L→R 山田貴洋(Ba&Vo)、伊地知 潔(Dr)、後藤正文(Vo&Gu)、喜多建介(Gu&Vo)

L→R 山田貴洋(Ba&Vo)、伊地知 潔(Dr)、後藤正文(Vo&Gu)、喜多建介(Gu&Vo)

【ASIAN KUNG-FU GENERATION
インタビュー】
ロックバンドが“Alright”って
言うことが大事

僕も含め、聴いてくれた人にとって
変化するきっかけのひとつになれたら

L→R 喜多建介(Gu&Vo)、後藤正文(Vo&Gu)、山田貴洋(Ba&Vo)、伊地知 潔(Dr)

L→R 喜多建介(Gu&Vo)、後藤正文(Vo&Gu)、山田貴洋(Ba&Vo)、伊地知 潔(Dr)

もともと後藤さんの歌詞は分かりやすくハッピーだったり、前向き一辺倒ではないですけど、今作ではいっそう世の中に立ち込める不穏な空気感や閉塞的なムードにフォーカスして書かれている印象が強くて。例えば「You To You」に綴られた《それで良いんだろうか》という一行にものすごく抉られるというか、ハッとさせられるんですね。コロナ禍という状況も加わって、より今の社会やそこに生きる人たちの在り方に対して感じていらっしゃる危機感や問題意識が浮き彫りにされているように感じたのですが。

普通に生きているので、生活している中で耳に入ってきたり目にする社会問題とかは、歌詞に盛り込まれていきますよ。そういったものを無視して何かを書いたりするのは非常に難しいと思います。芸風じゃないですけど、僕は内面のことだけを使って作詞はしないので、自分の社会に対する問題意識とかはいろんなところに出てきちゃいますね。

社会とつながっている自分も自分だと。

社会につながっている自分こそ自分だと思います。どう考えても“私”というものが誰かと接することなく成立するはずがないですから。

特に今作は社会とのつながりを考えさせられる歌詞が多い気がします。コロナ禍で直接的に誰かとつながりにくかったりもするから余計にそう感じたのかもしれませんが。それにしてもシニカルさに磨きがかかっている。「De Arriba」や「Gimme Hope」は特にそうですし、「C'mon」も曲調はすごくさわやかなのに歌詞だけ見るとめちゃくちゃ辛辣で。

そういう書き方をするのが自分なんだと思っています。嫌味な書き方というか、皮肉っぽく書くというかね(笑)。

でも、その皮肉なところがこの世の中そのものだという気もするんですよ、悲しいかな。

まぁ、本当に僕も含めてですけど、聴いてくれた人にとって、変化するきっかけのひとつになれたらっていうことでしかないと思っているので。そういうところは信じていますね。

いい方向に変化していってほしいという希望も含めて…ということでしょうか?

うん。世の中を良くしたいと思うのならば、そう思っている個人がその変化の一部でなければいけないということですよね。そういう意思が伝播していくといいなと思います。それぞれの思う良さっていうのはそれぞれが考える以外ないですけど。でも、社会問題をどう歌にしていくかって本当に難しいところだと思うんです。そういうところでストラグルがあるのが自分らしい書き方なんじゃないかという気がしているので。だって、最後の曲で《Be alright》と歌ってはいるけど、決して肯定できるような世の中だとは思っていないですからね。全部がいいなんてことは到底言いきれない。むしろ、“めちゃくちゃなことばっかりだろ?”みたいな。そうした中でもロックバンドが“Alright”って言うことが大事だと思っているんですよ。でも、だからと言ってポジティブな側面ばかりを書いていくことはできないっていうか。

そうした真っ正直な葛藤が伝わってくるから、このアルバムに力をもらえるんだと、お話をうかがっていて思いましたし、すごく切実だと思います。そうなるとどんどん気楽には書けなくなってくるというか…。

歌詞を書くということが気楽なものだったことは一度もない気がします。かと言って過剰な責任を感じているわけではないですけどね。

詞を書く際に今一番大事にされているものは何でしょう?

“こんなもんでいいだろう”と思わないことですね。それは妥協するとかの意味ではなくて、聴き手や読み手を値踏みしないというか。“このぐらいだったら読みやすいかな?”とか“このほうが気に入ってもらえるかな?”みたいな、そういう線を一切引かないっていうことですかね。

つまり、自分が書きたいことを書ききる?

そうですね。“これで伝わるんだ!”と信じて書くっていう。ただ、決して伝えることだけが目的でもなかったりするんですよ。今朝、読んでいた本でめちゃくちゃいい文章があったんです。谷川俊太郎さんの言葉なんですけど…“いずれにしろ詩は散文と違って明示性のみを目指さない。むしろ含意を主要な武器とする”(『今日は誰にも愛されたかった』ナナロク社/谷川俊太郎、岡野大嗣、木下龍也著)っていう。さすがだなと思って。つまり、その言葉にどんな意味が含まれているかを明示しなくていいんですよね。歌詞の中に分かりやすく噛み砕いて乗っける必要もないし、どんなメッセージかは未明のまま潜ませておいていいっていうことなんです。

今作の歌詞もそうしたスタンスで書かれたんですか?

はい。もし仮に“この曲にはどんなメッセージがありますか?”って訊かれたとして自分で答えられるならば、曲なんか書かずにそれをどこかで言えばいいわけですよ。

でも、音楽に乗っかるからこそ、よりパワーを孕んで届くということもあるとは思いますけど。

曲という塊としてはね。でも、歌詞のたった一行だけで伝えられはしませんっていう。こういった言葉で伝えるメディアに載る以上は言葉で説明してほしいっていうリクエストはどんな場でも受けますけど、それを歌詞以上に噛み砕いて話すことは難しいんじゃないかと思うんです。それは受け取った人それぞれにやってほしいことであって、僕が僕の噛み砕き方を改めてみんなに提示するのはちょっと違う。たぶん、ただのバイアスにしかならない気がするんですよ。

歌詞は歌詞であって解説は不要?

…難しいですけどね。もっともっと多くのことは楽曲自体がそもそも説明していると思うんです。サウンドとか、そういうものがね。それをあんまり邪魔したくないっていう気持ちがあって。大もとは漠然とした想いの塊みたいなものだから、それを丸ごと渡したほうが早いんだよね。

ある意味、リスナーを信じているからそう言えるのかも。

読み違いも含めて表現だと思っていますから。解釈はそれぞれだし、読み違っていいんですよ。僕の意図するところと違っててもいい。作品ってそういうものだと思うし。ただ、僕としては曲を作りながら自分で感動してはいるので、同じフィーリングは聴き手のみなさんにもタッチしてもらえるんじゃないかという気持ちはありますけど。

ところで“De Arriba”ってスペイン語ですよね。なぜ、このタイトルにされたんですか?

めちゃくちゃ言いづらいですけど…駄洒落です(笑)。“であれば”と歌っているけど、それをタイトルにするのは嫌だと思って。世界中を探せば似た言葉があるだろうと調べてみたら、これが一番近かった。英語だと“above”…つまり、“その上”みたいな意味の言葉だったので面白いなと。南米とかにも僕たちのことを好いてくれている人たちがいっぱいいるから、スペイン語でタイトルがついていたら喜んでくれるかなっていう気持ちもありつつ(笑)。

あと、今回のトピックスとしてROTH BART BARONの三船雅也さんがゲストヴォーカル、chelmicoのRachelさんとSIMI LABのOMSBさんがゲストラッパーとして参加されていたり、skillkillsのGuruConnectさんがプロデュースと編曲で参加されていますね。

僕がいいなと思った人たちをメンバーに提案して実現しました。やっぱりバンド以外の方が加わるとムードが変わるし、作品の彩りや手触りにも変化が出ますからね。もちろんアジカンだけで完結するのも悪くないけど、閉じたかたちで『プラネットフォークス』みたいなアルバムを作るのはちょっと違うと思ったんです。特に今の時代は人と人とのつながりで何かを作っていくことが大事かなと。そういうのが上手になりたいっていう気持ちもありますし、このアルバム自体、改めて人とのつながりを問い直すような作品ではあるので。言ってることはデビューした頃…それこそ『君繋ファイブエム』(2003年11月発表のアルバム)と変わってないんじゃないかって気もしてますけどね(笑)。

でも、視線はより俯瞰的なものになっていませんか? この地球という惑星を外側から俯瞰しながら、その上で生き暮らしている自分たちを見つめているような。『君繋ファイブエム』は自分を中心とした半径5メートルだったと思うんですけど。

そうかもしれないです。そこはやっぱり当時よりも社会っていう視点が入ってきていると思いますね。

“プラネットフォークス”というタイトルも素晴らしいです! さすがですね。

ありがとうございます(笑)。作っている途中で、タイトルをそろそろ決めなくちゃと思って考えていたら出てきました。前作は“ホームタウン”だったから外側に開いた感じは出したいと思っていましたね。“ホームタウン”ってどこかちょっと内向きなニュアンスがあるじゃないですか。だから、もっと強くてキャッチーな、外に向かって掴めるような言葉がいいなと。今作は上手にタイトルをつけられた手応えがありますね。

“フォークス”には”人々”という意味に加えて音楽の“フォーク”もかけていらっしゃるんでしょうか?

はい。フォークロア、フォークっていう意味合いは入っています。民間伝承の音楽みたいな。

そううかがうと、14曲全部がカチッと綺麗にひとつの作品のピースとしてハマる気がします。

そうですね。わりと一貫したことはやってるんじゃないかって自分でも思ってはいるので。

取材:本間夕子

アルバム『プラネットフォークス』2022年3月30日発売 Ki/oon Music Inc.
    • 【初回生産限定盤】(CD+Blu-ray)
    • KSCL-3365~6
    • ¥4,950(税込)
    • 【通常盤】(CD)
    • KSCL-3367
    • ¥3,300(税込)

ライヴ情報

『Tour 2022 「プラネットフォークス」』
5/28(土) 埼玉・三郷市文化会館 大ホール
5/29(日) 埼玉・三郷市文化会館 大ホール
6/01(水) 東京・東京国際フォーラム ホールA
6/04(土) 広島・上野学園ホール
6/05(日) 熊本・市民会館シアーズホーム夢ホール
6/10(金) 石川・本多の森ホール
6/12(日) 静岡・富士市文化会館ロゼシアター 大ホール
6/17(金) 愛知・愛知県芸術劇場 大ホール
6/21(火) 神奈川・神奈川県民ホール 大ホール
6/26(日) 香川・レクザムホール 大ホール
7/01(金) 兵庫・神戸国際会館 こくさいホール
7/02(土) 奈良・なら100年会館 大ホール
7/09(土) 群馬・高崎芸術劇場 大劇場
7/15(金) 千葉・市川市文化会館 大ホール
7/18(月) 福島・とうほう・みんなの文化センター 大ホール
7/23(土) 東京・日比谷野外大音楽堂
※後半公演は後日発表

ASIAN KUNG-FU GENERATION プロフィール

アジアン・カンフー・ジェネレーション: 1996年に関東学院大学の音楽サークルで結成されたロックバンドで、愛称は“アジカン”。2002年にミ二アルバム『崩壊アンプリファー』が話題を呼び、03年にキューンレコードよりメジャーデビューを果たす。以降、精力的に作品を発表し続けている。音源のリリース、ツアー、主催イベント『NANO-MUGEN FES.』と精力的に活動を展開。これまで多くの作品がタイアップに起用され、21年には劇場版『僕のヒーローアカデミア THE MOVIE ワールド ヒーローズ ミッション』の主題歌、挿入歌を手掛け話題となった。同年、結成25周年を迎え、22年3月に10枚目となるアルバム『プラネットフォークス』をリリースし、全国ツアーを開催する。ASIAN KUNG-FU GENERATION オフィシャルHP

「You To You
(feat. ROTH BART BARON)」
MV

「フラワーズ」MV

「エンパシー」MV

「ダイアローグ」MV

「触れたい 確かめたい
(feat.塩塚モエカ)」
Lyric Video

「解放区」MV

「Dororo」MV

『プラネットフォークス』
初回生産限定盤 特典Blu-ray (Trailer
)

OKMusic編集部

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