黒沢ともよ、蒼木陣、長妻怜央、本田
礼生に聞く 舞台『アクダマドライブ
』への意気込みや2.5次元舞台の魅力

小高和剛 原案、ぴえろ と TooKyo Games 原作で2020年に放送されたアニメ『アクダマドライブ』。舞台は戦争によってカントウの属国となったカンサイ。「アクダマ」と呼ばれる犯罪者たちが受けたある依頼が、国全体を巻き込んだ大事件に発展していく物語だ。2022年3月10日(木)から行われる舞台に向け、一般人を演じる黒沢ともよ、運び屋役の蒼木陣、チンピラ役の長妻怜央、殺人鬼役の本田礼生の4名に話を聞いた。
――まずは『アクダマドライブ』舞台版にキャスティングされた時の感想をお聞かせください。
黒沢:アニメのオーディオコメンタリーで、原案の小高さん、監督やプロデューサーの方と座談会をさせていただいた時に、「実は舞台化の話がある」って聞いたんです。アニメの制作段階で声優たちが大きく影響してキャラクターも変わっていった作品なので、他の人が一般人(役)を演じたらヤキモチを妬いちゃうっていう話をして。そしたらその後すぐに連絡をいただいて、びっくりしたけど嬉しかったですね。
蒼木:(舞台の)キャストを見て、元々知っている方、共演したことがある方が多かったので、またこの人たちと一緒に作品を作れるという高揚感が一番強かったです。アクションやアクロバットが強みのメンバーが多いので、肉体を酷使することになるだろうなという覚悟もしました。本番が楽しみだし早く稽古したいです。
蒼木陣
長妻:僕も、どんな方々が出るのか聞いたら、陣くんをはじめ、舞台『タンブリング』で共演した方が多くて。ぜひやりたいと思いました。あとは、自分が演じたことのない役柄に挑戦したい思いもあったので一石二鳥だなと。リーゼント、したことないんですよね(笑)
本田:(演出の)豪さんやダンサーの方は、僕が役者になる前から知っている方々。初めて役者として舞台上で会うので同窓会みたいな気持ちもあり、楽しみです。それに、殺人鬼という役が僕の中ですごく魅力的で。普段から変わったキャラクターを演じることが多いですが、その中でもあまり演じたことのないキャラなので楽しみです。
――蒼木さん、長妻さん、本田さんはアニメ『アクダマドライブ』という作品を見た感想は。
蒼木:近未来的で映像がすごくきれいだなと思いました。あとは世界観。「シンカンセン」が崇拝されていたりするのが面白いですよね。舞台化すると聞いた時は、豪さんの演出にピッタリだなと思いました。イメージの通りに世界観が反映されるんじゃないかなと。今僕はアニメ4周目くらいなんですけど、見れば見るほど新しい発見があって。どんどん作品の世界にのめり込んで、気付けばファンになっている自分がいました。この魅力を、今度は自分がお客さんに届ける側になれるのが嬉しいです。
黒沢:4周! すごい!
長妻:やっぱり自分が演じるチンピラを見てしまうんですが、懲役4年なんですよね。いいことですけど、周りは900年超だったりするので、もっと悪いことしないかなとも思いました(笑)。でも、どこか憎めないキャラですね。自分も(憎めないキャラだと)言われることが多いので、共通点を見つけられました。
本田:まず、めちゃくちゃ面白かったです。テンポがすごく良くて見やすい。(蒼木)陣も言っていましたが、世界が細かく構築されている。この世界観を自分の中に落とし込むことからスタートですよね。この世界があるから、「アクダマ」という存在も際立つし。
本田礼生
蒼木:とにかく面白かったのですぐ(本田に)連絡しました。
本田:何周目かごとに連絡が来るんですよね。俺も見たから分かってるよって言ってるんですけど(笑)。
――黒沢さんは、時間が経ってから改めて作品に触れてどう感じましたか。
黒沢:アニメの話でいくと、この作品、一話の作画枚数が通常の倍あるんです。普通は200〜300のところを、450〜550くらい。カット数が多い分テンポがいいし、いい絵だし、いち視聴者としても面白いと言うのが時間をおいて改めて見た感想です。あと、意図してはいなかったと思うんですが、キャラクターたちがバラバラに行動し出すタイミングでコロナ禍になって。分散収録になったので、一緒に行動するキャラクターのキャストにしか会えていなかったんです。だから、声優たちの個性や性質も色濃く反映されていたし、後から見返しても温度を感じます。
――アニメ作品を元にした2.5次元舞台を演じることについての思いを教えてください。
黒沢:私は2.5次元舞台に出るのは初めてなんです。お客さんとして観に行くことはあるし、友達もたくさん携わっていて、素敵さはよく知っているんですが、その分の大変さや難しさもある。今はまだ緊張感がありますね。2.5次元舞台には独特の美学があると思うからこそ、一生懸命やらなければと思っています。
黒沢ともよ
――他の皆さんは、演じることが決まってからアニメを見たかと思いますが。
蒼木:まず思ったのは、運び屋のバイクはどうするんだろうっていう。キャラクターの肝というか、極論を言うとあれがないと戦えないくらい大切なアイテムなので、どんな演出になるのか楽しみです。あとは感情の起伏が大きいキャラクターではない。不安は大きいですが、役や作品に向き合えば向き合うほど、運び屋の持っているプロ意識や仕事に対する自信に繋がって、運び屋に近づいていけるのかなと。
長妻:僕は2次元のキャラクターデザインに近付くために体をひょろっとさせます!……というのは冗談で(笑)、僕が演じるチンピラはかっちりしたスーツ姿なので、ダンスや体の動きがあまり映えなかったり、弱く見えちゃったりする。どうやって見応えのあるものにするか考えなきゃいけないと思っています。それと、アニメに出演されている声優さんたちは皆さん実力派。アニメファンの方にどう見えるか、稽古の動画などで客観的に見て作っていかないといけませんよね。最近感じているのが、本番を続けていくと、元の形から自分の形に変わっていくっていう現象が起きがち。自分なりに考えて演じるのも大事ですが、基盤を大切にするのも大事だと感じるので、そこは気をつけたいです。役者としてじゃなく、ツアーやライブでも、やってるうちに元の音源と全然違う方向に行っちゃうことがあって。
黒沢:私は2.5次元舞台は初めてで、まだ全然勝手がわからないのですが、2.5次元舞台では皆さん何を大切にしているんですか? 何を守ったらいいんでしょう。
長妻:お客さんが何を大事にしているかにもよりますよね。
長妻怜央
蒼木:人によってどこを大事にするかは違うと思うんですが、人が演じるからより人間らしくなのか、アニメのキャラクターに寄り添うのか。いろんなスタンスが一つになっていくのが2.5次元舞台の面白さかなって。統一感は演出家の方が出してくださるから、そこを信じていけばいいのかなって。
黒沢:なるほど。勉強になります。
本田:僕は2.5次元舞台といっても普通の演劇と変わらないと思ってます。制約の中でなら何をやってもいい。舞台なら例えば2時間という時間の制約があって、それが難しさだし面白さでもある。そういう視点で殺人鬼を見たときに、出来ることの幅がすごく広いと思っています。自分でもどういう芝居をするかまだ分からない。皆さんとのバランスで変わっていくでしょうし。だから、どう演じるかというのをあまり考えずにアニメを見て、稽古に入ってその“場“に立ってから考えようと思いました。
黒沢:皆さんの話を聞いているだけで面白い。公演が終わった時に、自分がどう感じるのかすごく楽しみになりました。
――皆さん、お互いの印象はいかがですか?
蒼木:僕は黒沢さん以外とは共演経験があるというか、礼生とは中学からの幼馴染。(本田と共演した)テニミュでは(芝居で)言葉を交わしていないので、ちゃんと一緒に芝居をするのはこれが初めてです。楽しみじゃないわけではないですけど、うまく感情を言葉にできないですね。
本田:逆に、よく今まで共演しなかったなぁというのはあります。やりやすいかやりにくいかって言ったらやりにくいですよね。お互い標準語が気持ち悪い(笑)。
蒼木:出身が愛媛で、普段は伊予弁だからね。
本田:陣がどんな芝居をするかには興味あります。
蒼木:それはある。アニメを見てると、殺人鬼が礼生にしか見えない(笑)。
左から 本田礼生、黒沢ともよ、蒼木陣、長妻怜央
――蒼木さんと長妻さんは2回目の共演ですよね。
蒼木:久々だけど変わらないので安心しました。怜央は怜央だなって。
本田:呼び方なんとかしてよ(笑)。
長妻:僕も“れお”だから、さっき「殺人鬼が“れお”にしか見えない」って聞いてあれ?ってなりました(笑)。
蒼木:稽古場に入ってから一番の課題ですよね(笑)。
――本田さんと長妻さんは……。
本田:ビジュアル撮影でお会いしました。でも、僕は人見知りで。
長妻:僕もなんですよ!
黒沢・本田:嘘だ!
蒼木:分かる。人見知りな印象。
長妻:僕は喋るんですけど、目をあんま見られない。
本田:でも、すごくいい評判をたくさん聞いています。良い方なんだろうなって思っています。
長妻:本当ですか? 調子に乗ります(笑)。礼生さんには大人な雰囲気を感じますね。これから仲良くなれたら嬉しいなって思います!
本田:僕のことを大人だと思ってる人、誰もいないですよ。
蒼木:クソガキです(笑)。
本田:大人っていう印象を大事にしてください(笑)。
本田礼生
――黒沢さんは皆さん初共演ですよね。
黒沢:はい。でも、アニメキャストの皆さんと舞台のキャストさん、それぞれ雰囲気がすごく似ているなと感じました。運び屋役の梅原裕一郎さんはお父さんタイプで、収録中に「これ持った?」「これ忘れてるよ!」とか面倒を見ていただいていて。チンピラ役の木村昴さんはすごく明るくて面白いことをたくさん話してくれるんです。長妻さんも、今日お会いした瞬間に「聞いてくださいよ! 課金したんですけど好きなキャラクターが全然こなくて!」って話しかけてくれました(笑)。殺人鬼役の櫻井孝宏さんも言葉数は多くないけど優しくて自分の美学がありそうなタイプの方で。だから、勝手に親近感を感じています。
本田:僕、櫻井さん大好きなので嬉しいです!
蒼木:この役だって分かったとき一番喜んでたもんな。
黒沢:骨格もなんとなく似てますよね。
本田:本当ですか! これ、書いておいてください!(笑)
――皆さんから黒沢さんへの印象は。
蒼木:「ご本人がいる!」でした。芸能人に会った時の感覚というか。普段あまり一緒にお仕事をしないジャンルというか、キャラクターに命を吹き込んでいる方ですし。しかも自分が演じられた役をそのまま舞台でも引き継ぐ。お会いしてテンションが上がりましたね。
蒼木陣
長妻:気さくで話しやすいというのが第一印象です。すごく親身に話を聞いてくれて。僕、アプリゲームでどうしてもほしいキャラクターがいて課金をしたんですけど、携帯キャリアの決算の上限があることを知らなくてどうしようと思っていたら、「コンビニに行くとギフトカード売ってるよ」って!
蒼木:やばい、それ教えちゃダメなやつですよ(笑)!
黒沢:長妻さん、「もっと課金できる方法見つけました!」ってマネージャーさんに言って、「だめ、絶対!」って怒られてました(笑)。
本田:作品を一番理解している方がいるというのは、僕らにとってすごく心強いし強みだと思います。このインタビュー中のお話も、普通なら知れないことがたくさんあったし。説得力が違いますよね。
――作中でそれぞれのキャラクターが「居場所」を探しています。皆さんにとって、安心できる・欠かせない「居場所」は?
黒沢:劇場です。コロナ禍で初めて休みの日に劇場に行けない状況になって。私、絶対にどこかの劇場に徒歩で行ける場所に住むんですよ。同じ作品も何度も観るし。劇場のロビーとか、アフレコブースの前の待合室とか、本番が行われる場所の前の待合が私にとって居心地のいい、安心できる場所だったんだなって気付きました。
本田:僕は家です。外に出たくない。ゲームとか映画とかを楽しみます。最悪、蒼木がいてもいい。
蒼木:それは最高やろ(笑)。僕は逆に家にいたくないですね。
黒沢:あ、じゃあ利害が一致してますね。本田さんの家に蒼木さんが行けばいい。
黒沢ともよ
蒼木:確かに(笑)。人といるのが好きなので、これまでご一緒した方々や座組が居場所になることが多いです。一つの作品を作るために一緒に走ってきた時間はかけがえのないものなので、家に帰ってきたような安心感がありますね。この『アクダマドライブ』も、終わったときにそういうカンパニーになっていればいいなと思います。
長妻:僕は、お芝居とは別に、「7ORDER」というグループでライブ活動もしていて。舞台が終わって、メンバーに会って仕事やプライベートの話をする時にホーム感があって安心します。
本田:みんなめっちゃいい答えじゃん。
蒼木:でも、結局家っていうのは分かるよ(笑)。
本田:劇場です!
黒沢:じゃあ私家にします(笑)。
蒼木:なら僕は実家(笑)。怜央はグループがあるっていいね。
長妻:そうですね。一緒にいすぎると「もうええわ!」ってなるときもあるんですけど、別々に仕事してると会いたくなります。
長妻怜央
――最後に、舞台を楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。
黒沢:皆さんアニメを見てから舞台に来てくれるのかなと思いますが、アニメはアニメ、舞台は舞台です。大切なことがたくさん詰まっている作品なので、その中から私たちが今伝えるべきこと、生の再現芸術として届けるべき要素を選んでいくことになると思います。だから、アニメで見た世界をそのまま味わうというより、この作品を改めて上演するときに私たちが何を大切にするのかを楽しみに劇場に来ていただけたら嬉しいです。
蒼木:僕は2.5次元作品は久しぶりなんです。でも、どんな作品でも真摯に取り組めばお客さんは受け入れて下さると思いますし、お客さんを信じて、僕が思う精一杯でこの作品に取り組もうと思います。皆さんの心にずっと残るような作品にできるように頑張りますので、応援のほどよろしくお願いします。
長妻:来てくださるお客様に全力で気持ちをお伝えしたいです。やっぱり、体感する面白さってあると思うんです。僕自身も、会場の空気に触れるのはすごく好きなので、お客さんの目線で舞台を作り上げていきたいですし、自分なりの信念を持ったうえで、どう楽しんでもらえるか考えることに今からワクワクしています。何回観ても面白いし、一回でも心に残る作品にしていきたいなって思っています。
本田:僕はシンプルに楽しみです。この作品への出演が決まってからもうずっと楽しみで。絶対面白くなると思うんです。言いたいことは皆さんが言ってくれたので、僕はもう楽しみだっていうことだけです(笑)。
和気あいあいとした雰囲気で進み、すでにチーム感が見えたインタビュー。舞台ならではの見応えある作品が生まれるのが楽しみだ。本作は2022年3月10日(木)より、品川プリンスホテル ステラボールにて上演される。
左から 本田礼生、黒沢ともよ、蒼木陣、長妻怜央

取材・文=吉田沙奈 撮影=池上夢貢

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