じがすごいなと。それをパーソナリティとも話しながら実行しているので、当然ですけどぼーっとしている時間なんて絶対ないですよね。その集中力というかこれぞプロの仕事というのを体感してきました。
吉田悟郎
ーーそれを演技で表現するとなると難しいのでは。
吉田:セリフひとつというよりかは、ディレクターとしての動きだったり、ミキサーさんやADさんとの関係性だったり、そして常に時間の意識があって、そのセリフにない部分を埋めていくという事がリアリティにつながってくるのかなと。
山川:三浦ディレクターには落ち着いてってアドバイスされていたんだっけ?
吉田:そうです、まぁディレクターなので落ち着かないとですよね(笑)あらためて素敵な言葉だなと。張り紙にしておきたい。
ーーこの作品のこういう点を見てほしい、注目してほしいというポイントがあれば、教えていただけると嬉しいです。
吉田:リスナーって、パーソナリティと同じくらいスタッフさんの事を知っていて、それぞれに親しみを持っていると思うんですよ。そのスタッフの動きや、どんなことが起きてどう対応しているのかとか、スタッフさん方の人間味みたいなものを映像として見られるのは、きっとリスナーの皆さんとしてはうれしいんじゃないかなと。
山川:僕は“生放送”だという点です。映画みたいに予め撮って流せばいい所を、あえて生放送で流すという緊張感、生放送に向かうという人間たちの緊張感、そのライブ感を一緒に楽しんでもらえばいいと思います。
その生の生き生きとした感じを楽しんでもらえればと。
山川ありそ
吉田:自分たちも何が起きるかわからない、配信で止まっちゃうとか。
山川:ガチでトラブルがある可能性もあるので(笑)。テクニカルな部分だけでなく、セリフを飛ばしちゃうとか、それも含めてエンターテインメントとして楽しんでもらえればと。
ーー最後にお互いの印象や、お芝居のこういうところがすごいというところを教えていただけますでしょうか。
山川:最初にあった時は、壁がないという訳ではないんだけど、ちょうどいい壁、オブラートのような薄い1枚があって、でも自然にそれがすーっと溶けて行って話せるというような。それがお芝居にもあって、普通スイッチをグッと入れる人が多い中で、すーっと自然に入っていくような、緊張しいの僕からするとうらやましいなと。そういう柔らかい感じが、視野を広く番組のクルー全体を包み込んでくれるんじゃないかなと。ディレクター役にはぴったりだと思います。顔もかっこいいし(笑)。
吉田:僕は、山川さんは言葉を発したときに、その場の雰囲気をパッと変えちゃう人なんだなと。本読みのときも、「あ、もうありそさんの空気になっちゃった」と。それって本当に稀有な存在で、例えば舞台で赤ん坊がいると、もう目が離せなくなってしまうような動物的な存在感。逆に言えばヒヤヒヤするかもしれません(笑)。なにをしでかすかわからない。でもそれって俳優さんにとっては大事なところで、俳優というのは常に“危なっかしい存在”というのがあるんですが、それができてしまう人という。きっと20日と27日全然違う事をするかもしれません(笑)。
山川:佐久間さんが、相田さんとのシーンはアドリブでもいいんじゃない? と言っていたのでこれから稽古するんですが、どうなるか楽しみですね(笑)。
(左から)山川ありそ、吉田悟郎

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