【HAN-KUN インタビュー】
自分の中で決めつけていた概念を
ぶち壊すチャンスにもなった
女性シンガーの楽曲にも挑戦し、幅広い年代の名曲をレゲエアレンジでカバーアルバム第二弾『Musical Ambassador II ~Juke Box Man~』。楽曲の良さを活かしながらも自身の色に染め上げた、愛とリスペクトにあふれるカバー楽曲たちは必聴です!
世代を超えて音楽で会話ができる
って素晴らしいと思う
19年5月にリリースした『Musical Ambassador』に続く、カバーアルバム第二弾が完成しましたが、まずは第二弾の制作に至った経緯から聞かせてください。
前回、カバーアルバムをやらせていただいて、嬉しい言葉もたくさんいただきましたし、自分自身が名曲たちの歌詞の世界観やメロディーに触れることで、学ばせていただくことがすごく多かったんです。中でも、一番強く感じたのは言葉と言葉の間の重要さで。間で考えさせて次の歌詞にいくとか、それが意図的なのかどうかも含めて、名曲と呼ばれる楽曲たちって、間がすごく上手に使われていて。レゲエも間が大事な音楽なので日本の音楽の間の使い方を学ぶこともできたし、カバーをやらせてもらったことでその時代の名曲を改めて聴き返す機会も増えて、いつかまたカバーアルバムをやりたいなと思っていたんです。その間にオリジナルアルバム『UNCHAINED』(2020年11月発表)をリリースして、自分的に今の気持ちを一生懸命表現したんですけど、この状況下ではそれをライヴで発表して、完成させるということができなくて。
リリースライヴもできていないんですよね。
ライヴもできず、ツアーもできず、配信ライヴはやらせていただいたけど、完成という感情には至らなくて。この先、新しい曲を作っていくにあたって、それが制作意欲の壁になってしまったんです。吐き出したい、聴いてもらいたいという気持ちはあるけど、現場叩き上げというところで強い想いを持ってやってるアーティストとして、現場で届けることができなかったら、聴いてほしいメロディー、音色、かたちってものを100パーセント提示しきれるのかなと思ってしまって。
“不完全燃焼のまま次に進めるのか?”と。
そうですね。でも、そんな時も日本の名曲は聴き続けていたんですね。で、“この色褪せない曲を歌い継いでいくという作業だったら、自分の表現を現場で完成させるというのとは違った道でいけるじゃん!?”と思って。自分も勉強させてもらえるし、作品に対する意欲も100パーセント向けられるし、クリエイトの部分も活性化させられると思ったら、カバーと向き合うには良いタイミングかもいれないと思ったし、ここで勉強したことが次にオリジナルを作る時の貯金にもなればいいなとも思ったのが、今作の制作に至った経緯です。
すごく納得したし、腑に落ちました! 前回のカバーアルバムを制作した時の気持ちとも違って、次に進みたいけれど、『UNCHAINED』を消化しきれずに足を進めることができないこの期間に、自分をより成長させたいという気持ちがあったわけですね。
まったくその通りです。あとは、前作が出来上がったあと、やっぱり“こうすれば良かった!”と思うところもたくさんあって、今回それがやれているかって言うと、実はやれていなかったりして(笑)。もう一枚カバーアルバムを作るとなったら、やりたいことがあふれちゃってるという贅沢な悩みが出てきて、そこは楽しいばかりでした。
前作を制作したあとの『UNCHAINED』では、名曲たちのカバーをやったことの直接的な影響や反映ってありました?
自分の背景にはアイデンティティーとして言葉を詰め込むとか、ライヴでノッてもらうという文化の音楽があるので、間を活かす作り方はそれに反したアプローチなんですけど、あえて言葉数を少なくして、無言の間でビートが進んでいるところに踊りを提案してメッセージをしっかり残すとか、間と言葉数の少なさのフュージョンみたいなことには挑戦できたと思いますね。ステイホームの時期に作った曲だったので、逆に現場を強く意識しながら作ったんですけど。同時に現場だけを見ないで作るってところにもベクトルが向いていて、その感覚は初めてだったし、今回カバーアルバムを作ろうと思った時の感覚とつながり始めてきていた気はしています。
なるほど。僕、ひとつクレームを入れたいんですけど。今作をあと4カ月早くリリースしてもらって、夏に鳴らしたかったです!(笑) 家族で出かけた時、海辺のドライブで気持ち良く今作を聴いて、“これ、何て曲?”と訊いてくる子供と会話を交わしたかったなって。原曲を知らない若い子も興味を持って、音楽への興味を掘り下げる機会になる作品だと思います。
めちゃくちゃ嬉しいです。僕もそういう聴き方を願っていて、ステイホームというこの時期に家族間の距離を縮める作品になったらいいなと本当に思っていたし。世代を超えて音楽で会話ができるって素晴らしいと思うんですよ。例えば、会社の上司とカラオケに行った時に歌ってもらって共有して、話の糸口やきっかけになったらとも思うし。