森山直太朗という
シンガーソングライターの奥深さを
1stフルアルバム
『新たなる香辛料を求めて』で痛感
随所で感じる新進気鋭の芸術性
…と、少し油断(?)していると、M6「例えば友よ」で再び森山直太朗の何たるかを突きつけられる。ケルトミュージック風の音使いでミディアムテンポ。リズムは3拍子っぽい。何だか楽し気だ。フォーク然としたメロディーではあるが、やはりハイトーンが響くところも随所にあって、ここまで聴いてくると、自分のような“森山直太朗弱者”でもその歌唱に慣れてくるというか、ちょっとした安心感のようなものを抱くから不思議だ。そのM6「例えば友よ」はこんな歌詞だ。
《今僕らは 変わらない時代の尖端で/戸惑いながらも 未来へと続く扉を叩く/例えば友よ 隣の芝が気になったら/よく見てみろよ 何もないだろ》《今僕らは 慌ただしい歴史の隅っこで/はにかみながら 夜な夜なコンビニで立ち読みしてる/例えば友よ 誰かに詰られたとしても/詰り返すことなかれ 限がないから》(M6「例えば友よ」)。
プロテストソングとも言えるし、カウンターカルチャーでもある。フォークでもあるし、ロックと言うこともできるだろう。《コンビニで立ち読み》と時代性をサラッと入れているところも見逃せない。弾き語りスタイルでのパフォーマンスも少なくなく、昭和にもあったようなこの楽曲タイトルからしても、いわゆるフォークシンガーと見られてもおかしくなかっただろうし、そう見るリスナーもいたかもしれないが、こうした時代性の取り込みからは、彼の新進気鋭っぷりが如何なく感じられる。少なくとも懐古主義的なシンガソングライターではないことをダメ押しされるようだ。