神使轟く、激情の如く。 Lenny cod
e fiction、MAGIC OF LiFEを迎えた対
バンライブ『LEGIT Vol.13』レポート

LEGIT Vol.13

2021.11.19 下北沢シャングリラ
実久里ことの、生牡蠣いもこ、涙染あまね、三笠エヴァ、二日よいこ、TiNAの6MC によるメタルコアとラップを軸にした“プログレッシブミクスチャーメタルコア”サウンドで、2022年3月30日には初の日本武道館ワンマンライブ『神使轟く、激情の如く。日本武道館単独公演「宣戦布告」』を開催することが決定している神使轟く、激情の如く。(以下、神激)。2021年4月からは通常のライブと並行して、アイドルシーンからロックシーンへと戦いを挑むべく主催対バンイベント『LEGIT』を開催中の彼女たち。今回はそのなかから11月19日、東京・下北沢シャングリラにLenny code fictionMAGIC OF LiFEという2組のギターロックバンドを招いて開催した『LEGIT Vol.13』のレポートをお届けする。

■Lenny code fiction
Lenny code fiction
この日のイベントは、Lenny code fictionのステージから開幕。場内が暗転すると、ノイズ混じりの映写機の音が流れ、そこに英語のセリフが重なる。映像は見えないけれど、いまにも古い白黒のシネマが始まりそう。ライブハウスに映画館的な雰囲気を醸し出す独特SEに続いて、KANDAI(Dr)がまずオンステージ。Kazu(Ba)とのコンビネーションでダンサブルなビートをグルーヴさせていく。そこにソラ(Gt)が加わるとビートはどんどん加速。オープニングのインストセッションで場内を温めたところに片桐航(Vo,Gt)が飛び出してきて“Lenny code fictionです。3マンライブ、かましていきます!”と冒頭から意気込んだところで、アニメ『炎炎ノ消防隊』のEDテーマを飾った人気曲「脳内」をのっけからぶちかましていく。痛快きわまりない幕開けだ。
片桐 航(Vo/Gt)
ソラ(Gt)
そこから片桐がギターを拡声器に持ち替え、カオティックな「ヴィランズ」とつないで、オープニングからライブ終盤のような攻め攻めのテンション感でLennyサウンドをぶちかましていく。“トップを任されたのでバチバチにアゲていきます”と片桐が言い、テンポよく次の曲「Make my story」へ。椅子から立ち上がってフロアを煽るKANDAI。Kazuが高速スラップを轟かせれば、ソラは片桐の前にあるお立ち台に飛び乗り、ギターを弾き倒す。それらのエネルギーをすべて受け、サビの《Make my story》で天を衝く伸びやかなメロディーを甘い歌声で一気に解き放っていく片桐。今年でデビュー5周年。いまはファッショナブルな衣装に身を包んでいるが、ここに至るまでには悔しさ、涙、たくさん味わってきた。それをサビで一気に吹き飛ばしていくアクトからは、信じて進めば道は開けるという、彼らが歩んできたバンドストーリーが伝わってきて、熱いものが心の中にこみ上げてきた。
kazu(Ba)
そこに、間髪入れずに「Enter the Void」を投入するとフロアはたちまちジャンプを繰り返し、熱気が巻き起こる。楽器隊3人はコーラスに全員参加。終盤は片桐のラップまで飛び出し、場内をさらに大きく揺らしたところで、パワーソング「Flower」でキラキラしたメロディー、サウンドとともに希望しかない未来を見せ、感動を呼び込む。そして最後は「Rebellious」でスリリングかつ猛烈なバンドアンサンブルをこれでもかと叩き込み、ライブはフィニッシュ。トップバッターらしく、最後までスピーディに駆け抜けるステージングでフロアをアゲていった。
KANDAI(Dr)

■MAGIC OF LiFE
MAGIC OF LiFE
その熱を引き継いで、オンステージしたのは高津戸信幸(Vo,Gt)、山下拓実(Gt)、渡辺雄司(Ba)、岡田翔太郎(Dr)によるMAGIC OF LiFE。対バン経験のある若手のLennyにとっても、さらには今回が初となる神激にとっても、ベテランクラスのロックバンド。
高津戸信幸(Vo,Gt)
ライブは「風花ノ雫」で勢いよくスタート。疾走感溢れるロックナンバーに、切れ味のいいドラミングで岡田が変則ビートをサラリと叩き込む技アリプレイが、ロックキッズをニヤリとさせる。近しい人にこそ素直に自分の気持ちを伝えてと歌う高津戸の声は、ハイトーンでエモーショナルに歌い上げても、強さのなかに繊細さを携えていく。その独特な響きで人々の心をとらえ、MAGIC OF LiFEの物語の世界へと引き込んだところで、落ち着いた曲調の「DOUBLE」へと展開。普通にクラップして楽しませながらも、じつはAメロ→サビ→Bメロ→サビという一筋縄ではいかない曲構成が、彼らの楽曲の緻密さやすごさを浮き彫りにしていく。だが、どんな楽曲でも高津戸の澄んだ声で歌えば、曲が爽やかに仕上がるから不思議だ。「栄光への一歩」ではその特徴がさらに発揮され、楽器隊のコーラスも相まって目の前に青空が広がるような、青春を感じさせる群像劇を描いてみせた。
山下拓実(Gt)
“お招き頂きありがとうございます。俺たちの音楽を通して、いま向き合ってる君だけの心を震わす歌を全力で届けます”と高津戸が挨拶したあと、曲は「Player」へ。美しいメロディーと色鮮やかなアンサンブルにのせ、《森羅万象を遊びつくしてやる》、《人類初となる私へと》など独特な言い回しで歌を紡いでいったあと、彼らのヒット曲「弱虫な炎」がはじまるとイントロから場内はヒートアップ。楽器隊はそれとシンクロするように体をブンブン揺らし、腕を高く突き上げるオーディエンスと一緒になってアグレッシブな盛り上がりを作っていった。
渡辺雄司(Ba)
このあと“怖い子たちだと思ってたから殴られたり蹴られたりするのかと思った”と、会う前の神激の印象を冗談混じりに話し、場内を和ませた高津戸。次の「箒星の余韻」では、そんな高津戸の歌始まりの美しく強い高音に、どこまでも心をもっていかれた。その歌声が放つ余韻がまだ場内に残るなか、演奏はラストソング「応援歌」へ。洗練されたサウンドアレンジにのせ《何回だってあと一歩だって もう一歩で何かが変わるって 踏み出したその一歩が 最大のエールだ》と一人ひとりの心にエールを残し、ライブを締めくくった彼ら。若手には出せない強さと美しさと、優しい意思が貫かれたアクトを存分に見せつけた。
岡田翔太朗(Dr)

■神使轟く、激情の如く。
神者(=神激のファンの呼称)が掲げるペンライトが放つカラフルな光に迎えられ、この日のトリをつとめる神激がいよいよ登場。まずは神激の特攻隊長、三笠が開口一番“すげーかっこよかったっすね”とLenny code fiction、MAGIC OF LiFEのライブを讃えたあと“ここから俺らなりのロックを届けたいんだけど。自分たち、主催なんすよ。全力で行くからフロアも俺らに負けんじゃねぇぞ!”と熱い言葉でまずは神者を挑発。“本気でぶつかりにきたんで。楽しんでいきましょう”というTiNAの煽りを合図に、この日は「神奏曲:テンペスト」で幕開け。場内に鳴り響く重低音にのせて、フロアはさっそくツーステップを踏む。神激お得意のテンポチェンジを挟んだら、三笠のシャウトに合わせて“ワンパンチ”、“昇竜拳”のフリをみんなで一斉に繰り出すと、たちまち場内には一体感が生まれる。ブレイクダウンでメンバーがV字フォーメーションを作るダンスの見せ場があったと思えば、次はあまねが渾身のシャウトを轟かせる。そうして《数ある選択肢の中で君が神激を選んで力をくれたから》と歌うと、ライトがフロアを照らし、ステージと神者が心身ともに共鳴していく“ストーリー”をこの1曲で描いてくアクトは、いまや百戦錬磨の貫禄。
実久里ことの

三笠エヴァ
生牡蠣いもこ
いもこの指示でタオルを手にして、次に歌い出したのは「夏声蝉時雨」。メンバーが回すタオルに合わせて、神者たちもタオルとペンライトを回す。この日はフロアを埋め尽くすほどの集客ではなかった。対バン相手がアイドルだろうがロックバンドだろうが、客席が満員だろうが少なかろうが、会場が豊洲PITだろうが小さなライブハウスだろうが、神激が繰り出すバトルモードのライブはいつ見ても本気、死ぬ気でステージに挑んでいる。それが、この圧倒的なライブアーティストとしての気迫、エモさを生み出していったのだ。

TiNA
涙染あまね
二日よいこ
見るたびにクオリティーをアップデートしていくあまねの強靭なグロウルと、よいこのテクニカルなラップのスリリングなバトル。そこからプログレッシブミクスチャーメタルコアの鉄板曲「合法トリップ:ボイルハザード」で、ひとまず前半をぶち上げていった彼女たち。TiNAがいつものように“初めて来た人は?”と新しい神者をチェックしたあと、三笠が2バンドのリハをフロアでノリノリで楽しんでいたことを暴露すると、そのお返しにとばかり三笠はTiNAとことのが衣装につけているマスコットが“Lennyさんから頂いた公式グッズ”であることを明かした。このあとメンバーに言われてマスコットにTiNAが名前をつけたものの、誰にもそれが響かなくて“いまのはなかったことに”という展開になったところで、次の曲へ。
始まったのは「生まれ変わっても自分になりたい」。フロントに6人が横一列に並んで《点と点つなぎ合わせ》てつらなり、各々視線をかわしながら腕を絡め、ひとつになっていくパフォーマンスは何度見ても胸熱。そこにいもこが“生まれ変わってもここに戻ってきてこの景色を作りたい”と叫ぶと場内のエモさが増幅。TiNAのソウルフルなフェイクで曲を締めくくったあとは、ことのが“こうしてライブに全力かけた時間が崩れそうになったとき、あなたを支えるあなたの財産になるように歌います”と、さらに熱い言葉を注ぎ込んで、新曲の高速ロックチューン「オキシバギー」へ。ピコリーモに思わせてからのまさかのパンキッシュな曲展開は抜群の破壊力。イレギュラーなまま王座を奪うと自らをけしかけ、次に様々な音楽要素を頭からラストまでミクスチャーしまくった「BAD CAKE」を投下すると、アイドルもロックも超えた誰にも真似できない圧倒的な神激の世界が立ち上がる。

実久里ことの
三笠エヴァ
TiNA
生牡蠣いもこ
だが、それでもいもこは言う。“私たちはアニメのヒーローじゃない。世界を救うヒーローでもない。でも、いま目の前にいるあなたの心だけは救いたい。心からそう思ってます。ここに来る前よりも、ここを出た後、少しでも強くなれるようにラスト1秒まで心を込めて歌うんで、心で受け取って”と。そうして始まったのはもちろん「不器用HERO」だ。音楽もパフォーマンスも神の領域、けれども自分たちは“あなた”だけを励ましたいんだと、ステージからフロアの一人ひとりに目線をおくっていく6人。いつにも増して、切実に胸に刺さる。そして、これこそが、いまここに生まれている熱い共有空間こそが神激の真骨頂なのだ。
涙染あまね
二日よいこ
“ここから一歩外に出たら冷たい世の中。なにか嫌なことがあったら、戻れる場所がここにあるのを忘れないで欲しい”とよいこが語りかけ、ラストを「神奏曲:インフェルノ」で締めくくった神激。6人はこの日、出演者の誰よりもびっしょり汗だくになって、フラフラになりながらステージをあとにしたのだった。
取材・文=東條祥恵 撮影=鈴木恵

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