高橋真梨子の歌謡曲とは
一線を画す大人の魅力を
ソロデビューアルバム
『ひとりあるき』から探る
のちのヒット曲に通じる萌芽
《Kiss again 甘えていたつもり/だから あなたに 背を向けたの/まさか 追いかけて 来ないなんて/思わずにいたから》《Kiss again わかっていたつもり/だからあなたを ふりきったの/他の誰かを 愛せるなんて/思わずにいたから》《あなたの 空を 翔びたい/誰より 高く翔びたい/あなたの 空を 翔びたい/抱きしめて》(M1「あなたの空を翔びたい」)。
《あなたの眼の中に/小さくなって 素直になった/わたしがいる わたしがいる》《あなたの胸の中に/小さくなって 熱くなった/わたしがいる わたしがいる》《わたしのあなた とても大切な人よ/その胸にいつまでも 離さず抱きしめて/深く 深く もっと 深く そうよ…》《あなたの耳の側で/小さくなって 熱くなった/わたしがいる わたしがいる》(M10「小さなわたし」)。
歌詞の内容を細かく説明するのも品がないし、ましてや上記ははっきりとシチュエーションを記したものではないので、何とも言い難いところではあるのだが、M1での悔恨の念、M10で示す相手との距離感は、のちのヒット曲に通じなくもない。また、どちらにも共通する、いい意味でオブラートに包まないエゴも通底しているだろう。ここまで高橋真梨子の音楽性をかなり大掴みにしたので、細かく見ていけば指摘したような部分以外にも彼女を彼女たらしめるものはあると思う。そこは理解しているので、当コラムが浅薄であることの非礼は先にお詫びするが、“デビューアルバムにそのアーティストの全てがある”という話は、どうやら高橋真梨子の『ひとりあるき』にも当てはまるようではある。そこは理解できる。
TEXT:帆苅智之