イラスト:いらすとや(加工画像)

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「低身長の男は人権なし」発言:ロマ
ン優光連載206

ロマン優光のさよなら、くまさん
連載第206回 「低身長の男は人権なし」発言 お菓子つくり配信中に身長170cm以下の男性は「人権」がないと発言した女性プロゲーマーがネット上で非難を受け、結果として所属チームから解雇されることになった事件。自分のTwitterのTLでも、このことが話題になっているのをたびたび見かけます。
「人権」というのは、ゲーマーのスラングで必須条件を指す言葉として使われており、文字通りの意味で使われたのではなく、低身長男性は彼女の恋愛対象としての条件を満たしていないということが言いたかったという話もあります。
 もし本当にそうだとするならば、仲間内だけで流通しているスラングを考えなしに不特定多数につながっているインターネットのような場で使うことの危険性という要素も含まれているのかもしれません。
 自分がソロでやっていたり、普段聴いているような音楽、ある種のパンクロック、一部のアンダーグラウンドなメタル、一部のグラインド、一部のノイズ、文字通りスカムと言われるようなジャンルでは「ひどい」「クズ」「ゴミ」「腐った」という言葉が褒め言葉として使われることがよくあります。ただ、それはあくまで文脈を共有している人同士だけで通じる言葉でしかないんですよね。
 例えば、アイドルを褒めるためにそういう言葉を使ってSNSで発信したならば、悪口を言っているとしか受け取られず、多くの人に非難されることになるでしょうね。それはそうです。アイドルの中にもスカムなテイストを意識的にやっているグループもありますが、そういう界隈にしたって「ひどい」という言葉が褒め言葉としてギリギリ共有されていても、他の言葉はさすがに無理。それはともかく、こちらがどういう意味でスラングを使っていようが、相手が文脈を共有していない人なら言葉の本来の意味そのままに受けとるのが普通です。そのことに気づかない方に問題があるのではないでしょうか。
「人権」がスラングとして使われていたという前提で考えても、ゲームのキャラとかPCのスペックに対して使うならまだしも、生身の人間相手にそれをいったらダメだろうというのも当たり前だし、「人権」という言葉が本来持っている意味を考えれば、そもそも軽々しく使いすぎなのではないでしょうか。人権というものを特に考えていないからこそできることでしょう。
 そもそも、彼女の場合、スラングの使い方以前に話の内容自体が良くなかったと思います。「人権」を使わずに、チビは無理と言っていたところで感じが悪いですよね。手術で背を伸ばせ発言も酷い。Uber Eatsの配達員から連絡先を聞かれて怖かったという話の流れで、配達員が170cm以下であったことから話を広げて「人権」発言につながっていったのですが、彼の行動は非難しても問題はないですけど、行動よりも、その身体的特長をピックアップして攻撃し、その属性自体への否定ともとれる発言をしているわけで、一言でいうとダメですよね。毒舌キャラを意識してるんだと思いますが、強い言葉をひたすら連射してるだけなので、単なるメチャクチャな人に見えます。「過激なことを言えばウケる!」と思ってるんでしょうけど、過激とかじゃなくて、単に酷いだけなんですよね。
 以前、彼女が女性ゲーマーに対するルッキズム的な誹謗中傷に対する問題提起していたんですが、今回のことに対して「彼女自身が同じような構造のことをやってるのではないか」という指摘がされています。その上、同じ配信でAカップ、Bカップの女性には「人権」がないという類の発言もしていて、自分が女性にもそういうことを言ってしまってます。「人権」が必須条件という意味で使われていたとしても、そういう女性は女性としての必須条件を満たしてないということになってしまうし、できるだけ好意的に解釈しても、そういう女性は男性の恋愛対象としての必須条件を満たしていないぐらいにしか解釈できません。ネタなんだとは思いますけど、こちらの方が低身長男性に対する発言よりも酷いような気がします。
 ここまで事が大きくなってしまったのは、彼女自身も何が悪かったのかを理解できてないため、ちゃんとした謝罪を早期にするチャンスを逃したというのはあるでしょう。それが理解できていなかったのは、彼女だけではないのかもしれません。所属チームのマネージャーのツイートを見ると、彼も事態が理解できてない感じが出てますし。もし、状況をちゃんと理解できていたならば、ここまで大事になる前にチーム側がフォローできた可能性もあります。炎上したから解雇された、スポンサーに抗議がきたから解雇されただけで、発言自体の問題が深く考えられてはいないように思われても仕方がないかもしれません。過去にも差別に繋がるような問題発言が度々あり、過去のそういう発言の際にどういう指導がチーム側からされていたんでしょう? 彼女のスポンサーのレッドブルの本社の社長は「保守」というか極右というかそんな人らしいんですが、「今まで許されてきたのは彼の志向と彼女の発言がバッチリあっていたから」ということはさすがにないとは思います。一発アウトではなくて、なんだかんだで累積でアウトなのかも。
 彼女の今回の発言のようなものは、以前なら一部でギャグとして許容されることもあったと思いますが、ここ数年でドンドン通用しなくなってきています。そういった流れに気づかないまま、内輪での昔のインターネットくさいノリをそのまま垂れ流しているうちに、たまたま世間に見つかって炎上してしまうことはこれからもあるでしょうし、増えていくんでしょう。
 やけになって炎上系配信者になったりせずに、問題点を理解した上でプロゲーマーに戻れるといいですね。
(隔週金曜連載)

イラスト:いらすとや提供(加工画像)
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