安月名莉子

安月名莉子

【安月名莉子 インタビュー】
自分を理解したからこそ、
一歩を踏み出すことができる

TVアニメ『ハコヅメ〜交番女子の逆襲〜』OPテーマのニューシングル「知らなきゃ」は、語るように歌うメロディーに挑戦したほか、アニメとリンクしたギミックも満載の曲となった。また、カップリングには歌うこと自体の意味を自問自答し、彼女の中にあるカオスな感情が吐露された「知らない」を収録。そんな同シングルの楽曲制作やそこに込めた想いなどを訊いた。

自分の感情に対して
粗末にしがちだった

今回の「知らなきゃ」ではラップのようなメロディーに挑戦していますね。

はい。みなさんすごく驚かれます。作詞のタナカ零さんと作曲のナスカさんは、TVアニメ『彼方のアストラ』のEDテーマ「Glow at the Velocity of Light」(2019年8月発表のシングル)を書いてくださっていて、おふたりのタッグがすごく好きなので、それをお伝えしてお願いしたら快く引き受けてくださいました。

最初に曲を聴いた時はどんな印象でしたか?

デモを聴いたらナスカさんが仮歌を入れてくださっていて、その完成度が素晴らしすぎて“これが完成でいいんじゃない?”と思いました(笑)。しゃべるみたいなメロディーで始まって、Bメロから壮大なサビになるまでに、どんどん言葉が完成されていくような感じで、“歌えるかな?”って思ったのと同時に、ワクワクと鳥肌が止まらなくて歌うのがすごく楽しみでした。

やっぱり大変でしたか?

すごく大変でした。おかげで滑舌が良くなりました(笑)。文字数が多いので、ちゃんと聴かせたい言葉を意識して立たせられるように、前もってチェックしたんですけど、ほぼ全ての言葉にチェックがつく感じでした。

息継ぎが大変そうですね。

そうなんです。この曲は息継ぎが大事で、息を吸うタイミングをひとつ失敗すると大事故になります(笑)。

“知らなきゃ”というタイトルもインパクトがありますね。

しかも、カップリングの曲名は“知らない”ですからね(笑)。

歌詞に《知りたい》と出てきますが、“知りたい”より“知らなきゃ”のほうが積極的な感じがします。

私の中では、自分の中で芽生えた感情ととらえています。サビ頭の《知りたい 昨日の感情追い越して》は、私自身にも通じるところがあったので共感して歌うことができました。私は自分自身の感情を、わりと粗末にしがちなところがあって。“なぜ今、私はこういう気持ちなのかな?”や“なぜ今、私は泣いているのだろう?”とか、そこにちゃんと向き合っていなかったことに、サビ頭の歌詞で気づくことができました。だから、ここはすごく好きなフレーズなんです。昨日の感情を知って自分を理解したからこそ、今日新しい一歩を踏み出すことができるんじゃないかと。

実際に何か思い当たる節があったんですね。

私、感情の起伏が激しいと言われるんです(笑)。きっとその時々の感情と向き合っていなかったからそうなっちゃうのかなと。

感受性が豊かなんでしょうね。

そう言ってもらえると助かります。でも、要は子供だったんです。子供の時ってみんなそうじゃないですか。感情のままに怒ったり泣いたり。でも、大人になるにつれていろいろ学んで、感情の把握や自分自身のコントロールができるようになる。私の場合、そこがまだ未熟だったんです。なかなか大人になれないというか。だから、そういう自分の一面に気づくことができたという意味でも、この曲と出会えたことはすごく良かったです。アニメに寄り添いながら、自分の気持ちとしても自信を持って歌える曲だなって思いました。ただ、サビのキーがすごく高いので、そこは練習あるのみです(笑)。

デモの時から高かったんですか?

最初はひとつ下のキーだったんですよ。でも、レコーディングの途中で、私の声のいいところが出るのはもうひとつ上のキーだという話になり、それでひとつキーを上げることになったんです。ライヴでちゃんと出せるか不安でしたが、完成したものを聴くと感情的にも言葉にもエモーショナルさがより出ていて、チームの意見も好評でしたし、やっぱり上げて良かったと思いました。

歌詞はすごく詩的に書かれていますが、《風がハイタッチしてくサイドミラー》はパトカーを想像させるし、『ハコヅメ』ともリンクしていますね。

そうなんです。イントロでサイレンの音や銃の音が鳴っていることにデモを聴いて4回目くらいで気づいたんですけど(笑)、気づいた時は鳥肌が立ちました。銃のカチャッという音からドラムが入るところなんて、もう背中がゾクゾクとしますね。そういうひとつひとつの音や言葉の選び方が素敵で、私はもう幸せです!

歌詞に《あのひと》と出てきますが、これは主人公の川合麻依から見た先輩の藤 聖子のことですか?

そうです。

川合ちゃんの気持ちで藤先輩のことを思いながら歌ったということですね。

もちろんそうなんですけど、やっぱりレコーディングの時は自分の目線にもなっちゃいましたね。自分の中にも憧れの存在がいるので。

安月名さんにとっての《あのひと》というのは?

言わないです(笑)。結構身近な人なので。もちろん憧れのアーティストさんもたくさんいますけど、日常で接している中で“この人のようになりたい”と思う瞬間ってあるじゃないですか。その日まで何とも思っていなかったのに、その瞬間にハッとするみたいな。憧れのアーティストと出会った時や、恋愛にもあるかもしれないです。そういうキラッとした気づきの瞬間が歌詞の後半にかけて書かれているんです。フルサイズを通して、そういう感情を一緒に楽しんでいただけたらいいなと思って歌いました。だから、最初は《無理みたい》という歌詞をボソボソッとした感じで歌っていて、そこから歌詞の感情に合わせて歌い方もどんどん変化させています。

《またあのひとに会えるから》というフレーズもありますが、憧れの存在がいることは自分のモチベーションにつながりますね。

モチベーションって人からもらえるものですよね。自分の中から出てくるモチベーションももちろんあると思いますけど。スポーツ選手が頑張る姿とか、歌とか、誰かからもらうパワーはすごいと思います。だから、私の歌を聴いてパワーを受け取ってくれたり、誰かのモチベーションを上げることができたら嬉しいです。

この曲のMVは?

今回は撮っていなくて。でも、想像はしていました。何回も同じ部屋をグルグルして、同じ毎日だけど、新しいドアを見つけて開いたところでサビになる…みたいな。

そのアイディアはまたの機会ですね。

ですね。今までほとんど撮っているんですけど、逆にMVがないことで、みんながどういうふうに曲を受け止めてくれるのか反応がすごく楽しみです。
安月名莉子
シングル「知らなきゃ」

OKMusic編集部

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