After the Rain(そらる×まふまふ)
 リスナーのリクエスト曲や思い出の
曲など全20曲で彼らの軌跡を辿る、5
周年記念オンラインライブをレポート

After the Rain ONLINE LIVE 2021 -5th ANNIVERSARY-

2021.12.18
雨上がりの空を彩る、美しい虹のアーチ。2人の歌声、After the Rainという存在は、希望そのものだとあらためて思う。
活動5周年を迎えた、そらるまふまふによるユニット・After the Rain。12月18日に映画館上映&全世界配信された無観客オンラインライブ『After the Rain ONLINE LIVE 2021 -5th ANNIVERSARY-』は、リスナーからのリクエストを反映させた構成で彼らの軌跡を辿る、集大成的な公演となった。
まず驚かされたのはオープニング。オーディエンスのいない客席をゆっくりと進むリムジンの中に、そらるとまふまふの姿が! 2020年11月に開催した初めての全世界配信ライブ『After the Rain ONLINE LIVE 2020』では、誕生日を迎えたばかりのそらるのために、本編終了後のアフタートークでまふまふが白いリムジンを用意したけれども。いやはや、まさかの登場である。
黒地に赤の差し色が鮮やかな衣装をまとい、歩調を合わせて、バンドメンバーがぐるりと取り囲むようにスタンバイする円形ステージに進む2人。冒頭で「みなさん、こんにちは。今日は1日よろしくお願いします!」とそらるが挨拶して、最初のナンバー「セカイシックに少年少女」へ。それぞれの色をたたえた歌声のかけ合いも、重なりも。息ぴったりに視線を交わす姿も。やっぱりAfter the Rainは特別だ。
そらる
まふまふ
「1・2・3」では、2人の姿をさまざまな角度からとらえるドローンカメラの動きがますますダイナミックになって、ステージから放射状に伸びた2本の花道へと進むそれぞれの姿、向き合ってお互いを指さす<キミにきめた!>にも、高揚が止まらない。
そらる「After the Rainとしては、2回目のオンラインライブ。前回より会場がすごく大きくて、ステージに立っていて気持ちいいです。ね?(とまふまふを見るも反応がなく)……なんだよ、しゃべってくれよ(笑)」
まふまふ「え……みなさんこんにちは、After the Rainのまふまふです。いやぁ、カメラが回ってて……緊張しません?」
そらる「オンラインライブだと、普段お客さんがいるところにカメラがずらっと並んで、スタッフさんたちがいて。学芸会の子どもみたいな心細さはある。今もどう思われてるのか……」
まふまふ「このMCやべえなって思われてますよ(笑)。After the Rain祝5周年で、同人時代も含めると7年くらい?」
そらる「うん。出会ってからはもう10年経ったらしい」
まふまふ「長い付き合いになりましたけど、こうして広い会場でライ
ブができるほど、After the Rainは大きくなりました。MCのレベルはまだ1年目レベルくらいなんだけど。ずっと変わらないもんね、MC(笑)」
そらる「変わらぬよさがあるよね、そこには(笑)。そんなこんなな2人なんですけど、歌はしっかり心を込めて歌いますので、最後まで楽しんでいってください。よろしくお願いします」
ぎこちなささえも愛おしい2人のトークから、そらるのソロナンバー「アイフェイクミー」へ。ステージ周りにファイヤーボールが噴き上がる中、そらるが歌い、共同作詞・作曲者であるまふまふがエレキギターを弾く。とんでもなく絵面が強い。
After the Rain
赤と緑のレーザー光線やライトが飛び交い、ダークにゴシックにクリスマス気分を盛り上げた「ブラッククリスマス」。ライブで初披露となったハロウィン曲「ユメクイ」では途端に艶っぽさが溢れ出して、2人の変幻自在な表現に翻弄されていく。
「ライブであんまりやっていない曲だけど、個人的に大好きな曲です」とそらるが前置きしたのは、「彷徨う僕らの世界紀行」。出だしの丁寧で優しいハーモニーからして、涙腺が緩んでしまうではないか。オリジナル曲リクエスト第3位の、「四季折々に揺蕩いて」。第1位の「桜花ニ月夜ト袖シグレ」。心地よく絡まる伸びやかな2人の歌声は、和情緒に似合いすぎる。
バンドインストゥルメンタルをはさみ、傘の描かれたロング丈トップスに着替えた2人は、“歌ってみた”リクエストトップ3を1位から順繰り歌っていく。儚げな歌声、ステージ上段から下りてくる際にまふまふの肩にそらるがそっと手を置く姿、さり気ないアイコンタクトにもつかまれてしまった「ウミユリ海底譚」。「こんなところにセグウェイがありますよ!? そらるさん、免許持ってましたよね? ちょっと乗ってみては?」とまふまふにうながされ、間奏部分で突然、そらるがセグウェイに乗ることになった「厨病激発ボーイ」。いざ乗ってみるとなかなか心許せない様子だったものの、「ここでイケメンなひと言をどうぞ!」とまふまふに無茶振りされると、急にイケボで「……乗ってく?」とそらるが誘って、2人してふき出してしまう場面も。そして、こんなに難易度の高い曲をライブでさらりと歌いこなす2人は常人ではないとうならされた「ミルククラウン・オン・ソーネチカ」。情緒不安定な並びも、この2人にかかれば断然アリだ。
まふまふ
「そらるさんが「アイフェイクミー」でめちゃめちゃかっこいいところを見せつけたので、僕もかっこいい一面をみんなに見せていきたいと思っています」という敢えての前振りをしてまふまふが歌ったのは、もはや女の子になってしまっているソロ曲「女の子になりたい」。歌声も表情も仕草も桃色ライトに映えて、かわいいにもほどがある。
ドットイメージがステージで輝き、引き続きスウィートなまふまふの歌声にビターなそらるの歌声が重なって、絶妙に混ざり合った「チョコレイトと秘密のレシピ」。のちのMCで、「ありがたいリクエストのおかげで、拷問のような2曲を歌ってきました(笑)」とまふまふが冗談交じりに言い、そらるが「うん、嫌いじゃないけど変な曲(笑)」と応じたが、この流れはリスナーをさんざん悶えさせたのではないだろうか。
高低差の激しい音程でもブレないハモりに震えた「アイスリープウェル」。動画公開からわずか半年でAfter the Rainのリクエスト第2位にランクインした「モア」。スリリングなかけ合いが、画面やスクリーン越しとはいえ実際に観られるなんて!
そらるの「ワンダー」、まふまふの「夢のまた夢」は、それぞれのソロ曲でもっともリクエストの多かったナンバー。「やっぱり歌うのは楽しいよね」と笑顔を見せた2人は、キャリアを重ねても、歌うこと・音楽を生むことに真っ直ぐだ。純粋さを失わず、凜として美しい歌声にどうしたって魅せられてしまう。
まふまふ「「彷徨う僕らの世界紀行」とか「ユメクイ」とか、自分ではセットリストに入れるのを躊躇してしまう曲をみんながリクエストしてくれて嬉しかった」
そらる「「彷徨う僕らの世界紀行」は歌いながらウルウルってきた。いい曲だわ」
まふまふ「あと、「ウミユリ海底譚」は思い出の楽曲だから……」
そらる「この機会に歌えてよかったよね」
そらる
そんな会話のあとは、アリーナ中央に設置された、色とりどりの和傘や丸形提灯が四方に飾られたサブステージへ。「このステージに相応しい2曲を」というそらるの言葉が導いたのは、トーチの揺れる炎が華を添えた「夕刻、夢ト見紛ウ」と「万花繚乱」。隣り合って歌う2人の姿、「万花繚乱」のラストの見事なロングトーンに、もう胸がいっぱいだ。
そらる「日ごろの不摂生と引きこもりがたたって限界が近いけど(笑)、ここまで19曲歌わせてもらいました。次の20曲目が最後の曲になりますが、どうでしたか?」
まふまふ「地面が傾いて見えます、恐ろしい(笑)」
そらる「来年のAfter the Rainリアルライブに向けて、俺みたいにランニングマシン買おう!(笑) 俺たちもリアルライブに向けて身体を作っていくから、みんなも体力つけておいてね。というわけで、今回のライブ、最後まで自分たちらしく楽しむことができました。それが伝わっていたらいいなと思います」
まふまふ「オンラインライブも、結局は観てくれる人がいなかったら実施することができないんですよね。映画館や国内外のいろんなところで観てくれているんだろうな」
そらる「うん。オンラインでもライブができてよかったし、観てくれているみんなに感謝だよね」
まふまふ「本当に。いつも支えていただいています。ありがとう」
そらる「これからもよろしくお願いします」
After the Rain
ゆるく微笑ましいやりとりに、リスナーへのありったけの愛と感謝をにじませて。ラストナンバーは「彗星列車のベルが鳴る」だ。「ありがとう」と言って、カメラの向こうにいるリスナーに向けて何度も何度も手を振ったり、背中合わせになって歌ったり。思い返してみても夢のような時間だった。
終演後には、ツリーやオーナメントが賑やかに飾られたクリスマス仕様の楽屋で、白いファーのついた赤いマントをまとってサンタコスをした2人が、和やかにアフタートーク。マントを翻して高まるまふまふ。薄い反応で動じないそらる。そこには、相方愛がちゃんとあったりもして。ここまでの歩みを振り返って貴重なエピソードも明かしてくれた2人に、感謝しかない。
悲しいことや辛いことも多かった僕たちだけれど、これからはそんな“雨”の後の世界を歩いて行こう。After the Rain結成時にそう決めた2人。これまでも、これからも。雨が降るたびに地固まり、彼らは灰色の世界に希望をもたらしていく。

文=杉江優花 撮影=小松 陽祐[ODD JOB]、堀 卓朗[ELENORE]

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