シンデレラ役の古川琴音 (C)エンタメOVO

シンデレラ役の古川琴音 (C)エンタメOVO

【インタビュー】ミュージカル「INT
O THE WOODS」古川琴音「悔いが残ら
ないように」引っ越ししてまで臨んだ
オーディションで勝ち取った初ミュー
ジカル

 羽野晶紀や古川琴音、渡辺大知らが出演する、ミュージカル「INTO THE WOODS」が1月11日から上演される。本作は、『赤ずきん』『シンデレラ』『ジャックと豆の木』『塔の上のラプンツェル』といったおとぎ話の登場人物たちが同時に存在する世界で、それぞれの有名なおとぎ話をなぞりながら交錯するストーリー。おとぎ話からかけ離れた、人間の本質をあぶり出すような深淵なテーマがさまざまな角度から描かれる。初めてのミュージカル出演でシンデレラを演じる古川に、意気込みや役柄への思いを聞いた。
-本作への出演は、オーディションで決まったと聞いています。もともとミュージカルには憧れがあったのですか。
 ミュージカルやミュージカル映画が好きだったということもありますが、音楽を通してお芝居をすることで伝わるものが増すのではないかという思いもあったので、漠然とした憧れは持っていました。今回、オーディションのお話を頂いて、ブロードウェー版の映像を見させていただいたら、ユーモラスで楽しい楽曲が多いのに、ストーリーでは教訓めいたものも描かれていて、すごく深い作品だと感じました。シンデレラなど、親しみのあるおとぎ話のキャラクターが登場しますが、そのキャラたちが現実を語るというのも皮肉で面白いなと。それで、その世界観に入りたいと思ってオーディションを受けさせていただきました。
-本作のオーディションに臨むに当たって、防音の部屋に引っ越しもしたそうですね。
 ミュージカルのオーディションに呼ばれるとも思っていなかったので、その機会を頂けたことがありがたいと思っていました。憧れもありましたし、自分ができるところまでやってからオーディションに臨みたかった。まず自分ができることを全てやった上で判断してもらいたかったので、思い切って、オーディションの話を聞いた日に物件を探し始めて、すぐに引っ越しをして、悔いが残らないように練習をしました。
-それだけの強い思いで臨んだオーディションだっただけに、出演が決まったときは格別な思いだったのではないでしょうか。稽古が始まって、どんなことを感じていますか。
 演出家の熊林(弘高)さんのお話を聞いたり、脚本を読んでいく中で、表現したいものがどんどん増えていくのですが、それを歌に乗せるのはすごく難しいことだと改めて感じています。今(取材当時)はまだ、やらなければいけないことがあり過ぎる状況です。本番までの期間に学ぶことはすごく多いと思いますし、千秋楽を迎えたときに自分がどう変わっているのか楽しみでもあります。
-稽古を通して、具体的にどんなことを学びましたか。
 私一人では、このせりふをどうやって言おうかと、表面的なことしか考えられませんでしたが、熊林さんの演出によって物語の深いところまで考えられるようになったと思います。この作品は、私たちがなじんできた『シンデレラ』や『赤ずきん』などのストーリーとは違って、もっとシリアスなストーリーになっています。その中で、人間の深層心理を象徴するようなモチーフが出てきます。熊林さんがこの物語を作るに当たって、「夢」を一つのモチーフにしたいとおっしゃっていました。夢には深層心理を象徴するものが出てくるんですよ。例えば、私は疲れたときに歯がたくさん抜ける夢を見ることがあるんですが、それは私だけでなく、悩んだり追い込まれた状況のときに多くの方が見るものなんだそうです。そういうふうに、人間の中に無自覚に隠されているモチーフがたくさんあって、それが散りばめられているのがおとぎ話の世界なんだと、この作品に携わって知ることができました。
-古川さんが演じるシンデレラというキャラクターを、どう捉え、どう演じたいと考えていますか。
 お稽古前に熊林さんからシンデレラについての資料を頂いたのですが、その中に「シンデレラという物語自体が、少女がアイデンティティーを確立するまでの物語なんだ」と書いてありました。私はそれまでシンデレラというと「ザ・プリンセス」というイメージを持っていましたが、この作品ではもっと現実的で人間らしいキャラクターにしていきたいと思います。
-ところで、2021年は映画やドラマでも大活躍でした。改めて、1年を振り返ってみていかがでしたか。
 この仕事始めてから、1年が本当にあっという間です。たくさんの作品に携わらせていただきましたが、やはりドラマ「コントが始まる」は印象に残っています。すごく青春したなと思うので(笑)。私も演じながらどうなっていくのか毎話、楽しみにしていました。物語もすごく響きました。私に響くということは、きっと同年代の人たちにも響くということだろうから、楽しんでもらえたらいいなという気持ちで演じていました。私のことを「コントが始まる」で知ってくださった方も多いと思いますし、私が演じたつむぎというキャラクターを視聴者の方がとても愛してくださっていたと思うので、私にとってターニングポイントとなった作品でもありました。
-2022年はどんな1年にしたいですか。
 今までは、自分が感じたことを頼りに役作りをしていましたが、もっといろいろなことを勉強して、物語を俯瞰(ふかん)で見て、もっと深く演じられるようになりたいと思います。どんな役を演じるときも、自分の感情で、自分の声で、自分の容姿で演じる以上、自分とかけ離れるということはないですが、それでも、その役柄をリアルに生きるためには、見せかけの心の変化を追うのではなく、もっと突き詰めていかなければいけないと思っています。
-改めて、本作への意気込みを。
 明るい音楽の中に、シビアで皮肉が効いた物語が展開されている作品です。ただ楽しい、すてきというだけでなく、この物語が持つ深みや毒をきちんと表現できるように頑張りたいと思います。
(取材・文・写真/嶋田真己)
 ミュージカル「INTO THE WOODS」は、1月11日~31日に都内・日生劇場(11、12日はプレビュー公演)、2月6日~13日に大阪・梅田芸術劇場メインホールで上演。
公式サイト https://www.umegei.com/itwoods2022/

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