SUPER BEAVER、竹原ピストル、阿部真
央がリベンジを果たす、関西のコンサ
ートプロモーター30周年の祝祭『SOU
L FIRE - GO LIVE , GO GREENS -』

『SOUL FIRE - GO LIVE , GO GREENS -』2022.1.22(SAT)神戸ワールド記念ホール(KOBE)
1月22日(土)に兵庫・神戸ワールド記念ホールにて、『SOUL FIRE - GO LIVE , GO GREENS -』が開催された。関西の音楽コンサートプロモーター・GREENSの30周年を記念し2020年に予定されていたイベントで、コロナ禍の影響を受け一度は開催を断念。2022年に改めて同じ顔ぶれを招き、徹底した検温・消毒や、グループディスタンスを守りながら行われた熱きステージに迫る。
中島ヒロト(FM802)
「皆さん、コンサートは好きですか? 何度も足を運んでくれた方、今夜が初体験という方もいらっしゃるかもしれません。アーティストの演奏を目の前で観られることは、本当に素晴らしい時間です。そんなコンサートを届ける、GREENSの30周年を記念したイベント。GREENSと共に歩んでくれたライブ最強最高の3組が、魂を燃やし尽くす熱狂の夜を作ってくれます。彼女自身も皆さんの前で歌えることを本当に楽しみにしていたと思います。思いっ切りやっちゃってください、阿部真央!」
■阿部真央
阿部真央
まずはMCを務めるFM802のDJ・中島ヒロトからの熱いオープニングコールを受け、初っぱなの「Believe in yourself」から、鮮烈な歌声を聞かせてくれた阿部真央がオンステージ! 真っ白なワンピースに身を包み、大観衆を見る見るうちにモノにしていく手腕はさすがの一言だ。5人のバンドメンバーと共にエモーションたっぷりにギターをかき鳴らし、続く「モンロー」ではハンドマイクで、視線を客席に合わせるべく低空姿勢を取りながら、コケティッシュな魅力全開に観客をトリコに。西川進(Gt)が電飾付きのド派手なギターで弾き倒したかと思えば、一転してエッジィな「お前が求める私なんか全部壊してやる」を投下! 声色一つとっても極彩色の表現で魅せるなど、改めてショーマンシップの高さを感じさせる。「(歌詞を)間違えた!」なんてご愛嬌を挟みつつ、再びアコギを手にした「まだいけます」は、厚みあるトリプルギターと彼女のハイトーンボイスが実に圧巻だった。
阿部真央
MCでは、大きく両手を振りオーディエンスへと語りかける彼女。「声が出せない分、拍手を味わっておりました。(改めて拍手が沸く)……いいんですか? おかわり(笑)! いろいろな不安がある中でこの時間を選んでくれて、私、それから竹原ピストルさんとSUPER BEAVERさんに会いにきてくれてありがとうございます。……主催者でもないのに主催者っぽいことを言ってしまいました(笑)。そして、GREENSさんに改めてお礼を言いたいと思います。阿部真央は関西でのライブは約1年半ぶり、神戸ではちょうど3年ぶりになります。頭の曲では感極まってちょっと泣きそうになりました。あそこで泣いてたらねー。「感動!」となったんですけど(笑)」
阿部真央
チャーミングかつ等身大の彼女を感じつつ、話は次なる曲へ。「すごく大切な歌ができました。コロナになって、自分自身について省みることが多かったんですけど、投げつけるばかりだった愛情表現から、相手がいるから変わっていきたいと思える感覚だったり、相手がどんな姿だろうと、相手からどんな言葉を投げかけられようとも、それでも憎むんじゃなくて、それでも愛したいという思いを込めた曲です」
阿部真央
そう奏でたのは、新曲の「Sailing」。彼女のデビュー13周年記念日であるライブの前日=1月21日(金)に配信したばかりの同曲は、荘厳なイントロから穏やかなボーカルへとつながるバラードで、サビでの絶唱が胸を打つ。「打って変わってノれる感じの曲なので楽しんでください!」といざなう軽快なリズムでの「I Never Knew」では、再びステージ最前線でとびきりキュートな表情満開の彼女。多幸感に満ちたアンサンブルは、歌を響かせる、音を鳴らす歓喜に溢れ、切ない恋模様を極上のポップネスに託した阿部真央の真骨頂「じゃあ、何故」、そして、陽光たっぷりのリフが導く「ロンリー」では、「飛べる人は飛ぶよー!」とジャンプし、広大な神戸ワールド記念ホールを一体化させていく。
阿部真央
「最高の時間をありがとうございました! 本当に泣きそうです。最後は私らしく弾き語りで終わりたいと思います。実は、「モンロー」がTikTokでバズってるみたいで。そのコメントで「この人ストーカーの人やろ?」と書かれてました。……違います! ストーカーをモチーフにした歌を歌ってる人です(笑)」と、たった1人でギターを手にし、「ストーカーの唄〜3丁目、貴方の家〜」でエンディングへ! キャンディボイスがより歌詞のブラックユーモアを際立たせる同曲を含め、歌世界に合わせ七色に変化する万華鏡のような時間をもたらしてくれた阿部真央のステージだった。
■竹原ピストル
竹原ピストル
再び中島ヒロトが姿を現し、二番手を呼び込む。「どこでもどんなステージでも、変わらず歌に魂を乗せて届けてくれます。しっかり受け止めてください。大好きです! 竹原ピストル!」
「精一杯歌いますので、のんびりとお付き合いください」と照れくさそうにあいさつし、まずは「おーい! おーい!!」から幕を開けた竹原ピストル。口笛が導く「It's My Life」の中、ふと客席に目を向けると、ステージへくぎ付けになるオーディエンスの姿が印象的で、「LIVE IN 和歌山」では、まるで歌詞中のキャラクターが眼前に現れたかと思うほどの表現力と温かな視線を示しながら、曲ごとにどデカいクライマックスを生み出していく。語りにも似た実直な歌唱での「初詣」で感じるのは、これぞ言葉の力。心臓ごとわしづかみにされていくような生々しさは、ライブだからこその音楽体験だ。「みんなー、やってるか!」では、祭り囃子のごとく高密度の手拍子が湧出! シンプルなライティングとギター、そして竹原ピストルの歌。ただそれだけで、この広々としたアリーナをやすやすと我がものにしていく。
竹原ピストル
続く「Amazing Grace」がまた出色だった。「愛する存在に対しての祈りの気持ちを込めて書いたポエムを、「アメイジング・グレイス」のメロディに乗せさせていただいて完成させた曲です。今日お集まりの皆さん、今年も心と体に気を付けて元気に過ごされますように」と、切実な願いを凝縮した今宵イチの絶唱に、涙腺は容赦なく決壊。情感たっぷりのブルースハープがまた味わい深く、彼の私小説の世界に入り込んだような心地だ。
竹原ピストル
「久しぶりに神戸へ歌いに来ることができた喜びの気持ちを込めて、次は旅の歌を。大変な状況ではありますが、歌の旅に出るのは幸せです。こんな素敵なイベントに出させてもらい、直接皆さんとお会いできて、思いがけず手拍子をもらったりして……。僕は話すトーンが低いから伝わりづらいかもしれませんが、今日はここ数年で一番楽しいです。本当にありがとうございます」
竹原ピストル
その言葉へ呼応せんとばかりの喝采に包まれ、「Float Like a Butterfly, Sting Like a Bee!!」へ! ギターをかきむしり、ホールとは思えないほどの迫りくる臨場感で、ライブというフィジカルのすごみを見せつけていく。さらに、明朗なメロディで鳴らす「よー、そこの若いの」では、客席から伸びる数え切れないほどの拳が上がり、会場全体へも笑顔がつながるさまが、マスク越しでも手に取るように分かる。いつまでも鳴り止まないこの拍手は、間違いなく竹原ピストルのものだ。そのまま2月2日(水)に発売したアルバム『悄気る街、舌打ちのように歌がある。』から先駆けて、「朧月。君よ、今宵も生き延びろ。」を、ポエトリーリーディング的に放ち、ステージ上に見えないはずの朧月が心に浮かぶ。哀愁いっぱいのブルースハープを響かせ、この強烈なまでの応援歌を神戸の地に濃く、深く刻み付けていく。
竹原ピストル
「今日初めての皆さんばかりでしょうに、優しくしてくださって本当にありがとうございました。またお会いすることがあったら成長を見せられるよう精進しますので、応援よろしくお願いします。じゃあ今述べた気持ちを約束しつつ」と、「ギラギラなやつをまだ持ってる」で終幕へ! 走り続ける「オールドルーキー」の精神で再会を約束してくれた竹原ピストルを、会場は大喝采で送り出していった。
■SUPER BEAVER
SUPER BEAVER
いよいよ『SOUL FIRE』も終盤へと近づく中、中島ヒロトがラストアクトの名をコール。「曲はもちろん、ステージでの佇まいにもシビれています。ライブでないと感じられないですからね。存分に圧倒されてください、SUPER BEAVER!」
「GREENS、30周年おめでとうございます。やれますか兄弟!?」と、渋谷龍太(Vo)が宣言するや、大トリSUPER BEAVERのお出ましだ。ド頭から強靭な音圧で「ハイライト」をぶっ放し、一気にワールド記念ホールを総立ちにさせていく。鮮やかなギターソロで魅せる柳沢亮太(Gt)に、大きく両手を掲げるオーディエンスとの阿吽の呼吸は、最早ワンマンライブのそれだ。「この瞬間からあなたと1対1!」(渋谷、以下同)と、続いては「突破口」を。底抜けにブライトなイントロと、藤原”33才”広明(Dr)が放つパンキッシュなドラミングが場を鼓舞。はるか遠くまで見据えるように手をかざす渋谷に、上杉研太(Ba)もスタンド席まで見上げ、一人も置いていかない姿勢でグルーヴィーなリズムを刻んでいく。
SUPER BEAVER
「『SOUL FIRE』へは、こういう状況になる前に声をかけてもらって。本日を迎えられたことはすごく素敵だなと思ってます。諦めなきゃ夢は叶うとか、努力は絶対裏切りませんとかそういう類のことを言いにきたわけではありません。やりたいなら続けなきゃいけない、そういう本質的なことを本日教えてもらいました。俺たちがここに立ってあなたに届く、あなたの気持ちがまた俺たちに届いて、その気持ちの往来を何度も何度も繰り返す。それが俺たちの音楽、ライブでございます。あなたと一緒に音楽をやりにきました。愛すべきあなたのお手を拝借。手は頭の上、デカいの聞かせてくださいね」

SUPER BEAVER

その号令のもと、会場が特大のクラップを生み出し、「美しい日」へとなだれ込む! 瞬間瞬間に全霊を賭けた4人の振り切ったパフォーマンスは、一期一会の奇跡を身に染みて理解しているからだろう。そのさまに共鳴したように客席も拳を握り、高いジャンプを重ねていく光景に、「しっかり受け取りました!」と、渋谷も何ともうれしそうだ。新たなアンセム「名前を呼ぶよ」、さらに「嬉しい涙」では、まるでコロナなんてなかった時代と同じように、渋谷はフロアへとマイクを向ける。「歌えないけど」と前置きし、でも無声のレスポンスは熱気となって4人へと伝播していく幸福な連鎖だ。
SUPER BEAVER
ここで、「あなたが今日1日を作ってるんだよ、俺たちも負けてらんないなと思います。まだまだできないこともありますが、やったりましょうね、神戸。あなたはあなたの生き方で、俺たちは俺たちの生き方で」と、晴れやかなアンサンブルで「予感」を鳴らす。どこまでも明るい渋谷の歌声は、<会いにきたんだ神戸まで、会いたいあなたに>と歌い変え、さらなる高揚感をもたらしていく。
「一緒に時間を共有して気持ちの往来を重ねることが、どの角度から見ても、当たり前のようには感じません。大げさかもしれないけど、俺たちが音楽をやっててよかったなと思う瞬間はこういう時で。さらに言うと音楽をやっててよかった=生きててよかったと等しいです。あなたの「生きててよかった」になりたいなと、恥ずかし気もなく本気で思います。あなたたちではなくあなたに」
SUPER BEAVER
切々とした歌唱が口火を切ったロッカバラード「人として」へといざなう渋谷。アリーナというパノラマを前にしてもすこぶる吸引力の高いステージングは、思わずリアクションを取るのを忘れるほどに圧巻。「アンコールはありません! 最後の1曲までありがとうございました!」と、光いっぱいのステージに投下した「アイラヴユー」で締めへ! 振り絞るように咆哮する渋谷に、歌い合いたい気持ちをグッとこらえるよう拳を突き上げる観客。「次はライブハウスで会いましょう」と、再び集える日を思いながら、『SOUL FIRE』のフィナーレを華々しく飾ったSUPER BEAVERだった。

SUPER BEAVER
「いかがでしたでしょうか? 何かね、ステージのアーティストもそうなんですけど、盛り上がってる皆さんを見て胸が熱くなってしまいました。このイベントも足掛け2年、元々予定していた3組と開催することができて本当によかったです。これからもライブを止めない、音楽を止めない。その気持ちを持って皆さんと一緒に音楽を作ることができればといいと思います」と、祝宴を締めくくってくれた中島ヒロト。『SOUL FIRE』という名を体現した3組のステージに、ライブの、音楽の根源的な歓びを実感した1日となった。

取材・文=後藤愛 撮影=ハヤシマコ

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