サイケデリックブルースロックから
アメリカンロックへと転身した
スティーブ・ミラー・バンドの
『ジョーカー』
本作『ジョーカー』について
ミラーの復帰後はメンバーも一新し、ジェラルド・ジョンソン(B)、ジョン・キング(Dr)、ディッキー・トンプソン(Key)の4人組でリスタート、73年にリリースされたのが8thアルバムとなる本作『ジョーカー』だ。
これまでのサウンドと違い、シンプルかつキャッチーなアメリカンロックへと変貌する。ブルースナンバーは取り上げているものの、こちらもすっきりと仕上げられているのが特徴だ。特にベースのジェラルド・ジョンソン(本作のあとデイブ・メイソンのグループに移籍)の参加で、明らかにノリが良くなっている。
収録曲は全部で9曲、「カム・オン・イン・マイ・キッチン」と「イーヴル」の2曲はライヴ録音で、「イーヴル」のベースはかつてのメンバーであるロニー・ターナーがベースを弾いている。ペダルスティールの入った叙情的な「サムシング・トゥ・ビリーブ・イン」も佳曲だし、ファンキーな「シュ・バ・ダ・ドゥ・マ・マ・マ・マ」やR&Bっぽい「メアリー・ルウ」などは軽快で、まさにアメリカンロックそのものだ。少しハードな「シュガー・ベイブ」も良いが、何と言っても「ジョーカー」の出来が際立っている。スティーブ・ミラーはアメリカンロック史上に残るこの名曲をものにしただけでなく、この後も最高傑作となる『鷲の爪』(’76)や『ペガサスの祈り』(’77)を立て続けにリリースし、アメリカンロックを代表するビッググループになるのである。
TEXT:河崎直人