古田新太のフランク役はこれで見納め
!?  5年ぶりに甦る伝説のロックミ
ュージカル『ロッキー・ホラー・ショ
ー』

初演は1973年のロンドンの小劇場。75年には映画化され、いまもカルト的人気を誇る『ロッキー・ホラー・ショー』。恩師に婚約の報告をしようと出かけたブラッドとジャネットの車が、嵐の山中でパンク。助けを求めて近くの古城に辿り着くと、不気味な執事や使用人、さらにガーター&ストッキング姿も妖艶な城の主が現われ……という、このファニーでグロテスクでパロディ満載のロックミュージカルの金字塔が、河原雅彦の演出で5年ぶりに再演される。2011年(演出いのうえひでのり)、2017年(演出河原雅彦)に続いて城の主フランク・フルターを演じるのは、もちろん古田新太。2022年1月に開幕する今回の公演で同役を卒業するという古田に、その真意や意気込みを聞いた。
古田新太
ーー今回が最後のフランク・フルター役になるとのこと。ハマり役を卒業しようと決めたのは、なぜでしょう?
実は5年前の公演がラストのつもりだったんです。それで今回は、プロデューサーとかリーダー(河原雅彦)から「2017年の演出でもう1回やりたいんですけど、誰かフランク役にふさわしい俳優はいません?」という相談を受けてました。「誰か若手で、いいヤツはいないかな?」って。で、考えた結果、「やっぱ、おいらじゃね?」となって、「じゃあ、もう1回やるか」ってことになりました(笑)。だから、「こいつ、いいな」と思う俳優がいたら、前回で卒業してたんです。
ーーなるほど! そうだったんですね。「やっぱ、おいらじゃね?」となったところに、作品への思い入れを感じます。
ガキの頃から観てますから。ピクチャー・ショー(映画版)は、いまも「リチャード・オブライエン(作者)、バカだな~」と思いながら観てますよ。そもそも、おいらは『ロッキー・ホラー・ショー』みたいなことがやりたくてこの世界に入って、いまだに『ロッキー・ホラー・ショー』みたいな作品を作りたいと思ってる人間。今だったら配慮が必要なテーマを散々ぶち込んでるところもすごいし、最後の終わり方なんて、卑怯にも程がある(笑)。こんなに頭の悪い話はないですからね。どっかの劇団みたいに3時間とか4時間やるわけじゃないから、体力的にもキツくない。上演時間が短いことも含めて、素晴らしい作品です。
ーーでは、どうして卒業を?
「今回で終わりだよ」って言っとかないと、また「やっぱ、おいらかな」って言っちゃいそうですから(笑)。さっき言ったように、おいらは『ロッキー・ホラー・ショー』みたいなことがやりたい人間。いつまでも『ロッキー・ホラー・ショー』そのものをやってちゃダメなんです。そろそろ本気で、『ロッキー・ホラー・ショー』みたいに歌って踊ってお客さんをいじって、短くて楽しいお芝居というものを自分たちで作りたい。なんとか60歳までは、歌って踊って戦うぐらいのことはやろうとは思ってますけど、そろそろ本腰を入れないと、身体にガタがきてますからね。
古田新太
ーーぜひ実現して欲しいです。前回の『ロッキー・ホラー・ショー』公演では、どんなことが印象に残っていますか?
おいらもリーダーも客いじりを一生懸命考えて、“お客さんと一緒に遊ぼう作戦”全開でやったことかな。いのうえ(ひでのり)さんの演出の時(2011年公演)は、ピクチャー・ショーに対するリスペクトが大きくあったんですけど、前回はお客さんを殴りながら客席を走り回るみたいなことができて楽しかった。もちろん、おいらもピクチャー・ショーは大好きなんですけど、ライブでやる以上は、お客さん参加型にしたい。なんせ、ピクチャー・ショーの上映会でも、客がステージに上がって地球儀を回すような作品ですからね。そういう意味では、ハイレグジーザスで散々客いじりをしてきたリーダーは頼もしいです。あと前回で気に入ってるのは、影絵を使ったエッチなシーンかな。大好きな下ネタも全開でやれるところが、『ロッキー・ホラー・ショー』の楽しいところです。
ーー今回のキャストの印象はどうでしょう?
男性陣は、オカケン(岡本健一)以外はみんな前回と同じ顔触れじゃないかな。オカケンにしても前々回出ているので、気心の知れたメンバーです。問題は、(武田)真治がおいらをちゃんとお姫様抱っこできるのか? ってところですね。コロナ禍で、おいらもだいぶ太ってるので(笑)。でもまあ、いい感じのロッキーになるんじゃないかと思います。この間、偶然会った小池徹平ISSAには、一応作戦として「前回のことは全部忘れろ。新しく君たちの役を構築しなきゃいけないよ」と指令を出しておきました。
ーー対して女性陣は、ジャネット役の昆夏美さんをはじめ、初参加の顔ぶれが揃いましたね。
東京ゲゲゲイ以外は、新メンバーです。昆夏美ちゃんは、おいらの中では『アダムス・ファミリー』のウェンズデー役のイメージが強くて、ああいう少女役をやらせたら可愛い女優さんに、ちょっとエロい格好をさせてみたいな、ツンデレな昆ちゃんを見たいなと思ってます。フランク莉奈ちゃんといい、峯岸みなみちゃんといい、女性陣はカワイコちゃんばっかりで満足してます。おいらもリーダーも、どっちかっていうとカワイコちゃん好きだから(笑)。
古田新太
ーー過去2回の出演で、古田さん的に印象に残っているカンパニーのエピソードがあったら教えてください。
やっぱり歴代ジャネットは印象深いですね。前々回の(笹本)玲奈も、前回のソニンも、ミュージカル畑の人なのでオモシロにあまり興味がないんです。まあ、普段『ミス・サイゴン』とかやってる人たちだから、当然と言えば当然なんですけど(笑)。それに対して、いのうえさんやリーダーやおいらは「歌も大切だが、どっちかって言ったらお笑いが大事だ」という考え方の人だから、稽古では「そこでそんなトーンでツッコんでも笑いは起きないよ」「もっと本気で怒鳴らなきゃ」みたいなダメ出しをすることになる。そうすると玲奈もソニンも「歌以外で声が枯れちゃう」って言うので、「お笑いを舐めるんじゃねえ!」みたいなことを毎回言ってたような記憶があります(笑)。今回も昆ちゃんたちと、そんな攻防があるのかな。峯岸さんのすっとぼけた感じには、ちょっと期待してますけどね。まあ、色んな意味で稽古が楽しみです。
ーー年明け13日からの本番を楽しみにしています。ただ今回は、感染予防の観点から一緒に歌ったり踊ったりできないかと思うと、ちょっと寂しいです。
確かに『ロッキー・ホラー・ショー』をやりにくいご時世ではあります。こっちも、お客さんに「叫べ」だの「踊れ」だの言えないですし。だから、そんな中でどうお客さんと一緒に遊べるか? っていう作戦会議を、この間もリーダーと開いたところです。最近「お客様同士の会話はお控えください」みたいなボードを持った場内整理の人たちがいるでしょ? 係員の人に卑猥なボードを持ってもらうとか、そういうことで何かできないかなと、今ちょっと考えてます。こういう状況でやる以上は、どっか逆手に取らないとね。
ーーさすがです。
歌わないで済む参加の仕方も考え中なんだけど、それは観てのお楽しみということで。お客さんと一緒に遊ぶっていうことが、『ロッキー・ホラー・ショー』をやる大前提であり、醍醐味ですから。色々と作戦を立て中なので、ぜひそのつもりで、みんなに遊びに来て欲しいなと思ってます。グッズもいっぱい売るので、ぜひ買ってください。グッズ持ってるほうが、絶対に楽しいです!
古田新太
取材・構成・文=岡崎香   撮影=池上夢貢

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