asmi×坂口有望が初の2マン『me thr
ee!!』、地元・大阪で観客と作り上げ
た幸福な三角関係

『me three!!』 2021.12.12(SUN)ROCKTOWN
12月12日(日)、asmi坂口有望の2マンライブイベント『me three!!』が大阪・ROCKTOWNにて開催された。両者とも二十歳、大阪出身のシンガーソングライターと共通項は多いが、初の組み合わせとなる。それぞれの魅力をシンプルに体感できるギター弾き語りで、もともと音楽性に共鳴し合っていたという2人の確かな信頼を感じさせるとっておきのライブ模様をレポートしよう。
asmi
asmi
まずは、スウェットにゆるっとしたパンツを合わせた、ボーイッシュなスタイルのasmiが一番手に登場。切ない心情を写し取った「Lemon tea」から始まり、第一声からオーディエンスの心をさらっと奪い去るコケティッシュな歌声にほれぼれ。「Mon Star」でも暖色系のライティングがリラクシンな音世界へ没入させ、ユニークな詞世界の一つ一つをかみ締めるように耳へ留めておきたくなる。歌い終わるや「……っしゃー!」と気合を入れ直す彼女に、会場からは思わず笑みがこぼれる。
asmi
「実は初めての2マンなんです。しかも私、有望ちゃんが大好きで! 学生の頃からカラオケで歌ってたり、この間終わった初めてのツアーに向けて作った(気持ちを上げるための)プレイリストに「お別れをする時は」を入れているくらい大好きです。この機会を作ってくれたイベンターの奏-KANADE-さん、来てくれた皆さん、本当にありがとうございます!」
一見するとクールな面持ちの彼女がくるくると表情を変えてトークする様子からも、改めてこの日への思いを感じさせてくれる。
asmi
「2マンなので、「asmiの時間、長!」と思う方もいると思います。眠たかったら寝てもらっていいし、聴きたいと思ってくれたら頑張って耳を澄ませて聴いてもらえれば……一生懸命歌います!」
そんな決意表明にも似たマシンガントークから、続くはRin音のフィーチャリングで彼女の名を一気に押し上げた「earth meal」へ。関西弁を異国の言葉に空耳してしまうようなスイートなボーカルに、じっと聴き入る客席。かと思えば、ヒリヒリしたワードが並ぶ「last」では、声の説得力で曲の世界観を深めていく。
asmi
「有望ちゃんは、私が高校生の頃から歌っているくらい大先輩なんですよね。でも、直接会うのは今日で2回目なのに、「何回も会ってるんちゃうか!?」と思うくらいマブダチやなと言い合ってて。有望ちゃんがめちゃくちゃ人懐こい性格でかわいい人やから。そんな有望ちゃんとのライブなので、この曲をやりたいと思います」と吸引力あるイントロを奏でるや、坂口有望の「好-じょし-」を歌い始める。ギターの柔らかな調べが心地よく、asmiならではの好カバーだ。
「有望ちゃんの歌は全部めっちゃ好きやし、中でも「お別れをする時は」は私を支えてくれる歌やなと思うんやけど、この間遊びに行った有望ちゃんのワンマンライブで聴いた「WALK」も、わー! 素敵!! と思って。今日のカバーはその曲にしようかと思ったんやけど、「好-じょし-」にしました。他には「おはなし」も好きやし……(ハッとしたように)自分の曲をやります!」
asmi
まるでasmiととりとめもないおしゃべりをしているようなMCにほっこりしながら、「Call me」では一転してどうしようもない愛憎をブルージーに紡ぐ彼女。まるで往年の浪速の名曲のような趣の楽曲に、asmiの底知れぬ表現力を感じるひとときに。かと思えば、「次はアレやります……えっとねアレ、アレ!」なんて曲名を思い出せない一幕もご愛嬌な、「破滅前夜のこと」へ。前述した初の全国ツアーなどで訪れた東京の街を描いた同曲で、美しくも寂しい首都の景色を浮かび上がらせる。「ヨワネハキ」ではタフな歌唱を披露するも、「有望ちゃん楽しみやなー、私も楽しみ」なんて、観客目線をのぞかせつついよいよエンディングへ。ささやくような「memory」、そして素直な恋模様を乗せたフレーズが胸を打つ「例えば」と、最後までROCKTOWN全体をasmi色に染め上げ、しっとりした余韻を残していった。
坂口有望
坂口有望
すっかり温まった会場へ、軽く手を挙げスタートの合図を送る坂口有望がオンステージ。いきなりの新曲「歌を歌わなければ」では、ソリッドな言葉で彼女のピュアネスな感受性を浮き彫りにさせていく。アコギの音色も強靭で、メロディ一つ一つから彼女の怒り、悲しみ……そして希望の色が見て取れ、冒頭から容赦なく鮮やかな存在感を見せつけていく。小柄な彼女はその印象を華麗に覆し、ステージに立つや何と大きなメッセージを放つのだろう。万雷の拍手を浴び、続いての「おはなし」でもロングトーンで魅せ、より客席のエモーションを高めていく。
坂口有望
「改めまして、『me three!!』へようこそ。先程の「おはなし」という曲は、中3のときに初めて書いた曲なんです。ココ、ROCKTOWNで『十代白書』という音楽のコンテストがあって、その時もこの曲を歌ったなと。今のようにコロナなんかも存在しなかった当時の景色が浮かんできて……。しかも自分にとって今日は年内ラストライブ、さらに言うと大好きなasmiちゃんとのステージやし、すごく思い入れのあるライブになるんやろうな、いや、もうなってるなと思いながら歌ってます」
そう、大きな瞳を輝かせて語る彼女の、過去と現在が交差する瞬間に立ち会えていると思うと、何ともグッとくるものがある。asmiが披露したカバーについては、「好-じょし-」、めっちゃ良かったよね。あれはもうasmiちゃんの曲! 私も楽屋で聴いてて「本家を超えたー!」と思ってました。同い年で同じ大阪出身。しかも私以上に大阪弁が強い人はなかなかいません(笑)」と述べ、asmi同様に互いを語らせればハイテンションになっていくさまが、何ともほほ笑ましい。
坂口有望
そしてブルーの照明を背負いながら「紺色の主張」へ。青春時代のもがきをグルーヴィーに歌い上げ、「散々な恋愛も歌にしていきたいと思います」と表現者として頼もしい姿勢を示した「XL」を経て、asmiの「Call me」をカバー。「(歌詞を)間違えちゃった、ごめんっ!」と茶目っ気も交えての坂口らしいポップネスを散りばめたアレンジで、楽曲の新たな表情を引き出していく。
坂口有望
さらに、切々と絶唱した「綿毛」では、シンガーとしての絶対的なきらめきと、繊細な感情の機微をすくい上げるソングライターとしての才能を実感。2021年、東日本大震災から10年が過ぎたことをきっかけに生まれた同曲からは、「私なんかが頑張ってるなんて言えないと思いがちやけど、そんなことないんだよという思いで作りました」と、彼女の温かな心情がそこかしこに感じられる。
その厳かな空気を瞬時に塗り替えるように、イントロを奏でるだけで会場の温度を上げた「好-じょし-」へ。アコースティックでも曲の持つカラフルさは増すばかりで、この最上にポップな失恋ソングは同時に最上の応援歌でもあると気付かせてくれる。ジャンプし大きくギターをかき鳴らすキュートな姿でクラップを自然発生させつつ、「musician」でも勢いは止まらない! 「ライブが大好きで、ライブが一番自分の息がしやすい場所です。……(照れて)あー! 歌います!」と、まさに詞のとおり彼女の音楽がまぶしいほどオーディエンスを照らす。
坂口有望
「私、実家がこの近所なんです。ROCKTOWNがある、あべのキューズモールも「キューモ」と呼んでてね。放課後に「キューモ」で遊んだりいろんな思い出があって、私の18年間はこの阿倍野にあります。その場所へ歌うために帰ってこられて本当にうれしい。最後にやるのは阿倍野の曲です。例えば大きいお仕事が決まったときは、(実家に)メールやLINEじゃなくきちんと家の電話にかけたいなと決めています。今年はもう終わっちゃうけど、来年再来年、うれしい報告ができるよう頑張っていきます」
地元愛をたっぷり言葉にし、大阪の市外局番を冠したハートウォーミングなバラード「06」でラストを飾る。緩急に富む濃厚なセットリストで綴った坂口有望のステージのあとは、これまたハッピーなアンコールへと突入していく。
asmi
たくさんの拍手に呼び戻された坂口が「マブダチを紹介します!」とasmiをステージへといざなう。2人ともクリスマスらしいカチューシャを付け、「ちょっと待って、うちらパーティーピーポーみたいな感じやん(笑)」(asmi)と笑い合い、坂口がこの2マンライブに掲げられたタイトルについて口にした。
「今回の2マンは、私がasmiちゃんの曲をカバーしている動画がきっかけで実現しました。タイトルの『me three!!』は、英語の口語の一種で「私も!」の意味なんです」(坂口)
英語で同意する際は「me too」という言葉が一般的だが、3人以上いるシーンでは「me too!」「me three!」なんて続いていくフレーズもあるんだそう。「me too」を「me two」に変換したことで生まれたユーモアの一つだという。
「「me too」=私も! というだけじゃなく、お客さんとasmiちゃんと私、この三者で良い日にしようという意味がこもっています。素晴らしいタイトルに拍手をお願いできますか?」(坂口)
この場にいる全員が拍手せずにはいられない、何と幸福な三角関係だろう。
坂口有望×asmi
「私は初めての2マンライブが、有望ちゃんとで本当にうれしかった。大先輩やしめちゃくちゃ勉強になったな。またやりたい!」(asmi)
「本当にうれしい! 全国回りたいね。私こそ、同い年でこれだけ刺激をもらえるasmiちゃんとイベントができて幸せになれる日でした」(坂口)
再会を約束し、山下達郎の「クリスマス・イブ」を清廉なハーモニーでカバーし合う2人。加えて最後は、asmiにとって「私を支えてくれる歌」である、坂口の「お別れをする時は」でコラボし大団円へ! 惜しみなくリスペクトを贈り合う光景は何ともまぶしく、これからも高め合っていくだろう未来が想像できる、2人にとって始まりの一日となった。
坂口有望×asmi
取材・文=後藤愛 撮影=ハヤシマコ

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