『FM802 RADIO CRAZY presents LIVE
HOUSE Antenna』オフィシャルレポー
トーーKALMA、ヤユヨ、w.o.d.らが新
年のフレッシュなライブ初め

FM802 RADIO CRAZY presents LIVE HOUSE Antenna -GSシリーズ- 2022.1.4(TUE) Zepp Namba(OSAKA)
大阪のラジオ局・FM802が毎年年末に行うロック大忘年会『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY(以下レディクレ)』。昨年は『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY presents THE GRAND SLAM』と題し、12月25日(土)から28日(火)まで、京セラドーム大阪にて万全の感染対策を講じた上で開催。真冬の空に素晴らしい音楽のホームランが大連発された、最高の4日間だった。そして、例年レディクレ会場内のライブハウスステージで行われてきた名物企画「LIVE HOUSE Antenna」が、今年は『LIVE HOUSE Antenna -GSシリーズ-』と題してZepp Namba(OSAKA)に場所を移し、初めて単独開催。年が明けたばかりの2022年1月4日(火)、5日(水)、6日(木)の3日間に渡って行われた。出演したのは、2022年のミュージックシーンを彩り、次の『レディクレ』を担うであろう、FM802 DJやFM802スタッフイチオシの注目アーティスト総勢18組。やむなく中止となった2020年の『レディクレ』のAntennaステージにオファーされていたアーティストも多く含まれている。今回はKALMAThe Songbards、w.o.d.、Mr.ふぉるてヤユヨreGretGirlが出演した初日の模様をレポートしよう。
『FM802 RADIO CRAZY presents LIVE HOUSE Antenna-GSシリーズ-』
追跡アプリの登録と検温を済ませてロビーに入場すると、『レディクレ』にも鎮座していた音波神社や、運試しができるガチャガチャがあり、2022年最初の音初めを楽しもうするとライブキッズたちで賑わっていた。凛と引き締まった新年らしい活気が満ちていて、少しソワソワする。ステージには『レディクレ』で掲げられていた、アートユニットのWHOLE9による手描きのトラの巨大バナーがドンと構える。
定刻になり、FM802のDJ樋口大喜が登場。各バンドの紹介を経て、「2022年、ここから全てが始まります! 皆さん準備はよろしいでしょうか! 『LIVE HOUSE Antenna -GSシリーズ-』開幕します!」との宣言から、本編が始まった。
reGretGirl
reGretGirl
トップバッターは大阪出身のスリーピースバンド、reGretGirl。SEが流れると、まばゆい光の筋が会場を巡り、あっという間に2階席まで総立ちに。平部雅洋 (Vo.Gt)が「皆さんのライブ初めをもらいにきました。一緒にドキドキして盛り上がって帰りましょう! We are from OSAKA! reGretGirl始めます。よろしくお願いします!」と挨拶。「ピアス」で元気にロケットスタートを切る。十九川宗裕(Ba)がクラップを煽るとオーディエンスもそれに応え、サビでは2階後方までしっかり手が挙がった。続く「Shunari」も、のびのびと笑顔で演奏する。
reGretGirl
MCでは、正月三が日の過ごし方についてゆるいトークを繰り広げ、「大阪にある海の歌です」と、「二色浜」を披露。爽やかなメロディーに乗せて、失恋で得た痛みや思いをポップかつ情緒的に届けてゆく。平部の生々しい息遣いが印象的な「デイドリーム」では、まくしたてる歌い方やビブラートで、表現の幅の広さもバッチリ提示していた。
reGretGirl
2019年のレディクレでもAntennaステージに立ったreGretGirl。MCで平部は「僕は大阪出身のバンドマンやから、『レディクレ』への憧れは高校生の時からあるんですよ。高2の誕生日に初めて行ったレディクレで観たサンボマスターは一生忘れない。ライブはすげえパワーを持ってると思う。もう僕の生活の一部になっているなと思わされます」とギターをつま弾きながら語った。コロナで生活が一変したことにも触れ、「皆に頑張れよと歌ってあげることはできないけど、無理するなよと寄り添うことはできます。2022年もこのまま突っ走っていきたい」と、音楽への愛情と矜恃を口にする。
reGretGirl
そして「冬が厳しくなればなるほど、その後に待っている春はこの上なく美しいのでしょう」と「スプリング」へ。この長いコロナという冬が明けて、早く春が来ることをただ願った。ラストは「ホワイトアウト」。疾走感のあるナンバーでまっすぐに音をぶつける。前田将司(Dr)のビートに支えられ、勢いを増した3人の演奏と「最大の手を挙げてくれ! いけるか!」との平部の言葉で、一斉にハンズアップ!​ 新年一発目らしい、フレッシュなライブを見せてくれた。
ヤユヨ
ヤユヨ
続いては現役大学生バンドのヤユヨ。初恋の嵐の「Untitled」をSEにメンバーが登場すると、会場は待ってましたの歓迎ムードに。1曲目は「星に願いを」。リコ(Vo.Gt)の凛とした歌声が伸びてゆく。堂々とした立ち振る舞いでステージを歩き回り、天真爛漫に盛り上げる。グリーンのブーツカットパンツがよく映えて華やかだ。「大阪のヤユヨです! よろしくお願いします!」とリコが挨拶し、「いい日になりそう」で勢いが加速。続いてすーちゃん(Dr.Cho)のビートが鳴り響き「Yellow wave」へ。「とにかく楽しい!」という気持ちが溢れ出すステージングに、観ているこちらもハッピーになる。
ヤユヨ
「新年あけましておめでとうございます! 新年一発目ということでめちゃくちゃ気合い入ってます。好きなように踊りましょう」と再度の挨拶を経て、サポートベースのんのベースソロから始まる「ユー!」をドロップ。可憐なコーラスワークとリコのタンバリンで多幸感がますますアップ。
ヤユヨ
MCではリコが「2022年始まったね。超楽しいんやけど、どうしよう」と笑顔を見せながら、高校生の時から毎年レディクレにメンバーで通っていたことを話し、出演できたことを夢みたいだと語る。「本当にめっちゃ嬉しいのよ、初めての『レディクレ』だからね、ずっとドキドキしてます」と話すリコに、ぺっぺ(Gt.Cho)が「今日来る時から様子おかしかったもんな」と返すと「引くくらい喜んでるし、泣くぐらい嬉しいもん、ほんまに」と破顔。ソワソワと喜びが伝わってきた。
ヤユヨ
後半、ぺっぺ(Gt)のギターが野生的な「おとぎばなし」へ。メルヘンな曲名とは裏腹に、ムーディーで艶かしさも感じさせる楽曲だ。さらに、3月に1stフルアルバム『日々爛漫』をリリースすることをアナウンスし、収録曲の「あばよ、」を披露。<神様よりも信じていたのに嫌いになりました あばよ どうぞ不幸になってください><かけがえのない日々ですがずっと1人でした>と、毒のある歌詞に思わずゾクっとした。ラストはポップでハーモニカも印象的な「さよなら前夜」で駆け抜けた。新しさと懐かしさ、可愛らしさとカッコ良さを併せ持つヤユヨ。今後の飛躍が楽しみでならない。
ここで再びFM802DJの樋口大喜が登場。「ヤユヨはw.o.d.の大ファンです。だから個人的にライブイベントでバトンを繋ぐというのは感慨深く思います。始まったら豪速球のロックンロールです!」と、ヤユヨとw.o.d.の関係性を述べつつ紹介。
w.o.d
SEをバックにメンバーが登場。まずサイトウタクヤ(Vo.Gt)の歪んだギター音が聴こえ、Ken Mackay(Ba)と中島元良(Dr)がインしたと同時に、轟音が脳天を直撃する。1曲目は「モーニング・グローリー」。3人で放っているとは思えないほどの音の厚みに、問答無用で身体が刺激される。曲の繋ぎ目がわからないアレンジで間髪入れずに「Mayday」へ。会場の温度をぐんぐん引き上げる。
w.o.d.
腹の底に響く低音のイントロが最高にセクシーな「Fullface」では、3人とも頭を振り乱してプレイ! サイトウは正座して小さくなって弾いたと思えば、ステージに倒れ込む。渾身のパフォーマンスにオーディエンスも身体を揺らして熱狂する。さらに「lala」で野生的な魅力を見せつける。もともと爆発力のあるバンドだが、見るたびに演奏力が上がっていて、安定感が増し、カッコ良さを更新し続けていることに感動する。
w.o.d.
向き合った3人が、天からの光で照らされるかのような演出で「サニー」へ。これまでの攻撃的な楽曲とは違い、情景を想像させるようなミドルテンポで聴かせる一面も。
w.o.d.
しばしの静寂のあと「あけましておめでとう。w.o.d.ですよろしく。最後まで楽しんで」というサイトウのごく短いMCを挟み、昨年10月に配信リリースされたガレージソング「イカロス」をドロップ。超絶ソリッドなグルーヴに、客席も負けじとヘドバンで踊りまくる。あまりのスピード感で、メンバーの手元はもはや異次元だ。既にヒリヒリ感はマックスなのに、ラストスパートはさらに加速。サイトウがコロナ禍でライブハウスを思って書いた「楽園」、曲名通りの踊れるグランジナンバー「踊る阿呆に見る阿呆」、ラストの「1994」まで、ほぼMCなしで全9曲をまさに豪速球で投げつけた。生のエネルギーの交換が行われた、灼熱のライブだった。
The Songbards
リハで財津和夫の「サボテンの花」やビートルズの「Don't Let Me Down」を高らかに歌い、本番前から歌唱力の高さを見せつけたのは、神戸出身のThe Songbards。彼らも2019年ぶりのAntenna登場だ。ステージ側から照らされたライトで、4人のシルエットが浮かび出される。メロディアスなギターリフと4人の美しいコーラスから始まったのは「夏の重力」。上野皓平(Vo.Gt)が「The Songbardsです! よろしく!」と挨拶し、清涼感のあるサウンドスケープを会場に響かせる。続いて軽やかなロックチューン「雨に唄えば」、柴田淳史(Ba.Cho)のベースラインが心地良い「悪魔のささやき」と、グッドメロディーを余すところなく披露してゆく。
The Songbards
MCでは「今日は新年から来ていただいて本当にありがとうございます!」と上野。昨年末、樋口の番組にKALMAのハタヤマユヅキ(Vo.Gt)と出演した際にハンブレッダーズのジングルがかかり、「羨ましくて、僕らも2人でやりたいと思って、頼まれてもないのに勝手に802に(ジングルを作って)送りつけてるので、今後もしかしたら使ってもらえるかもしれない。注目して聴いてもらえたら嬉しいです」と告白。(実際に1月6日(木)24:00〜の『RADIO∞INFINITY』で流れたとのこと!)
The Songbards
「少しでも明るい年になるように気持ちを込めてライブしたいと思います!」と述べ、「窓に射す光のように」をドロップ。松原有志(Gt.Vo)の震えるようなギターが情緒的で、浄化されるようにまばゆいハーモニーが優しく耳を潤してゆく。さらにブリティッシュロックを思わせる「ブルー・ドット」で至福の高みへ連れていかれる。
The Songbards
3月に地元・神戸VARIT.でワンマンライブを行うことをアナウンスし、「初めてバンドを組んだ時や、好きなバンドに出会った時の喜びを忘れずにやっていきたいと思います」と、アンセム「Inner Lights」で爽やかな風を吹かせ、岩田栄秀(Dr.Cho)のタイトなビートが心地良い「太陽の憂鬱」をプレイ。サビでは一斉に客席の手がアップ! 後半、4人の真骨頂とも言えるコーラスワークでしっかり魅せ、ラストに向けて熱量を高めライブは終了した。最高に爽やかで上質なサウンドで魅了した35分だった。
The Songbards
Mr.ふぉるて
Mr.ふぉるて
トリ前は東京からやってきた、Mr.ふぉるて。昨年12月にメジャーデビューしたばかりで、The Songbardsとはレーベルメイトの4ピースバンドだ。1曲目の「トライアングル」は、終始逆光で客席からメンバーの姿が見えない演出。稲生司(Vo.Gt)の中性的な歌声がスッと届き、演奏力の高さがサウンドから感じられる。「あけましておめでとうございまーす!!」と元気に稲生が叫ぶとステージに光がともり、メンバーの姿が確認できた。続く「なぁ、マイフレンド」では、<このコロナ禍でも僕らは無敵さ>と歌詞を変えて歌う。サビの一体感は素晴らしく、ワンマンライブのような盛り上がりを見せた。
Mr.ふぉるて
吉河はのん(Dr)のキレのあるビートと阿坂亮平(Gt)のリフがエッジーな旅の歌「ジャーニー」では、<そんなもんで苦しんでる人がこの中に1人はいるでしょうよ。そんなもん壊してやれるような……そんな歌を歌いにきました!!>と叫ぶ。そんな稲生の歌声からは、目の前の人に届けようという強い意思と、稲生のカリスマ性が熱を帯びて伝播し、客席の心はがっちり掴まれる。と同時に、4人の奏でるサウンドが絆で結ばれているように見えた。
Mr.ふぉるて
歌謡曲の要素も感じられる「君守歌」を経て、MCでは吉河が「皆さん楽しんでますかー! あけましておめでとうございます!」と挨拶。阿坂が物販に忘れ物を取りに行った時のゆるエピソードを挟み、稲生が口を開く。「まだ予断を許さない生活が続いていますが、春に触れにくくなった人に、夢に触れにくくなった人に、自分なりの応援歌を歌います」と話し、同期演奏でシンセをきかせた「シリウス」へ。伸びやかでまっすぐ突き刺さるパワーのある歌声と歌詞にグッとくる。客席からも「好き!」という気持ちが溢れ出てくる。
Mr.ふぉるて
福岡樹(Ba)がサンプラーを叩く、ドラマティックな「エンジェルラダー」では自分たちは前に進む存在であるとメッセージ性を伴って響かせる。ラストは「幸せでいてくれよ」を披露。手を後ろで組んで胸を張り、ストレートな言葉を放つ。間奏で「Zepp Nambaに、FM802に、皆に歌ってるんすよ! 届いてますか!!」と叫んだ稲生の言葉に胸が熱くなった。お互いの幸せを願い合う素晴らしい時間。間違いなく心に残るステージを刻んでいった、Mr.ふぉるてだった。
Mr.ふぉるて
KALMA
KALMA
『レディクレ』初登場にして大トリを任されたのは、北海道のKALMA。樋口に「同世代のバンドの先頭に立ちたい。本気でそう思っているバンドです」と紹介され、SEのT・レックス「20TH CENTURY BOY」に合わせて登場。ハタヤマユヅキが「最後まで残ってくれて本当に有難うございます! 良い年のスタートにするために、最高の良い夜にします!」と「blue!!」をドロップ。じっと歌っていられない! と言わんばかりに、ジャンプしたり大きく身体を動かしながら演奏するメンバーからは、はみ出しそうなほどのエネルギーが感じられる。
KALMA
出演予定だった2020年の『レディクレ』が中止になったことから、「やっと出れました、『レディクレ』! 実質初めてのステージで本当に嬉しいです。今日色んなバンドがいたけれど、一番大きな声で歌います!!」とハタヤマ。そのままの勢いで「ねぇミスター」をぶつける。サイトウリクト(Ba)がカネダタツヤ(Dr)に向き合いプレイ、ハタヤマはなりふり構わずステージを暴れまわる。
KALMA
「1分間の君が好き」を全力で叩き込み、MCへ。毎年3人で初詣に行き、おみくじを引くのが恒例の彼ら。何とそのおみくじを「今から開けます!」と発表。前日に北海道の神社で引いたおみくじを開けずに大阪に持ってきたのだ。声を出せないものの、客席はどよめきと笑いに包まれる。結果は……カネダとサイトウが大吉! ハタヤマは末吉という、(図らずも)オチがしっかりついたところで、牛角のCMソングにもなっている新曲「ジェットコースター」を披露。
KALMA
「ここからがっつりライブハウスでいきます!」との宣言通り、後半は「ふたりの海」「くだらん夢」「モーソー」とパワフルな楽曲を連続で繰り出してゆく。そして「迷った時に隣にいてくれるのが音楽。僕らも皆のその一部になりたいと思います」と、昨年10月のFM802ヘビーローテーションに選ばれた「希望の唄」を演奏。
締めの曲は「これでいいんだ」。<運命なんて信じないんだ 自分次第だ!>と3人で力を込めて歌う姿はただ眩しく、未来を照らしていた。最後に渾身の一音を熱量高くぶつけ、KALMAのライブは終了。はつらつとした瑞々しい瞬間をたくさん見せてくれた。
初日の『LIVE HOUSE Antenna -GSシリーズ-』はこうして幕を閉じた。新進気鋭のバンドたちによる最高の音初め。この日が新年初ライブのアーティスト、2021年のライブ納めを『FM802 ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY presents THE GRAND SLAM』で、2022年のライブ初めを『LIVE HOUSE Antenna -GSシリーズ-』で迎えた人、そして人生で初めて「ライブハウス」に来た人。全員にとって特別な1日になったことは間違いない。今年は一体どんな音楽に出会えるだろう。今から楽しみにしておこう。

KALMA
取材・文=ERI KUBOTA 撮影=日吉”JP”純平
2021年12月25日(土)〜28日(火)RADIO CRAZY presents THE GRAND SLAM
オフィシャルレポートの記事は→こちら

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