Base Ball Bearの若さ漲る
傑作『C』に
パッケージされた熱情と疾走感

1stアルバムらしいアルバム

M3「祭りのあと」は4つ打ちダンスチューン。この時代のギターバンドにあまり詳しくない自分でも、2000年以降は4つ打ちを取り込みバンドが多くなっていった印象があるけれども、この楽曲もそこにカテゴライズされるものであろう。シンプルだが、自然と気持ちを前向きにさせるリズムが、グイグイと聴き手を引っ張っていく。ざらついたエレキギターの音も全体に切迫感を与えている印象である上、グラムロック的なダイナミズムも強めで、独特の高揚感のあるナンバーだ。

その高揚感はM4「ELECTRIC SUMMER」も変わらない。キラキラとしたギターサウンドと、清涼感のあるメロディーが全体を貫く、M3とはタイプの異なる楽曲ではあるものの、リズムの疾走感とサウンド総体の圧力のようなものはM4も強い。それでいてサビのコーラスワークが幻想的な上、2番では若干変拍子気味に展開するなど、ひと筋縄ではいかないアンサンブルも面白いところだ。

M5「スイミングガール」もまた4つ打ちのビートを基本にしながら、やはりドラムが食い気味に鳴らされる。キャッチーなフレーズを繰り返すギター、ベースもリズムに付かず離れず、我先に…と曲の最後を目指しているかのような、どこかデッドヒートのような演奏を見せる。しかし、冒頭から“グイグイ”だの“迫る”だの似たような言葉ばかり連ねていて、語彙の乏しさに我ながら閉口しているのだが、その辺は差っ引いていただくとして、そんなふうに感じる音像であることは是非ご理解いただきたいと思う。M1からM5まで息つく暇もないバンドサウンドが、まさに怒涛の如く鳴らされていることを強調しておきたい。
M6「YOU'RE MY SUNSHINEのすべて」はややマイナー調で、軽快なギターのストロークとメロディアスな歌は渋谷系にも似た感じ。どこかウエットな箇所もあって、ここでアルバムは少し落ち着くようでもあるが、そう思うのも束の間、演奏に込められた熱がまったく失われていないことにすぐに気づく。サビはやはり情熱的ではあって、圧力を感じる。

M7「GIRL OF ARMS」はディレイが深めにかかったギターとベースの単音弾きから始まるミドルチューンで、歌い方も含めてゆったりとしているので、ここで本格的に(?)テンポが落ち着くが、やはり、そうだからと言ってまったりとなるかというと、力強く叩きつけられるスネアドラムの音がそうさせてくれない。間奏のギターソロもそう。ブルースフィーリングがありながらも決して落ち着いた感じではなく、攻めたフレーズを聴かせている。

M8「DEATH と LOVE」は、ここまで本作を聴いてくると、“待ってました!”となるようなギターサウンドが爆裂。これまでにも増して本領発揮といった感じの音圧、音像だ。それでいて歌はメロディアスで、どこか憂いを秘めた感じであって、ここまでアルバムを聴いてくると、それもBase Ball Bearらしさであることを認識する。そのサビにも重なってくるギターが奏でる旋律がヴォーカル同様にキャッチーで、これもまた印象的。決して流麗な演奏ではないが、だからこそ、スリリングさが増しているようでもあって、そこもいい。

M9「STAND BY ME」はサビ頭だけあって、歌メロがキャッチーかつさわやかであるが、やはり疾走感は損なわれていない。ちょっとニューロマを彷彿させるドライなギターが、ソリッドなビートと相俟って楽曲をドライブさせていく。

M10「ラストダンス」は、このタイトル通り、さすがにファンキーでダンサブル。とはいえ、全体的な聴き応えはどこか幻想的でもあって、ここでもまた一筋縄ではいかないバンドの本質が垣間見える。

M11「SHE IS BACK」はシンプルなロックンロールと言ってもいいだろうか。タンバリンで疾走感を加速させているロックチューンである。とにかく歌がワイルド! ほとんど声が枯れているんじゃなかろうかと思うくらいにシャウトしているし、それに呼応してか、ギターもやたらノイジーだ。ラストは不思議なディレイで締め括られており、それも含めて、フィナーレに相応しい勢いではないだろうか。

…と、アルバム『C』よろしく、こちらも勢いに任せ、あまり文章を整えることなく、そのサウンド面を収録曲順に書き殴ってみた。とにもかくにも、スピーカーから飛び出さんばかりの熱量がどんどん襲ってくる、ロックバンドの1stアルバムらしいアルバムである。

OKMusic編集部

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