【INTERVIEW:JYOCHO】
自分と世界の折り合いを
どうつけていくか

JYOCHO
だいじろー : 僕がつけたんですが、海外にも通じる日本の良さを伝えたいっていうのがありました。「JYOCHO」って漢字の「情緒」なんですけど、その趣やワビサビ感とかを音楽で表現していけたらいいなって思ってます。
――お言葉通り海外でも活躍されていますが、JYOCHOならではの魅力とは?
sindee :変拍子みたいに楽曲の中ではテクニカルなことをやっていても、歌の良さやメロディーラインはすごく大事にしていて、ジャパニーズロックやポップスに落とし込んで聴けるっていうのがミソです。そして、ライブでそれを表現していくっていうところに重きを置いているので、ライブに魅力があると自負しています。あとはフルートがいるので、それも特徴ですかね。
――今作『しあわせになるから、なろうよ』についてお訊きしますが、まずタイトルに込められている想いを教えてください。
だいじろー :コンセプトは、自分を大切にしていくためにはどうしたらいいのか? っていうような哲学的な問いや、自分発信のミクロな部分を出発点として、そこから周りの世界とどうやって混ざり合っていくか、自分と世界の折り合いをどうつけていくかということをイメージしています。
――シンプルな言葉に見えましたが、とても深いんですね。普段、作品作りはどういった流れで構築していくのでしょうか?
だいじろー:作る必要がある時に作る感じなのでストックとかはなくて、ボツとかもない。作曲には時間をかけたくないので大体1〜2日で作ってますね。短期集中で楽曲として完成するまで作業が終わらないし、長引くと楽曲に飽きてしまうので。
――作曲に関して、メンバーが意見を出したりすることはありますか?
だいじろー:デモを出したときに各パートでコミュニケーションはとります。時が経つにつれてアレンジとか仕上がった完成形がデモと大きく変わってきていて、メンバーの力はすごく感じています。
sindee: だいじろーと相談しながらアレンジを詰めたりするんですけど、正直ちょっと苦痛なこともありました(笑)。今まで自分が経験してきた作曲方法や自分にはないアイデアが多かったので、最初はすごいびっくりしました。でも今はそれを楽しめるようになりましたね。
JYOCHO
はやしゆうき(以下、はやし):だいじろーとは前から知り合いで作品の雰囲気は知っていたんですが、私が正式にバンドに参加するっていうのは録音の一週間前くらいに決まって。イケるって思って蓋を開けたら、難しいってなって…(笑)。その延長線上で今も頑張っています。
だいじろー:当時、吹いてもらった時にめちゃめちゃ感動した覚えがあります。
はやし:うそー、言ってよ! そのときに。
――(笑)。だいじろーさん的に猫田さんの歌声の良さを引き出すために意識していることって何かありますか?
だいじろー:元々JYOCHOのボーカル像としては、めちゃめちゃ高い声が出るとか一音一音を一切外さないとかではなくて、どっちかっていうと中性的な声がいいなっていうのがあったんです。それぞれ聴いた人に答えが出るような楽曲にしたくて。ライブハウスの弾き語りで初めて声が聴こえてきたときに、スッって入ってくる感じですごいいい声だなって思った記憶があります。望んでたボーカル像に合っていて魅力を感じましたね。
————猫田さんは歌う際に何か意識はしているのでしょうか?
猫田ねたこ(以下、猫田):歌い手さんっていろんなパターンがあると思うんですけど、歌が一番目立つっていうよりかは、だいじろーさんが作った楽曲の世界観をそのまま余計な装飾をせずにストーリーテラーになるというか、そのままサラッとじゃないけど派手にならないようには気をつけてます。もともと自分が得意なキーより高めのキーをリクエストされるので(笑)。難しいことはいっぱいあるんですけど、シンプルに、素朴に、ナチュラルに。聴いてくれた人が自由に受け取れるように派手にならないように、そのまま語り部みたいな感じで歌うようにしてます。
――リード曲の「みんなおなじ」は、TVアニメ『真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました』のエンディングテーマですが、決まったときの率直な気持ちを教えてください。
だいじろー:最初に資料を見させてもらった時に、今作りたいと思ってた楽曲のイメージとのハマり具合がとても印象的でした。その当時、“みんなの歌”を作りたいと思っていて、この社会の状況とか情勢とかもあって、その感覚がすごく嬉しかった記憶がありますね。

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sindee:地域の環境や人種の違いで盛り上がりが全然変わるので、感情的に違うところはありますね。僕たちが発信した音をそのまま素で受け取ってくれるので、その反応が面白くて楽しめるというか。日本でも素だけど、同じ生活感だからか意識が固くなったりとかはしますね。
猫田:ボーカル的には、圧倒的に違うのはやっぱりテンション感ですかね。海外の時はテンション上げ目でやってます(笑)。インスト曲のギターライン歌ってくれたりしますから、シンガポールとかフィリピンとか。あれがすごいびっくりした。
だいじろー:海外の人は結構パーティピーポーが多くて反応がわかりやすいんですよ。フルートのパートで合唱したりとか楽しみがいっぱいありますね。日本とは違う聞き方があるんだなって感じがします。
――なるほど、楽しそうですね。では最後の質問になりますが、あなたにとって音楽とは?
はやし:わたしはJYOCHO以外にも色々活動しているんですけど、音楽は普通に生活してる時に無意識に一緒にあるものだと思ってる。好きな人には聞いて欲しいし、その曲に何も思ってない人にも生活の一部として実はいつもあるよっていうのを届けていきたいです。
sindee:生きてきて半分ぐらいはずっと音楽がそばにあったというか。自分で選んで音楽をしたいっていうことで携わってきたので、僕にとってはある意味コミュニケーションのひとつで“言語”と同じようなものというか。すごく大切なものなので、発信していくことを止めないようにしたいなっていう感じです。
猫田:すごくシンプルで深い質問ですね(笑)。わたしにとっての音楽は、一言で言うと“支え”かなって思います。JYOCHOは背中を押すというよりかは月みたいに見守ってくれて寄り添う感じのバンドかなって思っているので、今後もっとたくさんの人の支えになればいいなって。で、自分の支えでもあるのでこれからもずっと音楽には触れて生活していきたいなって思ってます。
だいじろー:大まかには 2つあると思ってて。ひとつはsindeeさんとかぶるけど、言語。JYOCHOでやってることっていうのは基本的に自分で言語化できないことを歌詞にしてるけど、歌詞だけでは無理で音楽を通してメンバーと一緒に伝えるみたいなことを目指しています。もうひとつは、一人一人見えてる世界が違うってことは、その違う人同士が音楽をやれば世界同士がぶつかるという考えを持ってて。なので、音楽は自分以外の世界を見つけるツールだと思ってます。

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