帝国劇場が油屋と化す! 舞台『千と
千尋の神隠し』初日記念会見レポート

東宝創立90周年を記念した舞台『千と千尋の神隠し』の世界初演が、2022年3月2日(水)に東京・帝国劇場で華々しく幕を開けた(2月28日・3月1日はプレビュー公演)。
宮﨑駿が生んだ不朽の名作である同名アニメーション映画(2001年)を舞台化した本作。翻案・演出はミュージカル『レ・ ミゼラブル』世界初演時に潤色・演出を担ったジョン・ケアードが担う。さらに共同翻案に今井麻緒子、音楽スーパーヴァイザー・編曲・オーケストレーションにブラッド・ハーク、同じくオーケストレーションにコナー・キーラン、美術にジョン・ボウサー、パペットデザイン・ディレクションにトビー・オリエといった、世界最高峰のクリエイティブスタッフが集結した。
これらの豪華クリエイティブ陣が作り上げた作品世界に、主演の橋本環奈上白石萌音をはじめとする日本の実力派キャストたちが息吹を吹き込むことで、帝国劇場は湯屋「油屋」と化す。
衝撃の初日から一夜明けた3月3日(木)、同劇場にて初日記念会見が開催された。その模様を写真と共にレポートする。

会見には、千尋役Wキャストの橋本環奈と上白石萌音、湯婆婆・銭婆役Wキャストの夏木マリと朴璐美、そしてMCとして青蛙役のおばたのお兄さんが舞台扮装姿で登場。おばたのお兄さんは時々パペットの青蛙を動かし、匠に声色を変えつつコミカルに司会進行していた。
ーー開幕した今のお気持ちを中心にご挨拶をお願いします。
橋本:私は昨日、初日を迎えさせていただきました。もうすぐ初日が始まるお二人(上白石と朴)を前にして、ちょっと気の抜けた空気が私だけ出ちゃっているんじゃないかなと心配しております(笑)。この作品のお話をいただいたときから、幕が上がることをすごく楽しみにしていました。大変な日常の中でちゃんと幕が上がるのかという不安はたくさんありましたし、来てくださっている方も感染対策をしっかりしてくれて、こうして今日という日を迎えることができてすごく嬉しいなと思います。これからもっともっと成長していい舞台にしていけたらいいなと思っております。
上白石:今まさに舞台稽古をしていて、プレビュー公演、そして昨日の初日よりさらにいいものをお届けするために、カンパニー一丸となって頑張っているところです。このご時世に予定されていた日に初日が迎えられること、本当に嬉しくありがたく思っております。こんな時期に劇場に足を運んでくださる方々の気持ちに応えられるように、日々楽しく丁寧にやっていきたいと思っています。
夏木:幕が開きましたけれども、日々ブラッシュアップしています。ジョン・ケアードが決して諦めないので、毎日直しがあって、毎日いいものになっていくと思いますので、出演者は力を合わせてやっていきたいと思います。何よりみんな健康で、来ていただくお客様もいろいろご配慮くださっているようで、本当に感謝しかないです。初日が迎えられるというのは信じられないようなことですけれども、頑張ってやっていきますのでどうぞよろしくお願いいたします。
朴:改めて、コロナ禍でのものづくりの大変さというのを痛感しています。言えないような努力をみんなしてきて、今この場に立っています。スタッフ・キャスト一同熱いハートを持って、ものづくりに真摯な人たちに囲まれた幸せな現場に立たせてもらっています。なので、湯屋一同、心を揃えてみなさんをお迎えできるように日々頑張っていきたいと思います。
(左から)朴璐美、上白石萌音、橋本環奈、夏木マリ
ーーここで、スタジオジブリ鈴木敏夫プロデューサーより、いち早く舞台をご覧になった感想を頂戴しております。
お世辞なしに本当におもしろかったです。とにかくジョンの演出とキャストの皆さんが素晴らしくて、原作へのリスペクトが感じられて嬉しかったです。印象的なシーンを言い出したらきりがありませんが、キャストが大勢が出てくるシーンはどのシーンも観ていて気持ちが高揚しましたし、千尋とカオナシが電車に乗って行くシーンは実は観るまで少し心配だったのですが、非常にうまくできていると感動しました。映画の公開から20年が経っていることを考えるとキャストの方々の中には当時まだ生まれたばかりだった方もいて、幼い頃に映画『千と千尋の神隠し』をご覧になっている方もいる。その経験が舞台の迫力に繋がっているような気がして感慨深いです。皆さんがんばってください! 
                                                鈴木敏夫

ーー鈴木敏夫プロデューサーの感想を聞いて、いかがでしょうか?
橋本:本当に安心しますね。認められたというのがすごく嬉しくて。映画が好きなみんなが揃っているからこそ、鈴木さんにどう思われるかというのは、ジョンもめちゃくちゃ心配していたと思うんです。そんな中でこれだけお褒めの言葉をいただけると、本当に嬉しいですね。
上白石:お稽古に入る前から何度映画を観たかわかりませんし、絵にも励まされながら、お手本にしながら稽古を進めてきました。作品の素晴らしさに支えられて助けられることもあれば、その素晴らしさを壁に感じることもあって。本当にドキドキしていたので、鈴木さんにそう言っていただけてホッとしています。
(左から)上白石萌音、橋本環奈
ーー稽古中大変だったことは? ここは先に僕が言わせていただきます。全部です! みなさん、その中でも特に大変だったところは?
橋本:あり過ぎるくらいあります。千尋は本当にステージを捌けている時間がめちゃくちゃ短いんですよ。ずっと(舞台上に)いるじゃないですか。
上白石:捌けても早替えで走ってる!
橋本:そうそうそう、早替えで休めないみたいな感じでした。(千尋は)結構ドジな一面もあって、コケるようなことも舞台で何回もするので、実際に怪我をしちゃダメじゃないですか。だから怪我をしない転び方とか動きを研究するのが一番難しかったですかね。実は千尋って身体能力めちゃくちゃ高いんです。
上白石:本当に千尋は運動量が半端なくて。もう無理というところまで走らなきゃいけなくて。倒れ込みそうなところまで体を追い込む役なのですが、それに加えて稽古場では常にマスクをしています。しかもすごく精度が高くて密閉されたものをしていたので、本当に何回か倒れるかと思いましたね(笑)。でも高地トレーニングみたいな感じで、マスクを外して舞台でやると稽古場より楽なんですよ! なのでちょっとありがたかったなと、今ではマスクに感謝しています。
夏木:コロナ対策もそうですけれど、見えないところが千尋も湯婆婆も大変なんですよ。走ったり着替えたり。そういうのが、お稽古で繋がる繋がらないっていうのが大変でしたね。
朴:大変過ぎちゃって、何がどう大変って言えばいいのかわからないくらい(笑)。大変なことは御三方がおっしゃってくださったので、みんなが偉いなと思ったことを言ってもいいですか?
ーーぜひお願いします!
朴:本当にみんなが、常にどんな状況でもきっちり感染対策をしていられたということ。すごく意識の高い稽古場だったんじゃないかなと思っています。ご覧になられたらわかると思うのですが、アンサンブルの人たちが一番体を張っています。裏ではスタッフさんたちも休む暇がないんです。大変さがその分エネルギーとなって前に出ていると思うので、わかっていただけると思います。感染対策は、スタッフ・キャスト共に「私たちやったね!」と思うところであります。
(左から)朴璐美、上白石萌音、橋本環奈、夏木マリ、おばたのお兄さん
会見後は、引き続きその場で囲み取材が行われた。
本番を迎えての正直な感想を求められた上白石は「気もそぞろと言いますか(笑)。今日を迎えられて、これだけのみなさんに取材に来ていただいて本当にありがたいです。(公演は)7月までですので、頑張らなきゃいけないなと気が引き締まります」と、初日公演を目前に意気込んだ。上白石より一足先に初日を迎えた橋本は、初日が終わった瞬間の感想に「足が痛いな」と本音をポロリ。続けて「私自身初めての舞台だったので、やり遂げることができてよかったなと思いました」とホッとした表情を見せた。
映画の再現率が非常に高いというステージについて、橋本が「盆が回転してセットもすごく壮大。それを肌で感じるので、本当に千尋と同じ気持ちになれた気がします」と感想を述べると、夏木は「テーマパークにいるみたいだよね。グルグル回るから楽しいなという瞬間もありますね」と楽しそうに語った。
本公演は全国を巡りながら7月まで上演が続く。その長期公演を乗り切るための健康維持の方法を聞かれると、上白石は「お風呂にちゃんと入ることですかね。熱いお湯に。湯屋の話でもありますし」と、作品の舞台となる湯屋に絡めて答えた。一方の橋本は「特にやっていないですけど至って健康です」ときっぱり。すると、そんな橋本に対して上白石が「ストレッチもしないんですこの人」と暴露する場面も。「本当にストレッチだけはしてほしい」と切実に訴える上白石に対し、橋本は「アキレス腱だけは伸ばします」と約束した。
この日の最後は、橋本と上白石の一言で締めくくられた。
橋本「無事に幕を開けることができたので、本当に最後まで必死に千尋として生きていって、走り抜けたいなと思います。これからどんどんどんどん、全体を通して成長していけたらいいなと思っております」
上白石「本当に世の中いろんなことが起きていて、不安だったり恐ろしい気持ちになったりすることが多いと思うんです。けれど、劇場にいらっしゃる3時間だけでもいろんなことを忘れて楽しんでいただけるように、私たちも夢中になって全員で走り抜けたいなと思います。劇場でお待ちしております」
(左から)上白石萌音、橋本環奈
東京公演は帝国劇場にて3月29日(火)まで上演が続く。その後は大阪、福岡、北海道、名古屋と全国を巡り、名古屋・御園座にて7月4日(月)に大千秋楽を迎える予定だ。
取材・文・写真=松村 蘭(らんねえ)

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