カネヨリマサル×リュックと添い寝ご
はん、無限の可能性を示した『ビクタ
ーロック祭り~アタラシイチカラ~』
1日目レポート

『ビクターロック祭り~アタラシイチカラ~』

カネヨリマサルリュックと添い寝ごはん OA:ヒトリヨブランコ
2022.2.24 Veats SHIBUYA
明日のシーンを担うフレッシュなアーティストを紹介する『ビクターロック祭り~アタラシイチカラ~』。Veats SHIBUYAにて3日間にわたって開催された、その初日にエントリーしたのはカネヨリマサル、リュックと添い寝ごはんの二組だ。すでに新人とは呼べない実力と人気を備える二組だが、種はまだ芽吹いたばかり。無限大の可能性がどこまで大きく成長するか、これはライブハウスいっぱいの観客とともに確かめるショーケースだ。
ヒトリヨブランコ
その前に、オープニングアクトのヒトリヨブランコ。サポートを含む6人編成で、溌剌ポップな「HI...JK」、四つ打ちダンスな「ナイトライトトーキョー」など、キャッチーなバンドサウンドは初見でも乗りやすいが、「ふむふむ」と聴いているのちに「おや?」となる。「堕落ダクダーク」は暗黒面の癖が強く、「神様ノ言フトヲリ」は、独特の甘えたような拗ねたような歌声がぼんやりした不安を煽る。ボーカルのムラカミカエデはステージを漂い、裸足のギターのけえは不思議な単音リフを繰り出し、女子キーボードのせつこはちょこんと座って手しか動かない。バックの女性コーラスがメインを分けあう曲があるのも珍しい。「あんまりライブしないバンドですが、今年はやるぞという年です」。覚えておきたいバンドだ。
ヒトリヨブランコ

カネヨリマサル。知らない人はいないと思うが念のため書いておくと、個人名ではなく女子3人のバンド名。「精一杯届けますよろしく!」と、1曲目「恋人」から爆音と感情が溢れ出し、「ガールズユースとディサポイントメント」へとシンプルなギターリフ一発のロックビートで疾走する。前のめりすぎて姿勢は正しくないかもしれないけどめっちゃ足が速くてかっこいい、という例えが頭に浮かぶ。リズムキープの鬼、ドラムのもりもとさな、やたらとにこにこ笑顔がいい。ベースのいしはらめい、凛とした立ち姿がかっこいい。「どんな形であっても人の心を動かせるのがロック。自分たちの心も動かして帰りたいと思います」。ギターボーカルのちとせみな、気合いは十分。明るい「今日の歌」、せつない「春」、熱い「はしる、夜」と、感情が一直線だからこそ伝わるロックに、フロアを埋めたオーディエンスが一斉に拳を上げる。言葉がちゃんと届いてる。
カネヨリマサル
やさしい恋の歌ができました。最新配信曲「ピアノのうた」は、すでに名曲のたたずまいを見せるミドルテンポの決定版ロックバラード。ギターボーカルのちとせみな、かすれるように振り絞るように、せつない胸騒ぎを煽るようなまっすぐな歌声が胸を打つ。明るい一体感を演出する「もしも」、そしてラストは全力疾走のままゴールラインを駆け抜ける「ラクダ」。「みんなの顔を見てるだけで、わたし生きてるなと今日も思えました」。ちとせみなのMCは、熱くてエモいのだけど、押しつけがましくない誠実さ。とにかくバンドが好きで、ライブハウスが好きで、恋する気持ちとロックが好きな、カネヨリマサル。今日もやっぱり良かった。「また絶対会おうね」。
カネヨリマサル

リュックと添い寝ごはん。知らない人はいないと思うが念のため書いておくと、商品名とかではなく男女3人のバンド名。1曲目「青春日記」のさわやかパワフルなバンドサウンドに合わせて、早速フロアから拳が上がる。全員ハタチぐらいのはずだが、一人だけ70年代にいそうなノスタルジーオーラを醸し出すボーカルギター、松本ユウの存在感に自然と目が行く。「スペースあいてますんで、踊ったり、自由に使っちゃってください」。しゃべりは朴訥、ソングライティングもフォーキーだったりギターポップだったり、どこか懐かしく耳を打つ。骨太ニコニコドラムの宮澤あかり、堅実クールベースの堂免英敬、サポートギターを加えた4人で、「くだらないまま」「あたらしい朝」へと、明るく大きくリズムが跳ねる。初見のリスナーを巻き込むパワーがある。
リュックと添い寝ごはん
今の自分をありのままに書いた曲です。ポカリスエット協賛「全日本高等学校・全日本中学校チアリーディング選手権大会」の応援CM曲になった、最新配信曲「わたし」は、ゆっくりと助走する前半から空高く舞い上がるサビへ、前進するリズムとメロディの飛躍感がすごい曲。ほかの曲では飄々としたボーカルが、ここでは妙にエモい。たぶんバンドのターニングポイントになりそうな曲だ。さらに、メロディックに疾走する「ノーマル」、踊れる「グッバイトレイン」、ほっこりクリスマシーな「home」と、曲調もいろいろ、歌詞もいろいろ。懐かしいようで新しいようで、時代を超える確かな個性。「気を付けて帰ってくださいね」。最後まで丁寧で等身大な、リュックと添い寝ごはん。いい友達になれそうな予感。
リュックと添い寝ごはん

アンコールの代わりに大抽選会をやったり、ライブの終わりは全員が素顔に戻ってにぎやかに。次の目標は?と問われて、今年は3月19日に幕張メッセで開催される『ビクターロック祭り』のほうにいつか出たいと、どのバンドも口を揃えた、その意気や良し。夢は続くよどこまでも。物語は始まったばかりだ。

文=宮本英夫 撮影=中山優瞳

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