L→R 真一ジェット(Key)、塩﨑啓示(Ba)、松川ケイスケ(Vo)、細川大介(Gu)、重田雅俊(Dr)

L→R 真一ジェット(Key)、塩﨑啓示(Ba)、松川ケイスケ(Vo)、細川大介(Gu)、重田雅俊(Dr)

【LACCO TOWER インタビュー】
今の俺らが使う“青春”っていう
言葉はちょっと味がある

2年4カ月振りとなるオリジナルフルアルバム『青春』が到着! 結成20周年を迎え、酸いも甘いも嚙み分けた5人だからこそ生み出せる、削ぎ落されたシンプルさと、細やかなアレンジや言葉遣い、豊かなイマジネーションが詰まった一枚だ。それをなぜ“青春”と名づけたのか? バンドを代表して松川ケイスケ(Vo)、細川大介(Gu)、塩﨑啓示(Ba)の3人に訊いた。

結果的には俺らのど真ん中の
青春ソングが入ったアルバム

今年の3月にインタビューした際に、細川さんがすでに新曲はあるという話をされていたのですが、今作に収録された楽曲はその頃にあったんでしょうか?

細川
半分はあったと思います。今回のアルバムって3年ぐらいかけて作っていて…本当はコロナ禍になる前に出したかったんです。でも、メジャーデビュー5周年ということで『闇夜に烏、雪に鷺』(2021年3月発表の黒白極撰曲集)をリリースすることになって。だから、コロナ前とコロナ真っ最中、最近の楽曲がパックされたアルバムになりました。

そんな中で、タイトルに掲げた“青春”というビジョンはいつ頃に見えてきたのでしょうか?

松川
全曲できてからです。毎回そうですけど、全曲並んだ時に自分たちの状況とか社会的な状況を加味した上でタイトルをつけるので。一番最後にできた曲が「青春」だし。
細川
正直な話をしますと、ある程度アルバム曲ができた時、ケイスケから今回のリード曲…アルバムを象徴する曲は“青春”というキーワードをもとにやりたいっていう話をされたんです。それまではまったく青春とか考えないでアルバムを作っていたんで、そう言われてからが長かったですね。青春っぽい曲は何曲か作っていたんですけど、なかなかみんなが納得できる曲ができなくて。何回も作り直してやっと「青春」ができたんです。

そもそも松川さんは、なぜ“青春”というキーワードが思いついたんですか?

松川
我々もメジャーで5周年を迎えて、ある程度自由にいろんなことをやらせていただいて、いい時も悪い時もいろんなことを経験させてもらった。バンドが結成20周年、人間なら青年期を迎えるにあたって、“今、どういうことを歌えばいいのかな?”と考えた時に、誰でも思いつくような言葉をやるべきじゃないかと思って“青春”にしたんです。今の俺らが使う“青春”っていう言葉は、ちょっと味があるんじゃないかなって。我々もそうでしたけど、20代の時の良さと30代の時の良さって違うんですよね。何も物おじしない、あふれんばかりに血気盛んな感じもいいんですけど、それは20代の時にしか出せない味だと思うんです。俺らがこのタイミングにいるからこそ使う“青春”っていう言葉は、違うかたちでとらえられるんじゃないかなって。あえて直球な…たぶん若い人たちは使いたくないであろう言葉を使ったっていう。
塩﨑
もう昔ほど自分たちも“青春”という言葉に抵抗がないんですよね。バンド駆け出しの時には“青春パンク”っていう言葉もあるくらいの時代だったので、“青春”という言葉を避けていたけど。だから、ケイスケが今あえてこの言葉を選んだ想いが分かったし。かと言って、“青春”をキーワードにすると決まった時、すでに他の楽曲は揃っていて、甘酸っぱいよりはドロッとしている、言ってしまえば大人になってからの感情が表れた等身大のものが多かったので、青春っぽいアルバムじゃないって思う人はいるかもしれないですけど。でも、結果的には俺らのど真ん中の青春ソングが入ったアルバムになったと思います。

なるほど。最初は正直言って、LACCO TOWERが“青春”を掲げたことが謎だったんですが、みなさんの話を聞いたり、ジャケットを噛み砕いたりすると腑に落ちるところがあって。ジャケットのディレクションも松川さんですよね。“青春”なのに生々しさと枯れ感があるという。その真相をうかがえればと思うのですが。

松川
これ、ドライフラワーを使っているんですよね。我々の年代は全てがきれいにいかないと分かっているんですけど…だからこそ、トーン的にも灰色っぽく、乾燥してきれいになる花でジャケットを作ろうと。あと、年齢的に青春だった頃のジャケットやアー写もオマージュしているんです。ブックレットを開くと5人の顔があるんですけど、それと同じことをやったのがインディーズ最後のアルバム『狂想演奏家』(2014年7月発表)なんです。バンドとしてどう青春を歩んだかっていうのも分かるし、40を迎えた僕らが思う青春っていうのも伝わる…収録曲を“青春”っていう言葉で割ると、刺さる人には刺さるんじゃないかな? 若い人の真似をしてもしょうがないし(笑)、こういうジャパニーズロックバンドだからこそできることは表現したいと思いました。

まさに表題曲の「青春」は大人も勇気づけられる楽曲だと思いました。難しいテーマでもあったと思うんですけど、練った甲斐がありましたね。

細川
青春って青くてさわやかなイメージがありますけど、思い返すと僕の中高生時代って必死だったし、悩んでいて苦しくて、つらいことばっかりだったんですよね。今もずっと青春していると思うし、今もつらいことがたくさんある。だから、“青春”ってそんなに甘い言葉じゃないって思うんです。アルバム全体のバリエーションも、つらいことも悲しいことも含めて青春なんだっていうことを表現していると思っていて。表題曲の「青春」も最初は青臭い春みたいな曲になっちゃったんですけど、何度もやり直して、やっと今のかたちになったので。

そんな「青春」の次が「化物」という。LACCO TOWERって毎回アルバムの2曲目のパンチが強いんですが、今回は更新してきた感があります。

松川
これも最後のほうにできたんですけど、個人的にはLACCO TOWERの楽曲の中でも1、2を争うくらい好きです。リズムアプローチも今までなかった感じですし。
細川
この曲ができていたから「青春」が多少さわやかになってもいいと思えたっていうか。落ち着いた感じにも見られたくなかったですからね。

「化物」もですけど、今回はいつもにも増してリズムアプローチが面白い楽曲が多いですよね。「噓」とか。

細川
「噓」はTVアニメ『幻想三國誌 天元霊心記』のエンディングテーマというタイアップがあったから、三拍子がいいとか、民族チックにしたいとかっていうのがあって。

お題があったからこそこういう方向に進んだんですね。

細川
そうですね。よく真一が言うんですけど、面白いアプローチで曲を作るんじゃなく、あくまでメロが一番大事だと。それに合うのがああいうリズムだったっていう。その考え方は一貫していますね。

なるほど。メロディーありきとはいえ、歌は難しいと思ったのですが。

松川
もう慣れちゃいました(笑)。でも、昔に比べれば、格段に覚えやすくなりましたよ。変拍子とかを聴かせつつ歌のところは落ち着かせていたり、AメロからBメロへの行き方がうまくできていたりとか。そういうところがより効果的にやれるようになって、一聴で覚えられる楽曲が増えた感じがしますね。
L→R 真一ジェット(Key)、塩﨑啓示(Ba)、松川ケイスケ(Vo)、細川大介(Gu)、重田雅俊(Dr)
アルバム『青春』

OKMusic編集部

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