大橋トリオ、2022年初ツアー『ohash
iTrio & THE PRETAPORTERS 2022~ne
w year party~』最終日に鳴り響かせ
た美しい歌と旋律

大橋トリオ『ohashiTrio & THE PRETAPORTERS 2022~new year party~』2022.1.23(SUN)オリックス劇場
1月23日(日)、大橋トリオの2022年初となるツアー『ohashiTrio & THE PRETAPORTERS 2022~new year party~』が、大阪オリックス劇場にてファイナルを迎えた。1月21日(金)に東京のBunkamuraオーチャードホールから始まった東阪ツアーで、THE PRETAPORTERSを迎えたスペシャルライブとなっている。テーマを「年末年始の雰囲気」とし、自身の楽曲の他、スタンダードナンバーなどをジャジーなアレンジで披露。小雨降る冷たい冬の夜を、その洗練された極上の歌と音で温かく彩った。
ピアノ、ギター、ウッドベース、ドラムス。そして、武嶋聡率いるホーン隊というビッグバンド編成によるTHE PRETAPORTERSが音を奏で始めると、ステージ下手から大橋トリオこと、大橋好規がマイク片手に登場。大きな拍手に導かれるように、ゆっくりステージ中央へ歩きながら歌い始めたのは、ジャズのスタンダードとして知られる名曲「It Had to Be You」。幸せな時間の始まりだ。
『ohashiTrio & THE PRETAPORTERS 2022~new year party~』
「The Music Around Me」から「Favorite Rendezvous」と自身のナンバーを続けた後は、ミラーボールが輝きを放つ中で「真夜中のメリーゴーランド」を披露。姉妹ユニット、KitriのMonaの淡く甘い歌声と大橋の歌声が軽快に溶け合っていく。ホーンと共に繰り出される「Love The Season」のスリリングなリズム、<真冬の恋は Dingi Dingi 甘いリズムで>と歌う「MAGIC」の甘酸っぱいフレーズが響くと、場内の誰もが心地よさそうにリズムを取っているのが見える。
「クリスマスアルバム『MAGIC』(2013年)に入ってる「Love The Season」は、クリスマス・ウィンターソングとして作ったんですけど、今回ライブで初めてやりました。もっと早くやっておけばよかった……楽しかった(笑)。はい……はいじゃないよな」という、独り言みたいな大橋のMCに、場内から拍手が沸き起こる。大橋トリオのライブは、洗練された極上の音と演奏と同時に、こんなゆるい時間が味わえるのも大きな魅力だ。ステージを照らす赤と青の光の中で響くジャジーソウルな「Butterfly」、ジャズファンクな「THUNDERBIRD」とグルーヴィーなナンバーが続く頃には、場内は穏やかな熱気に包まれ、会場に向かう道すがらの雨の冷たさなど、もはや嘘のように思えてくる。
『ohashiTrio & THE PRETAPORTERS 2022~new year party~』
「マイク1本のコーナーでございます」という大橋の声を合図に、ホーン隊以外のメンバーがステージ下手のスタンドマイクの前に集合して始まったのは、大橋トリオ恒例のアコースティックなカバー曲タイムだ。この日披露されたのは、60年代の名曲「Red Roses For A Blue Lady」と、ビートルズの「I will」。大橋、KitriのMonaとHina、ピアノの小林創のコーラスに、クラリネットとウッドベース、ドラムがささやかな彩りを添えていく。
「Red Roses For A Blue Lady」の演奏前、息を飲むような美しいギターソロを響かせたのは、「音大時代の同級生」と紹介されてマイクの前に立った、ギタリストの阿部大輔。共にジャズを学んだ音大を卒業後、ボストンやNYなど、20年以上アメリカでキャリアを積んだ阿部と、今年デビュー15周年を迎えた大橋。美しくも繊細なギターソロが鳴り響くその一瞬に、異なる道を歩みながら、歳月を経て再び音を奏で合う2人の音楽家のドラマを想像したのは、きっと筆者だけではないと思う。
『ohashiTrio & THE PRETAPORTERS 2022~new year party~』
「いやぁ、めちゃくちゃ良くない? 今日」
大橋のピアノとホーンセクションとの組み合わせが絶品だった初期の名曲「Dearest Man」から新曲「月の真ん中で」と続けた後、大橋がオーディエンスに話しかける。場内から大きな拍手が湧き上がる中、「もったいないですね、今日で(ツアーが)終わるなんて」と、ドラムの神谷洵平が相槌を打つ。コロナ禍以降、ツアーの公演数を極限まで絞っている大橋トリオ。ビッグバンド編成で聴ける日が来ることを、きっと地方在住のファンも待ち望んでいることだろう。それを思うと、今回のツアーが東京と大阪の2公演のみというのは、確かにもったいない。しかし神谷のその言葉に、「そういうことじゃない(笑)」と大橋が突っ込む。神谷とのこのやりとりもまた、大橋トリオのライブの楽しみのひとつでもある。
終演後、大橋にこの時の言葉の真意を確認したところ、この日の会場であるオリックス劇場の音の響きが、素晴らしく良かったのだそうだ。「あくまでもステージの上で聴く感じだけど」と話していたが、なるほどこの日の音は、観客側からも、くっきりとしているのにまろやかに耳に届く、絶品の音だった。普段の穏やかさとは異なり、音や演奏に関しては驚くほどシビアな大橋お墨付きの「音」を共有出来たこと……これぞライブという時間芸術の醍醐味だ。
『ohashiTrio & THE PRETAPORTERS 2022~new year party~』
そんな感慨に浸っていると大橋が唐突に、「ちょっと聞いてほしい話がある」と客席に話しかける。
「大阪に来る時の新幹線のエピソードなんですけど、前の座席の女性がフルで席を倒していて、「フルで!?」と思ったけど、僕はヘタレなんで言えなくて(笑)。結局その女性は自分の隣の空席までフルで倒してきて、まさかの2フル(笑)。しかも席をフルで倒したままゴミも片付けず降りていったんですが、マナーが悪いのか僕に対する嫌がらせなのか、どっちなんだろうと(笑)」
もしマスクなしの世界だったら、間違いなく場内は大爆笑だっただろう。懸命に笑いを堪える観客に、「この後しっとりした曲をやるので、浄化を」と、ピアノに向いながら自ら、「トリオエコー」(※大橋トリオのグッズとして販売された、鳥の鳴き声のような音が鳴る道具)をピヨピヨ鳴らす大橋。それに応えて、トリオエコーを持参した観客の手元からもピヨピヨピヨ……。瞬時に癒しの森と化した会場に鳴り響いたのは、『ゴッホ展 響き合う魂 ヘレーネとフィンセント』のイメージソングとして書き下ろされた「Lamp」だ。ひまわり色の光の中、温かなホーンと共に優しくも切ない歌声とピアノが響く。
『ohashiTrio & THE PRETAPORTERS 2022~new year party~』
上白石萌音とのデュエットでも話題になった「ミルクとシュガー」では、大橋はKitriのMonaとデュエットを披露。ステージ中央では大橋が、その後方ではMonaがシェーカーを振りながら歌う。チャーミングで美しいポップスソングだが、実はメロディは起伏に富み、リズムも演奏も構成も複雑。実験度の高い楽曲のはずなのに、とてもシンプルに聴こえるのが不思議なのだが、それをさらりと楽しそうに歌いこなす、大橋とMona。15年前のデビュー時からずっと、大橋トリオの音楽はこんなふうに、実験的な音や演奏をさらりと響かせてきた気がする。音大でジャズを学び、音楽家兼演奏家としてのスキルと知識を積み重ねてきた大橋。その確かな実力と膨大な経験をこれ見よがしにするのではなく、あくまでもそれを「極上のポップス」として昇華し、メジャーフィールドに届ける。しかも、どんな時もあくまでも平熱感覚。そんな偉業を成し遂げてきた大橋トリオにとって、2022年は15年目の節目の年にあたる。
12月にリリースしたばかりの「GIFT」が始まると、ギターを抱えた大橋が観客に向かってジェスチャーで立席をうながす。一斉に席を立ち、楽しそうに身体を揺らすオーディエンス。声を出したりしなければ、コロナ禍でも全身で音楽を楽しむことはできる。ルールを守りながら、精一杯音楽を楽しむ。明日をしっかり生きるためには、音楽も、楽しい時間も、私たちには絶対に必要なものだ。メンバー紹介の後に披露された「はじまりの唄」が終わると、大橋とバンドメンバー、そしてホーンセクションにスタンディングオベーションの拍手が鳴り響く。 

『ohashiTrio & THE PRETAPORTERS 2022~new year party~』

アンコールでは大橋が1人ステージに登場。「今年はデビュー15周年という節目の年となります。2月に出る新曲4曲が入ったベストアルバム『ohashiTrio best Too』には、トリオエコーがついたセットと、鍵盤ハーモニカのメロディオン(鈴木楽器製作所)のついたセットがあります」と、ベストアルバムの告知に合わせて、メロディオンで童謡「ちょうちょ」を即興で演奏。
「いい楽器でしょう? メロディオンがついたベスト盤をゲットしてもらって、ライブに持って来てもらって、みんなで合奏したら……ええんちゃいますのんと、そんなことを企んでます」とユーモアを交えて話した後、ピアノを演奏しながらメロディオンを弾いてみせ、「こんな遊びも出来ますよ」と微笑む。さらに「5月から7月にかけてホールツアーが決定しています。大阪はNHKホールでやります」と、さりげなく次回のツアーを告知。続けて「今までどうもありがとうございました。そして、これからもどうぞよろしくお願いします」と、15周年目の感謝の言葉を告げる。
『ohashiTrio & THE PRETAPORTERS 2022~new year party~』
星が瞬く夜空のような照明のもと、最後に披露されたのは「生まれた日」。ピアノだけで歌い綴られる、シンプルで美しいその言葉と旋律は、15年前に生み落とされた、大橋トリオという音楽家の原点のようなものだ。鳴り止まない拍手と押し寄せる余韻の中、両手でダブルピースを作り、笑顔でステージを後にする。明日、世の中がどうなっているかは誰にもわからないけれど、穏やかに革新し続ける音楽家、大橋トリオの15周年イヤーを「ライブ」と共に楽しめる1年になることを願ってやまない。
取材・文=早川加奈子 撮影=渡邉一生(オフィシャル提供)

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