【Atomic Skipper インタビュー】
出し惜しみをしないことが
大前提にある
“耳打ちで教えてよ”と書いた歌詞が
大きな影響力を持つようになった
「INORI」のAメロには《波長を合わせて/言葉では遅すぎるから/感覚を研ぎ澄まして/感性を解き放って》という歌詞があり、ライヴでのお客さんとのコミュニケーションを歌っているようにも感じましたが、この曲はどんな想いで作ったのですか?
『人間讃歌』のツアー中に、自分が思ったことの殴り書きみたいなものをInstagramやブログに投稿していたんですけど、そこで無意識に“祈り”という言葉を多く使っていたんですよ。最近は考えるというより、祈りたくなることが増えたんですよね。ツアーで旅に出るたびにいろいろなものを犠牲にして、お世話になっている磐田FMSTAGEに帰ってきてワンマンをやった時に、“あぁ、俺の祈りは風のように全国を巡り巡って、いろんな人を巻き込んでここに帰ってきたんだな”と思ったのがこの曲が生まれたきっかけです。
また、「INORI」には《限りある正解の範囲内で/新しいを貪る/まるで/怪獣になったみたいだ》の部分に、EPのタイトルにもつながりそうな“怪獣”と入っていますが。
タイトルの“KAIJÛ”には怪獣だけでなく、改重、懐柔の3つの意味を込めています。曲を作っている時に“あぁ、これは既出だ”とか“これはどこかで聴いたことのあるような…”みたいな理由で書けなくなることが増えて、しかも音楽を学んだり深掘りすればするほどそうなっていってしまうんですよ。そのたびに“天変地異が起きて、全部ぶち壊してしまえたらいいのに”と思ってしまう自分が嫌で仕方なくて。そんな背景があるので、《限りある正解の範囲内で~》の部分は本当にこだわりました。音楽の話に限らず、自分たちが生きている世界には、何事にもなんとなく定義された正解のかたちがあると思うんですよ。その“かたち”の美しさと自分のオリジナリティーが交差してできた曲は、“自分が持ち合わせていた初期衝動がさらに力強くなって還ってきたもの”なのだと気がついた時、このアルバムの全てのピースがつながりました。
「幻になって」には《運命から抗わないように》というフレーズがあって、“自分の感情や、身に起こることを受け入れる”というのがひとつの軸になっているような気もしました。
ここに関しては受け入れるというよりも、さっき言った3つの意味の“懐柔”にあたります。自分の中の狂気をしっかりと理解して手懐ければ、大きな渦みたいなものに流されずにすむと思うんです。俺たちはみんな、うまく生きていける…それを聴いてくれる人の心にも留めて置いてほしいというか。俺から見えるみんなは幻のように美しくて儚くて、逞しいんです。
「優しい世界」の《君にだけそっと伝えるはずだった/秘密はスピーカーの音になった》という部分には、7年以上活動してきたAtomic Skipperを表す言葉のひとつに思えました。
前よりも歌いたいことが増えたし、前は“耳打ちで教えてよ”と書いていた歌詞も、お客さんとの時間を重ねてより大きな影響力を持つようになったので、そこから《秘密はスピーカーの音になった》という歌詞ができました。でも、「優しい世界」のテーマの根っこはもっと深くて、納得がいかないまま、なあなあで返事をした出来事や、飲み込んだ過去を昇華したい自分の気持ちが表れています。“それでいい、そのままで大丈夫”と自分に言い聞かせるような曲です。
今作のテーマにもなっているAtomic Skipperにとっての“攻め”とは、改めて何だと思いますか?
冒頭で言った“出し惜しみはなし”、これに限ると思います。だからこそ、ライヴに向けて作る歌は常に鮮度を保ち、いつ聴いてもイメージが更新されるように作っているので、現実的な感情や問いかけが多いのだと思います。
『KAIJÛ』はどんな作品になったと思いますか?
まるで短編小説のように、それぞれの楽曲が違う色を持っていても、どこか同じ方向を向いているような、説得力と没入感のある作品になったと思います。
Atomic Skipperは2022年で結成8周年を迎えますね。
結成から8年近く経って、メンバーも含めてよりバンドにのめり込むようになりましたが、みんなが友達であることは今も変わっていないです。また、新しいAtomic Skipperを見せられるように、『KAIJÛ』の曲を携えていいライヴをしていきます!
取材:千々和香苗
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EP『KAIJÛ』2022年1月12日発売
BUNS RECORDS
アトミックスキッパー:インディーズシーンで猛威を振るう、話題の本格派ロックバンド。2014年4月に結成し、地元・静岡を中心にライヴ活動を展開。20年1月にリリースした初の全国流通盤である1stミニアルバム『思春を越えて』はオリコンインディーズ週間ランキングにて12位を記録。21年4月発売の2ndミニアルバム『人間讃歌』も、大手CDショップでネクストブレイクに取り上げられるなど、注目を浴びている。22年1月には絶好調の勢いを持って1st EP『KAIJÛ』をリリース。Atomic Skipper オフィシャルHP
「メイビー」MV