Uniolla バンドの素晴らしさを味わ
った、“大人のガレージバンド”の初
ライブをレポート

Uniolla 1st Tour 2021

2021.12.7 LIQUIDROOM
LOVE PSYCHEDELICOのKUMI(Vo, Gt, Key)、自身のバンド、PLAGUESやソロプロジェクト、Mellowheadに加え、LOVE PSYCHEDELICOのサポート、佐野元春&ザ・コヨーテバンドのメンバーとしても活躍している深沼元昭(Gt)。その深沼と多くの活動を共にしているTRICERATOPSの林幸治(Ba)。深沼がプロデュースしたバンド、Jake stone garage(活動休止中)の岩中英明(Dr)。この4人が新たに結成したバンド、Uniollaが12月7日、恵比寿のLIQUIDROOMで初のライブを行った。11月24日にリリースしたセルフタイトルの1stアルバム『Uniolla』のリリースツアーの初日でもあった同ライブの模様をレポートする。
深沼元昭(Gt)
バンド自ら掲げている“大人のガレージバンド”という言葉から、もしかしたらちょっとした、でも、決して嫌味じゃない気取りや洒落っ気を感じ取るリスナーもいるかもしれない。しかし、Uniollaのメンバー全員が顔を揃えたインタビューを読んでいただければ、決して気取りや洒落っ気などではなく、いい年をした大人たちがガレージに集まってワイワイとやっている、というニュアンスで、その言葉を使っていることがわかっていただけると思う。
その意味では、インタビューの中で林が言っているように「部室にいるみたいな感じ」という言葉のほうが、Uniollaというバンドの性格を本質的に言い表していると思う。だが、部室や部活じゃキャッチフレーズとしてパッとしない上に、Uniollaの魅力を音楽的に語るとしたらちょっと違うだろう。ということで、やはり“大人のガレージバンド”がベターなのかなと思いつつ、そのUniollaの1stライブは、音楽的な魅力をちゃんと印象づけつつ、セルフタイトルのアルバムのレコーディング中にメンバーたちが味わった“部室の延長”を思わせる楽しいものになったのだった。きっとこの日、会場に足を運んだ誰もがその部室でメンバーたちと一緒に過ごしているような楽しさを味わったことだろう。
そんな部質感を醸し出していたのが曲間のMCだった。
「Uniollaの1stツアー、1stライブに来てくれてありがとう。ドキドキしてる。Uniollaと一緒に素敵な時間を過ごせたらいいな!」
KUMIの挨拶を挟んで、1曲目にUniolla流のカントリーソング「A perfect day」、2曲目にUniolla流のロックンロール「手探り」を立て続けに演奏。その直後から、頭の回転がすこぶる速いのだと思うが、思い浮かんだことを次々に口にする深沼に対して、林が話を膨らませたり、話題を変えたりしながら、KUMIや岩中を巻き込み、曲間のMCが予定より長くなっていく様は、まさに軽音部の部室か、いい年をした大人が楽器片手に集まった休日の誰かの家のガレージを思わせるものだった。
林幸治(Ba)
Uniollaの結成の経緯を振り返った林は「(結成のきっかけになった)深沼さんとKUMIちゃんの情熱が熱を帯びていって、その熱が僕らやスタッフに広がっていった。すごいと思います」と語ったが、音だけ聴いたらクールに思えるUniollaの楽曲が、どんなところから生まれてきたのか、メンバーたちが嬉々として言葉を交わすMCの向こうに見えるようなところも、ライブの見どころだったと思う。
岩中英明(Dr)
もちろん、LOVE PSYCHEDELICOとは違うKUMIのボーカルの魅力を引き出した楽曲の魅力や、その楽曲を再現する、それぞれにキャリアを持つ4人(+サポートキーボーディスト)の演奏も見どころだったことは、改めて言うまでもないだろう。
迸る感情を掻き鳴らすフレーズに宿らせながらギターソロを弾きたおす深沼、演奏のグルーヴを担う林、しなやかなプレイで演奏を支える岩中に加え、単音のリフやキース・リチャーズばりに白玉のコードストロークを鳴らすプレイに改めてKUMIのギタリストとしてのかっこよさを感じられたのは、ちょっとした発見だった(KUMIのギターがフェンダー・ジャガーというところにもUniollaが目指すサウンドの方向性が窺えるような気も!)
「ほんとに最初のライブ。(これだけ活動歴があるにもかかわらず)緊張しつつ、ワクワクできる夜を迎えられるなんて、音楽をやっていてよかった。来てよかったと思ってもらえるライブをやりたい」(深沼)
バンドは中盤、アルバムの完成後に深沼が作った全17曲から厳選した新曲を4曲、披露。
パワーポップの「Leap」は、エフェクトを薄く掛けた林のベースの音色とベースソロがニューウェーブなんて言葉も連想させた。KUMIがアコースティックギターを弾いた「It's just the time」はビートロック風のバンドサウンドとカントリーっぽいメロディの組み合わせが、なるほど!と思わせた。3連のリズムがライブの流れに変化をつけたトラッド風のバラード「容赦なく美しい朝」はタイトルも含め、プログレ/サイケの匂いがほんのりと漂っていた。そして、「嘘はないはず」はモータウンビートを使ったネアオコ風のポップナンバー――と、それぞれに魅力的な4曲が物語っていたのは、Uniollaのサウンドのさらなる広がりだ。
深沼元昭(Gt)
「仲間とスタッフが集まって、こうやってみんなが(ライブに)来てくれて、なんて幸せなんだろうと思います。Uniolla、ずっと続けたいから、また会いに来てくれる?」(KUMI)
誰もがUniollaのさらなる活動に大きな期待を抱いたに違いない。
アンコールの1曲目は、アルバム中唯一のバラード「果てには」。インタビューした際、「演奏は地味だけど、一番すごい」と深沼が言っていた曲だ。キーボードを弾きながら歌うKUMIに寄り添うように音をぴたっと重ねる3人の演奏が、ダメ押しで4人のグルーヴを印象づける。「お互いに呼吸だけで音を合わせている」と深沼は言っていたが、それぞれのスキルもさることながら、この日のMCを見ていると、普段、言葉を交わしながらお互いのリズムを掴んでいるんじゃないかと思ったりも。
アルバムを聴いた時もバンドならではの楽しさを感じて、大いに感動させられたが、ライブでもまた、Uniollaはバンドの素晴らしさを味わわせてくれた。
「こんなに大勢の人が応援してくれて、ほんとにうれしい。“最初のライブを観た”と自慢できるようなバンドになれるように、今後もがんばっていきたい」
このバンドに感じている確かな手応えを、そう表現した深沼が「もう1曲も曲がありません。でも、アンコールって“もう1回やってくれ”ってことですよね?(笑)」と言ってから、バンドが最後に演奏したのは、この日、1曲目にやった「A perfect day」。そんなところもド新人バンドらしかったが、ここからまた始まることを印象づけた選曲は、なかなか気が利いていたと思う。
取材・文=山口智男 撮影=西槇太一

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