L→R Yuh(Gu)、瑠伊(Ba)、Tohya(Dr)、海(Gu)、智(Vo)

L→R Yuh(Gu)、瑠伊(Ba)、Tohya(Dr)、海(Gu)、智(Vo)

【vistlip インタビュー】
現段階でやれることを、
『M.E.T.A』でやりきった感覚がある

「BGM「METAFICTION」」は
“音楽の力”ということも大きなテーマ

「BGM「METAFICTION」」と「"TOXIC"」の歌詞についてもおうかがいしたいのですが。

「BGM「METAFICTION」」とか「"TOXIC"」の歌詞は、実は完全にアルバムツアーを想定して書いたんです。今回のアルバムのコンセプトやライヴの演出、バンドとしてどういうことを表現したいかといったことを踏まえて書いていきました。特に「BGM「METAFICTION」」は“音楽の力”ということも大きなテーマとして入っているんですよ。今までは“ファンになってくれ”だったり“ファンを離さない”というような歌詞がすごく多かったけど、この曲は時代的な背景も反映されています。コロナ禍になったことで音楽はあまり必要ではないものというラインに置かれている気がしていて、そうじゃないだろうと。この曲の中の演者…つまり、僕たちがメタフィクション的に曲の中から、そう語りかけているようなイメージで書きました。僕は今まで何度も音楽に救われたし、音楽を信じている。そういう強い想いと“超越”をかけて、“この境界線を踏み越えてみませんか?”ということを書きたかったんです。

リスナーに訴えかけると同時に、ライヴの幕明けに相応しい歌詞と言えますね。「"TOXIC"」は“君がほしい”ということを歌っていながら、やさぐれ感が香っているところが印象的でした。

「BGM「METAFICTION」」がまだ序章的なところなのに対して、「"TOXIC"」はオープニングテーマっぽいイメージで書かせてもらいました。今回のアルバムの力強さを見せたかったし、「BGM「METAFICTION」」からの流れで自分たちの音楽はすごく中毒性のあるものだということを表現したかった。それがちょっとやんちゃな印象を与えていると思います。

両曲ともにお洒落な楽曲とロックが香る歌詞という組み合わせが独自の魅力を生んでいます。今作に収録されているアダルト系では、シティポップに通じる洗練感を押し出した「Sunday」(【lipper】のみ収録)も聴き逃せません。

こういう路線は、ことごとく瑠伊です(笑)。
今回のキーマンだよね、間違いなく。
うん。僕が伝えたことを、ちゃんと返してくれました(笑)。「Sunday」もすごく気に入っています。まったく新しい方向性だけど、無理をしているような感じはないだろうし。瑠伊は自分の中にあったものを昇華させて表に出したんだと思います。
そうだね。瑠伊は考え込んで作っていないんですよ。そこがね…ムカつく(笑)。僕は考え込んでも、こういうのは出てこない(笑)。

とはいえ、バンド内でコンポーザーの棲み分けができているのはいいことだと思います。「Sunday」もお洒落な曲でいながら、歌詞は女性のドロドロした内面を描いているというのが絶妙です。

この曲のデモを聴いた時、日曜日の朝にテーブルを囲んで、ご飯を食べている情景が浮かんできたんです。それに対して僕の中でラブソングで書いてみたいテーマがあって、それが1番のサビの《「何も無かったんだ」なんて酷い云いワケをしないでよ。/何も出来ないのは大切に思う証拠。》ということなんです。何もなかった、何もしなかったというのは相手のことをすごく大切にしているからだと思っているので。本気の恋だから何もしないという。

その感覚は分かりますし、美しい心ですよね。でも、それを奥さんに見透かされているというのがですね…すごく怖いです。

全員
あははは。
そういうシチュエーションを書きたくなったんです。この曲のアウトロはすごく刺さる、シリアスな展開なんですよね、コード感とかも含めて。それにインスパイアされた部分もあった気がします。

曲調に合わせて《都会の夜景が〜》みたいな歌詞を書くのではなく、楽曲のニュアンスからこういう歌詞を書くあたりは、本当にセンスがいいと思います。

智はそこにはいかないということが分かっているから、作曲者がとんでもない曲を持ってこれる気もしますね。例えば“シティポップであればこういうものになるよね”という歌詞を書くヴォーカルだったらまとまりがつかなくなってしまうから、みんなが書く曲の幅がもう少し狭まると思うんですよ。でも、智はどんな曲であれ、vistlipにしてくれる。だから、よく言えば“信頼している”、悪く言えば“丸投げしている”(笑)。

また、「Sunday」はアコースティックギターがフィーチュアされていることもポイントですね。

そう! 今回僕は「ENTRY MODEL」と「アンサンブル」「Sunday」でアコギを弾いているんですけど、「ENTRY MODEL」はデモにそれっぽい音が入っていたから“じゃあ、俺がアコギを弾くわ”と言ったんですよ。あとの2曲に関しては僕の判断でアコギが合うと思って、“これ、アコギを入れるから”と言ったら作曲者のTohyaと瑠伊に驚かれました。“とりあえず入れるから聴いて”と言って弾いたら納得してくれたんですけど。特に「Sunday」はサビと2回目の間奏、アウトロは左チャンネルのギターもしっかり歪んだギターを入れて欲しいと言われていたので、最初は棲み分けるつもりだったけど、全編アコギでいくパターンもありかもって現場でなって。瑠伊が“アコギは全然イメージしていなかったけど、すごくいいね”と言ってくれて。自分が思っているところと楽曲の到達地点がちゃんと嚙み合っていたということを感じて嬉しかったですね。

瑠伊さんも嬉しかったと思います。続いて、冒頭で話が出た「無音」について話しましょう。この曲は翳りを帯びたエモーショナルな曲でいながらロック感もあるという独自の味わいが光っています。

「無音」はあまり何も考えないように心がけて作った曲です。僕は何かを狙って曲を作ると駄作しか生まれないので(笑)。今回はみんなが作ってきた曲を並べて、どれをアルバムに入れるかを考えていた時に、ライトな曲調のものが多いから歪んでいるギターがゴーン!と鳴っている曲を作ろうと思って、ギターを弾きながらなんとなく鼻歌を歌ったら、“これはかたちになりそうだな”という冒頭のピアノとシンセのイメージが出てきて、うまく音色がハマってくれたので、わりとスムーズにかたちにできました。

「無音」はヘヴィなギターが鳴っていながらラウドではなくて、洗練感を湛えた世界観になっていますね。

そういうものにしたかったんです。ダウンチューニングのギターを入れたいと思っていたけど、ゴリッとさせてしまうと合わないだろうなって。ダウンチューニングで歪んでいるけど滑らかで、聴いていて疲れないギリギリのところに持っていきました。それに、もともとこの曲はキーが1音高かったんですよ。それだと僕が歌うパートがあるということもあって歌がキツかったので下げたんです。キーを下げたことで暗い印象になったら嫌だなと思ったけど、むしろ正解の方向が見えたし、ディレクターがちょっとアドバイスをしてくれたんですね。“ベースをこうしたら?”とか“ギターの感じをこうしたら?”と言ってくれて、澱まない感じを出すことができました。

この曲も表現したいものが明確だったんですね。

そう。でも、一番の功労者は瑠伊ですね。なんかあいつばかり褒め讃えるの、ちょっと嫌ですけど(笑)。この曲はギターよりもベースなんです、実は。ベースの音と弾いているタイム感がキーで。ベースは全部指で弾いていて、その音の出方のおかげというか。もしもピックでバキバキに弾いたり、もっとヌルく弾いていたら成立しなかったと思う。本当に瑠伊がいい塩梅でバシッとやってくれたから、ギターを弾くのはめちゃくちゃ楽でした。
「無音」は目指したところがすごく難しかったけど、せっかく海とツインヴォーカルっぽく歌うから、そこをもうちょっと強調したい…ということを言っていて。それで、海も現場でヴォーカルラインを何回も考え直して、“いや、それはダサいよ”とか言いながらふたりで詰めていきました。それが印象に残っていますね。あとは、「無音」の歌詞も“音楽の力”ということがテーマになっていて、僕の中では「BGM「METAFICTION」」と「無音」は対になっています。

OKMusic編集部

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