【仲村瞳の歌謡界偉人名言集】#239
歌手・西郷輝彦の言葉

作詞家、作曲家、編曲家、音楽プロデューサー、バンドマン、振付師、……そして、歌手。きらびやかな日本の歌謡界を支えてきた偉人たちを紹介するとともに、その方々が発したエネルギー溢れる言葉を伝えます。常軌を逸した言動の裏に、時代を牽引したパワーが隠されているのです! このコラムで、皆様の生活に少しでも艶と潤いが生まれることを願います。

1に元気、2に元気、3・4がなくて5に演

より

2022年2月20日、惜しくもこの世を去った大スター・西郷輝彦。2021年の4月から9月まで、がん治療のためオーストラリア・シドニーに滞在していたという。今回の名言は、オーストラリア最大の日系新聞『日豪プレス』のチェア・パーソンである作野善教と西郷の対談記事からの抜粋。この対談は西郷のシドニー滞在が縁で実現し、シドニーの素晴らしい環境や生活と共に、西郷の芸能人生についても語られている。

1964年のデビューから、57年間(2021年当時)という長期に渡って活躍し続けてきた西郷。インタビュアーの作野は、「長く仕事を続けるために、普段から意識されていること、秘訣があればぜひご共有頂きたいと思います」と訪ねる。西郷は「答えは非常に単純で明快です」と返し、「1に元気、2に元気、3・4がなくて5に演技」という言葉に繋げる。まず「健康で元気に生きてさえいれば何かができる」と語り、演技については、「演技というのはその人の人生から生まれてくるもの」「演技は日常生活の中にも当然ある」「演じて続けているうちに、ふと自分のものとなっていることに気付いたりする」と、芸能人だけではなく万人に通じる処世術を投げかける。作野はその言葉を受け、「面白いですね。かつてよく耳にした言葉に“FAKE IT UNTIL YOU MAKE IT”というものがあります。“できるようになるまでできるフリをしろ”という意味の言葉で、アメリカでサラリーマンをしていた時に上司からよく言われました」と返している。生涯現役でスター街道を歩み続けた西郷の人生訓を、今こそ多くの人に知ってほしい。
西郷輝彦 (さいごうてるひこ)
1947年2月5日生まれ、鹿児島県鹿児島市出身。歌手、俳優、タレント、小説家。1964年、「君だけを」でレコードデビュー。その2ヶ月後に発売された「十七才のこの胸に」もヒットし、1964年の「第6回日本レコード大賞」新人賞を獲得。同年、映画『十七才のこの胸に』では俳優デビューを果たす。歌手活動の他、多くの映画やテレビドラマに出演。1960年代を代表する青春スターとして国民的人気を集める。橋幸夫舟木一夫らと共に「御三家」と呼ばれ、一世を風靡する。1966年には、浜口庫之助が作詞・作曲を手がけた26枚目のシングル「星のフラメンコ」が大ヒットを記録。同曲は、西郷がスペイン旅行中に観たフラメンコの感動を浜口に伝えたことがきっかけで生まれた曲である。この年の「第17回NHK紅白歌合戦」では白組のトップバッターで披露。後に、井上陽水五木ひろし氷川きよしなど多くのアーティストがカバーしている。1970年、作詞家・阿久悠と作曲家・川口真による56枚目のシングル『真夏のあらし』が「第12回日本レコード大賞」作曲賞を受賞。続く、「情熱」(1970年)、「略奪」(1971年)、「愛したいなら今」(1972年)などロックポップス調の曲でも高い評価を得る。1973年、小説家・花登筺原作のテレビドラマ『どてらい男』の主演に抜擢され、俳優としても脚光を浴びる。同番組は最高視聴率35.2%を記録 。1975年には、テレビ時代劇『江戸を斬る』の主演・遠山金四郎役で俳優としての確固たる地位を築く。近年では、タレントとしてもバラエティ番組に出演するなど、活躍の場は多岐に渡っていた。2021年2月に中野サンプラザで予定されていた、<西郷輝彦 デビュー55周年記念コンサート>が新型コロナウイルス感染拡大により中止となっていた。同年、がん治療のためオーストラリアへ渡る。YouTubeチャンネルを立ち上げ、治療についての動画配信を行っていた。仕事への復帰の意欲を見せていたが、2022年2月20日、前立腺がんのため死去した。享年75。
仲村 瞳(なかむらひとみ)
編集者・ライター。2003年、『週刊SPA!』(扶桑社)でライターデビュー後、『TOKYO1週間』(講談社)、『Hot-Dog PRESS』(講談社)などの情報誌で雑誌制作に従事する。2009年、『のせすぎ! 中野ブロードウェイ』(辰巳出版)の制作をきっかけに中野ブロードウェイ研究家として活動を開始。ゾンビ漫画『ブロードウェイ・オブ・ザ・デッド 女ンビ~童貞SOS~』(著・すぎむらしんいち/講談社)の単行本巻末記事を担当。2012年から絵馬研究本『えまにあん』(自主制作)を発行し、絵馬研究家としても活動を続ける。2014年にライフワークでもある昭和歌謡研究をテーマとした『昭和歌謡文化継承委員会』を発足し会長として活動中。

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