「あたたたーっ!」ついにベールを脱
いだ、この冬期待のミュージカル『フ
ィスト・オブ・ノーススター 北斗の
拳』製作発表レポート

伝説的コミック『北斗の拳』が日本発のオリジナルミュージカルとして、『フィスト・オブ・ノーススター 北斗の拳』というタイトルで、2021年12月、日生劇場(東京都千代田区)で初上演される。
本作の音楽は、ミュージカル『ジキル&ハイド』や『スカーレット・ピンパーネル』など人気ミュージカルを手がけるアメリカ人作曲家のフランク・ワイルドホーン。演出は、新進気鋭の演出家である石丸さち子、脚本は数々の話題ミュージカルの脚本や作詞を担当してきた高橋亜子。振付は、米津玄師や土屋太鳳など多くの有名アーティストから指名を受けるコレオグラファーの辻本知彦(※辻本の「辻」はしんにょうの点ひとつが正式表記)、そして、数多くの日中共同プロジェクトを成功させてきた中国人演出・振付家の顔安(ヤン・アン)。日米中3カ国のスタッフのコラボレーションによる創作に注目が集まる。
開幕までおよそ1ヶ月となった10月28日、東京都内で製作発表が行われた。ワイルドホーンや石丸のほか、出演者の大貫勇輔、平原綾香、May'n、加藤和樹、小野田龍之介、植原卓也、上田堪大、伊礼彼方、上原理生、福井晶一、宮尾俊太郎らが登壇。劇中曲を初披露したほか、意気込みと作品への愛を語った。
製作発表の冒頭、歌唱披露が行われた。この日披露されたのは、全7曲。
【動画】ミュージカル『フィスト・オブ・ノーススター~北斗の拳~』歌唱披露 2021.10.28

1曲目は、『揺るぎなき信念』。

核戦争が起き、荒廃しきった世の中を恐怖と暴力によって支配しようとするラオウが、自らに対し忠誠を誓うシンと共に、望みを叶えるためには戦わなければならないという信念を吐露するナンバーだ。ラオウ役を演じる福井晶一/宮尾俊太郎、シン役を演じる植原卓也/上田堪大が力強い歌声で歌った。
2曲目は、『心の翼』。今ある食糧がいずれ尽きることを見据え、未来のために種もみを播こうとするミスミの姿に心を動かされたケンシロウが「希望をもっていれば、きっと明るい未来が訪れる」とみんなに呼びかける1曲。ケンシロウ役の大貫勇輔、バット役の渡邉蒼、リン役の山﨑玲奈/近藤華、マミヤ役の松原凜子、トヨ役の白羽ゆり、ミスミ役安福毅が美しいハーモニーで歌い上げた。
3曲目は、変わり果てた兄ラオウにかつての優しさを取り戻してほしいと願うトキと、ラオウとの戦いに破れ、残りわずかとなった自分の命をかけ愛する人の幸せを願うレイ。その二人の願いを込めたナンバー『願いを託して』。トキ役の加藤和樹/小野田龍之介、レイ役の伊礼彼方/上原理生が歌った。本来同じ舞台には立たないWキャストがこうして1曲を歌いあげるのは、製作発表ならではの醍醐味だろう。
4曲目は類稀なる才能を持ちながらも全てを捨てて無頼の人生を送っているジュウザ。悲惨な現実は忘れて楽しく生きようと楽しく歌い上げるナンバー『ヴィーナスの森』。ジュウザ 役の伊礼彼方/上原理生が歌ったが、会場に手拍子を求めたり、ステップを踏んだりして、ノリノリな1曲だった。
5曲目は、トキが兄ラオウとともに、北斗神拳の伝承者に弟子入りしたときのことを思い出して歌う『兄弟の誓い』。青年のラオウとトキが、両親の墓の前で北斗神拳の師匠・リュウケンを待っていると、そこに現れたリュウケンは「北斗神拳の伝承者は一人だけだ」と言って二人を崖に突き放す。そして、這い上がってきた者が伝承者だという場面から始まる。トキ役の加藤和樹/小野田龍之介、青年トキ役の百名ヒロキ、青年ラオウ役の一色洋平、リュウケン役の川口竜也が演じた。
6曲目からは、フランク・ワイルドホーン自らがピアノ演奏を担当するというサプライズも!
ユリアが作品の終盤で歌うソロナンバー『氷と炎』。幼い頃からラオウとケンシロウの二人に愛されてきたユリア。あまりにも生き方が違う二人の間に挟まれたユリアが複雑な自身の思いを歌い上げる曲で、ユリア役の平原綾香とMay'nが伸びやかに、そして情感たっぷりに魅せた。
最後の曲目は『心の叫び』。村で出会った少女リンを救うため、村を襲った悪党たちに北斗神拳で立ち向かっていく、ケンシロウの暴力への怒りと伝承者としての覚醒を歌ったナンバー。ケンシロウ役の大貫勇輔がソロで歌った。最後は「あたたたーっ!」と叫び、「お前はもう死んでいる」という名台詞を言い放った。
いずれの楽曲も今回が初披露となったわけだが、『フィスト・オブ・ノーススター 北斗の拳』の世界観の片鱗を感じることができた。ここに芝居や踊りやさまざまなスタッフワークが重なったらーー。ますます開幕が待ち遠しくなった。
続いて、記者会見が行われた。
ーー今日の歌唱披露をご覧になって、どんなお気持ちですか。
フランク・ワイルドホーン:まずは昨日のことをお伝えさせてください。僕は1年半ぶりに稽古場という空間にやっと行くことができました。歌い手が歌ってくれたその空間にいられたことは、とても特別です。こちらにいらっしゃる方々もそうでしょう、ニューヨークでもそうです。演劇をやっている者にとっては本当に大変な1年でした。
私は音楽の癒しの力、そして愛というものはすべての垣根、国境を超えることを信じております。なので昨日、稽古場に行けたこと、そして今日、みなさんの素晴らしい歌唱を聴けたこと、すばらしいミュージシャン、すばらしいアーティストのみなさんとご一緒できたことを名誉に感じて、どれだけ自分はラッキーなんだろうと感じております。
私は心を込めて、心から書く作曲家でございます。そして、歌い手の皆さんには、ぜひとも心から歌っていただきたい。心の表現さえあればと思っているんです。みなさんそれを感じていただけるんじゃないかと信じております。
ーー最初にオファーが来たときはどんなことを思いました?
フランク・ワイルドホーン:10年前のことです。ホリプロの関係者が『デスノート』をミュージカル化するので、作曲して欲しいとオファーしてくださいました。『デスノート』の成功があってこそ、『北斗の拳』という作品が誕生できた。
僕は漫画というものを知りもしませんでした。今2人の息子たちが「お父さん、すごい!漫画のミュージカルを書いているの?」と言ってくれています(笑)。そして、『デスノート』の時もそうだったんですけど、漫画を読ませていただき、テレビ・アニメを見て、映画を見た時に、「どうやってこれをミュージカルにするんだ?」と思いました。
私はこの作品を書くときに、脚本・作詞の高橋亜子さんと一緒に作らせていただいたんですけれども、コロナがありましたので、直接会って打ち合わせをして書くということができなかった。離れたところで、共同で書いていった。それは、自分にとっては変わった作品の作り方になりました。
ですが、この作品は巨大の山であり、登ることに喜びを感じさせていただける山です。そして、僕は毎朝山登りがしたいとと思うような男です。この場を借りて、改めて感謝を申し上げます。アーティストというのは自分の声が、人に届くことが何よりも大事です。そういう場を与えてくださり、どうもありがとうございます。
ーー台本に込めた思いや、稽古の手応えなどを教えてください。
石丸さち子:この日本を代表する『北斗の拳』という物語。漫画やアニメなど、いろいろな形で愛されてきた『北斗の拳』をミュージカル化するというときに、みなさん、「『北斗の拳』をミュージカルに?」と思うと思うんです。私自身もそうでした。
でも、この中には思いがけず、本当にミュージカルに必要な原石が、エッセンスがいっぱい眠っていました。出会うこと、別れの悲しみ、光を探すこと、影に生きて苦しむこと、子どもの希望、現実に立ち向かう大人の苦しみ、そして悲惨な時代に求められる救世主、救世主になる苦悩、闘うこと......最後の一つは最も大切な、愛。
原作に長い時間をかけて高橋亜子さんが向き合って。オリジナルストーリーとも言えるし、原作をリスペクトし、原作の魅力を詰め込んだストーリーとも言える世界観を作り上げてくださいました。そこにフランクさんがあふれる泉のようなスピードで、どんどん素晴らしい楽曲を送ってくださった。
私は、新しいミュージカルとして立ち上げるために、いろいろな妄想・空想をしました。一つの人間のドラマとしてストレートプレイのように見せられるところ、大胆なアクションのシーン、さまざまな組合せで世界を構築し、それを俳優とシェアしているところです。
物凄いスピードで稽古を続けています、大変だと思うんです。進んでいく内容の多さもそうですし、身体がとにかく大変!体も心もフルに使いますから。オリジナル作品を作り出すための勢いとエネルギーと、一つになっていく心が稽古場で今、生まれています。最初の一歩を今日皆様にお届けできて、大変嬉しく思っています。
ーー今回オファーを受けた時、どのような気持ちでしたか?台本を読んだときの印象もあわせて教えてください。
大貫勇輔:『北斗の拳』をミュージカル化すると聞いた時に、驚きました。「どんなふうになるんだろう?」と。そして「僕がケンシロウ?」と2段階で驚きました。最初に台本読んだときは、自分がまだケンシロウになれるのだろうか…と思っていたので、話が全然入ってこなくて。
そしてチラシの撮影があって、ヘアメイクさんやスタイリストさん、ディレクターさん、いろいろな方の力をお借りして、あの一枚のチラシができました。その時に、初めてケンシロウになれるかもしれないと思えました。そこからいろいろな光が見えてきて、改めて台本を読んだ時に、自分の中でも世界が広がっていって、「やれるかもしれないな」と!
さらに、素晴らしい楽曲が届いて。最初は不安を感じていたのですが、光が大きくなって、確信に変わっていきました。もちろん大変なことはいっぱいあるんですけど、本当にたくさんの力を借りて、僕はケンシロウとしてできるかもしれない。そう日々思っている感じですね。
平原綾香:最初お話をいただいたときは、私がユリアをやったら、お笑いになるんじゃないかと、すごく不安に思いました。でも世界中で有名なあの『北斗の拳』を一からオリジナルミュージカルとして立ち上げていく経験はなかなかできることではないから、ぜひやらせていただきたいなと思いました。
屈強な男たちが出てくるので、私もケンシロウたちと一緒に体を鍛えようと思ったんですけど、よく読んでみると、ユリアは戦わないんですよね(笑)。ユリアって、もしかしたらどの男たちよりも実は心の面で一番強いんじゃないかなと思っていて。だから、いろいろな孤独と戦う男たちのドラマなんですけど、ユリアがその人たちに光や癒しというのを届ける存在、みんなを見守る役なんだということがだんだんと石丸さんの演出を通して分かってきた状態です。
台本を読んだときは大号泣!声を出して泣いちゃった。今、命があることがどれだけ尊いことか。この期間に私たち自身が命と向き合って、愛する人を守るためにいろいろなものと戦っている。ケンシロウたちが生きる世界と今現代とが本当にリンクしていて、勇気づけられて、私は毎日お稽古場に行くのが楽しみに仕方ないです。素晴らしいカンパニーに入らせていただいております。とにかくすごいミュージカルなので、ぜひみなさん劇場に来ていただければと思います!
May'n:私もユリアのお話をいただいたときは、まさか、この『北斗の拳』をミュージカル化して、しかもユリアを自分が演じさせていただけるなんて、とびっくりしました。原作ももちろん読みましたが、ユリアのキャラクターというのはとても不思議な存在だと思っていて。美しさもある、柔らかさもある、だけどそれだけじゃなくて、強さもある。稽古をしながらユリアらしさをどんどん見つけていきたいと思います。
日頃から私はトレーニングを続けているので、『北斗の拳』のお話をいただいたときには「ついに私の筋肉を見せる時がきた!」と思ったんですが(笑)、ユリアは戦わないということで。キックボクシングを普段やっているんですけど、キックボクシングは心技体を全て鍛えるスポーツ。今回はキックボクシングで鍛えた心の部分をユリアにいかせたらと思っています。
同じ時代を生きているお客様に届けるミュージカルということで、『北斗の拳』の世界観を失わずとも、やっぱり生身の人間だからこそお客様に伝えられる愛とか、ミュージカルに来てよかったなって思ってもらえる、そんな空間をお届けできるように頑張っていきたいなと思います。
福井晶一:最初にこの『北斗の拳』がミュージカルになると聞いた時、僕は『北斗の拳』をリアルに見ていた世代で、もう本当に興奮しましたね。もう体温が何度かあがった(笑)。そして、さすがホリプロさんだなと思いましたね。オリジナルへの挑戦に関わらせていただけること、すごく嬉しいです。
演じる役がラオウ役ということで、『北斗の拳』の原作ファンは、やっぱりラオウのファンが圧倒的に多いと思うんです。この役をいただいて、まずはホリプロさんからの条件が「体を鍛えてください」ということだったので、このコロナでなまった体を1年間で頑張って鍛えてきました。
アニメも漫画もそうなんですけど、とにかくパワフルな描かれ方をしていますよね。それをどうやって舞台で見せていくのかなと思ったんですけど、台本を読ませていただいて、本当にいろんな要素が詰まったーーもちろん戦いもあるんですけどーー兄弟の愛や親子の愛などが詰まった作品で。ミュージカルにするには本当に適した題材ではないかなと思いました。『北斗の拳』のファンは男性の方が多いと思うんですけど、台本を読んだ時に、これは多くの方に愛される作品になるなと確信をしました。今はそれに向けて、みなさんと一生懸命稽古をしているところです。
宮尾俊太郎:僕は最初にこのお話をいただいたときにですね、僕は一体何のプロテインを飲めばいいんだろうと思いました(笑)。いろいろ探して、いいものを見つけております。もちろんそれはビジュアルのためだったんですけども。
やはり皆さんも誰もがイメージを持ってるラオウの肉体にどれだけ近づけるか。それがまず不安だったんですが、脚本を読んでみますと、それよりもっと素敵なことがたくさん詰め込まれていました。アクションやフライング、そして熱いお芝居、歌、戦い、踊り、こんなに詰まってる作品は日本で多分初めてなんじゃないかと思うぐらい。本当にすごいものが詰まってます。
この公演が終わる頃には、僕は新しいものを手にしている気がします。皆さんも日本で今まで見たことのないミュージカルを楽しみにしてください!
加藤和樹:まずこの『北斗の拳』のミュージカルをお話をいただく前に、風の噂で「『北斗の拳』がミュージカル化するらしい」という話を聞いて、本当に原作のファンの僕としてはですね、もう見に行く気満々だったんですね。どういう作品になるんだろうと。そのなかで、トキ役のお話をいただいて。
まさか自分が昔から好きな作品、ゲームも持っていましたし、昔はね、『北斗の拳』ごっこもしていました。そんな作品に自分が出演することが本当に光栄ですし、だからこそ自分の果たすべき使命というか、トキ自身も、いろいろな宿命を背負って生きて、それを受け入れて生きている男なので、それをどう作っていこうかなと思いました。
演出は石丸さち子さん。信頼がおける、本当に愛が熱い方なので、心を預けて、共に戦っていけると思いました。そして、Wキャストが小野田龍之介くん。自分だけでは見つけられないトキという役を、素晴らしいスタッフとキャストと見つけて、本当に全く誰も想像し得ない、全く新しいミュージカルをみなさんにお届けできるよう、努力して頑張っていきたいと思います。ご期待ください。
小野田龍之介:初めてこのお話をいただいたとき、まず皆さんおっしゃってる通り『北斗の拳』がついにミュージカルになるんだと驚きでいっぱいでした。それと同時に『デスノート』や『生きる』といった、日本とアメリカとの共同プロジェクトのオリジナル作品がつくられてきて、いつか自分もオリジナルミュージカルの一部になりたいと思っていましたので、一部でも関わることができて、本当に嬉しく光栄に思いました。
僕はこの『北斗の拳』をリアルタイムで見ていた世代ではないので、みんな筋肉ムキムキで戦う作品なんだろうなあと思って、台本読んで稽古をしたら、体の筋肉もそうなんだけども、非常に心の筋肉までも熱くなるようなシーン、物語、音楽がたくさんあって。生身の人間が演じ甲斐のあるミュージカルだなと改めて感じました。
稽古をしていても、右を見ても左を見ても、よく知った皆様ばかりなので、稽古しても楽しいです。石丸さんとは初めてですけども、ここからいろいろな可能性を作品の中で見つけながら、最高のエンタテインメント、最高の舞台になるように努めていきたいと思っております、よろしくお願いします!
伊礼彼方:皆さんおっしゃってるところと一緒で、『北斗の拳』をミュージカル化なんて、どうやってやるんだろう?というところから始まったんですけども。以前から堀社長をはじめ、ホリプロの「演劇界に、新しい風を吹かそう」という姿勢にも、すごく僕は感化されて。いつかホリプロさんが作る、新作に出演にしたいなと数年前から思っていました。それで、このお話をいただいたときにぜひとも!と。未知数じゃないですか。皆さんも多分そうだと思うけれど、どうなるんだろうって。僕もそうだったんですけど、こういう新しい作品にかけてみたいという思いが募っていたんですよね。
僕も小さいときは、『北斗の拳』ごっこをやっていたんですね。顔面以外はどこ叩いてもいいという遊びをしていたので(笑)、ケンシロウの「あたたたーっ!」も勇輔くんに負けないぐらい上手なんですけどね(笑)。僕は本番では言わないですけども(笑)。
本を読んだときは、原作をぎゅっと凝縮しているので全体像があまり見えなかったのですが、そこにワイルドホーンさんの音楽が重なった時の感動。これは石丸さんと高橋さんが練って練って作られた脚本と、ワイルドホーンさんの楽曲が合わさった時の衝撃は今でも忘れられないですね。今回は聞いていただけなかったのですが、リンという役の曲が大好きで。この曲を聞いた時に泣きました。涙が止まらなかった。それは彼女がもっている凛とした強さと、ワイルドホーンさんの素晴らしい旋律が合わさった時の化学反応をぜひ!
上原理生:『北斗の拳』のお話をいただいたとき、皆さんと同じく『北斗の拳』をやるの?という驚きがまずありまして。自分自身、リアルタイムではないですけれども、原作に高校生の頃に魅了された一人であります。少年だったならば、ほぼ誰もが一度読んだことがあって、そのキャラクター、物語にに魅了されたであろう『北斗の拳』。そこに自分が出させてもらうんだという興奮があります。
『北斗の拳』というのは男たちの戦いもありますけど、数々の名言もたくさんある作品だと思います。ちゃんとその名言が台本に織り込まれていて、「これ言えるんだ」、「これ聞けるんだ」というのがいっぱいありまして、ワクワクしております。「あべし!!」から、「ひでぶ!!」から、たくさんの名言が再現されますので、楽しみにしていてください。
男たちの生き様と、女性たちの強さ、子どもの純粋無垢な思いがしっかり織り込まれております。あとは僕と伊礼さんは(技の一つである)南斗水鳥拳があるので......飛びます。頑張って、華麗なる水鳥拳を見せていきたいと思います。
植原卓也:お声がけいただいたときは本当に驚きました。もともと原作を読んだことはあるんですけど、改めて見たら、シンがこんなに早く登場していたかな、なんて思って。ケンシロウと対峙するキャラクターの中でも一番最も最初に出てきて、尚且つ、ケンシロウの胸の傷をつけているのがシンだったりと、インパクトのあるキャラクターで、とても光栄だなと思います。
今年入ってからすぐ、いろいろリモートの稽古とか動きの練習とかも始まっていて、すごく気合いがどんどん高まっていくなかで、本稽古がはじまったのが、つい最近なんですけど、最近始まったと思えないぐらい、みなさんそれぞれキャラクターと向き合っていて。もう稽古場が白熱しています。
なおかつ新作ということもあって、みんなまだ見たことない景色をみんなでつかみに行っている感じがとても素敵で、頑張ろうと思える環境です。原作にもちろん忠実な部分もたくさんあるんですけど、このミュージカルならではのストーリー展開だったり、自分が演じるシンも、原作にないような生き様もありますので、ぜひ見にきてくださる皆さんは、原作通りという部分と、見たことのないキャラクターの側面みたいなものをあわせて楽しんでもらえるように頑張っていきます。
上田堪大:初めてお話聞いたときは「僕が出るんですか?」と2回ほど同じ言葉を繰り返しました。僕自身グランドミュージカルが初めての出演で、普段2.5次元を中心にやっているので、「2.5次元ではなく、グランドミュージカルですか?」という感覚で。今もそうなんですけども、稽古の序盤から、常に緊張の中だったんです。
ただ、(Wキャストの)シン役が植原くんで。同い年でほっとしています。石丸さんの大きな愛に包まれながら、皆さん本当に仲良くしていただいて。自分が事前に台本を読んでいた時と、今、目の前にあるものがすごく変わっていっている。自分の想像していなかったものというか、どんどんきれいな景色になっているなと思っていて。この景色をお客さんに届けられたらどれだけ幸せなんだろうなと思っています。
まだまだ自分自身は課題だらけなので、本番までにしっかりと作り上げていきたいなと思います。
ーー稽古の様子や改めての意気込みを教えてください!
大貫:皆さんのお話を聞いていただいた通り、本当に日々白熱した稽古です。それぞれがイメージした世界が現実となって現れたときに、予想しなかった、予想をさらに超えた感動や発見があって。今日、劇中の歌をやっと皆さんに聞いていただけることが本当に嬉しいです。本番まで1ヶ月と少しありますが、ここからどんどん磨きがかかって…もう既にものすごいパワーが渦巻いてるんですが(笑)、これがもっと洗練されて、皆さんに素晴らしいものをお届けできるのではないかなと思っています。
キャスト・スタッフ一丸となって頑張りますので、皆様、ぜひ見にきてください!
ーー最後に観客の皆様へメッセージをお願いします。
石丸:今、世界中がリーダーを求めている時代だと思います。このミュージカルの中で、救世主として、民衆から望まれて立ち上がっていくケンシロウの姿に私が一番注目しているのは、彼が闘うエネルギーとするのが、他者の痛み、悲しみだということです。
『北斗の拳』の中では、強敵のことを「とも」と呼びますが、その「強敵(とも)」の悲しみ。それがケンシロウの中にうず高く積もった時に、拳が完成するんです。その過程が素晴らしくて。大貫ケンシロウが愛を守るために戦っている時、悪を打ちのめすために怒りにうち震えながら戦っているときに、リーダーの登場を感じ、世界的なレベルの歌とアクションの融合に、私は胸が震える思いであります。きっとお客様も胸のすく思いを感じていただけると思います。
そして、人物の厚みを描く、ドラマを描いていくことともに、「あのシーンは?あの台詞は?あの技は?どうやって表現するの?」ということに、一つ一つあの手この手を使ってお応えしたいと思います。どうお楽しみになさってください。
舞台芸術が苦しんでいる時代に、劇場に足を運んでくださるお客様、今日配信で見てくださっている皆様、応援をありがとうございます。皆さんにミュージカルってこんなに楽しいものなんだと思っていただいて、そしてまた、新しい形のミュージカルをお届けできるよう、いつも感謝しながら、みんな歩んでおります。劇場にどうぞお越しください。お待ちしております。
取材・文・撮影:五月女菜穂

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