DOPING PANDAが
新たな日本のロックを創造せんとした
志しを『DANDYISM』に見る
デジタルで原初的な快楽をダメ押し
《I win the light over to my side./And you may be given the shock in this night.》(M2「Introck」)。
個人的には、YUTAKA FURUKAWA(Vo&Gu)の歌声、ヴォーカリゼーションに1970年代の日本のロックバンドに近い雰囲気を感じ、邦楽史の必然(?)のようなものを背負わせたくもなったりもするが、それを世は老害と呼ぶのだろう。反省。
M3以降はDOPING PANDAの本性、野望がどんどん露わになっていく印象だ。M3「Blind Falcon」はレゲエ…と言い切るには勇気が要るが、基本にあるのはそれだろう。サビは開放的に展開。キャッチーでありながらもレンジは広く、まさに隼が空に突き抜けるかのような旋律だ。こうしたメロディーセンスは、パンクはパンクでも凡百のそれとは明らかに一線を画していると思うし、間違いなくこのバンドの大きなアドバンテージであろう。それでいて、そこにストリングスを配すなどのサウンドの工夫も見て取れる。
M4「MIRACLE」はアルバムに先駆けてリリースされたメジャー1stシングル。サウンドの工夫はこのM4でも見受けられる。4つ打ちで、ラテンっぽいパーカッションも鳴っているダンスチューンと言ってしまうと簡単だが、決してひと口で語れるほどに単純なナンバーではない。原初的あるいは根源的とも言えるリズムだけで十分な享楽を与えてくれるところだが、そこにデジタルをあれこれ絡ませる。それによって、さらなる快楽をダメ押ししてくれるかのようだ。定期的に訪れる電子音もそうだし、ヴォーカルへのディレイのかけ方もそうだ。レコーディングならでは手法を加味することで、楽曲全体のアッパーさを増長している…という言い方でいいだろうか。これはDOPING PANDAの本質に繋がる話だと思うが、彼らの音源制作作業の実態は緻密に計算されたものであろう。基本は3ピーズのバンドサウンドであり、それをミックスした上で外音をあしらっていくのだと思われる。そこから、さらなるミックス、リミックスもなされることも多々あろう。複雑な作業であろうし、作業が進めば進むほど、ベーシックの乗りが隠されてしまう恐れがあるのでは…と、自分を含めて素人は考えがちではないかと思う。料理に喩えると分かりやすいだろうか。調味料のバランスが悪かったり、ソースの風味の濃淡が過ぎたりすると、どんなに高級な食材を用いても美味しい料理に仕上がらないのではないだろうか。その点、DOPING PANDAはメロディーはもちろんのこと、根底にあるバンドサウンドの躍動感をまったく損ねることなく、そればかりかデジタルを始めとした外音を配すことで、根底にある熱量を上げていく印象だ。料理で言えば、絶妙な調味料とソースで、食材そのものの旨味を何倍にもしていると喩えることができるだろう。