スーパースターになった
リオン・ラッセルが
自分のルーツへ大きく舵を切った
意欲作
『ハンク・ウィルソンズ・バック』
アメリカ音楽を俯瞰する感覚
リオンがあえてひとつのところにとどまらず、メインストリームから外れた音楽にさえ食指を伸ばしてみせたのも、それら全てがアメリカ音楽を構成していることをわかっていたからだろう。実は、驚くべきことに、レオンは『アメリカーナ』(’78)というアルバムを残している。今ではグラミー賞の一ジャンルにさえなっている「アメリカーナ」という定義を、こと音楽で示した最も早いアーティストかもしれない。ある意味、彼は30、40年ぶん時代を先んじていたのではないか。
レオンは2016年11月、彼が住まいを構え、本作のレコーディングが行われたテネシー州ナッシュヴィルのブラドリーズ・バーンにもほど近い、ジュリエットという町で74年の生涯を閉じている。そして今は故郷のオクラホマ州タルサの墓地で静かに眠っている。
TEXT:片山 明