『花より男子』タイ版『F4 Thailand
』をピックアップ、メインキャストの
1年を振り返るーー『レオレオ、タイ
タメ』Vo.7

タイのエンタメ=タイタメを紹介する連載企画『レオレオ、タイタメ』、略して『レオタイ』。今回は、放送開始を待ちに待った『花より男子』タイ版『F4 Thailand/BOYS OVER FLOWERS』特集をお届け。昨年9月に突如、『F4 Thailand』のティザー映像が公開され、同時にドラマの製作と、タイドラマブームの火付け役『2gether』主演のブライト・ワチラウィットとウィン・メータウィンらメインキャスト5名が発表。すでに『花より男子』は台湾や韓国などでも実写化されており、アジアの国や地域のファンを中心に激震が走った。特にブライトは漫画の道明寺がそのまま三次元に飛び出てきたようなビジュアル。とっても「สุดหล่อ(スット ロー、超ハンサム)」だったので筆者はいてもたってもいられず、発表直後にファン仲間たちと長電話をしたくらいにこの発表は嬉しいものだった。そこで2021年最後の『レオタイ』では、12月18日(土)から放送がスタートしたアジアが注目する話題作『F4 Thailand』と、そのメインキャストの活動から日本における今年1年のタイタメを振り返っていく。後半には冬にピッタリなタイスキ鍋の美味しいお店も紹介するので、グルメ好きも必見。
『F4 Thailand/BOYS OVER FLOWERS』最初のティザー映像
●ついに『花より男子』タイ版『F4 Thailand』が放送開始●
今年夏頃に放送が開始される予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で撮影が度々延期に。そしてようやくこの12月18日(土)から放送開始を迎えた、『花より男子』(原作:神尾葉子)のタイ版『F4 Thailand/BOYS OVER FLOWERS』。上で記載したようにブライトとウィン、そしてドラマデビューを果たすトゥ・トンタワンとデュー・ジラワット、ナニ・ヒランクリットらが出演している。
『F4 Thailand/BOYS OVER FLOWERS』 (c)神尾葉子/集英社 (c)GMMTV
『花より男子』の物語は主人公の牧野つくしが、学校の中で誰も逆らうことができなかったF4からのイジメに立ち向かうところから始まる。タイトルにも入っている「F4」というのは名門学校を牛耳っている道明寺司と花沢類、西門総二郎、美作あきらの「花の4人組(Flower four)」を指す。タイ版ではブライトがターム(道明寺司)、トゥがゴーヤー(牧野つくし)に扮する。またレン(花沢類)はデュー、ガウィン(西門総二郎)はウィン、M.J.(美作あきら)はナニが演じる。
『F4 Thailand/BOYS OVER FLOWERS』 (c)神尾葉子/集英社 (c)GMMTV
F4メンバーのオーディション条件は「身長180cm以上」であること。この狭き門を突破し、見事今作でデビューを果たしたM.J.役のナニは180cm、そしてF4の中で最も高身長のレン役のデューは190cmで、165cmのトゥと並ぶとまるで二次元かのような身長差。タイでも人気である台湾版の影響も大いにあるのだろうが、ビジュアル面からも原作への敬意を感じる。
また、個人的にもタイドラマのなかで三本指に入るほどお気に入りの学園ミステリー『The Gifted』を手掛けた、オー・パッターが監督を務める。緻密な表現に定評があり、発表時から「オー監督なら作品としっかり向き合ってくれるだろう」という安心感と期待が寄せられていた。
『F4 Thailand/BOYS OVER FLOWERS』 (c)神尾葉子/集英社 (c)GMMTV
タイの新作ドラマの場合、放送日から数週間後であったり、英語字幕で先行配信された後に日本語字幕で配信されたりと本放送から少しブランクが発生するが、今回はリアルタイムでかつ日本語字幕付きで、視聴することができる。今か今かと配信開始されるまでリロードし続けながら待機していたのは、筆者だけではないはず。そして1時間以上あるのにも関わらず、あっという間に終わってしまったので、すぐに2巡目に入るほど見入っていた。映画のような映像と、原作に忠実なストーリー、それぞれの国や地域でリメイクされていたドラマを彷彿とさせるようなシーンが散りばめられていて、どんどん引き込まれていく。それだけでなく、タイドラマの特徴のひとつであるYouTubeっぽい効果音が使われていたり、時代の変化に合わせて暴力だけでなくSNSも活用したイジメ方にアレンジされていたりと、まさに現代版『花より男子』だ。
『F4 Thailand/BOYS OVER FLOWERS』 (c)神尾葉子/集英社 (c)GMMTV
それぞれのキャラクターも俳優にピッタリで、特にひどいイジメを受けながらも立ち向かっていく、ゴーヤーの強さを見ているとトゥ以外にこの役をこなせるのはいるのだろうか……と思うほど。何度かイジメられて心が折れているのに、その瞬間に気持ちを立て直していく表情の変化はとても滑らかだった。そしてレン役のデューも初々しさを残しながら、発する言葉やちょっとした目線などから思慮深さが垣間見えていて、今後の演技も楽しみだ。ナニ演じるM.J.はまだそれほど登場シーンが多くなかったが、どのシーンでも冷静かつ常識人でいて、どこかミステリアスな雰囲気を常に醸し出していた。撮影中にずっとウィンにいたずらされて笑わされたという話を聞いていたこともあり、ナニの陽気さとM.J.のクールな雰囲気がかけ離れているあまり、本当に本作が俳優デビューとは信じられないほどの演技力を見せつけていた。
『F4 Thailand/BOYS OVER FLOWERS』 (c)神尾葉子/集英社 (c)GMMTV
いたずらを仕掛けていたウィンは、先にデビューしていたと言ってもまだ本作が2作目。それでも、もう『2gether』の頃のような新人っぽさは一切なく、演じていたタインの要素も全く感じない完全なる「F4」のガウィンだった。それはターム役のブライトにも言えること。『2gether』で印象深いシーン同様に振り返ったり仰け反ったり、笑いながら顔を近づけたりしていたのだが、それらの仕草からして全然違うため、是非見比べてみて欲しい。
『F4 Thailand/BOYS OVER FLOWERS』 (c)神尾葉子/集英社 (c)GMMTV
『F4 Thailand』はまだまだ放送は始まったばかりだが、メインキャストの次回作もすでに発表されている。ブライトとウィンはアンティークショップで繰り広げられる短編集『GOOD OLD DAYS』、ゴーヤー役のトゥは家族を殺した犯人を探る『10years ticket』に出演。またブライトは三角関係を描く『Astrophile』、ウィンは幼馴染の年上女性とのラブコメディ『DEVIL SISTER』、ナニとデューはミステリー要素の強い特殊な学校の物語『HOME SCHOOL』での主演が決まった。ミステリーやダークファンタジー好きには、特に『10years ticket』や『HOME SCHOOL』は見逃せない作品となりそうだ。
●タイドラマ激動の4月、大使館発イベントや地上波進出でファン急増●
そもそもなぜタイドラマがブームとしてやってきているのか。それは連載第1回目でもたっぷり紹介したように、2020年3月に『2gether』をはじめとしたボーイズラブドラマが紹介されたツイートがバズったところから始まる。そこから1年を過ぎた4月、タイドラマの日本での展開がぐっと広がりをみせ始めた。『F4 Thailand』のキャストの活動を通して今年のタイタメを振り返ってみる。
『2gether』
まずは4月3日(土)、4日(日)に東京タイ王国大使館にて行われた『タイドラマフェスティバル in Japan』。タイの文化に触れられるタイフェスティバルと、俳優によるファンミーティングが融合したイベントで、タイの3大芸能事務所兼テレビ局であるCH3、NADAO Bangkok、GMMTVの俳優陣が出演。このうちGMMTVの代表としてブライトとウィンが生配信で登場した。それまで日本語で同時通訳されたイベントを観たことがなかったので、猛烈に感動したことを今でも鮮明に思い出す。
『タイドラマフェスティバル in Japan』アーカイブ映像
『タイドラマフェス』の熱が冷める間もなく、4月16日(金)からは東京・六本木けやき坂ミュージアムにて、『GMMTV EXHIBITION in JAPAN』が開催された。同展示会はGMMTVの代表的なドラマ4作品で使用した衣装や小道具などを展示するもので、世界に先駆けて日本で初開催された。東京だけでなく仙台、名古屋、大阪、博多の4都市を巡回し、11月21日(日)に東京・渋谷での会期終了まで半年以上に渡って開催された大規模な企画展だ。
The Shipper』(サムネイル下段、左から二人目がファースト)
さらに大阪では4月20日(火)から全国よりいち早く、テレビ大阪にて『2gether』の地上波放送が始まった。朝の韓国ドラマ枠で放送され、新しいファンを一気に獲得。これを皮切りに、『2gether』の地上波ローカル放送や、BS朝日での『Love Beyond Frontier』『Who Are You』の放送など、家庭で手軽に視聴できる環境が整えられつつあり、「たまたま流れてきた」から観てハマったという人が続出している。ちなみに現在はBS11にて全国区で『2gether』が、テレビ大阪ではGMMTVによる男女入れ替わり系ラブコメディ『The Shipper』も放送中。『The Shipper』主演のファースト・カナパンは、ブライトとMCとして旅行ドキュメンタリー『Toelaew』に参加しており、『F4 Thailand』ではF4から一番最初に赤札を貼られイジメの対象とする宣告を受けた、プーパー役で出演している売れっ子俳優だ。『The Shipper』の内容はさることながら、ファースト演じるキムの魂がキム自身なのか、女の子のパンと入れ替わっているのか、一つ一つの仕草や表情から感じ取れ演技も素晴らしいので、チェックしてほしい。
●劇場版の世界最速放映や関連CD発売など、日本独自コンテンツも●
『2gether THE MOVIE』予告編
4月は本来であれば、もう一つ大きな話題があるはずだった。タイでは4月22日(木)に『2gether』とスペシャルエピソードの『Still 2gether』の総集編、さらにその先を描いた映画『2gether THE MOVIE』の公開が予定されていた。しかし、新型コロナウイルス感染拡大に伴い延期。以降感染状況が落ち着かず、タイでは半年後の11月11日(木)にようやく公開されることとなった。
日本はというと、なんとタイより半年も早い6月4日(金)から、世界最速で全国の劇場にて放映が開始された。なので、上映前にはタイで公開されるまで「SNSでのネタバレは厳禁」とのアナウンスがされていたほど。また、前売り券や入場券にバラエティ豊かな特典が用意され、内容も魅力的だったことからファンの中には100回以上観たという人も。公開から半年経った今でも、上映している劇場があるほどで人気は衰えていない。
Scrubb - Thuk Yang (Everything)
さらに日本で『2gether』のストーリーに強く影響を与えたバンド・Scrubbのドラマ挿入歌集『Songs In 2gether』と、ドラマシリーズのオープニングテーマや二人が歌うテーマ曲を全曲収録した『2gether スペシャル・アルバム』の2枚のCDが発売された。そのアルバム収録曲は10月9日(土)に開催された、日本向けオンラインファンミーティング『BRIGHT WIN 1st FAN MEETING IN JAPAN』でも披露。1.2万人のファンが参加した同ファンミのレポートの詳細と、FM802DJの土井コマキによる音楽面での感想については、前回の『レオレオ、タイタメ』Vol.6を読んでいただきたい。
「คั่นกู」
極め付けは、10月27日(水)に授賞式が行われた『東京ドラマアウォード2021』。海外特別賞で韓国の『ヴィンチェンツォ』、台湾の『俗女養成記2』と並んで、『2gether』が受賞した。同アワードは日本人として「海外に観せたい」と思う日本のドラマ作品と世界の優秀なドラマ作品を表彰するもので、主催の国際ドラマフェスティバル in TOKYO実行委員会を構成する民間放送連盟、NHK、映画やドラマの制作者、実演家団体などからも認知されたということになる。この勢いでいけば、来年には『F4 Thailand』で各アワードの海外賞を総なめも夢ではないので楽しみで仕方がない。
◇寒い冬にぴったりな全身温まるタイ風ちゃんこ鍋、タイスキ◇
今回は、ゴーヤーもきっと日常的に食べているだろう、冬にピッタリの庶民的な料理「タイスキ鍋」を紹介。タイスキは中国の火鍋と日本のすき焼きがアレンジされたものと言われており、イメージとしてはタレに付けるちゃんこ鍋に近い。鍋は冬の食べものとして浸透している日本とは異なり、常夏のタイでは一年中食べられているのだそう。
クンテープ道頓堀本店
タイ料理とタイスキの店
大阪府大阪市中央区道頓堀1-6-14 平松扇屋ビル B1F
050-5868-2906
営業時間:11時30分~22時(ラストオーダー21時)
HP:http://www.krungtep.co.jp/

グリコの看板で有名な道頓堀の川沿いに店を構えるクンテープでは、タイと同じように一年中タイスキを楽しむことができる。注文してからまずコンロと一緒に配膳されたのは、創業から29年間変わらないタレ。唐辛子をふんだんに使用し、ナッツなどさまざまな材料を混ぜて作られており、スープで薄めても汗が噴き出るほどの辛さで、その中にコクを感じる味わい。具材にはにんじんや白菜、牛肉などに加えて6種類の特製の練り物が用意されていた。練り物はどれも、お湯で炊いていくと倍以上に膨らみプリプリしていておかわりしたい程おいしい。
ある程度食べ終わったら卵でとじる。その前に、お店の人がタイでは一般的だと勧めてくれたので、牛肉やマロニーなど具材を卵に潜らせてからしゃぶしゃぶしてみる。タレが辛いからこそ、卵のコーティングが絶妙なバランスでまろやかにしてくれるので、一度試してほしい。食後のデザートには、ココナッツミルクにフルーツやタピオカなどが入ったタイ式フルーツポンチと、ドーナツのような衣がサクサクして軽い食感の揚げバナナがオススメ。同店舗の他に、ルクア大阪店と虎ノ門ヒルズ店では12月から2月までの3ヶ月限定でタイスキが提供されるとのこと。全身から汗が止まらないほど体が温まるので足を運んでみてはいかがだろうか。
もう2022年もすぐそこまで迫ってきている。現在放送中の『F4 Thailand』を楽しみつつ、『F4』を皮切りに来年どのようにタイドラマが日本で花開くのか、そしてブライトとウィンのほか出演者たちそれぞれの次回作にも期待がふくらむばかり。間違いなく、さらにタイタメが盛り上がる1年になるはずなので、この連載でもしっかりと追いかけたい。来年はどんな新しいタイタメに出会えるのだろうか、今から楽しみでならない。
◇ひとことタイ語講座◇
อคิราห์(アキラ、akiraa)=美しい日光、占星術などで使われることが多い
※タームの本名
文=川井美波

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