May'n

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【May'n インタビュー】
ひとりじゃできない、
みんなと一緒だからこそ
掴める夢がある

レーベル移籍して初となるシングルはダブルタイアップ。栃木県日光でアイスホッケーに打ち込む少女たちの絆を描いた表題曲「オレンジ」に、東海エリア初のオリジナルアニメを彩るカップリング「シキザクラ」と、ともにTVアニメのエンディング主題歌だ。自身の名古屋愛が爆発した3曲目「B.H.U.」を含め、地元愛をテーマにした一枚が青春の日々を呼び起こす。

“一人がダメだよ”ではなく、
誰かと一緒ならもっと楽しい

これまで数多くのアニメソングを歌ってきたMay'nさんですが、ご自身でタイアップ曲を作詞作曲されるのは今回の「オレンジ」が初めてだとか。

そうなんです。何年も前から“いつかタイアップの作品も自分で作詞作曲をしてみたい”という想いがあったので、今回のお話をいただけて嬉しかったですね。しかも、編曲の今井了介さんは私にとってずっと憧れの方だったんですよ! アニメに登場する女の子たちの青春ソングを作るにあたり、私の学生時代を彩ってくださったプロデューサーの方とご一緒できたことにはすごく感動しました。

TVアニメ『プラオレ!~PRIDE OF ORANGE~』のエンディング主題歌ということですし、劇中でアイスホッケーに青春を懸ける少女たちの想いはしっかり歌詞にも投影されていますよね。

脚本を拝見して一番大きなテーマにしたかったのが、“ひとりでは掴めない夢”っていうところだったんです。プライドを持ってひとりで頑張っていたけれど、みんなと足並みを揃えないとチームスポーツってダメなんだと気づくキャラクターがいて、私は彼女の気持ちに一番共感できたんですよ。私自身、小さい頃から“ひとりで頑張んなきゃ!”という想いが強かったんですね。May'nとしての活動でもソロアーティストとして、ひとりでフロントに立っているし。でも、例えばファンと一緒にライヴをした時に“あぁ、リハとは全然違う素敵な景色だなぁ”と思えたり、スタッフさんも含めた仲間がいることの心強さを感じることも、やっぱり多いんです。だから、“ひとりじゃできない、みんなと一緒だからこそ掴める夢がある”っていう歌にしたかったんですよ。

ソロアーティストとはいえ“部長”としてファンを引っ張ってきたMay'nさんだからこそ、“仲間”への想いにシンクロできるところが大きかったんでしょうね。

コロナ禍でひとりの時間も増えたので、それは余計にありましたね。でも、だからって“ひとりがダメだよ”っていうメッセージにはしたくなかったんです。ひとりでいることを選んだ人も絶対に正解だし、ひとりでいたっていい。だけど、みんなといるとまた違う楽しさだったり、できることがあることを伝えたかったんです。人との距離を取らなきゃいけない世の中だからこそ、誰かに会いたいという気持ちを肯定してあげたかった。やっぱり誰かが必要だし、アニメに登場する女の子たちの“絆”というものを歌いたかったんです。

歌詞の世界観に沿ってアニメのエンディング映像では仲間たちと一緒に歩く帰り道が描かれていますし、そういった青春ならではの切なさにミディアムバラードという曲調もぴったりです。

やはりエンディング曲ですので。アニメを観終わった時に視聴者のみなさんが感じる余韻が、部活終わりの夕焼けに照らされて“明日も頑張ろう!”って帰っていくキャラクターたちの心情ともリンクするんじゃないかと思ったんです。そしたら、自分がこだわった夕焼けのオレンジとか、時間の経過に合わせて影が伸びていく感じとか、仲間が加わってその影がどんどん増えていくところとか、歌詞を書きながら頭の中で思い描いていた情景がそのまま映像になっていてすごく感動しました! 自分が作詞した曲にアニメをつけていただくのも初めての経験だったので、もう余計に。

タイトルの“オレンジ”というのは、つまり夕陽のオレンジ色のこと?

そうです。まさしく夕陽をイメージしています。作品のタイトルが“プラオレ!~PRIDE OF ORANGE~”だから、曲名を“オレンジ”にしたいっていう想いは早い段階からあって。自分自身の青春を思い浮かべてみても、最初に出てくるのは校内で活動している絵ではなく、遅くなってみんなで夕焼けに照らされながら帰っている光景でした。なので、私の中で青春の色は青じゃなく、夕焼けのオレンジ色なんですよね。

あぁ、なんとなく分わかります。何かに突き進むアツさだけじゃなく、青春には甘酸っぱい切なさもありますから。

ちょっとだけ切ないというか、胸がきゅっとなる感じ? よく“胸キュンソング=恋愛曲”みたいに言われがちだけど、青春だって胸キュンだと私は思うんです。じゃあ、なんで学生時代に胸がキュンとするのかって言うと、きっと終わりがあるからなんですよね。一年の終わりとか区切りって、大人になるとあんまり意識することないじゃないですか。でも、学生時代には卒業とかクラス替えとかっていう節目があって、そういった終わりがあることの切なさが、きっと学生時代ならではの胸キュンを呼ぶ気がするんです。なので、《ずっと一緒にいられますように》というサビも、一緒にいられないかもしれないと分かっているからこそだったりするんですよね。そういった“学生時代ならではの胸キュンソング”っていうのが、この曲のこだわりだったりもします。

ちなみにMay’nさんが学生時代に打ち込んだスポーツはありますか?

水泳です! ひたすらひとりで自分のタイムと競っていたんで、本当にチームスポーツとは無縁なんですけど(笑)、例えば合唱コンクールとか体育祭とか、みんなで力を合わせて何かをやるのはすごく好きで。体育祭の前とか遅くまで残って練習して、みんなで帰ったりしていたのを思い出しながら書きました。あとは、『プラオレ!』が日光を舞台にしたお話で、アニメに出てくるアイスアリーナが坂の上にあるから、試合を終えて坂道を帰る時の景色なんかも想像したり。

そういったイメージを編曲の今井さんにもお伝えして?

そうですね。作曲の段階で二度ほどスタジオに入って、一緒にメロディーを固める作業もさせてもらえたんですね。そこで作曲のアドバイスもいただきながら、例えば夕焼けが由来のタイトルであるとか、こういう曲にしたいという想いは伝えさせていただきました。あと、『プラオレ!』は中学生の物語なので、実際のレコーディングではあまり大人っぽい歌い方は避けようという意識もありましたね。自分が学生時代に地元で見ていた夕焼けを思い出しつつ、なるべく日常に寄り添った歌い方というのは心がけました。

イメージがはっきりしているぶん、制作も非常にスムーズだったようですね。

ただ、タイアップ曲ならではの難しさというか、発見もありました。最初にアニメサイズを作り、アニメの制作サイドにOKをいただいてからフルにしていくはずが、アニメサイズの段階でストーリーが完結してしまって、“2番はどうしよう?”となってしまったんです。今まで自分が作詞をする時は、フルサイズで一気に歌詞を書いていたんですけど、タイアップ曲で自分が作詞するのが今回初めてだったので、そこは難しく感じましたね。一回完結したものを戻したり、先に進めたくはしたくなかったので、結局はサイズを短くしようと。2Bも2サビもカットして、そのままDメロから最後のサビにいくっていう、ポップスの構成的には掟破りなかたちにしてしまいました(笑)。この構成を提案した時、少し否定的な意見もあったんですけど、ここに書かれた心情を大切にするためにはこの構成しかなくて、そこもすごくこだわった点ですね。

大サビ前に《かじかんでいく指の先で 靴紐結び直して》というフレーズがあるだけでも、絶対にフルを聴く価値がありますよ。

そこは今井了介さんにも褒められました! やっぱりアイスホッケーらしさも伝えたかったですし、事前にアイスホッケーの試合を見た時に一番びっくりしたのがスケートリンクの寒さだったんです。こうやって自分の引き出しにはないテーマが与えられるから、タイアップ曲って自分のクリエイティビティがどんどん高まる気がして、ありがたいですね。

では、ご自身の作詞作曲したタイアップ曲が毎週テレビで流れるという、初めての体験はいかがですか?

毎回感動しています! マスタリングが終わって全部通して聴いた時も“シングルの1曲目に自分が作った曲が入るんだ!”っていう、今までとは違う感動があって。16年くらいキャリアを積んでいても、こうして初めての体験とか新しいチャレンジをさせてもらえて、まだまだ感じたことのない感情やチャレンジがあるんだろうなと、すごくワクワクできました。本当にいろんな想いでレコーディングできた曲なので、今後ライヴでもいろんな想いで歌えるんじゃないかと期待しています。
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シングル「オレンジ」【CD+Blu-ray】
シングル「オレンジ」【CD】

OKMusic編集部

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