【東京初期衝動 インタビュー】
下手でも“カッコ良いでしょ”って
気持ちで、振り向かないことが大事
可愛い感じの曲でも
ちゃんと東京初期衝動になった
また、今作は歌詞の描写が細やかに感じました。「不純喫茶でまた会いましょう」の《調子づいたハート爪に乗せても/うまくいかない 憂鬱Holiday》の“せっかくネイルで気分を上げたのに…”って気持ちとか、「マァルイツキ」の《前髪も気にしないで走った》《ぁあー!前髪も直さなくちゃ…》という好きな人を目の前にした時の仕草とか。
しーな
伝わった! Instagramにネイルを載せたことがあるんですけど、それでも日常は満たされないと思ったことを書きました。でも、それ以外は実体験じゃないんですよ。恋バナを聞いて恋愛モードをチャージをしたり、少女漫画を読んで恋をしている気持ちになったり…「不純喫茶でまた会いましょう」はまれちゃんに“中野”ってお題を出されて、今まで中野で食べたものとか見たものを書いたんですけど、そっちのほうが作りやすかったですね。
実体験じゃないほうが自分の感情が先走らないから冷静に書けるのかもしれないですね。「ボーイズ・デイ・ドリーム」の《ねぇ今日も好きよ/まつ毛の先から垂れる恋心》とか、お風呂で歌っているシチュエーションも少女漫画っぽいです。
あさか
これはまれちゃんが作った曲なんですけど、こんだけ可愛い感じの曲でもちゃんと東京初期衝動になっているのが意外でした。曲にあるストーリーは実体験じゃなくても、今の自分が思っていることが表れやすいバンドなので、いろんな曲を作っていいんだと思いました。
曲の流れにはずっと安定がないですからね(笑)。あと、「トラブルメイカーガール」の《産みたいくらいに愛してる!》は大胆な表現ではあるけど、好きな人の母親っていう絶対的な存在になりたい気持ちは分かる人には分かると思います。ある意味、そこまでの思考になってしまう繊細さを感じました。
今作ではその繊細さがより楽曲に出ていると思います。今まではどれだけ叫んでいても弱さと紙一重みたいなところを感じていたんですよ。
しーな
負け犬の遠吠えですからね。弱い者こそよく吠えるって。
でも、今回はひと味違って、弱い部分は弱いまま表現しているのが魅力のひとつだと思います。コロナ禍の状況も入った暗いテーマを持つ「クリスマス」もメロディーは美しいけど悲し気ですし。あと、「パンチザウルス」は今作の中でも特に明るくてポップですが、それが友情を歌った曲っていうのも面白かったです。恋愛では絶対こんな情緒にならなそう(笑)。
しーな
女友達が一番好きなんです。だって、裏切らないじゃん! 裏切られてもお金絡みじゃなかったら許せるし。で、こうやって独り身になっていくんだろうな…。
曽我部恵一さんと共作の「銀河」は、温かくも切ないメロディーと、曽我部さんの包容力のあるヴォーカル、壊れそうなしーなさんの歌声にドキッとしました。
しーな
この曲は全て曽我部さんのおかげなんです。曽我部さんはバンド初期の自分と、プロの自分を行き来できる唯一の人だと思いました。私たちに合わせてくれるのもすごいし、メロディーセンスが素晴らしすぎる。歌詞を見た時も“いつでも最高の恋をしている方なんだなぁ”って思った。色を表す時の言葉も素敵だし、ひとつひとつの表現がきれいで、みずみずしくて…果実で例えると切りたての桃みたい。「空気少女」も曽我部さんとの曲の候補だったんですよ。ボツになったから東京初期衝動の曲にしてしまったけど、曽我部さんのセクシーな歌声を想像しながら歌っています。
初めての共作が曽我部さんで、「腐革命前夜」にはサウンドプロデューサーとして江口 亮さんが参加していて、『えんど・おぶ・ざ・わーるど』は第三者がかかわった初めての作品なんですよね。
しーな
他の人だったら大事件になっていたかも。でも、“人と作るのって楽しいな”っていう新たな発見があったので、これからもやりたいと思っています。
今後の広がりが楽しみです。最後に「東京」が入っていますが、バンドマンにとって東京って大事な題材で、それが入っているアルバムという部分でも自信作であることがうかがえます。
しーな
「東京」という曲が入っているのは、自分たちにとっても大きい。それに、最近6年つき合った彼氏と別れたばっかりだから、めちゃめちゃ響いちゃう。ツアーで歌えないんじゃないかな? 自分から“別れよう”と言ったんですけど、嫌いになったからじゃなくて、踏んぎりなんですよ。それに、別れてもやり直せると思ったから、ここで一回離れてもいいんじゃないかなって。でも、6年間の思い出がありすぎて、今、動けないんです。もう異性との思い出は増やしたくないって思いました。
そういう思い出が「東京」にも入っている?
しーな
いや、別に入ってないですよ。この曲は妄想だから、全部フィクションです。
今の話は何だったのか(笑)。
しーな
でも、歌詞に出てくるサンプラザの近くに住んでたし、「東京」を作っている時も褒めてくれました!
ぜひツアーでも聴きたいので、楽しみにしています。今作はポップな曲も多いですが、「さまらぶ♥」(2021年5月発表のED『Second Kill Virgin』収録曲)然り、ライヴではパンク感が出ますから。
しーな
そうですね。ライヴは聴きやすさとか、聴きにくくしてやろうとか考えずに、本当にその時の音だから。
あさか
バラエティー豊かなアルバムになったので、全部を愛してくれなくてもいいから、ひとつでも心に残ってくれたら嬉しいです。今回の制作で鍛えられたので、ツアーも頑張ります!
取材:千々和香苗
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アルバム『えんど・おぶ・ざ・わーるど』2022年2月2日発売
チェリーヴァージンレコード
『「えんど・おぶ・ざ・わーるど」レコ発 全国ツアー2022「東京初期衝動と大気汚染ツアー」』
4/23(土) 北海道・SPiCE SAPPORO
5/03(火) 千葉・LOOK
5/06(金) 石川・金沢GOLD CREEK
5/07(土) 香川・TOONICE
5/14(土) 広島・HIROSHIMA 4.14
5/15(日) 福岡・INSA Fukuoka
5/28(土) 宮城・仙台FLYING SON
5/29(日) 茨城・club SONIC mito
6/11(土) 大阪・LIVE HOUSE Pangea
6/12(日) 愛知・Live House HUCK FINN
6/17(金) 東京・SHIBUYA CLUB QUATTRO
7/03(日) 沖縄・Output
トウキョウショキショウドウ:2018年4月、しーなちゃん(Vo&Gu)を中心に銀杏BOYZ好きが集まって結成し、20年11月にあさか(Ba)が加入して現体制に。21年には日テレ系音楽番組『バズリズム02』恒例の新春企画『これがバズるぞ2021』にランクインし、TBS『マツコの知らない世界』では、海外でも活躍が期待されるガールズバンドとして紹介されるなど、話題を呼んでいる。『BAYCAMP20202』『RUSHBALL 2021』『MERRY ROCK PARADE 2021』などの大型ロックフェスにも出演。東京初期衝動 オフィシャルHP
「春」MV