名曲「青い影」だけではない
プロコル・ハルムの傑作アルバム
『ソルティ・ドッグ』

野心作、そして傑作
『ソルティ・ドッグ』が生まれる。

彼らがデビューした1967年頃のロックシーンを振り返ってみれば、サイケデリックの只中にあった。ビートルズはあの『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』を発表し、渡英していたジミ・ヘンドリックスもレコード・デビューし、世界的に彼の名を知らしめる『モンタレー・ポップ・フェスティバル』に出演するなど、ロックシーンの勢力図を変えつつあった。シド・バレット擁するピンク・フロイドは『夜明けの口笛吹き(原題:The Piper at the Gates of Dawn)』を発表し、アートロック、プログレッシブロックと呼ばれるバンドの旗手となる。アメリカではフランク・ザッパがマザーズ・オブ・インヴェンションを率い、『フリーク・アウト!』でデビューしている。その一方でボブ・ディランはバイク事故をきっかけに隠遁を決め込み、その実、ザ・バンドの連中と隠密セッションに明け暮れ…と早くもサイケブームに背を向け、ルーツミュージックへと舵を切るアーティストも現れ…と、「ビッグネーム」を抜粋すればそんな風になるが、もちろん、それだけではない。彼らがこじ開けたポピュラー音楽の新しい扉を通って、60年代、70年代のロックシーンを彩る多くのバンド、アーティストが現れるわけである。そして、レコード会社もロックは大きなマーケットになる / マネーを産むと知り、スターの出現を後押しするようになる。プロコル・ハルムもそんな時代の渦中にいたが、流行とは無縁の、あくまで彼ららしいアプローチを崩さない。

2作目となる『月の光(原題:Shine On Brightly)』(’68)から、彼らはバンドのコンセプトを形にしていく。そこにはシングル向きの曲がまったく含まれていないばかりか、1曲17分にもおよぶ組曲風の作品が含まれるなど、バンドが「青い影」から次の路線に踏み出していることを示す内容だった。そして翌年、『ソルティ・ドッグ』が制作される。

OKMusic編集部

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