浦井健治「お客様が自由に解釈してこ
の作品を楽しんでいただけるよう、演
じていきたい」~『愛するとき 死す
るとき』が開幕 出演者らのコメント
&舞台写真が到着

2021年11月14日(日)シアタートラムにて、『愛するとき 死するとき』が開幕した。この度、翻訳・演出の小山ゆうな、音楽・演奏の国広和毅、そして出演者全員の初日コメントと舞台写真が届いたので紹介する。
『愛するとき 死するとき』1部「ある青春/コーラス」(左から)浦井健治、前田旺志郎、小柳友、岡本夏美、高岡早紀、篠山輝信(後方)国広和毅  撮影:牧野智晃
『愛するとき 死するとき』1部「ある青春/コーラス」(左から)篠山輝信、山﨑薫、岡本夏美、浦井健治、高岡早紀  撮影:牧野智晃
本作は、映画『Time Stands Still』(1981年、ハンガリー、ペーテル・ゴタール監督)や、映画『A Time to Love and a Time to Die』(1958年、エリッヒ・マリア・レマルク原作、ダグラス・サーク監督)などからインスピレーションを受け、ドイツの作家フリッツ・カーターが綴った三部構成の戯曲。東ドイツで生まれ、東ベルリンで育ったカーターは、ベルリンの壁崩壊前の社会主義体制下で青春期を過ごした作家自身の経験を活かし、社会主義国家の息苦しい日常や反体制運動、西ドイツへの逃亡などを背景に、ときにコミカルに、ときにシリアスに、またときにメランコリックに、普遍的な人間の感情を本作で描いた。
『愛するとき 死するとき』2部「ある古い映画/グループ」(左から)高岡早紀、浦井健治  撮影:牧野智晃
『愛するとき 死するとき』2部「ある古い映画/グループ」(左から)小柳友、篠山輝信、山﨑薫、前田旺志郎、浦井健治  撮影:牧野智晃
『愛するとき 死するとき』2部「ある古い映画/グループ」(左から)高岡早紀、浦井健治  撮影:牧野智晃
翻訳・演出を手掛けるのは小山ゆうな。音楽・演奏は国広和毅。そして、独立した三つの話からなる本作は、出演者が各部でそれぞれ年齢も背景も異なる複数役を演じ分ける。物語の中核を担うのは、浦井健治。恋人、母親など複数役を演じ分けるのは高岡早紀。そのほか、前田旺志郎、小柳友、篠山輝信、岡本夏美、山﨑薫が出演する。
『愛するとき 死するとき』2部「ある古い映画/グループ」(左から)前田旺志郎、篠山輝信(前)小柳友(後)岡本夏美  撮影:牧野智晃
『愛するとき 死するとき』2部「ある古い映画/グループ」(手前左から)前田旺志郎、浦井健治(左奥)篠山輝信  撮影:牧野智晃

『愛するとき 死するとき』2部「ある古い映画/グループ」高岡早紀  撮影:牧野智晃

【STORY】
■第1部
東西統一前の東ベルリン。典型的な社会主義国の若者たちの他愛のない日常が描かれる。
青春の悩みは壁のこちら側でもあちら側でも同じ。生きること、愛することの葛藤と悩みはつきない。そして青春時代は瞬く間に過ぎていく。
■第2部
父親が妻とまだ小さな子供たちを残して西側へ逃亡してしまったとある家族。月日は経ち10代後半に成長した2人の息子は母親と3人で東側で暮らしている。かつての反体制派の英雄ブロイアーおじさんが刑務所から出てきたが、今となっては「目立つな、英雄を気取るな、列に並んでみんなと一緒に行動しろ」というのが若者たちへの助言だ。昔の輝きはまったく無い。だがブロイアーは母親と急接近していく。兄弟の間に一人の女性が現れる。弟は彼女に夢中になるが、気づくと彼女は兄の彼女になっていた。彼らは恋と失恋をたくさん繰り返しながら、ままならない日常の中で大人に近づいていく。母親とブロイアーの関係はまだ続いていた。そしてある日……。
■第3部
妻子ある男は、仕事のためにある土地に移り住み一人暮らしを始めたが、これといってかわりばえのない日々を過ごしていた。しかし彼は食堂で働く女性と出会ってしまった。男と女はあっという間に恋愛関係に陥る。二人は旅行にも行って、喧嘩もして、そして仲直りもする。とうとう男は妻子と別れる決心をした。だが彼女は……。
『愛するとき 死するとき』3部「ある愛/2人の人物」(手前左)高岡早紀(手前右)浦井健治  撮影:牧野智晃

『愛するとき 死するとき』3部「ある愛/2人の人物」(中央)高岡早紀(右手前)浦井健治  撮影:牧野智晃
初日コメント初日を終えた現在の心境(11月14日)
■小山ゆうな(翻訳・演出)
皆で、お客様の想像力を信じ切ったカーターの戯曲と向き合いながら、どういう作品になるかはお客様と共有するまでわからないねと、稽古してきました。
まだまだ制約の多い状況下ではありますが、満席の初日、目一杯舞台にエネルギーを送って観劇してくださったお客様、ありがとうございました。
出ずっぱりの浦井さんを始めキャスト7人と国広さん、全力で支えてくださるスタッフの皆さんにも感謝。沢山の方に観ていただき、沢山感想をいただきたい作品です。
■国広和毅(音楽・演奏)
『愛するとき 死するとき』3部「ある愛/2人の人物」国広和毅   撮影:牧野智晃
初日が無事に開けました。長い時間かけて準備してきた作品をこうしてお見せできるというのは嬉しいです。
楽しいと深いを行ったり来たりする作品です。勿論、人によってはそのどちらかのみでも OK です。初日の僕に関しては楽しいが大分勝ってしまいました。少し反省。
でもそんな風に公演毎に違ったものになるのが生の舞台の醍醐味です。特に今回は生演奏があります。生の芝居と生の音楽とのコラボレーションを是非お楽しみください。
■浦井健治
『愛するとき 死するとき』2部「ある古い映画/グループ」浦井健治  撮影:牧野智晃
出演者一人ひとりが自分の果たすべき役割や、役柄の背景を徹底的に落とし込んで挑まないと成立しない戯曲。演出の小山さんと日々、役柄や時代背景について話し合い、創り上げてきたものを、お客様が好奇心を持って受け止めてくださったように感じました。
亡き中嶋しゅうさんが生前かけてくださった「トラムのような濃密な空間での舞台をどんどん経験していくといいよ」という言葉は、僕にとって大切なもの。「今、トラムの舞台に立っていますよ」と心の中で呼びかけながら演じていました。しゅうさんにも、この想いが届いていたらいいなと思います。
登場人物全員が、どこかしら鬱屈や諦め、もの悲しさを抱えています。作者であるフリッツ・カーターさんの体験も含まれているであろうナイーブな題材が背景の、ある意味「壁」のようなしこりを持つ作品でもあります。
世田谷パブリックシアター芸術監督の野村萬斎さんは、稽古場にいらした時、「とんがってください」とおっしゃいました。「とんがる」ことは、演劇のトライの一つだと思います。実験的な演劇に適したシアタートラムという空間で、お客様が自由に解釈してこの作品を楽しんでいただけるよう、演じていきたいと思います。
■前田旺志郎
『愛するとき 死するとき』1部「ある青春/コーラス」(左から)前田旺志郎、小柳友(右奥)篠山輝信  撮影:牧野智晃
無事初日の幕が開き、今、本当にホッとしています。とても緊張していたのですが、やっと、「あぁ、始まったな」という思いと、とりあえずは無事、大きなミスなく初日の公演を終えられてよかったなという思いです。
初めてご覧になる方は、ショックを受けるといいますか、びっくりされる方も多いと思うんですけれども、戯曲はもちろん、小山さんが考案した各部のコンセプトや演出ですごく攻めた作品になっていると思います。スピーディーな展開にもし追いつけなかったとしても、僕たち7人は舞台上ですごく楽しんで演じていますので、その空気感だけでも、観客席の皆さまも一緒に楽しんでいただけたら嬉しいです。
■小柳友
『愛するとき 死するとき』2部「ある古い映画/グループ」(左から)前田旺志郎、小柳友  撮影:牧野智晃
無事に初⽇の幕が開けられて、本当によかったです。お客様からリアクションをいただくだけで、心ってこんなに落ち着くんだって感じました。すごく楽しかったです。
僕にとってシアタートラムといえば上村聡史さん演出の“約束の血”シリーズ『炎 アンサンディ』『岸 リトラル』なのですが、今回は初めましての⼩⼭さんの演出で、新しい出会いもたくさんありました。笑顔が溢れる稽古場で、カンパニーの仲間たちと一緒に芝居作りにたくさんの時間を費やして、創作の楽しさを共有することが出来た気がしています。
まだ予断を許さない状況ですが、僕らは万全を期して、皆さまに安全で安⼼して観に来ていただけるよう、しっかり準備しています。ぜひ劇場にお越しいただき、舞台を楽しんでください。
■篠山輝信
『愛するとき 死するとき』2部「ある古い映画/グループ」(左から)篠山輝信、前田旺志郎  撮影:牧野智晃
決して分かり易い作品ではないと思うのですが、1部・2部・3部と舞台が進行していくうちに、最初はハテナだったお客さまが、まず物語の筋を理解するだけではなく、作品の雰囲気を感じてくださり、徐々に理解を深めたり楽しんだり……。じわじわと何かが積み重なっていくように、お客さまの体温が上がっていく様子が伝わってくる感覚がありました。最後には劇場に一体感が生まれて、それぞれに感じて楽しんでくださったのだという手応えを得ることができ、とても嬉しかったです。
それはこのシアタートラムという劇場で、この座組で、お客さまを信頼したうえで楽しませたいというサービス精神に溢れた小山さんの演出ならではだと思いました。演劇の楽しさや幸せがいっぱい詰まっている作品です。是非観に来てもらいたいです。
■岡本夏美
『愛するとき 死するとき』2部「ある古い映画/グループ」(左から)前田旺志郎、岡本夏美、山﨑薫  撮影:牧野智晃
本当に楽しかったです。コロナ禍が続いてきた中で、ようやく観客席がいっぱいのお客様で埋まっている状態を久々に舞台上から見て、その光景をすごく幸せに感じました。お客様の存在、その笑い声も含めてやっと完成したといいますか、お客さんの反応を受けて私たちも稽古以上に出せるものがあり、相乗効果でとても楽しかったです。
今日もシアタートラムの外の看板を写真に撮って楽屋に入ったのですが、小山さんの『チック』もこの劇場で拝見しましたし、そのほか数々の作品を観てきて、やっぱりこの舞台に立ちたいなとずっと思ってきました。一つ、自分が目標に掲げていたことが達成できた喜びもありますし、何より無事に幕が開いたことがとても嬉しいです。
現状、我慢しないといけないこともありますが、その中でも演劇を観ていただくことで日々の辛いことを忘れたり、一緒に何かを考えたりと、この舞台が皆様の日常のちょっとした刺激になればいいなと思っています。
■山﨑薫
『愛するとき 死するとき』2部「ある古い映画/グループ」(左から)前田旺志郎、篠山輝信、山﨑薫  撮影:牧野智晃
この状況下、満員のお客様と初日を迎えられましたこと、心から感謝いたします。この作品から溢れ出す言葉と滲み出る音楽にただただ身を任せて頂けたらと思います。その時に感じた空気や違和感が、自分の大切な人や物語あるいは世界に想いを馳せるきっかけになれば幸いです。
行き場を失ってしまった「愛」をお客様と共に感じ合えたらと思っています。油断できない状況ですが、私共万全の対策で千穐楽まで駆け抜けて参ります。
■高岡早紀
『愛するとき 死するとき』2部「ある古い映画/グループ」高岡早紀  撮影:牧野智晃
ここまで、客席と舞台とが近い劇場空間で演技をしたのは初めてです。とても緊張もしましたが、お客様が温かく見守ってくださり、時にはコミュニケーションもしながら、この距離感ならではの反応を肌で感じ、楽しく初日公演を終えることができました。
この戯曲は句読点、ト書きなどがほとんどありません。「決めごとは何もありません」という小山さんの演出のもと、濃密な稽古を重ね、共に試行錯誤して創り上げてきました。決めごとがないだけに、新たな体験ができていると感じています。私自身も知らない新しい私の一面をお見せできるのではないかと思います。
この物語に登場するのは、東西にドイツが分断され、抑圧されながらも悲観せず、前向きに強く生きている人々。その姿から私が感じたことは、人が生きること、それは「愛」だということです。お客様一人ひとりにとっての「愛」を、この物語を通して改めて感じていただければ幸いです。
『愛するとき 死するとき』3部「ある愛/2人の人物」(手前左)高岡早紀(手前右)浦井健治   撮影:牧野智晃
『愛するとき 死するとき』3部「ある愛/2人の人物」(中央)高岡早紀(右手前)浦井健治   撮影:牧野智晃
『愛するとき 死するとき』3部「ある愛/2人の人物」浦井健治   撮影:牧野智晃
なお、本公演は12月5日(日)までシアタートラムにて上演。その後、名古屋・兵庫でも行われる。

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