L→R 山森“JEFF”正之(Ba)、加藤ひさし(Vo)、古市コータロー(Gu)、古沢“cozi”岳之(Dr)

L→R 山森“JEFF”正之(Ba)、加藤ひさし(Vo)、古市コータロー(Gu)、古沢“cozi”岳之(Dr)

【THE COLLECTORS インタビュー】
モッズバンドとして
生まれているので、
やっぱり死ぬまでモッズバンド

ロックンローラーという仕事だから
自由に発信していいと思っている

DVD BOXには新曲2曲のCDとクリップも収められています。まず「裸のランチ」はウィリアム・S・バロウズかと思ったら、鬱屈した気持ちを解放してくれるような痛快なナンバーでした。

ね。“裸のランチ”ってタイトルがいいもんね。バロウズの小説は面白くないし、デヴィッド・クローネンバーグ監督の映画はただのホラーなんだけど、“ランチ”っていう響きが“裸”とくっついても卑猥じゃないのがいいんですよ。むしろ、クレイジーじゃないですか(笑)。それぐらい…このコロナ禍の中、マスクを外したいし、身につけているものを全部外したいっていう気持ちになるでしょ? ずっとそういう生活をしているから、一日のうち5秒くらい叫びたくなりますよね。“クッソタレな世界なんて終わっちまえ!”って。そういう気持ちを切り取って歌いたかったんです。“みんなでまた笑い合える日が絶対にくるよ”なんて絶対に歌いたくないし歌えない。The Rolling Stonesが《I can't get no satisfaction》と言いきるところがロックなんだと。そこが僕のロックの原点なんですよね。だから、その一瞬を歌いたかった。

最後に《Do what you want》と歌っていますが、そうですよね。

うん。それしか言いようがないしね。答えもないし。ただ、その瞬間に伸びる怒りのベクトルだけはあるんですよ。その矛先はどこにも向かない、やけっぱちソング。これを僕が歌ったことで、ちょっとすっきりしてくれた人もいるんじゃないかな?

この曲のメイキング映像ではロバート・プラントを引き合いに出されてましたね。

「ブラック・ドッグ」を歌う際のハイトーンのね。こういう心理状態の時ってむちゃくちゃな歌い方のほうがいいと思うんですよ。自分がぶっ壊れる寸前が一番面白いんじゃないかって。そういうところに美学を持つのも俺たち世代なのかな? The Whoのピート・タウンゼントがアンプにギターを突っ込ませるたびに心がスッとしたし。

キース・ムーンがドラムを蹴り倒したり。

そうそう。どうにもならないフラストレーションを最後は楽器にぶつけるっていう。自分はこういう人間だし、自分なりの哲学で生きていて…世の中のルールで正しいとされていても間違っていることがたくさんあるので。僕基準で言えばだけど。どっちの基準が正しいかは多数決で決まるんだけど、正しいか間違っているかだけじゃないんだよ。ただ、自分の意見は曲げないっていう。ロックンローラーという仕事だから、それぐらい自由に発信していいと思っています。

言葉もそうですが、演奏もスリリングで。

そこはすごく悩んだんですよ。楽曲のスタイルとしてどういうものを作れば面白いのかって。で、一番プリミティブなロック…イントロもなく歌い出す、50年代のジーン・ヴィンセントとかまで遡るような、シンプルなロックンロールだなというのが湧いて。ロックンロールの原点のサウンドで、構成は工夫されているけどシンプルっていう、THE COLLECTORSの中にはあまりなかったものですね。

打って変わって「ウィンターソング」は、ちょっとウルッとくるナンバーですね。

この曲はもともと「ヒマラヤ」(2021年6月発表の13EP+DVD生産限定商品『13 VINYL SINGLES』に収録された新曲)を作る前に、シングルにしようと思って書いていたんですけど、急遽「ヒマラヤ」を書いたので宙に浮いていたんです。メロディーがすごく好きなんですけど、そういうことがあって歌詞は手をつけずにいたんですよ。そんな中、この8月にTHE BIKE(THE COLLECTORSの前身バンド)でギタリストだった奴が突然亡くなって。高校の同級生で一番ウマがあった…親友ってやつですよね。彼との思い出をいろいろ振り返ったりもして。“これから冬がくるなぁ。今年はあいつはいないのか。寒いな…”なんて。で、彼に捧げる曲を作ろうと思ってこの曲を書きました。

親しい方のご不幸はとてもつらいことですが、このメロディーがあったことでその方に捧げる曲ができたという…

それもありますし…正直言うと、僕くらいの年齢になると、親友が亡くなるのはもちろんショックだし、悲しいのは悲しいんだけど、泣き腫らすような悲しさじゃないんですよ。自分も10年後か、20年後かは分からないけど、その頃には死んでいるって言うのがイメージできるんです。そう言うのが自然にイメージできると、あらゆる死を受け入れられるっていうか。で、彼といた時間を残す…僕には歌を作ることしかできないから、そういう曲を作ったのは、彼への感謝の気持ち…彼がいなかったらTHE COLLECTORSはなかったので。

そうですね。THE BIKEあってのTHE COLLECTORSですものね。

本当にそうなんです。で、僕にできることはこれしかないっていう。これから先、こう言う曲は増えてほしくないと思うんですけどね。

そういう曲も収められた作品を残せることに意味がありますよね。

そうね。やっぱり自分の身の回りで起こったことを歌うのがロックだと、ずっと思っているし。コロナ禍であればコロナ禍のことを歌うし、原発が爆発すれば“原発なんていらない!”と歌うし、誰かが死んだらそのことを歌うし、子供が生まれて幸せだと思えばそれを歌うし…ロックってそういうものだと思っています。そして、リアルなものをちょっとだけファンタジックだったり、ちょっとだけ違うシチュエーションに変えれたらいいなと思っているんですよね。

取材:竹内美保

DVD BOX『Filmography』2021年11月24日発売 TRIAD/日本コロムビア
    • COZA-1838~44
    • ¥17,600 (税込)
    • ※6DVD+1CD

ライヴ情報

『THE COLLECTORS 35th Anniversary “It’s Mod Mod World Tour”』
11/27(土) 北海道・札幌cube garden
12/04(土) 兵庫・神戸VARIT.
12/05(日) 岡山・IMAGE
12/12(日) 埼玉・HEAVEN'S ROCK 熊谷 VJ-1
12/19(日) 静岡・浜松 窓枠
[2022年]
1/15(土) 広島・セカンド・クラッチ
1/16(日) 福岡・CB
1/22(土) 岩手・盛岡CLUB CHANGE WAVE
1/23(日) 宮城・仙台darwin
2/19(土) 大阪・BIGCAT
2/20(日) 愛知・名古屋CLUB QUATTRO

『THE COLLECTORS 35th Anniversary “This is Mods”』
[2022年]
3/13(日) 東京・日本武道館

THE COLLECTORS プロフィール

ザ・コレクターズ:1986年初頭、ブリティッシュビートやブリティッシュサイケに影響を受けた加藤ひさしと古市コータローを中心に結成。2014年に山森“JEFF”正之、17年に古沢“cozi”岳之が加入し、現在のメンバーに。メジャーデビュー30周年を迎え、17年3月1日には初の日本武道館を開催し、18年11月には初のドキュメンタリー映画『THE COLLECTORS ~さらば青春の新宿JAM~』が公開された。20年11月には、加藤ひさしの還暦記念ワンマンライヴ『THE COLLECTORS, HISASHI KATO 60th BIRTHDAY LIVE SHOW “Happenings 60 Years Time Ago”』を開催。そして、21年6月はバンド結成35周年記念公演を大阪城音楽堂で開催し、22年3月には5年振り2回目の日本武道館を実施した。THE COLLECTORS オフィシャルHP

「裸のランチ」MV

DVD-BOX「Filmography」Trailer

DVD-BOX「Filmography」Trailer2

OKMusic編集部

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