劇団『ドラマティカ』山本一慶・安井
一真・松田岳インタビュー 想像力が
掻き立てられる関係性の5人で挑戦す
る舞台

大人気ゲームアプリ「あんさんぶるスターズ!」を原作とする舞台『あんさんぶるスターズ!オン・ステージ/THE STAGE』は長い歴史を持つ人気シリーズだが、今回上演される劇団『ドラマティカ』は「あんさんぶるスターズ!!」に登場するキャラクター・日々樹 渉が主催する演劇サークルとして、いままでとは全く異なるオリジナルストーリーを描く舞台になるとのこと。
2.5次元舞台は原作の物語に沿ったストーリー展開をする場合が多いが、原作にもないお話を描くという少々異例となる本作の劇団『ドラマティカ』。第1回公演「西遊記悠久奇譚」は悟空、三蔵、八戒、悟浄、玉龍の5人の旅の物語。「あんスタ!!」のキャラクターたちが描く「西遊記」はどのようなものになるのであろうか。
10月23日(土)より上演中の本作より、山本一慶(悟空/氷鷹北斗 役)、安井一真(三蔵/日々樹 渉 役)、松田 岳(玉龍/乱 凪砂 役)の3人から、気になるこれまでのシリーズとの違いや稽古場での様子を聞いた。
お芝居への向き合い方が『ドラマティカ』はより強い
ーー安井さんへうかがいます。久しぶりに日々樹 渉を演じることについての感想をお願いします。
安井:3年ぶりになりますね。何度も演じさせていただいたので彼を忘れてはいません。今回は渉さんが「三蔵を演じる」という特殊な役なので、決まった時はすごく緊張しましたが、初めて出た時から一緒にやっている一慶くんも居ると聞いて安心感もありました。ビジュアル撮影をしてくださったスタッフさんもお馴染みの方々で、最初に『あんステ』に出演したときの撮影で「これやっちゃおうよ!」とたくさんポーズや小道具を使ったことを思い出しました。懐かしい! 渉さんは何やってもキャラクターっぽくなれるから、とりあえず色々撮ってみようって雰囲気の撮影なので、久々にそれを体感してすごく楽しかったし、その場の空気感もとても温かいなと思いましたね。そういえば今回は(グッズの撮影で)桃を持って撮影したなぁ。
山本:確かに桃持って撮ったな~。
山本一慶
松田:中国の逸話で桃は意味のある食べ物なんだよね。
安井:あとは風で髪をなびかせるショットもやりました。三蔵なので身体の動きはおしとやかな感じだったんですが、風は強かったですね(笑)。先日見せていただいたグッズのブロマイドのサンプルでも、髪がぶわーっとなびいててすごく素敵でしたね。
ーー松田さんへおうかがいします。今回初めての参加となりますが、『あんステ』『ドラマティカ』へのご出演が決まった時の感想をお願いします。
松田:ファンに愛されているとても大きなコンテンツということを知っていたので、それに関われるということはとても嬉しかったです。どんなことが待っているんだろうという未知なものに、緊張感もドキドキもあります。知っている役者さんもたくさん出演していますし、それに加われるのはやはり嬉しいですね。『あんステ』シリーズはお客さんがすごく楽しんでるなっていう印象があり、今までの公演映像を見ていても画面越しからそれがすごく伝わってくるんです。ストーリーやキャラ同士の人間関係だけでなく、楽しみ方を無限に模索できる、そういう印象です。自分もそういうところをちゃんと勉強して演じていきたいです。
ーー凪砂くんの印象をお聞かせください。
松田:すごく大きな方だなと思いました。高い水準にあるパフォーマンス能力ももちろんですが、キャラクターに対する説得力がある、キャラクターの魅力をお客さんにちゃんと伝えられる役者でいたいなと思っているので、これはすごく大変な役をいただいたなと感じました。
ーー「あんスタ!!」舞台作品の先輩として山本さん・安井さんから、松田さんへ教えたいことはありますか。座組の雰囲気や、稽古の大変さなど。
山本:今『ドラマティカ』の稽古中ですが、『あんステ』と全く違いますね!
安井:うん、全然違う!
安井一真
山本:逆に僕らもびっくり、未知の領域です。6年やってきて、『あんステ』はこういう稽古をしてこういう物語の作り方で……っていう感覚が染みついていたので、改めて『ドラマティカ』の稽古をやってみたら今までとの違いが大きすぎて。でも今の方がお芝居を一本作っているという感覚はあります。『あんステ』ではライブや日常生活を舞台化していたんですが、今作では劇団として「西遊記」を原案としたオリジナルストーリーをキャラクターたちが舞台化しています。お芝居に対しての向き合い方が『ドラマティカ』は強いような気がしています。ちょっと真面目な時間が多いような――って言ったら今までがどれだけふざけていたのかっていう感じだけど!
安井:そんなことないよ!(笑)
山本:でもふざけることで生まれるものもあったよね。キャラクター同士が密になったり、関係性がどんどんできていったり。(松田さんの方を向いて)だから、おおいにふざけてほしい。
安井:いや、でももう既にふざけ倒してますよ!
松田:(笑)。
山本:岳くんはすごく上質な笑いを届けてくれるんですが、それがすごいギリギリの時があって。
安井:岳くん以外にもそういうことをするメンツが集まっているんです。みんなふざけてるんだけど、最後に岳くんがタイミング悪くトドメを刺すような構図になってるよね!(笑) でもそれがすごく面白い!
山本:ぜひ今後も続けていただいて。僕は楽しみにしています。攻めていってほしいです。劇団『ドラマティカ』は岳くんに面白いところを全部持っていかれています(笑)。
松田:いやいや、そんな!
松田 岳
ーー「あんスタ!!」はキャラクターも多く、登場人物たちの関係性の把握も難しいと思います。今回は北斗、渉、夏目、宗、凪砂の5人が原作にあるサークルメンバーから選出された今までにない形ですよね。
山本:今回はこの5人が集まって、ひとつの演劇を作り上げます。“ユニット”のメンバーではないからこそ、まだ見たことがない関係値がここにある。キャラクターによっては今まで原作や舞台のストーリーでは深く関係性が描かれていない、そんな5人が稽古をしてひとつの作品を作る――それが僕はすごいことだと思っています。お客さんもまだ見たことがないものだから、想像がすごく膨らんじゃいますよね。ものすごく想像力を掻き立てられる。そういう刺激されるような関係値がこの5人はちょうど良いのかもしれません。「西遊記」は旅する仲間たちがすごく仲良かったりするじゃないですか。友情や愛、絆を描く作品なので、北斗と渉、宗、夏目、凪砂の5人で見ることができるというのは、「あんスタ!!」ファンのみなさんも新しい境地を感じられるんじゃないかなと思います。僕らもまだわからないこといっぱいあるもんね。
安井:うん、「あんスタ!!」はキャラクターも多くお話も濃厚なので、まだまだ把握しきれていない部分もきっとある。
山本:僕らが役を通して作る関係値がキャラクターたちにも反映されて、この未知な領域に挑戦できたらなと思ってます。
アイドルとして舞台に立つこと、もっと“自分”を出していい
ーー山本さんへうかがいます。『あんステ』シリーズでは初演から氷鷹北斗を演じている山本さんですが、ご出演したことでそれまでと変化したことはありますか。
山本:僕の役者人生の中でも『あんステ』はすごく大きいです。知名度という点もありますが、アイドルを演じるっていうことも自分の新しい一面を出してくれた気がしています。僕は自分自身をあまり前には出さず、押し殺して生きてきた面がありますが、お芝居をやっているときはいろんな自分を出して良い時間だと思っていました。
そんな居心地が良いお芝居という時間の中で、北斗を演じるときに、例えば「Trickstar」4人のバランスとかを考えて、自分なりの「氷鷹北斗」というキャラクターを作り上げてきました。こうして『あんステ』や北斗を演じ続ける中でアイドルとして舞台上に立っているとき、自分の新しい一面を出せた感じがしました。もっと“自分”を出していっていいんだっていうきっかけだったのかな。ずっと閉じ込めてきていたものが自然と前に出てきてくれるようになったなって思います。
そういう面ではすごく北斗に感謝していて、『あんステ』はとても大切な作品です。僕は北斗に似ているし、いろんなキャラクターの中でも一番響いているのかもしれない。自分を出せずにいるっていうところは同じでした。
山本一慶
安井:僕も一慶くんと同じ思いですね。僕はずっと作曲やダンス、音楽をやってきて“自分”を表現していく活動をする反面、人に見せたくない自分というものもある。そのすべてを音楽やお芝居の表現に繋げていたりします。人に笑ってもらうために演じ続けるという生き方をする渉さんと、人生全てが表現という点はすごく似ているのかなと思います。
渉さんを演じるようになってから自分の中では確実に「お芝居」というものに向ける目線も変わりました。僕の『あんステ』は芸能界入って間もない、セリフを上手く読むのも精いっぱいだった頃にいただいた大きい舞台。周りの先輩方に教えられたこともすごく勉強になったし、舞台が楽しいなって思わせてくれた作品でもありますね。
ーーおふたりと同じように、松田さんが凪砂くんと似ていると思うところはありますか?
松田:まず作品のことを調べた時、こんな人っているのかなぁって現実離れしたような印象を受けました。ゴッドファーザーの存在しかり、彼の幼少期からの過ごし方、彼自身が抱えている確固たる思いしかり。彼が他の人に対する想いとかそういう穏やかな部分を見ると、彼の優しさや気遣いというものにすごく触れられた気がしています。彼のアイドルとしての魅力だけでなく、そういう優しい一面のことを考えると、本当に良い人なんだなって思いました。まだまだ足りないと思いますが、自分が彼を理解する、僕が凪砂くんに近づいていくような役作りをしています。自分と凪砂くんは、似てないですね!
一同:(笑)。
山本:すごく丁寧に語ってたのに、最後「似てないです!」って言い切っちゃって(笑)。
安井:これが岳くんですね~おもしろすぎる!
ーーでは山本さん、安井さんのおふたりから見た、松田さんと凪砂くんの共通点はありますか?
安井:岳くんってただ立ってるときもオーラがあるんです。普通にしゃべっているときはほわっとしているんですが、今みたいにバシッと決めている時もそうですし、稽古をしているときは稽古着でも目を惹いちゃうなって思いますね。凪砂くんも岳くんのようなオーラがある人なんじゃないかな。
山本:『あんステ』シリーズの次回作(『あんさんぶるスターズ!THE STAGE』-Track to Miracle-)でも岳くんは凪砂を演じるわけですが、僕らは『ドラマティカ』で玉龍を演じている凪砂の姿を先に見ているわけだし、次は新たにどういう凪砂で来るのかっていうのもすごく楽しみですね!
殺陣、歌、お芝居――モリモリ盛りだくさんでお客さんの反応も気になる
ーー台本を読んだ感想や、稽古に入っての感想をお願いします。
山本:台本を読んだ印象はすごく面白くて、ただの「西遊記」じゃないなっていう、僕の好きな感じでした。その時はあまり気付いてなかったんですが、稽古場に入って徐々にわかってきたことは、「これはひょっとして盛り込みすぎ……?」ということでした。
安井:モリモリですね。
山本:アイドルたちができるレベルを凌駕しているかもしれない、モリモリ盛りだくさんな感じになってます。殺陣あり、歌あり、お芝居あり……人間の限界を超えたような、これ忙しいでしょ!?  っていうことがわかってきました。
安井:逆に『あんステ』シリーズを観に来てくださっていた方はどう思ってくれるんだろう? って思います。
安井一真
山本:もちろん「西遊記」というストーリー上、アクション要素があるのも予想できると思うんですが、殺陣をする姿は今まで観たことないですもんね。殺陣は我々の実力がキャラクターにトレースされるから、それもドキドキです……。今回の『ドラマティカ』は『あんステ』とは違った立ち位置なので、僕らにキャラクターを任せてくださっているという部分も大きいです。原作では描かれていない分、未知の領域を僕らに託されているので、そこがすごく挑戦でもあるし、ありがたくもあるし、不安でもある。そんな入り乱れている感情でいっぱいです。そしてこんなにやることが多い現場は久々ですね。どの舞台と比べてもここ一番大変かもしれません。
松田:すーごいですよね。
山本:そういえば、玉龍っていうキャラクターがいるのも珍しいかも。
松田:「西遊記」はロードムービー的な感じで、目的地があって旅を進めていてその間に何かはが起こって……っていう流れはすごく想像しやすいですよね。今回の舞台ではおもしろい謎が隠されていたり、あれってこういうことだったんだっていうお客さんも一緒に謎を解読できる要素もあり、すごくたくさん盛り込まれているものになると思っています。
山本:やることがいろいろ盛りだくさんなので、自分のことまではまだ手についていないんですが、僕から4人を見ていると、みんなキャラクターに見えるのがすごいところです。
安井:渉さんを含め、個性がとても強い子が集まっているじゃないですか。それが上手く作用しているなって思うんですよね。「あんスタ!!」のキャラクターが演じる「西遊記」の登場人物もすごくいい感じにみんな個性的なんです。性格も違うし、似ている人がひとりもいない。このバラバラ感、デコボコ感がすごく物語とも合っているなって感じますね。
ーー今回の舞台で一番楽しみなことは?
山本:お客さんの反応です! この舞台を観てお客さんはどう思うんだろうと、いち役者としてめちゃくちゃ興味があります。それがもうすっごく楽しみ。どう感じてくれるんだろう? って思うんだけど、僕は演じる側だからそれを味わえないんです。いわゆる2.5次元と呼ばれる舞台をやったら、どんな感想を言ってくれるかってなんとなくわかるんですよ。もちろん良い悪いいろいろありますが、どっちにしてもすごく勉強にもなるし、意欲にもなる有難いものです。「ここが良かった」って言われれば「ああ、これで正解だったんだ、これからも頑張ろう」って思えるし、お客さんが原作を知っているからこその声があるのはわかるんです。ただ『ドラマティカ』は本当にどういう反応が返ってくるかがわからない。
安井:これが仮に僕自身が三蔵で、一慶くんが悟空で、岳くんが玉龍で「西遊記」をやります、っていう作品だったらまた全然違う感想がくるんだと思う。渉さん、北斗くん、凪砂くんというキャラクターのフィルターを通すことによって、お客さんはどんな反応になるんだろうって、本当に未知数すぎて!
松田:確かに、同じこと思いました! どう言ってもらえるかわからない。予測ができないかも。
山本:お客さんが楽しんでくれるのが一番うれしいですが、この『ドラマティカ』をどう思ってくださるのかが期待のひとつですね。
安井:今はまだゴールが見え辛くて、何が正解なのかをもっと探していかないとっていうのがあるよね。
山本:うん、すごく難しい。劇中劇ってやったことある?
松田:劇中劇が前提の作品はありますが、お客さんも当たり前にそういう目線からスタートしているので、それとはまたちょっと違うような……この『ドラマティカ』のようなタイプは初めてですね。おふたりは不安もあると言いますが、みなさんの積み上げてきた『あんステ』っていう歴史が僕たちを助けてくれるんじゃないかなと思います。初演の時にやるものと、5年、6年と続けてきた舞台でやるっていうのは大きな違いがあるはずだし、そういう今までの経験などが必ず僕たちの助けになってくれるのではないかと。僕はそれを力に変えて一生懸命にやっていくだけですね。
松田 岳
山本:人生2周目みたいな発言を(笑)。
安井:僕は日々樹 渉が主催の演劇サークルが『ドラマティカ』ということなので、シンプルに演じられることが一番の楽しみです。じゃあ「西遊記」の次は何なんだろう? って、終わった後にみんな期待すると思います。僕自身もこの先どうなるかわからないですが、この作品の仕上がりもお客さんの感想もすごく楽しみですし、この先もずーっとやりたいなって気持ちがすごくあります。楽しみなことだらけです!
松田:僕は兵庫県出身なので、兵庫公演も楽しみですね。地元に貢献できる。神戸の海でみんなでジャンプしたい。
一同:(笑)。
山本:楽しみってそういう感じ!? ちなみに劇場から海は近い?
松田:めちゃくちゃ近いですね。写真撮りましょう。
ーーファンのみなさんにメッセージをお願いします。
松田:一生懸命頑張りますので、よろしくお願いします。これが一番伝えたいことです。
山本:新しいコンテンツとして、全力でお客さんを楽しませたいなと思っています。アクションだったり歌だったり、新たなキャラクターの一面として見ていただけるんじゃないかなと思います。もちろん内容も満足いただける面白いものになっていますので、ぜひぜひ楽しみにしてもらえたらと思います。
安井:とにかく楽しみにしていてください。それに尽きます! そのために寝る間も惜しんで頑張ります! なにとぞよろしくお願いします!
山本:就活みたいなコメントだな~!
一同:(笑)。
「劇団『ドラマティカ』ACT1/西遊記悠久奇譚」は2021年10月23日(土)より、東京・兵庫で公演。
(左から)安井一真、山本一慶、松田 岳
取材・文=松本裕美  撮影=池上夢貢

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