L→R Hina、Mona

L→R Hina、Mona

【Kitri インタビュー】
この曲たちがいるってことが
自分の中の強みになる

2019年1月にEP『Primo』でデビューしてから約3年。姉妹のピアノ連弾デュオとしてふたりきりで始まったKitriは、バンド編成でのライヴやアレンジャーとの制作を経て、自分たちが思うKitriらしさの幅を大きく広げてきた。配信EP『Bitter』ではこの3年間の経験を活かしながらも、これまで培った美学にとらわれず自由に作った音が鳴っている。

探究心があればあるほど
曲がいいものになっていく

EP『Bitter』は“普段は秘密にしているような、Kitriの裏側の世界がのぞけるような作品”ということで、そのコンセプトは先に決めていたんですか?

Mona
コンセプトは特に決めていなくて、曲が揃ってからその言葉がぴったりだと思いました。今まではどこかに希望を取り入れる曲が多かったんですけど、その一方で“そうじゃない曲があってもいいんじゃないかな?”という想いもあって。『Bitter』は“今までにない曲を作ってみたい”という気持ちで出来上がった、コアなKitriが楽しめる作品になっていると思います。

これまでとは違う角度のKitriを楽しむという意味では、2021年6月に東阪で行なわれた『Kitri Billboard Live 2021SS“Kitri & The Bremenz Live”』も印象的でした。

Mona
そうですね。初めてのバンド編成で衣装も黒色にしてみたりと、光のKitriと影のKitriが表現できたようなライヴでした。そこで自分たちもダークサイドな一面を発見できたので、ライヴを含めて今までの経験がこのEPに導いてくれたように思います。

前半の2曲は神谷洵平さんのアレンジで作られています。1曲目の「踊る踊る夜」からダークサイドに誘い込むようなピアノの連弾と、そこにジワジワと入ってくるドラムで、すぐにひと味違うKitriを感じました。

Mona
デモはピアノと歌とフィンガースナップだけで作っていて、ピアノもシンプルで音数が少なかったんです。これまではクラシックに影響されていた部分もあって音の調和を求めていましたが、今回は神谷さんからアドバイスをいただいて、ちょっと濁りがあるような、今まで美しいと思っていなかったようなピアノを弾いてもいいのではないかと思い、あえて低い音を多く入れて弾いています。私は聴いていて心地の良い音が好きなんですけど、「踊る踊る夜」では音の濁りや不調和の面白さも取り入れました。

自分の中にあった美学の枠を超えることに戸惑いはなかったですか?

Mona
ありました。実はレコーディングの日まで“この濁っている音で大丈夫ですか?”と訊いていたんですけど、神谷さんが“これが面白いと思うよ!”と言ってくださって。他の楽器が入ってくるとインパクトが増して、自分たちが想像を超える楽しさがありました。

音程が低いから緊張感もありますが、間奏はセッションっぽくて楽し気に感じました。

Mona
間奏のピアノは想定していた音に加えて、1オクターブ上の音を重ねているんですけど、あえて音をずらして弾くことでエコーのようになったり、音を追いかける感じを楽しんでレコーディングしました。いつもだったら整えることの美しさを考えるところ、この曲では演奏も自由度が増していて、使っている音域も広くなっています。

Hinaさんが担当された歌詞にも遊びがありますよね。

Hina
歌とピアノだけの段階で書いた歌詞は憂鬱感があって、今回収録されているものとは違ったテイストだったんです。そこからMonaにアドバイスをもらって、出だしの《真夜中 ひとりきりのアトリエ》を活かした、夜中に何かが動き出すようなドキドキ感にフォーカスを当てました。《フェルメール ボス ゴッホ セザンヌ~》と単語を並べるだけの部分や韻を踏んだりと、遊び心を持ってブラッシュアップしています。

わらべ歌や「かごめかごめ」のような怪しげな雰囲気がある曲なので、単語を並べているだけでも呪文みたいで、そこの世界観はKitriらしくもありました。2曲目の「実りの唄」には“もしも世界に誰も聞いたことのない民謡があったとしたら”という実験的なテーマがあったそうですが、この発想はどこから出てきたのでしょうか?

Mona
海外の女性が大地でアカペラコーラスをしている動画を観ていた時期があり、ハーモニーや音階からその土地の空気感が伝わってきて、“こういう地域ならではのフォークソングっていいな”と憧れがあったんです。民謡って作ろうとして作れるものじゃないんですけど、“架空の地域の民謡”というイメージでKitriもコーラスを活かせる曲を作りたいなと。

確かに自然を感じる一曲でした。今作は配信リリースなのでイヤフォンで聴くことが多いと思うんですけど、全身で音を感じられるような。コーラスもきれいなので、合唱曲にも良さそうです。

Mona
コーラスが利く曲にしたかったので、ポップスの構成も意識しすぎず、天上の音楽みたいにクラシカルになったり、途中から楽器が入ってきたりと、制作しながらいろいろと試せる曲でしたね。

テンポはスローだけど、じっくりと時の流れを感じられる仕上がりで、歌詞の背景も気になります。

Mona
歌詞を書く時はファンタジーや、経験したことのないことをイメージするのも好きなんですけど、「実りの唄」では日本の四季を思い浮かべました。季節の移ろいは人生とともにあるものなので、それを大きくも小さくも見せず、ありのままの状態で書いています。

“意識をせずに作る”というのは、作詞作曲どちらにおいても今作のテーマになっていそうですね。

Mona
そうですね。頭を柔らかくした状態で、思いついたアイディアを取り入れられたと思います。主題歌などのお話をいただいて制作する時には寄り添うっていう気持ちが強くあるんですけど、今作は面白くしたいという気持ちが強かったです。

ある意味初心に戻るような。

Mona
その感じもあったかもしれないです。制限がなく、誰からも答えを教えてもらえないからこそ、常に“何が正解なのか?”と探り探りで難しかったんですけど、探究心があればあるほど曲がいいものになっていくってことを思い出しながら制作していました。
L→R Hina、Mona
配信EP『Bitter』

OKMusic編集部

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