美弥るりかが孤高のゲームクリエイタ
ーに Musical『The Parlor』ビジュ
アル撮影レポート

脚本・演出を小林香、音楽をAlexander Sage Oyenというタッグによって描かれる、Musical『The Parlor』。曽祖母、祖母、母と受け継がれてきたひとつの部屋を舞台に、どの時代においても自分らしい美しさや強さを手に入れて生きようとする人々にスポットライトを当てたオリジナルミュージカルだ。
1月某日に行われた、主演・美弥るりかのビジュアル撮影の様子をお届けしよう。
美弥が演じるのは世界的に人気のインディゲームクリエイター・円山朱里。母の死をきっかけに父親とその一家、日本の古い価値観を憎むようになり、現在はアメリカでたった一人、ゲームを作り続けているという設定だ。彼女にとって、PCゲームは偏見に満ちた現実世界と違って誰もが平等。年齢や性別、国籍といったものにとらわれずにいられる世界である。一方、ボードゲームやトランプといったアナログゲームには世の中の偏見が反映されていると朱里は考えている。久々に帰国した彼女は、祖母が営むパーラーを訪れる。そこで出会うのは、個性豊かな常連たちと、一切交流のなかった妹。そして妹の願いにより、朱里の人生に変化が訪れ――。

美弥が到着する前のスタジオでは、脚本・演出の小林香とスタッフが「笑わずに意思の強さを見せる方がいいかな」「笑っていてもそれはそれで怖いのでは?」などと話し、キャラクターのすり合わせを行って世界観を固めていく。
スタジオは物語の舞台を彷彿とさせるあたたかい雰囲気。時代の積み重ねを感じる家具が並ぶこぢんまりとした空間は心地良く、どこか懐かしい。小林の「ここはパーラーだからね」という言葉もあり、作中で多くの人々の心を支えてきたパーラーが実在したらきっとこんな場所だろうと想像が膨らんだ。
鮮やかな緑のタートルネックにおしゃれなジャケット、スタイルの良さが際立つパンツスタイルで現れた美弥は、「まずはお任せで」と言われ、少し悩みながらカメラの前へ。だが、テスト撮影の時点で小林から「賢そう。クリエイターっぽい」と声がかかり、「よかった。普段はあんまり(賢そうと)言われない」と笑顔。
本撮影でも孤高のクリエイターらしいクールなカットを次々と決めていく。アンティーク調の家具が並ぶノスタルジックな室内だが、カラフルで個性的なファッションが不思議と馴染んでいるのも面白い。作中においてたくさんの人の悩みや生きづらさを受け止めてきたパーラーの懐の深さのようなものを感じさせ、ビジュアル撮影の段階ながら物語へのイメージとワクワクが広がっていく。
朱里はあまり活発な印象のキャラクターではないため、撮影中も大きく動いたり満面の笑みを浮かべたりといったことはない。美弥も、カットごとにスタッフとともにモニターをチェックし「どういう表情がいいですか?」と手探りの様子。
しかし、胸の内にある怒りを感じさせる強い視線をカメラに向けたかと思うと、孤独に耐えているような寂しい瞳になり、次は実家でもあるパーラーでくつろいでいるような表情に……と、ちょっとした変化で朱里の内心を見せる美弥により、人物像がイキイキと浮かび上がってくるような写真が次々に撮影されていく。
部屋の中を移動したり、青空のもとで撮影したり。どのカットがビジュアルに使用されるかは分からないが、朱里の個性や魅力が味わえる多彩なカットが数多く収められていた。
クールなカットやアンニュイな表情に、撮影を見守っているスタッフ陣からも「素敵!」と絶賛の声が上がる。「絵になりすぎていて言うことがない」との声も出るほど、美弥はこの場に溶け込み、世界を作り上げていた。
朱里は基本的に「怒り」の感情が強い役柄。様々なものと孤独に戦っているような、張り詰めた雰囲気を纏っている。だが、小林から「朱里の恋人との幸せな時間を考えてみて」と提案されると途端に表情が和らぎ、凛として近寄り難い雰囲気が一瞬にして穏やかに変わった。衣装やスタジオは同じなのに、空間がパッと華やいだような感覚があり、スタッフから歓声が。その様子は、曾祖母の代から円山家の女性たちが守ってきたパーラーのあたたかさや活気を彷彿とさせる。
また、作中では「女の子はピンクを着るものだ」をはじめとする昔ながらの“常識”や古い価値観への疑問が幾度となく呈され、勇気を出して自分らしさを手に入れる人々や、無自覚で持っていた偏見に気付く人々が描かれる。
他人から押し付けられる価値観や古いしきたりへの怒りを抱えながらゲームの世界に没頭する、ゲーマーとしての彼女を撮影する際は、小林から美弥へ「子供の頃ピンクって着てた?」という質問も。あまり印象にないのか考え込む美弥に対して「どっちかっていうと赤?」と尋ね、頷くのを見て「なるほどね」と今度は小林が何か考え込むなど、ビジュアル撮影と同時にキャラクターや作品の深掘りがなされているのが見てとれた。
そして、次々に撮影と準備が進む中でも小林がキャスト陣と雑談をしてコミュニケーションを図っているのが印象的だった。ビジュアル撮影やそれに伴う会話を通して、個性豊かなキャラクターたちにどんな肉付けがされるのか。作品の完成を楽しみに待ちたい。
本作は2022年4月29日(金・祝)より読売大手町ホールにて上演される。
取材・文・撮影=吉田沙奈

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