L→R HIDEKiSM、Takassy、Kamus

L→R HIDEKiSM、Takassy、Kamus

【ENVii GABRIELLA インタビュー】
喜怒哀楽の全部に当てはまる曲が
きれいに並んでいる

欲張りに全部やりたい
という気持ちでいっぱい

先ほどお話に出たラストナンバー「ハッピーハッピーウェイウェイドンチー」は「Finally Found You」の対極にあるナンバーというか、賑やかでカラフルな楽曲ですよね。そして、歌詞を読むと意味が深いという。

Takassy
深い曲は作りたくないのに、結果的に深くなっちゃったっていう。ちょっと矛盾に満ちあふれた曲です(笑)。

“ドンドンチー”という言葉はHIDEKiSMさんが発する口癖で、この“ハッピーハッピーウェイウェイドンチー”はYouTubeで嬉しさを表すのに発したそうですね。

HIDEKiSM
基本的に私は“人生一度きり、一分一秒でも多く楽しみたい”タイプの人間で、バカは嫌いなんですけど、バカになれる人は好きなんですよ。だから、自分の周りの友達でも、バカになってくれる人が多くて。なので、普通からそういうアホみたいなワードを言っていて(笑)。ふと私が言ったワードを今回、Takassyがピックアップしてくれたんです。
Takassy
本当に意味はないもんね。
HIDEKiSM
たぶん“とにかくバカになりたいよね”という想いを伝えたかった時に、ふと出たワードだったんです。

ただ、中盤に出てくる《夢かき集めるの面倒くさい/誰もが主役狙ってない/幸福論は自分基準/普通の日々が素晴らしい》という歌詞など、ハッとさせられる言葉も入っていて。

Takassy
そこの歌詞に関しては、子供に“こうなりなさい”とか“将来は立派な職業な就きなさい”とか“何かを成し遂げなさい”と植えつけられている世の中ですけど、一日何もなくて“あぁ、疲れた。今日一日、面白かったな”みたいな感じで、それが幸せだったら無理に主人公である必要もないんじゃないかと思って。あと、最近はコロナ禍というご時世で、希望を持ってもらおうという曲が多いのですが、ずっと聴いていると疲れてしまうじゃないですか。だから、意味のない曲を作りたいと思ったんです。ただカラオケで歌って、“あぁ、気持良かった”みたいな感じがいいなと考えて、この曲を作ろうと決めました。でも、そういう歌詞にしたら、逆に意味が出てきてしまい、なんだか一番重い曲になったという(苦笑)。ただそれすらも、“毎日、矛盾はあるじゃん。だから、楽しみましょう”みたいな感じで受け止めています。

この曲のレコーディングはどんな雰囲気でしたか?

Takassy
Kamusは歌わないのですが、レコーディングには参加してもらっているんです。歌っている最中に曲の解釈のディスカッションもするので、プロセスを共有したほうが振り付けにも反映できるし、ステージングの時に同じメッセージを伝えやすいので。「ハッピーハッピーウェイウェイドンチー」は砕けた空間の中で、バカバカしい曲を歌おうという感じなので、3人で爆笑しながらレコーディングしました。
Kamus
一生分の“ドンチー”を聴いた気がする(笑)。
HIDEKiSM
“ここの“ドン”はもうちょっと強く”って(笑)。“うちら、何の話をしてるんだろうね~”とか言いながらやっていました(笑)。
Takassy
““ドン”でアクセントをつけて“チー”で伸ばすから、ここで溜めて”って、“ドンチー”ひとつで何言っているねん!みたいな(笑)。

楽曲を聴くと、そのこだわりがすごく分かります。

HIDEKiSM
どの楽曲もその場の雰囲気が声と音に乗るので。とにかくこの曲はハッピーな空間を作らないと、絶対にそういった声が乗らないと思ったんです。ひとつひとつに対して爆笑できるようにしたから、レコーディングはとても楽しかったです。

振り付けはKamusさんが作られたのでしょうか?

Kamus
サビの振りは事務所の先輩である電撃チョモランマ隊のEBATOさんに作っていただいて、AメロBメロなどその他のところは私が作っているんですけれど、Takassyから“こんな感じがいいんじゃない?”と言ってもらったり、先輩から“サビを目立たせるためにはこういうふうにしたほうがいいから”とアドバイスをいただいたりして、3人で詰めていきました。

特にこだわったポイントは?

Kamus
この振り付けのいいところは誰でもできそうな感じで、なおかつカッコつけて踊るようなものはないっていう。みんなで楽しくバカになり、ワイワイできるようになっているんです。今回MVがついているので、それを観て振り付けを覚えていただいて、みんなでバカをやれたらいいなと思っています。

3曲目の「Ride/Reboot」は近未来的なダンスナンバーですね。

Takassy
この曲はアルバムの中で一番古い曲で、結成当初からライヴでやり続けていたんです。ただ、あるメンバーの方が、あまりこの曲を気にいってらっしゃらなかったみたいで…(HIDEKiSMを見る)。リリースのたびに候補に挙がるんですが、ずっと見送られていて。今回を逃したらもう入ることはないだろうと、ようやく入ることになったんです。
HIDEKiSM
もともと男性アーティストのコンペに出していた曲というのもあって、すごくボーイッシュな曲だったから、インディーズ時代のENVii GABRIELLAのブランディング上、男性らしい、力強いパフォーマンスをしているのが、自分の中でちょっとミスマッチだったんです。もう少しオネエだっていうところを定着させたほうがいいという想いが自分の中にはあったんで。なので、インディーズの最後に出したベストアルバム(2018年6月発表の『Snack ENVii GABRIELLA』)でも、この曲を収録するかどうかといった話が出たんですけれども、ベストアルバムは自分たちのすごい名刺になるから、そこに入れるのはミスマッチだと思ったし、ふたりもその意見に納得してくれたんですね。そしたらファンの方から“なんで「Ride/Reboot」がないの!?”と言われて。この曲はファンの方に求めてもらっていたんだと自分の中でも腑に落ちて、晴れて今回収録されることになったんです(笑)。
Takassy
次の「Sorry Not Sorry」が“ザ・オネエ”みたいな曲で、ある意味で対になっているような感じだから、「Ride/Reboot」は男っぽい感じのENVii GABRIELLAの一面を見せられる曲だと思いますね。
HIDEKiSM
多面性というか、ジャンルレスな楽曲が揃っているので、ボーイッシュな楽曲が一曲あったとしても、そういうカラーがあってもいいと思ったし。今回は“Reboot”というかたちだし、“ここに入るために残しておいたんだよね”くらいに思っています(笑)。
Takassy
今回はクリエイターのCarlos K.さんと全曲共作、もしくはお任せでやっていただいているんですが、この曲も“もとの曲から好きなように変えてください”とオーダーをして、2022年版として作っていただきました。だから、音数も減ってよりリスタイリッシュな感じになり、他の曲と並べても古さがない、新鮮な感じに生まれ変わりましたね。

「Ride/Reboot」の対になっているという、次の「Sorry Not Sorry」はどのようにして作られたのでしょうか?

Takassy
Carlos K.さんのスタジオでストックされていた曲を聴かせてもらった時に、この曲は絶対にENVii GABRIELLAが歌うべきだと思ったので、“この曲、ください”とお願いしたら他のアーティスト用のストックだったんです。でも、“絶対にうちらが歌ったほうがいいと思います”と言ったら“分かりました”となって(笑)。《レコ大作家の曲ぶん取って》という歌詞はその時のことなんです(笑)。
Kamus
「Sorry Not Sorry」はENVii GABRIELLAの中では珍しく攻撃的というか、ちょっと圧が強い勢いのある曲だと思います。今、絶賛振り付けを作っている最中ではありますが、「Ride/Reboot」がアツっぽく作っているので、「Sorry Not Sorry」はゲイカルチャーのダンスを混ぜたりしながら、ENVii GABRIELLAのオネエっぽさをカッコ良くアピールできるようなものにしたいと思っています。

6曲目の「女優(仮)」は童話が始まるような、不思議な雰囲気のナンバーですね。

Takassy
この曲は新型コロナウイルスの影響を一番受けたというか、コロナがあってできた曲です。私の友達でも医療従事者がいますが、どれだけ頑張っても当たり前だという認識が世間的にあって、“ありがとう”という感謝の言葉も言われない。他の職業の人でも頑張って我慢していても、ひとりひとりの我慢にスポットが当たらない状態が何年も続いている。そういった焦燥感や絶望感を誰もが感じているんじゃないかと思ったんです。それに加えて、当時は女優さんや俳優さんの訃報がすごく多く、自分と重なるところがあって。ひと言言葉をかけてあげる人が周りにいたら、また違った未来があったんじゃないかなと感じた時に、誰しもが日々俳優のようなことをしているんじゃないかと思ったんです。平気な顔をして仕事をしているけれど、気持ちはボロボロというのは誰でも当てはまると。“(仮)”というのはニュースとかでよく使われる“少女A”みたいなものなんですけど、女優の後ろに絶対につけたいと思って。“誰でもこの女優になり得る”という意味なんです。

タイトルにはそういった意味が込められていたのですね。すごく深く響いてくるナンバーでした。

Takassy
ギリギリの精神状態の時、“頑張ろう”という曲はあまり聴きたくないじゃないですか。それだったら気持ちを吐き出せるような曲を作りたいと思って。今のご時世であえてみんなが言わない、言えないようなことを言いたいと思ってできた曲ですね。

ここまでお話をうかがってきて、今作の全ての曲に共通しているのはENVii GABRIELLAのやさしさや愛といったものだと感じました。

Takassy
以前から誰が聴いても自分に置き換えられたり、カラオケで歌えたりするものというのは念頭にあるんですれど、今回は喜怒哀楽の全部に当てはまる曲がきれいに並んでいる…それは意図していなかったのですが。

まさにENVii GABRIELLAの多面性が表れています。

Takassy
イメージ的に2曲目の「CABARET」がこのアルバムの始まりだとしたら、キャバレーという人生を生きてる女優さんの一生ともとらえられるようなアルバムだとも思いますね。

メジャーデビューミニアルバムがリリースされたわけですが、これからはどんな目標に向かって走っていかれますか?

HIDEKiSM
スタッフのみなさんがありがたいぐらいに推してくれていて、逆に我々が背中を押してもらっています。だから、その期待に応えたいという想いがあって。“今後の活動はどうするんですか?”みたいなことをご質問いただくのですが、とにかく全部やりたいんですよ。アーティストのみなさんが“有名になったらこれをしたい!”と憧れているのと同じような夢を持っているので、その全部を欲張りにやりたいという気持ちでいっぱいです。

取材:キャベトンコ

ミニアルバム『Metaphysica』2022年3月9日発売 KING RECORDS
    • KIZC-662〜3
    • ¥4,400(税込)
    • ※DVD付

ライヴ情報

『ENVii GABRIELLA TOUR 2022~THE CABARET~』
3/12(土) 愛知・名古屋クラブクアトロ
3/13(日) 大阪・梅田クラブクアトロ
3/19(土) 東京・恵比寿LIQUIDROOM

ENVii GABRIELLA プロフィール

エンヴィ ガブリエラ:アーティスト・作家としてメジャーアーティストにも楽曲提供をしているTakassy(souljuice)、 アーティストやタレントとしてTVやイベントで活躍するHIDEKiSM、ダンサーとしてイベントやバックダンサーとして活躍するKamusという、それぞれが違うフィールドで活動していた3人よって結成。2016年夏にTakassyがHIDEKiSMにユニットの構想を持ちかけたことから、プロジェクトが始動し、そこにふたりの共通の知り合いであったKamusに白羽の矢を立て、正式に3人体制として活動が始まる。17年3月1日にプロジェクトの開始を発表し、同日よりYouTubeチャンネルにて“動画で楽しむ新宿二丁目”をコンセプトに、動画配信『スナックENVii GABRIELLA』を開始。ゲイ・オネェであることを武器に、音楽をメインとし、バラエティーショーやファッション、アートを作り出している。また、ピンヒールをトレードマークとしており、ヒールでのステージパフォーマンスも大きな特徴だ。そして、21年10月からの3 カ月連続デジタルシングルリリースを経て、22年3月にメジャー1stミニアルバム『Metaphysica』を、23年7月には待望の1stフルアルバム『ENGABASIC』を発表。 ENVii GABRIELLA オフィシャルHP

「CABARET」short ver.

「DYSTOPIA」 Lyrics Video

「Moratorium」teaser

OKMusic編集部

全ての音楽情報がここに、ファンから評論家まで、誰もが「アーティスト」、「音楽」がもつ可能性を最大限に発信できる音楽情報メディアです。

連載コラム

  • ランキングには出てこない、マジ聴き必至の5曲!
  • これだけはおさえたい邦楽名盤列伝!
  • これだけはおさえたい洋楽名盤列伝!
  • MUSIC SUPPORTERS
  • Key Person
  • Listener’s Voice 〜Power To The Music〜
  • Editor's Talk Session

ギャラリー

  • 〝美根〟 / 「映画の指輪のつくり方」
  • SUIREN / 『Sui彩の景色』
  • ももすももす / 『きゅうりか、猫か。』
  • Star T Rat RIKI / 「なんでもムキムキ化計画」
  • SUPER★DRAGON / 「Cooking★RAKU」
  • ゆいにしお / 「ゆいにしおのmid-20s的生活」

新着