上原理生&松原凜子にインタビュー!
ミュージカル『フィスト・オブ・ノー
スター 北斗の拳』の見どころとは?

伝説的コミック『北斗の拳』が日本発のオリジナルミュージカルとして、『フィスト・オブ・ノーススター 北斗の拳』というタイトルで、2021年12月8日(水)から日生劇場で初上演される。

 
本作の音楽は、ミュージカル『ジキル&ハイド』や『スカーレット・ピンパーネル』など人気ミュージカルを手がけるアメリカ人作曲家のフランク・ワイルドホーン。演出は、新進気鋭の演出家である石丸さち子、脚本は数々の話題ミュージカルの脚本や作詞を担当してきた高橋亜子。振付は、米津玄師や土屋太鳳など多くの有名アーティストから指名を受けるコレオグラファーの辻本知彦(※辻本の「辻」はしんにょうの点ひとつが正式表記)、そして、数多くの日中共同プロジェクトを成功させてきた中国人演出・振付家の顔安(ヤン・アン)。日米中3カ国のスタッフのコラボレーションによる創作に注目が集まる。
今回SPICE編集部は、本作にレイ/ジュウザ役(Wキャスト)で出演する上原理生とマミヤ役で出演する松原凜子にインタビュー。ともに東京藝術大学声楽科を卒業した“同窓生”でもある二人。本作の見どころなどについて語ってもらった。
松原凜子、上原理生
ーーお稽古が進んでいることと思います。順調でしょうか?
松原:とりあえず一巡終わって、また頭から細かく詰めている作業をしています。
上原:そうですね。最後まで大枠をつけ終わりました。本当にざっくりですけど。
松原:スケジュール的には割と順調に進んでいますよね? ただ、個人的には「マミヤに見えない」とよく演出の石丸さんに言われているので、まだまだ課題だらけ。時間が足りないなと思ってしまいます。
ーー改めてそれぞれのお役に関してはどうでしょう。どういうところが見どころでしょうか?
松原:私の個人的な感想ですが、原作で描かれるマミヤと、今回のミュージカル化されたマミヤの印象がだいぶ違っていて。夏のワークショップのときに、石丸さんと脚本の高橋亜子さんに、「マミヤは映画『マッドマックス 怒りのデスロード』に出てくる坊主の女戦士をモデルにして書いた」と言われまして。私の想像の100倍ぐらい、女を捨てて、挑んでいるイメージなんですよね。
酷い目に遭って、何とか乗り越えて、今を生きている。その強さが欲しいとずっと言われているんですけど、どうしても女っぽくなってしまったり、すぐ誰かに頼るような女に見えてしまったり。そこが今の私の課題です。原作のマミヤはかなり女性らしいところもあるじゃないですか。例えばリンちゃんと一緒にお風呂に入って、頭を洗ってあげたり。
上原:戦うときもヨーヨーだもんね(笑)。
松原:そう。でも、今回のミュージカルでは、もっと強さを出していきたいと思います。

松原凜子、上原理生

ーー上原さんはどうでしょう。レイ、ジュウザの二役ですが、慣れました?
上原:慣れたわけではないですね(笑)。
ミュージカルに詳しくない友人や知人に「次は何出るの?」と聞かれて「北斗の拳」というと、「え、北斗の拳?」という反応なんですね。で、「ちなみに何役なの?」と聞かれて「レイとジュウザ」と言うと、「めっちゃ格好いいじゃん!」とみんな言うんです(笑)。それほどみんなに認知されていて、魅力的なキャラクターなんだなと思います。
レイもジュウザも原作の中では、そこに至るまでの過程がしっかり描かれているんですけど、それを3時間程度のミュージカルに凝縮するとなると、どうしても省かれる部分があって。「格好いい」と言われる所以をどう描き出せるか。(演出は)ざっくりつきましたけど、ここからどう中身を深めていくのか。男から見ても痺れるような、原作の格好良さをどうしたら出せるのか。いろいろ考えていますね。しかも、一役ならまだしも、二役あるので(笑)。
マミヤとレイも原作を読むと積み重ねてきたものがあるんだけど、その裏側があまり出てこないからねぇ……。
松原:そうですね。先日の稽古では、(マミヤとレイは)短い時間で関係を深めていかなくてはいけないから「ジャンプしてくれ」ということを石丸さんから強調して言われましたよね。時間が濃縮されている分、次のシーンになったら関係値をグッと上がっていなければいけない。
上原:まぁ「ジャンプ」するには、膝を曲げる時間が必要だし、助走する時間を見つけていかないといけないよねぇ。
松原:そうですね。でも、ダンスシーンとかに追われてしまっていて……。私たち、あまり踊りが得意ではないので……(笑)。
上原:歌だけ歌っていたいよね(笑)
松原:歌からこの世界に入ったので、どうしてもダンスへの苦手意識があって……(笑)。
松原凜子

上原理生

ーーその辺りぜひ伺いたいんですけど、上原さんと松原さんは在学中は重なっていないと思うのですが、同じ大学出身でいらっしゃいますよね。
松原:はい。重なってはいないのですが、私が在学中、理生さんがミュージカルサークルのワークショップの講師をしてくださいましたよね。舞台上以外で初めてお会いしたのですが、すごいオーラでした。「これがプロかぁ〜」と感動しましたよ。
上原:よく覚えているね(笑)。確か(『レ・ミゼラブル』の)『一日の終わりに』をやったよね。歌いながら、一人ひとり前に出てくるんだけど、自分が思ったタイミングで、本当に心から感じて動いてもらって。
松原:そうです、そうです。「3日間何も食べていない状況を想像して。どんな体つきになるだろう?どんな目つきになるだろう?」など、芝居の奥深いところまで指導してくださったんですよね。
ーーそんな出会いだったのですね。“先輩”と同じ舞台に立つことについて、改めてどんな思いがありますか?上原さんをどんな俳優さんとして見ていらっしゃいますか?
松原:ずっと第一線で活躍し続けている偉大なる先輩なんですけど、ご本人はすごくフレンドリーというか、後輩を可愛がってくださる気さくな方なんです。すごく話かけやすいですし、それを許してくださる懐の深い先輩だなと思っております。
上原:……何食べたい?(照)
ーー反対に、上原さんからご覧になって、松原さんはどんな“後輩”ですか?
上原:サークルでワークショップをしたときから印象には残っていますね。身長があるし、「こんな子がいるんだな」と思った記憶があります。
松原:えぇ!覚えてくださっていたとは!
上原:印象深かったよ。それと同時に、ミュージカルをやりたいから藝大にいく子も増えたんだなと感じた。僕が大学に在籍していた頃は、まだまだちょっとキワモノ扱いというか、好きなやつだけが集まる感じだったし、教授たちもクラシック一色な印象だったんだけど、今はそうじゃないんだなって。(松原さんは)そこからいろいろな作品も出るようになって、すごく頑張っているな、偉いなって思います。
松原凜子、上原理生
松原:そうやって気にかけてくださるところが優しいですよね。
上原:(松原さんが2019年に出演した)『ラ・マンチャの男』のチラシを見て、俺、たまげたもんね(笑)。すごいなぁ〜って!
松原:私もびっくりしました(笑)。ありがとうございます!
ーー今回はレイとマミヤということで、関係の深い役同士ですよね。さきほど仰っていたように「ジャンプ」をしなくてはいけないわけですけど、全くの初めまして同士よりは、ある程度関係値があった方がやりやすいのではと思うのですが、どうです?
松原:確かに、今までの関係があったからこそ、相談しやすいというのはあるかもしれないです。
上原:そうだね、そういうのはあるかもしれないね。あとは、何度も言うけど、膝を曲げられるかだよね、一緒に。
松原:そうですね。今まで『レ・ミゼラブル』(2017)と『ミス・サイゴン』(※上演中止)の歌稽古で、ちょっと共演経験があるぐらいで、役柄的な絡みがほとんどないんですよ。初めてこんなに近くにいるんです。心強いです。ダンスが苦手というところも……あ、一緒にしたらダメかもしれないですけど(笑)。
上原:ね、頑張ろうねぇ(笑)。
松原凜子、上原理生
ーー細かいところでも、大きなところでも、本作の見どころをぜひ教えてください。個人的には製作発表で披露されていた「ヴィーナスの森」、すごく好きでした(笑)。
松原:「ヴィーナスの森」はこの作品の中でもかなり異色な、見どころのナンバーだと思いますよ。
上原:そうだね。アレンジャーのジェイソン(・ハウランド)が送ってきてくれた、デモテープがすごくノリノリなのよ(笑)。聞いていて楽しかったし、ラテンのリズムがたまらない1曲です。
それから、伊礼(彼方)さんが製作発表会見で言ってましたけど、リンという子が歌い出して、そこに村の人たちが賛同していって、制圧しにきた拳王軍に、歌と思いで立ち向かっていくシーンは見どころですね。この作品で一番の目玉じゃないかな。めちゃめちゃいい曲です。抑圧されずに、自分たちの意志を貫いて、生きていくんだ、誰にも縛られないんだという思いと、ワイルドホーンのメロディーがマッチして、訴えかけてくる。楽しみにしていただければと思います。……あれは子どもの声だからいいんですかね、汚れのない声で始まるから。それにみんなが賛同していくシーンが本当にいい。
松原:出たかったですよね、あのシーン。あと、レイとマミヤの2人のシーンで言うと、レイがマミヤを苦しめてきた悪の存在を倒してくれるんですよね。そして「もう大丈夫だ」と言って、抱きしめてくれるシーンがあるんです。本当に一瞬ですけど、あのシーンは2人にとって大大切なシーンになるし、見せどころになるんじゃないかなと思います。
上原:それから言わずもがなですけど、大貫ケンシロウの北斗百烈拳と大立ち回りはすごいね。
松原:そうですね。未だに稽古場で見ていて、声、出ちゃいますもんね。「おおお」って(笑)。
松原凜子、上原理生
ーーまだ初演を迎えてないですけども、もし再演があったとして。男女関係なく「この役をやりたい!」というキャラクターはありますか?
上原:ミュージカル版には残念ながら出てこないんですけど、原作だったら「仁星」のシュウやりたいです。泣くんですよ、シュウのシーン。いつかやりたい。
松原:出ていないと、残念ですね(笑)。
上原:シュウを出すなら、サウザーを出さなきゃいけないからね。
松原:私はトキかな!トキが選んだ道は、なかなかできる選択ではないし、格好いいです。
上原:渋いねぇ。

お稽古の前に行われたインタビュー。和気藹々と作品のこと、役のこと、お互いの関係のことを語ってくださいました。開幕まであとわずか。お二人が挙げていた見どころも含め、どんな舞台になるのか、期待が膨らみます!
取材・文=五月女菜穂 撮影=ジョニー寺坂

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