『FM802 RADIO CRAZY presents LIVE
HOUSE Antenna』オフィシャルレポー
ト――映秀。、秋山黄色、神サイらが
音楽の力を突きつける

FM802 RADIO CRAZY presents LIVE HOUSE Antenna -GSシリーズ- 2022.1.6(THU)Zepp Namba(OSAKA)
2021年12月25日(土)〜28日(火)、京セラドーム大阪にて開催された『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY presents THE GRAND SLAM』。『RADIO CRAZY』はFM802が主催する年末恒例のロックフェスとして長らくインテックス大阪で行われてきたが、昨年は場所を移して1ステージ制の新たなスタイルで全40組が熱いライブを展開。2年ぶりのロック大忘年会に関西が大いに沸いた4日間となった。さらには『RADIO CRAZY』で例年、注目のニューカマーが出演してきたステージ=LIVE HOUSE Antennaは、『FM802 RADIO CRAZY presents LIVE HOUSE Antenna -GSシリーズ-』と形態を変え、1月4日(火)〜6日(木)に、Zepp Namba(OSAKA)にて実施。2022年の幕開けに、次代を担う全18組が集結した。その3日間の最終日、映秀。、崎山蒼志にしな秋山黄色Hakubi神はサイコロを振らないが出演した、3日目の模様をレポートしよう。
『FM802 RADIO CRAZY presents LIVE HOUSE Antenna -GSシリーズ-』もいよいよ最終日となった3日目。まずはFM802DJの浅井博章が、2021~2022年をまたいだ計7日間の『RADIO CRAZY』を振り返り、ネクストブレイクを照準に入れたアーティストたちのパフォーマンスへといざなっていく。
■映秀。
映秀。
そのアナウンスを受けトップバッターを飾るのは、なんとライブイベントへの出演自体が初という19歳のシンガーソングライターの映秀。だ。時計がカウントダウンされるかのようなSEが止まった瞬間、耳をつんざくシャープなバンドサウンドを背に、いきなりしなやかな歌声を躍らせる映秀。。冒頭の「反論」からまくしたてるリリックと真紅の照明もろとも疾走し、鮮烈な印象をZepp Nambaに投影する。アコースティックギターを情熱的にかき鳴らした1曲目から一転、FM802の2021年11月度ヘビーローテーション曲「脱せ」以降は、ハンドマイクで自由に飛び跳ねステージを横断。初の対バンで一番手というプレッシャーなどみじんも感じさせない身のこなしには、ほれぼれするばかりだ。
映秀。
「はじめまして、映秀。です。どうぞよろしくお願いします」とあいさつし、今度はとろけるようにメロウでスウィートな「砂時計」で魅了。わずか3曲で類まれな才能を確信させる期待感を漂わせ、「実は初のイベント参加です。こんなに人がいるんですね……ちょっと緊張しています。話そうと思っていたことも飛んじゃいました(笑)。今日はすごく素敵なメンバーの中に入れてもらってありがたいです」と、そのまま「残響」へ。エモーショナルな音像に絡み付くはかなさが、高揚感を一気に引き上げる。リズムとフロウにシンクロする光と共に軽やかにステップする「東京散歩」でも、瞬殺のポップセンスとにじみ出る人懐っこさ、歌詞を一節を<大阪散歩>へとスイッチするサービスぶりでも場を盛り上げ、セットリストは早くも残り1曲に。
映秀。
「一瞬ですね、映秀。でした。最後まで楽しんでいってください!」と、ラストは獣がごとく躍動感たっぷりに「喝采」を披露。彼がなぜこの日のオープニングを担ったのか。その理由が凝縮された渾身のライブだった。
映秀。
■崎山蒼志
崎山蒼志
先ほどの映秀。とは打って変わって、広い舞台の中央にはアンプとマイクスタンド、2本のギターのみ。祭ばやし調のサディスティック・ミカ・バンドの「よろしくどうぞ」が鳴り響く中、そこへふらりと現れたのは崎山蒼志だ。「国」の第一声から、ギターの一音から、それだけで全てが完結すると思わせるすごみと迫力に圧倒される。続く「Heaven」でも、空を切り裂くギターのストロークを緩急自在にコントロールしながら、Zepp Nambaの2階席最後部まで余裕で貫いていく言葉の弾丸に、心地良くぶちのめされるこの感覚。そう、これが崎山蒼志のライブだ。
崎山蒼志
MCでは、「初めまして、崎山蒼志です。今やった「Heaven」という曲は、ちょうど1年前の2021年1月に、FM802のヘビーローテーションにしていただいて、めちゃめちゃ感謝しています。今日ここで絶対に歌いたいなと思っていました」と述べ、お次は2月2日(水)にリリースを控えるアルバム『Face To Time Case』から、新曲「Helix」を。息をのみ立ち尽くす目撃者たちにソリッドな音の雨を降らせたかと思えば、その雨が強さを増し豪雨と化すように、天井知らずのBPMで加速する「Samidare」へ。嗚呼、末恐ろしや、驚異の19歳。
崎山蒼志
「ありがとうございます。本当はおしゃべりなんですよ? でも、ぎこちなくておかしなおしゃべりなもんで……はい(笑)」と照れ笑いした後は、「嘘じゃない」へ。淡々と、だが確かな意志を込めた、至極のミドルバラードが切々と心に訴えかけてくる。
崎山蒼志
ここでエレキギターに持ち替え、「Video of Travel」ではノイジーなバックトラックとのサイケデリックな配合から、壮大でカオスな世界観を構築。自らの音楽的造詣と大器の片鱗を垣間見せ、最後は夕景をほうふつとさせるオレンジに照らされつま弾いた「夏至」と、日常から地続きの異次元へとトリップさせた全7曲に、崎山蒼志の真髄と未来を見た。
崎山蒼志
■にしな
にしな
再びFM802DJの浅井博章が、Zepp Nambaのロビーに設置された音波神社をはじめ、長丁場のイベントを楽しむ数々の試みを解説し、三番手のにしなを呼び込む。ドラムのカウントとシンセの優しい音色に溶け込んでいく、彼女のアコースティックギターと歌声が胸に迫る「ダーリン」からライブはスタート。アーバンなアレンジが導いた「東京マーブル」でも、ずっと聴いていたくなる独特の揺らぎと倍音を含んだボーカルに、耳を奪われっぱなしだ。
にしな
「あけましておめでとうございます、にしなです。2022年、1本目のライブということで、おめでたい感じに、元気に、最後までやろうと思います」との新年ならではの意気込みを経て、「夜になって」ではツボを押さえた演奏で彼女を支えるバンド陣と一体となって、切なきドラマを増幅。続く「U+」といい、オリジナリティとヒットポテンシャルを兼ね備えたナンバーの連続に、いつ大ブレイクしてもおかしくない予感がヒシヒシ……!
にしな
「新年ということで、今までにやったことのない曲、リリースされていない曲を、初おろししてみようかな」と始まったのは、新曲「スローモーション」。これまたポップとアートのバランスが抜群で、彼女のソングライティング力には恐れ入る。そこから、FM802の2021年4月度ヘビーローテーション曲であり、にしなの名を最初に世に知らしめた名曲「ヘビースモーク」へ。理屈抜きの感動がZepp Nambaを包み込み、音楽の、ライブの力を、改めて2022年の始まりに突き付ける。
にしな
「次で最後の曲です。ありがとうございました、にしなでした」と歌ったのは、「ワンルーム」。語り口調を織り交ぜ思いを紡いでいくこの曲が、感情のピークをさらに引き上げる。会場の隅々までが彼女にくぎ付けとなったフィナーレは、にしなの大いなる可能性を如実に証明していた。
■秋山黄色
秋山黄色
強烈な爆音と静寂を行き来した「Caffeine」から、トップスピードで沸点へと到達した秋山黄色のライブは、しょっぱなから一切の容赦なし。自身を含む4ピース編成でうねるグルーヴを放出し、「『レディクレ』楽しんでいきましょう!」と咆哮。「アイデンティティ」のエッジィなギターとスリリングなメロディの応酬にフロアもあっという間にハンズアップし、ものの数分でZepp Nambaをロックオン。「モノローグ」でも劇場型のオルタナサウンドで心を揺さぶるなど、映秀。、崎山蒼志、にしなと前途有望なソロアーティストが並んだ日にあって、ダメ押しの一撃と言える秋山黄色のステージングには驚きとワクワクしかない。
秋山黄色
「皆さん新年は何しました? 俺は何もしなかったけど(笑)。非常にこの1~2年はしんどいなと思っていて。ただ、言霊は全く信じていないけど、「最高の1年にしていきましょう!」という気持ちでここに来ているので。「今年は最高にするぞ!」と言っても、「なかなかそんな急には無理です」という事情の方もいるとは思いますけど、そういうときはライブに来てください。1日ぐらいなら確実に最高の日にすることはできるので。そういう気持ちで日々ライブをしているので、それが伝わればいいなと。どんどん新しいことをして、新しいライブをしていこうという気持ちなので、今日は新曲をやりたいと思います」
秋山黄色
新曲「見て呉れ」では、フック連発のギミックもポップに聴かせ、サビにはしっかり昇天させるさすがの手腕を発揮。湧き上がる衝動を逃がさずエナジーに変える爆発力で魅せた「ナイトダンサー」の果てには、「ラストです! 今日だけの話じゃないけど、皆さん、思い残すことのないようにお願いしますよ」と、イントロからケツまでアドレナリン出っぱなしの「やさぐれカイドー」をぶち込む!
秋山黄色
「今日、俺のことを初めて観に来たという人、ビッグチャンスです。衝撃というのは、自分が欲しいタイミングじゃなくて、こういう何の変哲もないときに来ちゃうもんだから。いつ何どき、音楽を聴いてもいいように気合いを入れとけよ! 今年もこんな感じで熱いライブをするから安心してくれ!!」と絶叫し、その名と音楽を深く焼き付けた秋山黄色。完全燃焼✕完全優勝の全6曲、エグ過ぎ!
秋山黄色
■Hakubi
Hakubi
Gregory and the Hawkの「Oats We Sow」のSEから場内の雰囲気は一変。「ライブハウス、KYOTO MUSEから来ました。今日はよろしくお願いします」(片桐、Vo.Gt、以下同)と穏やかに告げ、ゆったりとしたビートが徐々にスケールと熱量を増していく「アカツキ」を広大な空間に沁み渡らせたのは、京都発のスリーピースバンドHakubiだ。「初めてのZepp Namba! 最高のライブを今ここで」と口火を切った「辿る」でも、静かなるエモーションを歌に乗せ、それに呼応するようにクラップが自然発生。「あなたのその目が、その拳が、アーティストを強くします。そこにいてくれてありがとう!」とブチ上げた「ハジマリ」では、数え切れない手が上がる絶景を生み出し、前半戦にして早くもオーディエンスとの信頼関係を築き上げていく。
Hakubi
「ライブができていること、本当に幸せです。ライブハウスに来てくれてありがとうございます。たくさんの人が、2階席の奥まで来てくれている。見渡しても見渡しても、ちゃんとあなたの顔が見えます。あなたたちじゃなくて、あなた一人一人に届くように、歌っていきます」
Hakubi
FM802の2021年8月度ヘビーローテーション曲でもある「栞」は、そんな片桐の言葉通り、目の前に集う人々はもとより、もっともっと遠くまで届くきらめきを感じさせる。「誰にも言えずに一人で抱え込んだこと、どこにも行けない言葉、笑ってごまかしたこと、考えても考えてもたどり着けなかった生きている意味、眠れなかった夜……この広いライブハウスで、必ずあなたを見つけ出してみせる」と宣言した「mirror」でも、演奏中に幾度となく激情を編み込みながら絶唱する片桐。
Hakubi
「2022年、ゆっくりゆっくりと、全てが元通りになりつつある。でも、大切なイベントや大好きだったバンド、なくなってしまったものを、絶対に忘れないで。2022年をもっともっといい年にしていきませんか。音楽は鳴りやませない。鳴りやませないぞ!」
クライマックスの「悲しいほどに毎日は」に重ねた決意に、「またライブハウスで待っています。それまでは音楽があなたを守る」との約束を添えて、Hakubiは初のZepp Nambaを後にした。
Hakubi
■神はサイコロを振らない
神はサイコロを振らない
FM802DJの浅井博章が「ライブを観ないと分からない魅力がある」と語るのも納得の名演が続いた最終日。大トリの神はサイコロを振らないは、無音のZepp Nambaに天高く突き抜ける歌声を響かせた「未来永劫」から、これぞクロージングアクトたる堂々の佇まい。「クロノグラフ彗星」でも、余裕すら感じるライブバンドとしての風格で、約6時間にわたる宴をとことん楽しむミュージックラバーたちとケミストリーを作り上げていく。
神はサイコロを振らない
「今日が記念すべき一発目のライブです。2022年のいいスタートラインにしたくて、はちゃめちゃに楽しんでいます。ただ、我々なんかがトリを飾っていいものかと。浅井さんもずっとプレッシャー(=浅井さん的励まし)をかけてくるんですよ(笑)。去年はFM802にお世話になりまくりで、1曲目にやった「未来永劫」を(2021年3月度の)ヘビーローテーションにしていただいたり。今年もガンガン飛躍していこうと思っていますんで、最後までよろしくお願いします!」(柳田周作、Vo、以下同)
神はサイコロを振らない
「タイムファクター」では畳み掛けるリリックと美しいメロディに揺れ、バンドアンサンブルのうまみをこれでもかと見せつけた「揺らめいて候」、心の深淵にゆっくりと落ちていく「夜永唄」と、とにかくクオリティの高いロックチューンがもたらす没入感と造形美に聴きほれる。そして、「3月2日(水)に7年の歴史で初めてフルアルバム『事象の地平線』を出すことになりました。7年は長いようで短いようで、この4人が大学で知り合って……」と、バンドの歩みを振り返った柳田が、今とは異なる音楽性のポストロック/マスロック志向だった約5年前、とある地方の小さなライブハウスのイベントで、観客にまるで振り向いてもらえなかった苦い経験といまだに残る悔しさを吐露し、こうも続ける。
神はサイコロを振らない
「でも、そういう場があるから頑張れるというか、僕らにまた新しい出会いを、新しい壁を作ってくれる。今日、僕ら4人は、ここにいる全員を振り向かせるつもりで大阪まで来ました。どうか最後の一瞬まで、残り2曲、僕らと共にライブを作っていただけないでしょうか!」
神はサイコロを振らない
もうこのMCで勝負は決まっていた。そう思わせるほどに観る者のハートをつかんだ末の「1on1」が、刺さらないわけがないだろう。「最後に最大級の景色を作ってくれませんか!」と放った「巡る巡る」まで、誠実に己の音楽を鳴らし続けた神サイが、その大役を果たした最高のラストシーンで、『FM802 RADIO CRAZY presents LIVE HOUSE Antenna -GSシリーズ-』が、昨年から続いた『RADIO CRAZY』の7日間の挑戦が、見事に幕を閉じた。
神はサイコロを振らない
なお1月20日(木)〜1月30日(日)の期間には、『FM802 RADIO CRAZY presents LIVE HOUSE Antenna-GSシリーズ-』3日間のダイジェスト映像を観ることができる配信されるので、是非チェックしてほしい。
取材・文=奥“ボウイ”昌史 撮影=渡邉一生
2021年12月25日(土)〜28日(火)RADIO CRAZY presents THE GRAND SLAM
オフィシャルレポートの記事は→こちら

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