崎山蒼志

崎山蒼志

【崎山蒼志 インタビュー】
自身の音楽を見つめた結果、
炙り出された多面性

“Face To Time Case”
というタイトルに
うまい具合にまとまった作品

石崎ひゅーいさんと作られた「告白」ですが、今回は明快なコラボレーションが多い中、きっかけは何だったんですか?

小学校6年生ぐらいの時に『ミュージックステーション』でひゅーいさんのこと知って、すごく持っていかれたというか、グッときて。大好きなミュージシャンで、めちゃくちゃ聴いていたんです。で、尾崎世界観さんのイベントに僕とひゅーいさんがシークレットゲストで呼ばれた時にちょっと交流が生まれて、それから1〜2年後にキャンプ動画の企画でお会いしたんですね。そんな縁もあって一緒に曲作りをしたいとお声がけしたんです。今回は対面して曲を作ったので、じっくり向き合って作れました。ひゅーいさんが“崎山くんもあまり簡単な言葉というか、小っちゃい子でも分かるような言葉で歌っていないような気はするけど、みんなが使う言葉で書いてみたらどうだろう?”と話されていたのがいいなと思って。《ありがとう さよなら》みたいな最初の言葉をひゅーいさんが歌っていて、僕がそこからAメロのフレーズを歌い出して、しっかりやり取りする流れで作りました。

そして、コラボで言うとリーガルリリーと一緒に作られた「過剰/異常 with リーガルリリー」も収録されていて。

曲自体は中学生ぐらいの時に書いたんですけど、“自分の思っていることって過剰かな? 異常かな?”みたいな意味で、ちょっと皮肉を込めてそれをタイトルにしちゃっています。

人は気にしていないかもしれないけど、無機物にも見られている、気になる…みたいなことをライヴで話していましたよね。

はい、そうですね。

この歌詞の中でリーガルリリーっぽいと思ったのが“自動販売機”というワードで。自販機がぽつんとある感じは彼女たちの音楽にも感じたりするんです。

そうですね。今回その部分は書き直していて。上京してそこだけ書いたというか、今の歌にするためにちょっと書き直しました。ほんとは1番のBメロを続けて歌う流れだったんですけど、上京して自分もそういう風景を見て思ったことがあったし、それがまたリーガルリリーさんの曲っぽい感じもちょっと出ていて。一緒にできると決まってからその歌詞を書いたので、意識せずとも呼び出されちゃっているかもしれないですけど。

そもそもなぜバンドごとコラボすることにしたんですか?

純粋にこの曲のアレンジはバンドと一緒にやってみたら面白いんじゃないかと思いました。

どういうふうにアレンジしていったんですか?

僕が家で録ったデモにリーガルリリーさんがアレンジをつけて返してくれました。返ってきたら、最初からあのかたちだったんです。めちゃくちゃ素晴らしくて感動しましたね。

そして、毎回楽しみな崎山さんの完全なる打ち込み曲。2曲ありますが、「Pale Pink」は怒り方向に振っていませんか?

そういう打ち込みの曲が好きなんです。もともと母とかの影響でSOFT BALLETさんとかがすごく好きだったんです。あと、ヒップホップのアンガーな部分が好きだし、80年代のパンクテクノみたいなものも無機質なビートだからより暴力性が増している感じが好きで。無機質なんだけど歌が激しくてヤバいっていうのが好きだから、Death Gripsみたいなものがずっとやりたかったんです。

Death GripsとSOFT BALLETが並列されるという(笑)。そう言えば、Dos Monosのライヴを観た人が、崎山さんが一番何をやるか分かんないって言っていましたからね。

それは嬉しいです!

むしろ、崎山さんが狂気というか。ライヴという場所だけじゃなくて、オリジナル曲の中でも昇華されているのが打ち込みの2曲かなと思いました。

うわ〜、ありがとうございます。確かにそうですね。

「風来」は水野良樹さんと作詞で共作されていますが、言葉尻が違うだけで情景が動き出すんだなと思いました。

なるほど。そういう曲ですね。『顔だけ先生』というドラマの影響を受けて作った曲というところはあります。ナチュラルなポップスなんですけど、水野さんらしさを節々に感じました。作家としての水野さんは僕を掴んでくれている感じがするし、僕の声やキーをすごく意識してくれている感じもあって、それはこの曲を歌っていて感じましたね。

ラストナンバーの「タイムケース」で歌われているテーマの発端は?

“タイムケース”は場所のことです。僕は上京して今まで住んだことのない場所に住んでいて、“ここにはここの磁場がある”じゃないですけど、すごくそういうものを感じたんです。もともと行く場所によって“あぁ、ここにはここの雰囲気があるな”とか感じるんですけど、新しい土地に住んだ時に新しい土地のタイムケース、その場所が場所の記憶を貯蔵しているみたいな。今まであったことも現代に蘇ってくるじゃないけど、過去も未来も現在もその場所に全部ある感じで。それが対面するような意味で、アルバムのタイトルをつけたんです。

“Face To〜”は“直面する”という意味でもありますしね。

はい。あと、『貝に続く場所にて』(作:石沢麻依)って小説を読んだんですけど、土地の記憶とか、土地が持っているいろんな“こんなことがあったんだ”ということが、痕跡というよりも今もまだ見える瞬間があって、それを“土地の肖像”と言っていて。そこからもすごくインスピレーション受けました。今作のジャケットを描いてくださった星山耕太郎さんも僕の肖像画を描いてくださったし、そこで“Face To Time Case”というタイトルにうまい具合にまとまった感じはありましたね。

ダーク系もあるディズニーランドみたいなアルバムになっているなぁと。

あははは! ありがたいです(笑)。

それでもたぶん、歌詞の内容のせいか360度違うわけではないんですよね。

そうですね。声と歌詞が僕の音楽をつなげてくれるところという気はします。

取材:石角友香

アルバム『Face To Time Case』2022年2月2日発売 Sony Music Records
    • 【初回生産限定盤】(CD+Blu-ray)
    • SRCL-11997~8
    • ¥6,500(税込)
    • ※紙ジャケ仕様
    • 【通常盤】(CD)
    • SRCL-11999
    • ¥3,300(税込)
    • ※ジュエルケース仕様

ライヴ情報

『崎山蒼志TOUR 2022 「Face To Time Case」』
2/05(土) 大阪・心斎橋BIGCAT
2/06(日) 愛知・THE BOTTOM LINE
2/12(土) 東京・Spotify O-EAST

崎山蒼志 プロフィール

サキヤマソウシ:2002年生まれ、静岡県浜松市出身のシンガーソングライター。18年5月インターネット番組の出演をきっかけに世に知られることになる。現在、TVドラマや映画主題歌、CM楽曲などを手掛けるだけではなく、独自の言語表現で文芸界からも注目を浴びている。また、大型フェスからのオファーも多い。同年7月に「夏至」と「五月雨」を配信リリース、12月には1stアルバム『いつかみた国』を発表した。合わせて全国5公演の単独ツアーも開催し、即日全公演が完売。19年5月には自身初となるホール公演『とおとうみの国』を地元・浜松市浜北文化センター大ホールで実施した。同年10月に2ndアルバム『並む踊り』を発売。21年1月にアルバム『find fuse in youth』でメジャーデビューを果たす。同年3月に行われた初のバンドスタイルでのリリースライヴは即日完売。9月にはTVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第5期(2クール目)EDテーマとなるシングル「嘘じゃない」をリリースし、同曲MVが500万回再生を突破。その後、映画『かそけきサンカヨウ』主題歌「幽けき」を配信。10月にはTVドラマ『顔だけ先生』主題歌「風来」を配信した。22年2月にアルバム『Face To Time Case』を発表し、東名阪ツアーを開催する。崎山蒼志 オフィシャルHP

「Helix」MV

「風来」MV

「幽けき」MV

「過剰/異常 with リーガルリリー」MV

「嘘じゃない」MV

「逆行」MV

『Face To Time Case』
クロスフェード

"崎山蒼志 TOUR 2021
「find fuse in you(th)」"
&MV Digest from New Album
「Face To Time Case」
Limited Edition

OKMusic編集部

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