L→R 小谷茉美子、アンズ卍100%、Koyoka、メロネサリ、菊地桃子

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【8bitBRAIN インタビュー】
自分たちのやりたいものを
大人の意見を聞かずにやった

ここからは先ほどから話に上がっている新曲についてうかがっていければと思います。アルバムのオープニング曲である「下弦に舞い散る夜桜は、あなたを想い永遠を唄ウ。」。ラウドで電子音が入っていて、シャウトから始まるというのはこのグループらしいところで、その意味では1曲目に置くに相応しいとは思いますが、和風のメロディーが新鮮ではありますね。いわゆるヨナ抜き音階のようですし、ラップパートには七五調の箇所もありますね。アンズさんが作詞をされてますが、この曲についてはどんな印象でしょう?

アンズ
この曲は全員で作詞して、コンペで私の歌詞になったんです。

そういう段階を経たんですね。

菊地
はい。そういうことは初めてでしたけど。
アンズ
うん。“この曲がアルバムのリードです”と曲を渡されて、全員で歌詞を書いて、そこから選ばれたものを採用しようとなり、それぞれが個性あふれる歌詞を書いたんですけど、私の場合は…言い方は悪いですけど、ビジネス書きをしたというか。選ばれたかったので、思いっきり狙って和風で、豪華絢爛とか狂喜乱舞とか桜花爛漫とか誰もが絶対に耳にしたことがあるような“日本!”っていうワードをいっぱい使って書きました。あと、アルバムタイトルの“shout”は、私たちがいるのはあまり知られていない小さい世界だけど、それがどれだけ多くの世界の人に届くかという挑戦の意味を込めて小文字にしているんです。それもあったので、ラップパート以外は強い言葉を使いたくないと思ったので、消えちゃいそうな言葉ばかり選んだというか。“ハチブレはいなくなっちゃうんじゃないか”って思わせるくらいに書いてみました(笑)。

でも、この歌詞にあるメッセージはすごく力強いじゃないですか?

アンズ
そうなんです! だから、やっぱり出ちゃうんですよね。“分かってほしい!”“気づいて!”っていうのが、どうしても出ちゃう(笑)。使っている言葉はわりと謙虚というか、昔の日本女性をイメージさせる、一歩後ろに下がって儚げにいる感じで書いたんですけど、最後のほうは出ちゃってまいすね。我がままが(笑)。

そこがこのグループの伝えたいことでしょうし、その意味でも1曲目らしいとは思いますよ。

アンズ
ありがとうございます。歌を続けるのは難しいということを、このコロナ禍で全員が感じていて。周りには解散しちゃうグループもいっぱいいたし、ひとりだけが辞めちゃって“どうしよう?”って言ってるのも見てきたので、続けること…曲名の“永遠を唄ウ。”はそういう意味なんですけど、この5人が変わらずに8bitBRAINを届けることの大事さとか、続けることの大変さとか、なくなっちゃうことを想像した時の悲しさとか、そういうものが伝わるといいなって。

グループの根底にあるテーマ性でありながらも、ちゃんと時代性もすり合わせていると。で、和風と言えば、7曲目「-ShowTime -」もそうで。お祭り囃子を使ったナンバーと言いますか、1曲目以上に和風でして、これもなかなか興味深く聴かせてもらいました。このかけ声は、古い世代には一世風靡セピアを彷彿させます。

小谷
そうなんです! この曲を聴いた時、そんなに詳しいわけじゃないんですけど、めちゃめ一世風靡セピアっぽい力強さを感じて、RECする時にメンバーに“こういうふうに歌ってほしい!”ってわざわざYouTubeを観てもらったんです(笑)。

もちろんリアルタイムで見ていたわけじゃないでしょうが、この♪ソイヤ、ソイヤ〜は一世風靡セピアからのインスパイアでしたか。歌詞は小谷さんが書かれてますが、内容は高校野球をテーマにしたもので、ゆくゆくはセンバツの行進曲を狙えそうな内容と言えるかもしれません(笑)。

小谷
狙いました(笑)。リード曲とこの曲が和風で、雰囲気は似てるんだけど、表と裏みたいな感じになったらいいなと思って季節もつなげて。リード曲は桜で春なので、こちらは夏っぽい曲にしたいと。もともとがお祭りテイストだっから、夏と言えばやっぱりアツいイメージがあるし、中でもスポーツってみんなが熱中するから“夏は甲子園もあるし、野球だ!?”って。私が野球好きなのもあるんですけど(笑)。
菊地
ラーメンの時も同じようなことを思ったよね(笑)。(※3rdシングル「Black Sabbath」のカップリング「SeNSe oF GuiLT」。歌詞はラーメンがモチーフとなっている)

(笑)。2番はモロに野球モチーフですね。

小谷
私、中日ドラゴンズのファンなので、本当は《バンテリンドーム》にしたかったんですけど、それはちょっと偏りすぎてると思って《甲子園》にしました(笑)。
アンズ
一応、考えたんだ!?(笑)

若者を応援する方向で考えたんですね?

小谷
そうです(笑)。この曲でスポーツとかいろいろと頑張っている人たちにエールを送れたらいいなと思って。《神輿を掲げ空高く舞う声》というのも、お祭りの神輿だけじゃなくて、“士気を上げる”という意味で“神輿”というワードを入れたりして。とりあえず楽しい曲にしました(笑)。

《6-4-3考えるなIt’s Show Timeだ》とか、間違いなく野球好きからしか出てこないフレーズもありますね。

アンズ
私、未だに分かってない。
小谷
ショート→セカンド→ファーストでゲッツー!(笑)
アンズ
そう言われても分からない(苦笑)。
全員
あははは。

続いて3曲目「Loudspeaker」に話題を移しましょう。これは1990年代、2000年代のパンクに近いと思って聴いていましたけど、歌メロがさわやかですね。

Koyoka
さわやかな歌詞も初めて書きました(笑)。これまでの8bitBRAINってちょっとダークで、言いたいことを言うグループで、自分は“伝えたいことをバーッと出したい!”っていう気持ちで歌詞を書くことが多かったんですね。擬人法を使ったり比喩っぽくしても、“言いたいことをはっきり言うんだぞ”みたいな。でも、今回は初めてこういうさわやかなサウンドだったので、“やっとさわやかな曲が書ける!”と思って、私はこの曲を選んです。アルバムは集大成だし、これまでやってきた4年間で初めて出すものだし、ここまで支えてくれたのはファンの方たちだという想いが自分の中で一番にあって…それは今いてくれるファンであったり、まだ見ぬ方々だったりもするんですけど、“一緒にいてくれてありがとう”という気持ちを伝えたいと思って。バラードじゃなくて、こういうさわやかな感じで、自分が持っている素の部分を出せたらいいなと思って書きました。《君からもらった言葉で息をしてる》とありますが、それは実際にファンの方からもらった言葉だったりしますし、人生の中で自分に接してくださる方の言葉が、これまでどれだけ救いになっているのか…その恩返しがしたい気持ちがあって書いたところもありますね。

《きっと君を救う声に出会えるよ》とありますが、これは1曲目「下弦に舞い~」の《あなたにだけ/届けたい歌があるんだ》とテーマが共通しているように思いますし、作者者は違っても通底するものがあるんだなと思って聴いておりました。

Koyoka
あぁ、確かに!
アンズ
言われればそうですね(笑)。感じていることってメンバーで一緒なんだなって、こうした歌詞をじっくり見ると分かりますね。
Koyoka
“shout”には“小さい世界から発信していきたい”って言う想いがあるんですけど、その“小さな世界”の中には身近にいるファンの方々も入ってくるので、《君》にはファンの方々も入るし、“その声にきっと出会えるから頑張ろう”と思う対象だったり、気づいてほしい相手だったりするので、そういうところでつながるのかなとも思います。

あと、サビ後半の《さぁanytime anywhere Live the life you love/My life is still long》の箇所がめちゃくちゃカッコ良いですね。聴いてて気持ちがいいです。

Koyoka
“どんな時でも愛情を持っていこうよ”っていう。この作詞をしている時、ちょうど亡くなった方がいてーーだからと言って、この歌詞はその方のことを書いたわけではないんですけど、やっぱり人生って何が起こるか分からないし、いきなり何かを失うことってあって。それこそ私たちの身近では起きてもおかしくないから、“お互いに愛情を持って生きていこうね”って気持ちを随所に入れてみました。

さて、5曲目「“Look at me”」にいきましょうか。個人的にはこれがこのアルバムの中では最も問題作ではないかと思っていて。メロディーはポップで、サウンドはちょっとハウスっぽくて、可愛らしいダンスチューンという印象ですが、歌詞がなかなか曲者で(笑)。

菊地
(笑)新曲を5曲聴いて“これが一番好き!”って直感で選んだんですけど、承認欲求について書きたかったんです。私、承認欲求の強すぎる人がすごく苦手で。“いいね”の数稼ぎをするとか(笑)。私は“数字が多ければ人気”みたいなのが苦手で、最初はそれについて物申す曲を書きたくて。で、その方向で書いていたんですけど、曲を聴けば聴くほど、“これは物申す側じゃなくて、承認欲求を求めている側のサウンドだな”と思って、それまで書いていた歌詞を全部消して、もう一回書き直して、まずはそっち側に成りきってみたんです。私にも承認欲求はあるし、“もし私がそういう側だったらどうだろう?”ってすごくたくさん考えて。あと、ちょっと時代感のある単語を入れたいと。今ってTwitterを使っていない人がいないくらいの感じだろうけど、もうちょっと経ったらTwitterも古くなるのかなと思って、《ハッシュタグ》とか《拡散希望》というのを入れておきたかったんです。

時代性をちゃんと残しておきたいという。

菊地
はい。基本的には自己承認欲求の強い女の子の立場に立って書いたんですけど、“自己承認欲求って知らぬ間に誰かを傷つけているかもしれないよ”ってことが私が一番伝えたいことだったから、それもどうしても入れたいと思って。最終的には“見ている鏡に写っているのは自分じゃないよ”ということと、自分が目立とうと思って数字を稼ごうとしていろんな言葉を放っている中で“誰かを傷つけているかもしれないよ”ということで、最後に《気付いて 傷つけたの あなたが》と入れたり。

あと、歌詞の先鋭さもさることながら、Bメロでシャウトから始まってみなさんの声が重なっていくところがとてもカッコ良いですね。全体的には可愛いらしい感じなんですが、シャープに攻めているところもあって、そこにはこのグループらしさを感じたところではあります。

菊地
鏡をテーマにしたくて、表と裏とで同じものが写るというので、同じ単語を使って全然違う意味を持たせたりとかしています。1番では可愛くするために《着飾って》って使っているけど、2番では人によく見られようとする《着飾って》として使ったり、同じ言葉で末尾を揃えたりして。

8曲目に3rdシングルのカップリングであった「I'd like」が収録されていますが、あちらも“もうひとりの自分”といったものがテーマでしたよね? 「“Look at me”」とも通底しているようです。

アンズ
私も思いました。あの曲も“誰かになりたくてそこに近づこうとするけど、そうなったらなったでそれって自分の幸せなのかな?”というところがあるので。

そうなんです。それぞれの楽曲がしっかり通じてるんですよ。一本筋が通ってるんです。

アンズ
そうなんですよね。ちょっと…キモい(笑)。
全員
あははは。

別にキモくはないですよ(笑)。いいアルバム作品にはすべからくそういうところがあると思います。

アンズ
そうなんですかね? 他のメンバーと同じことを思ってるんだなぁ。
菊地
今回「I'd like」が選ばれて、私が一番喜んでました(笑)。
アンズ
そう! 「I'd like」の作詞を手がけた私よりも喜んでたよね。…ちょっと怖くなりました(笑)。
菊地
確かに(笑)。

OKMusic編集部

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