【nonoc インタビュー】
「Change」が
“変わってもいいんだ”と
思えるきっかけをくれた
色をテーマにしたMV第二弾は
色覚異常の人にも楽しんでほしい
次にカップリングの話ですが、nonocさんが作詞した「ヒスイ」と「ネオンテトラ」を収録しています。「ヒスイ」は昨年11月にアニメーションのMVが公開されていて、前作「Believe in you」(2021年3月発表のシングル)のカップリング曲「ヒトリイロ」と話がつながっているという。nonocさんが作詞とサウンドプロデュースを手がけてMVも制作するというプロジェクトは、どういうきっかけで始まったんですか?
アニメーションのMVを作るという企画を考えていた時に、私の中から歌詞やストーリーのアイディアがどんどん浮かんできたので、それで全体をプロデュースするというかたちがいいんじゃないかと。だから、MVに登場するキャラクターも私のアイディアをもとに監督に描いていただいたんです。最初にイメージを作編曲のfu_mouさんにお伝えして、曲ができた段階でそれに合わせて歌詞を書いていきました。もともとストーリー仕立てにすることは考えていて、色に関する歌詞を書きたいと思っていたんです。
「ヒトリイロ」と「ヒスイ」の主人公は、それぞれどんな人物像をイメージしているのですか?
“ヒトリイロ”というタイトルは単純に赤とか青などの色のことだけじゃなく、個人が持っているオーラや個性のこととかけています。私自身が“最近はみんな同じような色の服を着ているなぁ”と思ったところから着想を得ました。みんな色を合わせていて、つまらない時代なんじゃないかと。そうやって息苦しさを感じている主人公が書いた歌詞みたいなイメージです。「ヒスイ」はもうひとりの主人公の角の色であるグリーンを表していると同時に、漢字の“翡翠”には“かわせみ”という意味もあって、かわせみは鮮やかな水色とオレンジの鳥で、その色がヒスイにも見えるので、曇り空にかわせみがバッと飛ぶような瞬間を、水色とオレンジのインクがバッと弾けたようなイメージで映像にしていただき、ふたりが再会した時の衝撃を表現しました。それぞれの孤独を抱えているふたりは、昔は一緒にいたけど気づいたら疎遠になってしまっていて、街でたまたま出会ってお互いの中に鮮やかさが戻ってくる…全体のテーマとして色があるんですけど、色覚異常もそのひとつです。
色覚異常をテーマにしたのはどうしてですか?
色覚異常の人って、私が思っていた以上にたくさんいるんです。そういう人たちにも“きれいな映像だな”と思ってもらえるような作品を作りたくて。
MVの色のトーンが独特なのはそういう意図があるんですね。
はい。色覚異常は人によってさまざまなので全員には当てはまらないかもしれませんが、そういう方が観やすくて、色を感じやすい映像になっています。
多様性の時代ですし、いろんな方にMVを楽しんでほしいと。
そうですね。もとから見えている色が人とは違っているというのは、きっと人と違うものしか見えないという孤独があると思うんです。でも、だからと言って可哀想だと思われたくない…「ヒスイ」の子は一本角が折れていて、それはハンデを持っているという意味もあるけど、“これはお洒落だから別に気にしないでください”みたいな気持ちもあって。あと、多様性というところでは、キャラクターデザインもジェンダーレスを目指して描いていただきました。だから、“彼”でもいいし、“彼女”でもいいし。
歌詞の《隠した to know》が《隠した角》と歌っているように聴こえて、それで角が一本折れているのかなと思っていました。
それは初めていただいた考察です! でも、面白いですね(笑)。
この話の続きはどうなるんですか?
それが3曲目の「ネオンテトラ」で、作編曲はR Sound DesignさんというボカロPの方にお願いしました。「帝国少女」などが有名な方なんですけど、R Sound Designさんの夜の都会的なイメージが好きで、その世界観がシリーズのテーマと合うんじゃないかと思って。私の中での都会への憧れと、都会に出てきて感じたクールな雰囲気だったり、ビルが立ち並んだ無機質的な感じが、シリーズを通してのサウンドのイメージです。
“ネオンテトラ”というのは熱帯魚のことですよね。
ネオンテトラも青とオレンジで光によって色の見え方が変わるので、かわせみと同じだなって。あと、群れないと死んでしまう魚なんです。そんな中に、群れるのが苦手な「ヒトリイロ」と「ヒスイ」の子がいるというお話で、これは「ヒトリイロ」の子の視点で描いていて、「ヒスイ」の子と再会してから落ちていくふたりのことを書いています。“共依存”や“若さ”がテーマで、色のイメージは青です。“ネオンテトラ”の“ネオン”は夜の都会のネオンのことでもあって、ネオンテトラの水槽の中で心が溺れていくみたいな。ちなみに歌詞にイヤホンが出てくるんですけど、最初はコードがついていて歌詞の最後でBluetoothになっているところがポイントです! 最初はコードでつながっていたけど、心がつながっていればコードはもういらない…みたいな。そこから時が経っていることを察してもらえたら嬉しいです。MVも鋭意制作中なので楽しみにしていてください!
小さいオバケみたいなキャラクターも出てきますね。
可愛いですよね。オバケはその人の持つ魂のかたちなので、『ジョジョの奇妙な冒険』で言うところのスタンドみたいな(笑)。でも、それこそ「Change」と同じで、その人が感じたものが正解でいいと思います。さっき言ってくださった“隠した角”じゃないけど、そういう考察が作品を育ててくれると思うので、どんどん盛り上がってくれたら嬉しいですね。
今後も作詞だったり、何か映像的なことも続けていきたいですか?
第四弾まで構想があるので楽しみにしていてください。創作って難しいと思ったんですけど、すごく楽しいし、映像の勉強もしたいと思いました。今後もいろんなアンテナを広げて、いろんなことにチャレンジしたいですね。
では、最後に2022年はどんな年にしたいですか?
チャレンジして、どんどん変化していきたいです! あと、今年はデビューして4年目なので、ファンの方への恩返しも含めてワンマンライヴをやりたいです。昨年末に有観客のイベントに出させていただいたんですけど、有観客の楽しさを改めて確信しました。ワンマンが実現する時には、声が出せたり飛び跳ねたりできたらいいな。
取材:榑林史章
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