エウレカセブン 最後の軌跡『EUREKA
/ 交響詩編エウレカセブン ハイエボ
リューション』名塚佳織、小清水亜美
インタビュー

2017年秋より始まった劇場版「交響詩編エウレカセブン ハイエボリューション」シリーズ。その3部作、最後の物語となる『EUREKA / 交響詩編エウレカセブン ハイエボリューション』が2021年11月26日(金)より全国ロードショーとなった。舞台は前作『ANEMONE/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』のラストから10年後の世界、すっかり大人になったエウレカとアネモネが、とある1人の少女と出会うことで物語は加速していく。TVシリーズから数えて16年続いてきた本作を、メインキャストであるエウレカ役の名塚佳織とアネモネ役の小清水亜美の2人に振り返って頂くダブルインタビューを行った。彼女らにとっても長い航海の旅となった今、何を想うのか。いちシリーズのファンとしてお二人に、本作の魅力について深く伺った。

■これからもエウレカは生き続けていくんだろうな
――TVシリーズから16年、ハイエボリューションだけでも5年続いた本シリーズがひとつの区切りを迎えたわけですが、収録に際しての意気込みやどんな想いで臨まれたのかをお聞かせください。
名塚:TVシリーズが始まった時は、まさかこんなに長いお付き合いになるとは思っていなかったので、これだけの月日が流れていることにビックリしてるのが正直な所です。たぶん、ここにたどり着くまでに関わってきたキャストやスタッフ・制作陣の想いを皆さまにしっかりと届ける事が出来たからこそ、こんなに長く応援して頂ける作品になったと思うし、16年という長い旅を一緒に続けることが出来たんだなって感謝の気持ちでいっぱいです。本作は特に完成までに時間が掛かってしまったのですが、その分、京田監督もより作品に向き合いまた新たなものを生み出してくださったと思うので、時代時代で変わってきたエウレカセブンを皆さんにも楽しんで頂けたら嬉しく思います。
名塚佳織
小清水:TVシリーズから、16年ですか……。TV版の『エウレカセブン』は1年かけて描かれていきましたけど、その当時のTVアニメの現場って今のように1クールのアニメが徐々に増え始めた頃だったので「1年作品か、嬉しいなあ」って、そのくらいの気持ちでしたね(笑)。やっぱり長い時間かけられる方がキャラクターの役作りも深めていけますからね。そうやって四苦八苦しながらも向き合ってきたアネモネと、まさか16年来の付き合いになるとは(笑)。それだけの月日が流れているので、当然TVシリーズを知らない世代も増えている中で、劇場版の三部作を通して、また新たにエウレカセブンに出会ってもらえるかもしれないって考えると、もちろん嬉しい気持ちもあるんですが、なんか不思議な感覚で。今の世代の子たちにはエウレカって作品はどう映るんだろうとか、我々と同じくあの頃に若者だった大人たちはこの三部作をどう見てくれるんだろうとか、私個人として思う節も色々とあるし、ひと言では上手く言い表せない気持ちでしたね。とにかく今は公開に向けてワクワクもしつつ、ドキドキもしている、そんな感じです。
――本作の台本を読んでみて、第一印象としてはいかがでしたか?
小清水:まずさ、台本の表紙に描かれてるエウレカを見て「大人になっとる〜!」って思わなかった?(笑)。
名塚:そうなんだよね〜(笑)。皆さんもキービジュアルを見て驚かれたと思うんですが、私も台本より先にキャラ設定を頂いたのでとてもビックリしました(笑)。「えーっ、エウレカ一体どうなっちゃったの?」って思ったんですが、台本を読んで納得というか、エウレカの成長を感じましたし、最後のセリフがこれまでの全てのエウレカの気持ちを集約していた気がして、すごく嬉しかったですね。やっぱり長く続いたシリーズの完結編ということで、最初は台本を読むのも少し怖かった気持ちもあったんですが、読んでみて「これからもエウレカは生き続けていくんだろうな」って受け入れられました。16年前にTVシリーズとしてはひとつ区切りを迎えているんですが、さっきあみっけが言ってくれたみたいに、これだけ愛して頂けたのでシリーズが今日まで続いているし、これからも皆さんの中で生き続けてくれたら嬉しいなって思いました。
『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』 (c)2021 BONES/Project EUREKA MOVIE
小清水:私はキャラ設定を台本と同時に頂きまして、特に前作の『ANEMONE』が幼少期を描いてたので、想像もしてなかった成長を遂げていて思わず笑ってしまったくらいビックリして(笑)。そこから台本を読んでいって、アネモネの視点から感じたことは「幸せのカタチって1つじゃないんだな」って、それを物凄く感じました。TVシリーズでもアネモネにとっての幸せのカタチが描かれていたとは思っていて、それにたどり着くまでの苦労や辛い事、紆余曲折もあって『ポケットが虹でいっぱい』も、あれはあれで1つの幸せのカタチかなって思うんですが、今回また新しい未来を見せて頂いたんですよね。私としてはこのカタチもすごく好きで、ハイエボのアネモネは、TVシリーズと大きく違って両親の愛をたくさん受け取って育っているので、ある種その時点で幸せなのかもしれないですけど、辛い事もいっぱい経験して、まさかこんなにもムードメーカー的なポジションになる子だとは思ってもみなかったので、個人的には注目して見ていただきたいポイントですね(笑)。
■「アネモネがいるから、エウレカも頑張れる」
――お二人自身の目線でも良いですし、演じたキャラ目線でも良いんですが、お気に入りのキャラクターなど教えて頂けませんか?
小清水:うわ〜、これ難しいな……(笑)。
名塚:うーん、悩んじゃう(笑)。
小清水:私、この三部作……というか2作目からだけど、エウレカへの想いがものすごい変わったの。
名塚:そうだよね〜。
小清水:今までは嫉妬の対象というか「どうして私はあの子みたいになれないの」みたいな。こんなに大人たちに無理を強いられて、自分を捨ててまで応えようと頑張ってるのにデューイにも見捨てられる……みたいな、そういう目線だったのに、確かに始まりは憎しみだったかもしれないけど「なんだか放っておけない」みたいな気持ちに変わって、親友になって、かけがえの無い人になっちゃいました。本当にアネモネにとってエウレカが特別な存在になり過ぎちゃって……ドミニク越えられちゃったかもしれない(笑)。
一同:爆笑
小清水:いや、まぁドミニクもドミニクで放っておけないのよね(笑)。
名塚:そうね(笑)。でも、そういう意味ではエウレカも本作ではレントンよりもアネモネに頼ってるし、甘えているなと感じていて。彼女がいるからエウレカも頑張れるし、多分アネモネが居てくれなかったら全然ダメダメだったと思うんですよ。
小清水:アハハ(笑)。もう世界滅ぼしてたかな?
名塚:もう人類滅亡だと思う(笑)。闇に飲み込まれて、取り返しがつかないことになっちゃってたと思うので、本当にアネモネに救われたし、初めての親友というか……。
小清水:うーん、そうだね。なんか姉妹みたいな感じもあってね。
名塚:そうそう。(アネモネが)お姉ちゃんであり、でも「お姉ちゃん!」って素直に甘えられないのか、ちょっと背伸びしちゃう部分もあったり……。明らかに内面はエウレカの方が子どもなんですけど「私たち双子だよね」って対等に立とうとするみたいな気持ちがあったり。でもそんな一面も出せるのはきっとアネモネに対してだけなんだろうなって思うので、それぞれドミニクとレントンって存在はいるんですけど、女同士の友情というか、そこの繋がりとは違う強い絆っていうのも本作の見どころのひとつかもしれませんね。
――なるほど。続いてその”本作の見どころ”という部分を、お二人なりので良いので教えて頂けますか。
小清水:見どころ!そうですね、色々と成長があって、ポジションが変わってきたキャラクター同士の関係性だったり、どういう思考になっているのかという部分はひとつの見どころなので、ぜひこのカタチもキッチリと見守って頂けたらなと思います。若い世代の初めて見るよって方には新鮮な気持ちで見てもらえたら嬉しいです。
『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』 (c)2021 BONES/Project EUREKA MOVIE
名塚:今まではエウレカって誰かに守ってもらったり助けてもらってばかりで、自分の強い意志で踏み出せるタイプではなかったんです。でも、アイリスという少女との出会いで、自分の幸せというよりも、これから先の世代の幸せを願いはじめるというのが本作のポイントなのかなと。私たち自身も20歳くらいでエウレカセブンのシリーズに関わり始めて、その当時はやっぱり周りの大人の方々に支えてもらいながら歩んでいたんですけど、今作は私も実生活で母親になったという事もあり、後世に残していく……というとちょっと大げさかもしれませんが、これからの未来を担っていく子どもたちに何を残していきたいかとか、何を伝えていきたいかみたいな部分が作品に込められていると思うので、そういうメッセージが皆さんにもお届け出来たら嬉しいですね。
■「私と同じ苦しみを知って欲しくはない」
――続いて、小清水さんにお伺いしたいのですが、先ほど「大人になっとる〜!」って話もあったように、前作が幼少期だったのから大人に変わっていて、今作のアネモネを演じるにあたって、どのような演技プランで臨まれたのかな?って気になりまして……。
小清水:TVシリーズから今回のハイエボシリーズのアネモネを演じるにあたって、同じアネモネではあるんですけど、産まれ直しました(笑)。育ててもらった環境から、また新たに成長し直したので、同じキャラクターなんだけど、まるで別人というか……、だから「教育って大事だね」って話じゃないんですけど(笑)。
一同:爆笑
小清水:まぁ、そんな事を思ったりもしつつ(笑)。TVシリーズのアネモネにはなかった真っ直ぐさと言いますか、でも本来はそういう一面も持ってたんだと思うんですよ。そういう強さやそれと同時に弱さを持ったアネモネというのを、前作の『ANEMONE』で演じていたので、今作ではそこまで迷子になることもなくて、あのアネモネが10年経って大人になったらこうだろうって、そしてこの10年を共に過ごした相手がエウレカだっていうことも分かっていたので、大筋は掴めていたんですけど、所々で思いもよらぬ成長を遂げていたのが演じてて面白かったですね(笑)。「なんでこうなった?」「どうしてこうなっちゃったんだ??」って心配に思う点もありました(笑)。
――続いて名塚さんにお伺いしたいのですが、先ほど台本をもらって「ビックリしたけど、読んで納得しました」とおっしゃられていましたが、具体的に今作のエウレカをどう受け止めて、どう演じられたのかを教えて頂けますか?
名塚:ある意味初めて守るべきもの、自分が動いて守らなきゃいけないものを見つけたのかなって気がしていますね。つまりアイリスという少女との出会いがそうなんですけど、本作の中でエウレカを1番大きく成長させた部分かなと思っていて。アイリスは自分と同じ能力を持っていて、自分と同じ苦しみをこれから味わうことになるだろう……という共感みたいな点が強くて。今までは世界に自分1人しか自分のような存在がなくて、ある程度理解を示そうとしてくれる人はいるものの、結局完璧に理解されることなんて無いというか、周りに対する感謝の気持ちはあれど、本当の意味で自分の置かれた環境に対する理解者はいないって思ってた節があると思うんですよね。
『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』 (c)2021 BONES/Project EUREKA MOVIE
――確かに、どこかいつも寂しげな雰囲気のイメージはあります。
名塚:だけど自分より幼く、まだ自分ほどその事に対する恐怖を知らないアイリスという少女が現れて、そこで初めて「あっ、エウレカもきっと自分と同じ苦しみをこの子に味わって欲しくないんだな」って私も気付けたというか。自分と同じ個体ではあるんだけど、それがどうなっちゃってもいいとは思わなかったというのは、レントンの存在だったりホランドたちゲッコーステイトといった周りの人たちだったり、特に今作ではアネモネの存在もそうなんですけど、彼らとの出会いがそうエウレカを成長させたのかなって。その点が私自身も台本を読んでいてすごく嬉しかった部分でもありました。
■「未来へ何を残すのか?」
――実は今、名塚さんがお話ししてくださった点は次に聞きたかった質問でもあったのですが(笑)。今回のキーポジションとなる”アイリス”というキャラはアネモネとエウレカにとって、どんな存在なのかな……というのを小清水さんにお聞きしても良いですか?
小清水:自分の子ども時代と照らし合わせて察する部分もあって、多分ここはエウレカと共通する部分でもあると思うんですけど、エウレカもアネモネもお互いに孤独を知ってたという子ども時代を過ごしてたという共通点はとても大きくて。同じ想いをさせたくないっていう方向性がエウレカとアネモネではちょっとずつ違うんですけど、アネモネ的には「少しでも今を笑顔で過ごしてほしい」みたいに感じるセリフが要所要所にあるのかなって感じましたね。お母さん目線というより、どこかお姉ちゃん目線みたいな立ち位置なのかもしれませんね。
『EUREKA/交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション』 (c)2021 BONES/Project EUREKA MOVIE
――改めて16年という時間を振り返っていくと、そもそもはレントンとエウレカのボーイミーツガールから始まった物語だと思うんですが、今作ってお二人にとってはどんな物語って表現になるのでしょうか?
名塚:物語全体というと、かなり話が複雑なので難しいですけど、エウレカにだけフィーチャーするとやっぱり「未来へ何を残すのか」になるのかな……。おっしゃる通り、TVシリーズはエウレカとレントンのボーイミーツガールだと思っていて、2人の幸せが、結果として世界にとっても素敵な未来へと続いてたと思うんです。ただ今回は、自分が幸せを掴むのではなく、後世にどんな幸せを残せるのか?自分の力で残せるものは何なのか?というのがメインになってくると思います。
――TVシリーズをリアルタイムで見ていた自分からすると、レントンがエウレカに手を差し伸べて、その手をエウレカが掴み取って、2人の幸せを掴んで……というすごく幸せに満ち溢れた世界に憧れた部分も強いので、もちろん今作もハッピーエンドではありますが、なんというか、すごく今っぽいなと素直に感じました。
小清水:じゃあ、アネモネとしてちょっとムードを変えるとしたら「人生をどう受け入れるのかは自分次第」みたいな?(笑)。辛い事もたくさん起きるし、幸せな事ばかりじゃないけど、そんな人生をどう捉えて、できる限りハッピーなものにしていくのか?前向きに生きていけたら、きっと素敵な人生になると思うし、例え運命は決まってたとしても、自分の捉え方次第で、きっとアネモネもそういうモットーでここまで大人になってきたのかなって思うんですよね(笑)。
――変な話、TV版の時に大人になったエウレカやアネモネってあまり想像したことがなかったので「あぁ、こんな風になるんだ」って一種の答え合わせをした気分でもありました(笑)。
小清水:幸せそうだよね?
名塚:うん、幸せだと思う。
小清水亜美
■「エウレカセブンという”家族”」
――最後の質問ですが、改めてお二人にとってエウレカセブンという作品がどのような作品だったのか、お聞きしたいです。
名塚:そうですね。そういう意味では本当に家族みたいな感覚ですね。もうお会いできない方も、また新たに今回参加してくれた方も、全員親族みたいな。家族も同じだと思うんですよね、親戚に新たな命が宿ったり、亡くなる方もいたり……。もちろん演者のみならず、スタッフさんも同様で、色んな事情があって途中で制作から離れた方もいれば、新しく参加される方もいて……、なんていうのだろう、家族のアルバムを皆さんに見ていただいてる感覚ですかね(笑)。
小清水:あー!そうかも。
名塚:毎日写真を撮っていたわけじゃなく、お正月とかお盆とか、節目節目で家族が集まった時に撮りためた家族写真のように、その時々で撮ったアルバムをいま改めて振り返ると「結構たくさん写真撮ってきたな〜」って感じるような、そんな感覚です。
――小清水さんはいかがですか?
小清水:そうですね。もちろんそんな感覚もありつつ、自分にとっては”人間の難しさ”を教えてくれた作品かなって思います。様々な価値観や、時に理不尽な事も、それが人間らしさだよっていう人の複雑な部分をすごく作品を通して教わったし、それが今の自分自身の役者としての引き出しに影響を与えてくれてる部分でもあるので……私は、それかな?(笑)
――出てくるキャラクター各々が異なる価値観を持っていますからね。
小清水:エウレカは”社会”ですね(笑)。
一同:爆笑
――公開も非常に楽しみにしております、本日は本当にありがとうございました。
小清水・名塚:ありがとうございました!
インタビュー・文=前田勇介

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