SHIN(ex.ViViD)と咲人(NIGHTMARE
)のプロジェクト・SEESAW 始動1年
の軌跡を詰め込んだ1stアルバム『BA
RRAGE』全曲解説

SEESAWが1stアルバム『BARRAGE』を2月2日にリリース。元ViViDのSHIN(Vo)とNIGHTMAREの咲人(Gt)という2人が結成した奇跡のような音楽プロジェクト、SEESAWがこの1年間、ライブを通して積み上げてきた軌跡を詰め込んだような今作について、2人に全曲解説を行なってもらった。アルバム発売後、SEESAWは初の東名阪を巡るライブ『SEESAW LIVE[scene:04]-BARRAGE-』を開催。それと並行して、東名阪でインストアイベントを初めて有観客で行なうことも決定している。
――SEESAW結成から1年が経過。もう2人の立ち位置は定まりました?
SHIN:いや、まったく。
咲人:いまでも写真を撮るたびに毎回違う感じ。
――これまでにSEESAWとしてはワンマンライブを5本。リリースは昨年4月にデビューシングル「弾丸アラート」、7月にデジタルシングル「Like a Magic」を配信してきた訳ですけど。プロジェクト活動というのは、これがお互い初じゃないですか。それぞれ自分の活動がありながら、たまに2人で会って、SEESAWをやってというのは、感覚としては遠距離恋愛をしているような感じなんですか?
SHIN・咲人:うはははっ(笑)。
咲人:月イチでオンラインサロンの配信はやってるけど。個人的にはそんなに密に会ってはいなくても“あっという間感”の頻度で会ってる感じがある。
――会いたいのに会えない、みたいな感覚はない、と。
咲人:別に“会いたい”とか思わないから(笑)。
――だはははっ。カップルに聞くような質問をしてしまいましたね。
SHIN:SEESAWはそれぞれの活動で培った経験を出し合って、楽曲を作ったりライブをする、音楽的なアウトプットをする場所ですから。
――音楽プロジェクトですもんね。
咲人:お互い元々やってる活動もあるけど、一緒にやる人が変われば自分の取り組み方、気持ちも変わるので。新鮮さはあるし、やりがいはあるよね。
SHIN:そう。だから1年活動してみて、SEESAWは“いい曲”、“いいライブ”に特化していくべきプロジェクトだなと僕は思いました。ところで咲人さん、質問なんですけど。曲を作るときコードから作るんですか? それともメロから?
咲人:どっちもあるかな。
SHIN:僕は勝手にオケから作るのかなと想像してたんですけど。
咲人:例えばNIGHTMAREで曲を作ってるときは、メロが決まるまでに時間がかかるの。キーチェックで1回歌ってもらった後、YOMIは言わないけど自分がこっちのほうが合うなって思ったらごっそりメロを変えたりするから。だから、そういう意味ではメロは後かもしれない。でもSHIN君は自分から“こういうメロどうですか?”っていうのを上げてくれて。それが自分にはないものだったりするから、そこは一緒にやってて新鮮。
SHIN:だから、曲によってはAメロは咲人さんだけどBメロは僕っていうのとか、いっぱいあるんですよね。SEESAWは。
――完全な分担作業と思いきや、楽曲はこうしてコミュニケーションを取り合いながら2人で制作している、と。
SHIN:そうですね。
SHIN
――そんな楽曲たちが収録されたSEESAWの1stアルバム『BARRAGE』が完成しました。タイトルはどんな意味があるんですか?
咲人:“弾幕”というような意味で、弾丸をいっぱい放ってる感じです。
SHIN:1曲1曲、それぐらい気持ちを込めて作ったものという意味です。
――アルバムはライブでやっていた曲がほぼ収録される形になりましたね。
咲人:だから、今回はコンセプトを決め込んでというよりは、ライブでやっていた曲を入れようというのが自分的には一番強かった。
――バンドでもなくソロでもないということで、レコーディング時に重要視したことはありますか?
咲人:基本的にリズム系はほぼほぼ打ち込みで作りました。打ち込みだからといって、ただ機械的なだけではなく、ちゃんとグルーヴ感や細かい部分まで作り込んでいきましたね。
――全曲ではないですけど、曲中にギターとボーカル、2人だけの音になるパートの部分は意識的に作っていったんですか?
咲人:意識的にではないですけど、自然とそうなった感じかな。基本的に2人の要素がメインなので。
咲人
――世界的な写真家のHASEO氏と作り上げた、アルバムにまつわるビジュアルの世界観もすごいですね。
SHIN:HASEOさんは世界観のある写真を撮られる方なんですね。それで、HASEOさんにNIGHTMAREの咲人さんと僕が一緒にやること自体、普通はありえないことで奇跡のようなプロジェクトであるということと、その奇跡を合言葉にした青い薔薇をモチーフにしていることをお伝えしたんです。そうしたら、青い薔薇を使ったセットを作ってくれまして。
――え、あの背景はCGじゃないんですか?
SHIN:合成じゃないですよ! HASEOさんはCGは一切使わない方なんです。だから、あの炎も僕らの後ろでマジ燃えしてて。僕らの表情もあれはシュッとした顔をしてるんじゃなくて引きつってるんです(笑)。だって、僕らの後ろでバチバチバチッってすごい音しながら火が燃えてるんですよ。焚き火でさえこんなに炎に近づいたことないわっていう距離で。
咲人:体に炎の熱を感じたもんね。だから、たぶん10枚ぐらいしか撮ってないんですよ。
SHIN:セットが燃えてなくなるまでの10枚。
――写真も奇跡のカット!
咲人:言われてみればそうだね。でも撮影当日は、セットを燃やさなきゃいけないのに雨が降り出して。そうしたら現場の空気感が。
SHIN:ピリついてきましたよね。雨は降りだすし、外はどんどん暗くなるしで。
――咲人さん、ヤバいところでいつもの雨男っぷり発動しちゃいましたね。
咲人:はははっ。やっぱ俺のせいか(笑)。

<アルバム『BARRAGE』全曲紹介>
アルバム『BARRAGE』通常盤
■01. BEAT MASTER
――今回は記念すべき1stアルバムということなので、2人に全曲解説をしてもらおうと思ってるんですが。よろしいですか?
SHIN・咲人:はい。
――それでは1曲目の「BEAT MASTER」から。冒頭からじわじわ幕が上がり、ライブが幕開けしていくような雰囲気ですね。
SHIN:まさにこれは“ライブの1曲目”というのを咲人さんと話して作ったものです。まだ声が出せない世の中だからこそ、手を鳴らせという歌詞になってます。
――ちょっとアメリカンな匂いがしますよね。
咲人:ヒップホップっぽいダークさは意識したかも。映画の『グレイテスト・ショーマン』みたいな曲のイメージが最初にあったんだけど、ああいう明るくなる感じではなくて。
――この、明るく陽気に弾けない落とし所がいいんですよね。
咲人:そこは俺も気に入ってる。
SHIN:サポートメンバーも“この曲カッコいい”って気に入ってます。(マリリン・)マンソン感があるって。
■02. Killing me softly
――2曲目はアルバムのリード曲でもある「Killing me softly」。キャッチーで疾走感もあって、今後ライブでキラーチューンになること間違いないなし!
SHIN:おぉー、やったぜ!!
――《キスして口を塞いだらお気に召すままに》とかSHINさんが歌うから説得力があるエレガントなフレーズが素敵だなと思いました。
SHIN:ありがとうございます。
――歌詞はラブソングのイメージですか?
SHIN:女性に惚れ込んでしまった男の人を描いたラブソングなんですけど。恋愛を書いたの、僕は久しぶりなんですよ。恋愛に共感できないタイプなんで。
咲人:そうなの?
SHIN:こと恋愛に関してはハッピーなことを書けないんですよ。ファンの人に対しての感謝の気持ちは書けるんですけど、男女間のハッピーな恋愛って書けなくて。そういうテーマのドラマも僕はあんまミレないんですね。
――見ていてキュンとなりませんか?
SHIN:僕が? まったくないです(きっぱり)。
咲人:俺も別に甘ったるいのは見てもキュンとなったりはしないけど、ハッピーエンドは好きだけどね。
――すいません、話がそれちゃいましたね。
SHIN:いえいえ。それで、この歌詞は食虫植物がパクッと虫を食べたりするのを男女の恋愛に置き換えて書いたんですよ。
咲人:食虫植物に恋愛を例えるのはいいなと思ったんですけど。
――咲人さん、好きそうな感じですよね。
咲人:はい。でも歌詞が上がってきたら、仮タイトル案が“これ大丈夫?”というので。
SHIN:食虫植物だから「消化液」。
咲人:これはちょっと変えたほうがいいんじゃないかと思って。
SHIN:じゃあ咲人さん考えてくださいって、つけてもらいました。僕は「消化液」、いいなと思ったんですけどね。“えっ!?”ってギャップがあっていいかなと思ったんだけど。
咲人:ギャップとか意外性もほどほどにしないとダメだと思うよ(笑)。
■03. 命のNANANA
――3曲目は「命のNANANA」。これはラップありきで作った曲なんですか?
SHIN:いえ。縦ノリの曲を作りたいなと思って書きました。
咲人:これ、最初はAメロがあったよね?
SHIN:あった。でも縦ノリにするなら(ポエトリーリーディングのように)しゃべろうと。昔の感覚に近い感じなんですよ。この曲は。咲人さんのファンからすると新鮮な感じなのかなと思うんですけど。
咲人:ここまでラップしてるのはないから、そうなのかも。
――《空に昇るにはまだ 早いだろ》と自死に対して警告を示したり。言葉がリアルで突き刺さってきますよね。
SHIN:SEESAWは外見はファンタジックに見えるかもしれないけど、僕はリアルなことを綴っていて。泥臭いと思ってます。
――タイトルも「命の~」だし。
SHIN:僕、最初これは音源化したくないって言ってたんです。テーマもテーマだし、ライブでやるからこそ、ここまでリアルに言えるという感じがあったので。でも、ライブでみなさんの反応がよかったので入れましょうと。
咲人:タイトルにある“NANANA”って何だろうなってずっと思ってたんだけど。
SHIN:デモで“NANANA”って言ってたので、そのまま!
咲人:そのままでいくんだ(笑)。
SHIN:僕、タイトル付けるの苦手なんで(苦笑)。
咲人:最初の「弾丸アラート」を作ってるとき、タイトルはあえてちょいダサを狙っていくみたいな話もしてたからなのかなと思ったけど。“NANANA”は俺にはないワードセンスかな。
■04. Like a Magic
――(笑)。4曲目の「Like a Magic」はダンサブルでオシャレな感じが気持ちよくて。こういう曲もできちゃうという振り幅がいいですよね。
咲人:この曲はかなり前にあった曲。
――サビとかかなりキーが高いのに、それを滑らかに歌うSHINさんの歌唱も聴きどころ。
SHIN:自分のなかに落とし込めたら、そこまで高いとは思わなくなりました。
咲人:SHIN君の裏声って綺麗だから多用したほうがいいなと思ってて。これはそれがよく出た曲。
――そこに注目しろといわんばかりに、この曲はSHINさんのブレスから始まりますから。
咲人:ああ、そうね。確かに。
――SHINさんだけではなく、《理屈抜きの愛を語ろう》で転調を入れたところの美メロ。ここは咲人さんのメロディーメーカーとしての才にも注目したところ。
咲人:あそこいいでしょ? あそこだけ一瞬メジャーになるんだけど。そこが肝なんです。
■05. 弾丸アラート
――5曲目の「弾丸アラート」はデビュー曲。
SHIN:テーマは“キャッチーなものを作ろう”でした。最初は「心電図」をデビュー曲にしようと思っていたんですけど。
咲人:“もっといけると思うんですよね”ってSHIN君が言って。残り時間がヤバいなか急いで作りました。
■06. Air
――6曲目の「Air」は、AirというだけあってSHINさんの歌唱が心地いい。
咲人:SHIN君節が一番よく出てる歌だと思う。
SHIN:この曲はサビからできて。Aメロどうしよう?ってなったときに“じゃあこれをくっつけたらどうですかね”って話になって。
咲人:すごい短いBメロがあるでしょ? それを接着剤として新たに作って、別々だった曲をくっつけたの。
SHIN:これは咲人さんのテクニックです。
咲人:ちょうど、それぞれの曲が転調できるキーだったからうまいこといった。
――アレンジはどんなイメージで?
咲人:仮タイトルが「GTR」で、ギターロックのイメージがあったので、そんなにデジデジせず、シンプルに。
――歌詞のテーマは?
SHIN:コロナ禍だったからこそ書いたもので。空気はそこにあるのに触れられないじゃないですか? ファンの人も空気みたいにいままではそこにずっといてくれてたはずなのに、いまは触れられない。それでも歌うよ、という気持ちを書きました。
SHIN
■07. 残響と時雨
――7曲目はバラード「残響と時雨」。
SHIN:SEESAWのなかでも世界観が強い曲です。
――緩急をつけたSHINさんの歌が、サビでエモさマックスに弾けるところがたまらないですね。
SHIN:サビでパコーンとくるのを作りたくて、咲人さんと一緒に作らせていただきました。
咲人:最初の頃からライブでやってたけど、途中でサビにストリングスを足したかな。
――サビに入る前に“アーン”と叫ぶところは、最初からあったんですか?
SHIN:あれはただ叫んでるんじゃなく、僕なりに“残響”をイメージして入れました。歌詞は風景画みたいな情緒的な歌詞にしたくて、これを書いてるときに5時のチャイムが鳴ってたので、それをそのまま書きました。
咲人:ギターに関しては、これはSEESAW全般にいえることだけど、すごいシンプル。他と同じことをここでやっても仕方ないからね。たまにしか捻じ曲がってない(笑顔)。素直な自分が出てるかも。
■08. BRAND NEW WORLD
――8曲目の「BRAND NEW WORLD」はそんな咲人さんの軽快なギターのカッティングに背中を押されて、光ある場所へと向かう曲でした。
咲人:あれはね、90年代のイメージ。
SHIN:ちょっと昔の匂いがします。この曲は。
咲人:曲に呼ばれて全体のアレンジはすぐに出てきたかな。
――《暖かな光は アナタでした》とか《終わりの向こうを見つけにゆくよ》とか、エールを感じる歌詞ですよね。
SHIN:どんなときでも光はあると信じたい。そういう思いを書いたつもりです。
咲人
■09. やさしい嘘
――続いて9曲目の「やさしい嘘」。こちらは新曲ですけど、咲人節をすごく感じました。
咲人:これは一番最後に作った曲。唯一、まだライブでやってない曲です。
――歌詞はどんなイメージで書きました?
咲人:俺のなかでは「Like a Magic」に近くて。SEESAWの曲で歌詞を書くと、ちょっと危険な恋愛、そういうもののイメージがパッと出てきちゃうんですよね。
――SHINさんの声に触発されて?
咲人:そう。なんか、女性をたぶらかしそうな声。あくまでもイメージだからね(笑)。女性を手のひらで転がしてる悪い男の絵面。そういう役が似合いそうな声だなと思って。そこから引っ張られてるんだと思う。
■10. Cry now
――10曲目の「Cry now」は激しくてライブ映えするキラーチューンです。
SHIN:「命のNANANA」と同じでライブをイメージして書いたから、収録するつもりはなかったんですが、ライブで定番曲になってるので入れました。歌詞は言葉遊びみたいな感じで、あくまでもノリ重視の曲です。
■11. 心電図
――11曲目の「心電図」はデジタルロック。
SHIN:まさにコロナ禍での歌ですね。コロナがヤバかった頃に“生きてるって何だろう?”って考えて。心電図って命をメーターで表す唯一の機械だなと思って書きました。「心電図」と「消化液」、俺の中では変わらないんですけど。
咲人:いやいや。変わるよ。消化液っていうと、胃酸で溶けてるイメージがどうしても出てきちゃうから。
SHIN:じゃあ「ハエ取り草」だったらOK?
咲人:違うね。
SHIN:「ウツボカズラ」もダメ?
咲人:そうだ! 「ウツボカズラの恋」っていうのが仮タイトル候補にあったんだ。ライブを想像してよ。これでカッコよくいける?
SHIN:無理。「消化液」だったらいける。でも、胃酸っていわれると「心電図」もあるから“医療系ユニット”って誤解されそう(笑)。
■12. イチバンボシ(通常盤のみ収録)
――最後に、通常盤のみに収録される「イチバンボシ」。これは七夕の曲?
SHIN:そう。たくさんの音楽、たくさんのアーティストがいるなかで、僕らという一つの星を見つけてここまで応援してきてくれたファンの人たちに“ありがとう”という曲です。
咲人:これは七夕のライブで1回、アコースティックで演った曲で。それをバンドアレンジにしたんだけど。すごい気に入ってます。
――このアルバムを掲げて、2月4日から始まるSEESAW初の東名阪ツアーはどんなものになりそうですか?
SHIN:これまで1年やってきたSEESAWをしっかりと届ける。それにつきるかな。
咲人:楽しくやるというのは大前提で。観にきてくれる人たちには、よりSEESAWを肌で感じ取ってもらえるようなライブができたらいいなと思いますね。
取材・文=東條祥恵 撮影=森好弘

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