【PLOT SCRAPS インタビュー】
PLOT SCRAPSを聴けば、
全部こと足りるような
音楽を作れたら最高
ヘンテコな要素を入れないと
気が済まない(笑)
「ユクスキュル」はどうでしょう?
この曲も書き下ろしです。「タイセツナモノ」と一緒で初期の感じをやりたいと思ったんですけど、昔っぽいものを今っぽくするのではなくて、昔持っていた感覚も現在進行形で続いているというか。ポップな音楽を作りたいと思ってやっている今の感覚と離れた位置で並走してきた感覚として、もうちょっとエクストリームな感じで表現してみたかったんです。最後のブレイクダウンに入ってシャウトするっていうのがまさにそれなんですけど、「リブラ」も「ユクスキュル」と近い発想で作っています。「リブラ」は逆にポップなギターロックで、誰でも聴きやすいものを作ろうと思ったんですけど、間奏、Aメロ、Bメロの様子がちょっとおかしい(笑)。そういうちょっとヘンテコなポップな曲ができたと思います。それがアルバムのリード曲に相応しいと思って書いんたです。
「ねがいごと」はPLOT SCRAPSにしてはすごくシンプルな、生っぽいバンドサウンドになっているのですが、変な話、これだけシンプルなアレンジだと3人それぞれにちょっと物足りなくなりませんか?(笑)
僕を含め、3人全員がもうその感覚はなくて。昔は“もうちょっとやりたい!”っていうのがあったと思うんですよ。でも、今はその気持ちがまったくない。むしろ新鮮というか、リハーサルで合わせても“あれ? めちゃくちゃ良くない?”ってなっていますね(笑)。
ところで、「こころ」のギターリフはワウペダルを踏んでいますよね?
はい。ワウと、かなり深くリバーブがかかっています。
そういうギターの音色の作り方とか後半の転調とかは、さっきおっしゃっていた言葉を借りると、ヘンテコな音色やアレンジがポップな曲の中で聴き応えになっていますね。
そうですね。ヘンテコなことをしないことがないです(笑)。実は普通に聴こえるところでも変なことをやっている曲もあるんで、そういう要素を入れないと気が済まない(笑)。でも、「こころ」のギターリフの音色は、ちゃんと曲に合うように作っています。気持ちが落ち着くような、ワウとリバーブの音色が温かいと思ったんです。転調も歌詞に合わせてやっていて、1音下がって、半音上がって、もう一回、半音上がって戻る感じで、かなり変なんですけど、歌詞には沿っているんです。
あの転調を聴いているとすごく癖になります。今回のアルバムは幅広いジャンルにまたがる多彩なアプローチが聴きどころでもあると思うのですが、アレンジの振り幅や、いろいろな曲を作るきっかけはどんなところから生まれるのですか?
僕からすると、いろいろな曲を作らない理由が分からない(笑)。自分自身が聴いてきたからなんですけど、自然なことではあるんですよ。一個の音楽性だけずっとやるのは、僕にとってはあまり自然じゃないですね。ただ、今回は歌詞で幅広い18曲に筋を通すということは意識しました。あと、「ユクスキュル」ように激しくなる曲もあるんですけど、飛び越えないラインがあって、“誰にでも楽しんでもらえるように”や“老若男女が聴いてカッコ良いと思えるように”とか、そういうところに留める調整はしています。曲を作る上での思想として、PLOT SCRAPSを聴けば、全部こと足りるような音楽を作れたら最高だと思っているところはありますね。例えばバラードを聴きたい時、激しい曲を聴きたい時、普通のギターロックを聴きたい時、歌詞に浸りたい時…どんな想いになっても、PLOT SCRAPSに手が伸びたら最高だと考えています。
まだ作っていないタイプの曲はありますか?
もうすでにいっぱい新曲を作っているんですけど、やっていない曲も出てきつつありますね。でも、『My FRAGMENTS+』の延長にはあるのかな? とりあえずは『My FRAGMENTS+』を聴いてもらったら、絶対にPLOT SCRAPSのことは分かってもらえると思います。
個人的には「IRREVERSIBLE OK?」のアンレジが印象的でした。ヒップホップっぽいビートとも言えるし、R&Bっぽいところもあるし、それでいてメロディーには和の情緒もあってという混ざり具合が18曲の中でも独特ですね。
その曲もかなり昔からある曲です。PLOT SCRAPSではあまり出していない要素なんですけど、ギターロックをメインでやっているんで、選曲から漏れてしまう曲もいっぱいあるんです。その中のひとつだったんですけど、この曲はいい感じに仕上がりましたね。
独特という意味では、「Telephone Box」の歌詞が面白いと思いました。携帯電話が開発される前の時代の人が、そんな高性能の電話なんて遠い未来の話と考えているシチュエーションや、《あと10円玉が3枚 モタつく時間はないから 急いで伝えなきゃ》という歌詞が、たぶん10円玉を入れながら公衆電話をかけた経験がないであろう陶山さんから出てくるところがすごくないですか?
だからこそ、そういう発想が出たんだと思います。“携帯電話がない時代の人はどうやって待ち合わせしてたんだろう?”と思ったんですよ(笑)。女の子の家にかけても家族が出るかもしれないわけじゃないですか(笑)。それってすごいことだと思って、ひと晩で書き上げました。今の時代は常に誰かとつながっている状態だけど、言いたいことが言えていない場面って昔の時代から変わらずにあると思うんですよね。
それを一番伝えたかったと。では、最後に4月9日から始まる全5公演のリリースツアーの意気込みを訊かせてください。
2020年5月にリリースした『INVOKE』というミニアルバムのツアーがコロナ禍で全公演中止になってしまったので、地方に行く機会がなくなってしまったんです。大阪に一度行っただけで、もう一年ぐらい地方には行けてないし、『INVOKE』の曲もまだ届けられていないので、『My FRAGMENTS+』に加え、それも届けたいというのがまずあります。それとは別にライヴというものに対して“何をやったらいいんだろう?”と、個人的にすごく迷っていたんですけど、それが明確になってきたせいか迷いもなくなって、最近はライヴがとても楽しい…楽しみ方が分かってきたんです。
どんなところを迷っていたのですか?
僕はライヴハウスに通っている人間ではなかったんですよ。武道館で海外のビッグアーティストとかを観ることは数回ありましたけど、小さなライヴハウスに行って目の前でアーティストを観るという経験がなかったというのもあって、みんなが何を求めているのか、どんどん分からなくなってしまって。それに対して、自分は何をしたらいいのか、自分はライヴにおけるニーズに応えるものを持っているんだろうか…とか。
今現在はライヴにおいて何をやればいいと考えていますか?
うまく歌うとか、上手に演奏するのは当然なんですけど、ライヴってその人を伝えるとうか、曝け出す場所だと思いました。曝け出したほうが面白いだろうなって。自ずと出るんですけどね、全部が。どういう考えでそこに立っているのかを含め、歌や演奏で総体的に伝わると思うんですけど、そういう場所なんだと理解してから迷いはなくなりました。今はライヴでの表現者としても自信がメキメキとついてきている状態なので、僕たちが考える最高のライヴを各地でやって、ファイナルもバシッとワンマンでロングセットをやって、”『My FRAGMENTS+』を届けに行く”ということを完璧にやりたいと思っています。
取材:山口智男
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アルバム『My FRAGMENTS+』2022年3月2日発売
No Big Deal Records
『PLOT SCRAPS presents My FRAGMENTS+ TOUR 2022』
4/09(土) 北海道・札幌PLANT
出演:PLOT SCRAPS / The Floor / MoLse (3マン)
4/16(土) 宮城・仙台enn3rd
出演:PLOT SCRAPS / indischord / yeti let you notice (3マン)
4/23(土) 大阪・心斎橋Pangea
出演:PLOT SCRAPS / 渡井翔汰(Varrentia/Halo at 四畳半)/ かたこと (3マン)
4/24(日) 愛知・名古屋UPSET
出演:PLOT SCRAPS / Absolute area / かたこと (3マン)
4/30(土) 東京・渋谷WWW
出演:PLOT SCRAPS (ワンマン)
プロットスクラップス:東京在住の3ピースロックバンド。さまざまなジャンルから吸収した感覚をロックに昇華させ、既存のフォーマットにとらわれない音楽性が特徴的。2018年6月に1stミニアルバム『Vital Signs』をリリースし、全国的な活動をスタート。21年3月~10月までにほぼ毎月配信シングルをリリースし、それを含む全18曲が収録された1stアルバム『My FRAGMENTS+』を22年3月に発表。同年11月にはミニアルバム『ABH』をリリースした。PLOT SCRAPS オフィシャルHP
「リブラ」MV
「告白」Lyric Video
「透命花火」MV
「やさしさパラドックス」MV
「月夜に提灯」Lyric Video
「Telephone Box」MV
「Teardrop」MV
「pinky」
〜Live from
FLAWLESS YOUTH TOUR 2019 FINAL〜
「FLAWLESS YOUTH」MV
「PRAY」MV
「Cover Story」MV
『My FRAGMENTS+』Trailer